1 長期復興指標による 被災地の復興状況の評価 -阪神・淡路大震災を事例に- 人と防災未来センター 主任研究員 紅谷昇平 災害復興学会 研究発表 会 2008 年 11 月 22 日(土)

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1 長期復興指標による 被災地の復興状況の評価 -阪神・淡路大震災を事例に- 人と防災未来センター 主任研究員 紅谷昇平 災害復興学会 研究発表 会 2008 年 11 月 22 日(土)

2 背景と目的 ・復興施策の実施において、分野・地域ごとの復興状況の 把握が必要である。 ・復興状況の把握には、主観的指標、客観的指標の両方が あり、主観的指標については、立木・田村らの既往研究 がある。 ・客観的指標については、柄谷らの研究がある。また、阪 神・淡路大震災復興 10 年検証で、各種統計指標を収集し ている。 目的 ・主要分野(人口、住宅、製造業、小売業、オフ ィス、観光)に絞り、阪神・淡路大震災後の復興 状況をレビューする。 ・複数の災害を比較し、「復興とは何か」につい て考える。

3 復興の定義と指標の評価方法 A :災害前との比較による定義 ● A-1 :ストックが、震災前の状態以上に回復 (直前値比 較) ● A-2 :ストックが、震災前のトレンド推計値以上に回復 (ト レンド推計値比較) ● A-3 :フロー指標(=ストックの変動率)が、災害前の水 準に回復 (変化率比較) 時間 災害災害 A1 :直前値比較 A2 :トレンド推計値比較 A3 :変化率比 較 ストック指標

4 復興の定義と指標の評価方法 ■B :他地域との比較による定義 ● B-1 :ストック(フロー)が、被災地外(全県、全国平均 等)と同じレベルに回復 (被災地外水準比較) ● B-2 :ストック(フロー)が、被災地内平均と同じレベル に回復 (被災地内格差比較) 被災地外 / 全国 被災地 B2: 被災地内 での格差比較 B1: 被災地内 と被災地外と の比較

5 被災地と被災地外との比較 (原則として、震災の直前値を 100 と する)

6 住宅:新設住宅着工戸数(フロ ー) ・約3年で新規着工のピークは終わる。

7 人口:人口の推移(ストック) ・約7年で震災前の水準に回復。

8 観光:観光入込客数の推移 (ストック活用状況) ・明石海峡大橋開通をきっかけに、震災前水準を回復。

9 商業:小売業の販売額・従業者 数 (ストック活用状況) 小売業販売額 小売業従業者数 ・震災で生まれたギャ ップは、未だに残る。

10 工業:製造業の出荷額・従業者 数 (ストック活用状況) 製造品出荷額 ・震災で生まれたギャップは、その後、拡大している。 製造業従業者数

11 業務:オフィス空室率の推移 (ストック活用状況) ・神戸市の空室率は、関西他都市に比べて高止まりしている 。

12 被災地内の格差比較 (震災の直前値を 100 として標準化し、 被災地平均と比較する。)

13

14 複数の災害の復興プロセス比較 ( 総合指標である人口を取り上げる ) (震災の直前値を 100 とする)

15 長期的に自律性のある指標 どの災害でも、被災前のトレンドに復帰する傾向が ある。 神戸市 深江町 島原市 奥尻町

16 「震災が無かった場合に予想される水準」までは回復で きていない。 災害による「得べかりし成長」がある。(神戸市で約 10 万人) 震災が無ければ、神戸市 の人口は、約 10 万人増え ていたはず。

17 「復興」とは何か? 「得べかりし利益」の回復ではなく、 「震災前の成長速度」の回復なのか。

18 住宅・都市復興基本モデル(樋口、北後、室崎) 被災および復旧・復興のダイアグラム(目黒、村尾)

19 A :従来の復興想 定モデル 復興しているのは、どれ? B :阪神・淡路被災 地 の人口 C :仮定モデル ( 衰退地域を想定 ) 被災↓被災↓ B :阪神・淡路被災 地 の人口 C :仮定モデル ( 衰退地域を想定 ) ・震災前トレンドの影響が大きく、補正が必要。 ・ B は、復興したと言えるのか? ・人口については、 A 、 C のタイプは少ない。

20 メリットデメリット 時系列比較 A1 : 震災前基準 分かりやすい。衰退地域では、復興 不可能となる。 A2: トレンド推計 値基準 「災害が無かった場合の 成長・衰退」も考慮でき る。 全国的なトレンドの 補正が必要。 A3 :変化率比較実態に合っている。分野によっては適用 しにくい。 地域比較 B1 :被災地外と の比較 マクロな時代環境の影響 を排除できる 比較対象の選定が難 しい。 B2 :被災地内で の格差比較 被災地内での復興の相対 比較ができる 絶対評価が困難であ る。 まとめと考察 ①長期復興指標の特徴

21 ②「復興」とは何か? ■ 阪神・淡路大震災について 指標の種類により、「復興」の状態は異なる。 産業については、被災地外とのギャップが回復して いない。( B1 基準) 阪神・淡路大震災では、総合的な指標である「人口 」は、災害前のトレンドによる自然回復の効果が大 きく、「得べかりし成長」( A2 基準)までは回復で きていない。 ■ 他の災害との比較(人口を事例に) 他の災害でも、人口についての「得べかりし成長」 は回復していない。 であれば、 「変化率(成長速度)を災害前の状態に 戻す」ことが復興とする定義も考えられる。

22 ③「復興」は、災害後に考えても手遅れでは? 災害前の成長速度が、災害後にも大きな影響を及ぼすので あれば、災害後に復興を考えても遅いのではないか。 平時における成長率や、産業界や企業の BCP (事業継続計 画)、住宅の耐震化など、事前の減災・防災の取組と、被 災後の復興をスムーズに進めることは、分けては考えられ ない。 ・「復興した状態(の統計値)」は、地域の目標(ビジョ ン)や被災者の価値観により、異なってくる。 ・復興を比較評価するためには、当初から「この状態を目 指す」という目標を、具体的に示す必要がある。 ・そのためにも、復興についての長期統計指標の整理、共 有が必要である ・また、今回示した客観的指標だけでなく、被災者の想い を反映した主観的指標も、合わせて評価する必要がある。 (量だけでなく、質の評価も重要)

23 今後の都市計画分野 における「復興」 旧来の都市計画分野 における「復興」 ①被災前の地域の状況 ②被災後の地域の状況 ③復興計画 ④地域・都市空間の復興状況 ⑤市民・企業活動 ( 都市機能 ) の復興状況 A :防災まちづくり/事前復興 B :被災プロセス C :計画プロセス D :事業プロセス E :都市機能の誘導プロセス

24 ご静聴ありがとうございました。 お問い合わせは、 まで。