放射性炭素年代測定法の種明かし 古さの順に並べると? 犬山祭 (寛永 12 年より) の山 車 実験教室で 物質には時計がついてるらしい ( 時計 = 放射性物質 ) 1 制作 NPO法人放射線教育フォーラム
放射性物質は砂時計の砂みたいに減りま す (ほとんどの物質が、微量ながら放射性物質を含んでいます) 放射性物質は、放射線を出して違う元素に変わ る(崩壊する) 2 水中にある 60 Co の崩壊が作るチェレンコ フ光(放射線;ベータ線の衝撃波) 於:コーガアイソトープ 語句の意味・読み 放射性物質 : ここでは「放射性同位体(同位元素)」「放射線を出す元 素」という意味 崩壊する : ベータ粒子を放出し、 60 Co は 60 Ni へ、 14 C は 14 N へ変わる 元素記号の前の数字は質量数(原子核の中の陽子と中性子の個数の和 60 Co は「コバルト 60 」と読む
放射線を出して、その物質ではなくなり ます 比較:上に残っている砂は減る 3
放射性同位体とは 文部科学省 HP 『あとみん』 ( 廃止) より 超微量な三重水素は放射線(ベータ線)を出して、ヘリウムに変 わる ( 3 H が 3 He に変わる) 放射線を出して原子の種類が変わる ⇒もとの原子数が減る 4 超微量
放射性同位体とは 宇宙線宇宙線 14 N が 14 C に変身 (放射性同位 体) 14 N に再変身 ( 14 C がなくなる) 生成した 14 C (放射性同位体)はただちに酸素と反応し、二酸化炭素に なる ( 宇宙線との反応 : n + 14 N → 14 C + 1 H 14 C の崩壊 : 14 C → + 14 N + e - ) エネルギーを得 て ある程度の時間の後 地上へ エネルギーを捨 て 成層圏で 14 C は二酸化炭素とな り、大気循環で 5
宇宙線宇宙線 宇宙線がエネルギーを与え、不安定な 14 C がで きる 一定時間のあと、放射線を出して 14 C は消える 放射線放射線 14 C → 14 N → 14 C 成層圏 「 12 C と 14 C の個数の比」はいつも同 じ 地上 だから二酸化炭素の中の「 12 C と 14 C の個数の比」も 同じ 14 C ほとんどを占める炭素 12 C 6 14 N
空気中と植物体内の比は同じ 植物は光合成して成長する 空気中の二酸化炭素を取り入れる 大気中と同じ個数比になる 光合成が続く限り(生きている限 り) 7
木が死んだら時計が動き出す 光合成はストップ → 大気からの新たな二酸化炭素の補充な し ( 14 C が減るばかり) 14 C 5730 年 半分半分 14 C の半減期は 5730 年 (半分になるまでの時 間) 5730 年前現在 普通の炭素 12 C 14 C 8
何年前のもの? 9 14 C は大気中に比 べて何分の1か 1/11/21/8 何年前のものか 14 C の半減期は 5730 年である
炭素さえあれば AMS 年代測定装置は、グラファイト(炭素) で 1mg (1/1000 g) あれば測定できます。 名古屋大学の HP より 10 高校生による発掘(寄島遺 跡)
放射性炭素年代測定法の成果は? 11 事例測定結果 ヨーロッパの氷河で発見されたミイラ(アイスマ ン) 3300 年前 日本の土器の始まりの年代 (通説より古い値、歴史が書き換わりそう) 年前 弥生時代の始まりが定説より 500 年遡行(これも 歴史が書き変わりそう) 紀元前 800 年 トリノの聖骸布(キリストの遺骸にかけた布) 測定結果からキリストに使われていないことにな る。測定値は正しいが、測定をした試料(布の一 部)が適正でない、という異議もある。 西暦 1260 ~ 1380 年の間の もの (キリストの死亡年は西 暦 30 年ごろ) 14 C 年代測定法も試料の状態等で誤差が出たり、測定できなかっ たりする。編年や年輪年代学、分子時計(注)など、利用可能 な方法でお互いを補完しながら決定していくのが科学である。 注) 編 年 : 遺構及び遺物の前後関係や年代の配列で年代 を決定 年輪年代学: 毎年の気候でできる年輪の幅の経年変化のデータに試 料の変化を当てはめて年代を決定 分子時計 : DNA の変異の量で年代を決定
参考(先生方へ) ペレトロン年代測定装置 (東濃地科学センターの AMS 年代測定装置) 12 おこげから不純物を除き、純粋な炭素にするの はちょっと大変です。詳しくは、以下の東濃地 科学センターの HP へ (見学も可能です)
参考(先生方へ) どうやって個数比を調べるか 昔 ベータ線の個数を数えた ( 崩壊数から 14 C の原子数を推 定 ) 全体の個数は、質量から 求め、ベータ線の個数か ら 14 C の個数を推定 1gの試料があっても、 現在の炭素ですら1秒に 1 4個しか崩壊がなく、精 度を確保するために長い 測定時間が必要 現在 加速器質量分析計( AMS) で 14 C の原子数を直接数える 原理はフレミング左手の法 則 14 C も 12 C も電荷は同じなので、 磁場の中で、同じ大きさの ローレンツ力を受ける 質量の違いで曲がり方が変わ る 試料は1mgで OK 30 分から 1 時間程度で測定が 終わる 13
14 参考(先生方へ) ・ 炭素14の半減期は現在の最も確からしい値は 5730 年だが、過去のデータとの整 合性をはかるため、リビー博士が使用した 5568 年を使用し続けている。 ・大気中の核実験のため、地表に放射性物質が増えてしまったため、 14 C 測定の基 準年は 1950 年とし、たとえば 5000 年前という測定値であれば、 1950 年から 5000 年前、 ということである。核兵器が考古学に攪乱を与えている。 このスライドは、 2011 年に愛知県立熱田高等学校で実施した、希望生徒対象の講座 「遺跡の年代決定 Now! 」の中で使用したものを改変、増補したものである。実際 に生徒が遺跡から掘り出した木片の測定値等は、以下の文献にある。また、講座全 体に関しては、 [ 熱田高校の HP -教育活動-外部との連携 ] にある。 大津浩一 高校生のための 14 C 年代測定と土器の編年による寄島遺跡の年代決定の 一方法 p31 放射線教育 Vol . または 参考文献 吉田邦夫 炭の粒で年代を測る 阿部芳郎 考古学への挑戦 p17 岩波ジュニア 文庫 2010 制作 2015年 NPO 法人放射線教育フォーラム 大津浩一