不安定論(波の共鳴) 大気大循環 特に中緯度の高低気圧の発生 傾圧不安定とフェレル循環 人工衛星データの見方 流れの不安定論 担当:島田浩二 9 号館 501

Slides:



Advertisements
Similar presentations
基礎セミ第7章 (1-4) 偏光のしくみと応用 12T5094E 龍吟. 目次 光の偏光とは? 複屈折とは? 偏光を作り出すもの (偏光プリズム、偏光板、位相板)
Advertisements

ケルビン波( Kelvin Wave ) 境界が無い場合、回転を感じる重力波(慣性重力波)の 最大振動周期は慣性周期であった。つまり、慣性周期 以上の時間スケールを持つ重力波は、 “ 境界が無い場合 ” には存在しない。 “ 境界があれば ” 、どうなるのであろう か? 境界があれば、慣性周期以上の時間スケールを持つ重力.
海洋流体力学 2014 海洋流体力学とは、海洋に関する流体力学。本講義では、 海洋のみならず、大気も含めた地球流体力学について学ぶ。 Fluid Dynamics( 流体力学 ) Geophysical Fluid Dynamics (地球流体力学) 目標 海洋・大気大循環のイメージを描けるようにする。
①自分たちの地域の洪水履歴 ②洪水をもたらす天気要因 ③洪水とはん濫の種類 ④日本の河川の特徴と北海道特有の事情 ⑤洪水・はん濫から街や住民を守る施設の紹 介 ⑥洪水・はん濫の情報を確認する手段 ⑦洪水発生時の避難のポイント ⑧居住地域のハザードマップを見てみよう ⑨避難の際の心得 次の紹介内容は.
ヤマセ海域の SST 変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー 理工学部 地球環境学科 気象学研究室 4 年 08 S 4025 佐々木 実紀.
気候 - 海・陸炭素循環結合モデルを用い た 地球温暖化実験の結果 吉川 知里. 気候 - 海・陸炭素循環 結合モデル.
第2回:力・つりあい 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2 棟 801 号室 工業力学 補足スライド Industrial Mechanics.
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
オンセットアークの構造化と 背景電場の変化
傾圧不安定の直感的理解(3) 地上低気圧の真上で上昇流、 高気圧の真上で下降流になる理由
大気科学入門 - 金星大気東西風の超回転について -
熱帯太平洋における季節内スケールの 赤道波動特性の解析 5AOOM007 萩原 右理 指導  轡田 邦夫 教授.
三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
コリオリ力の復習資料 見延 庄士郎(海洋気候物理学研究室)
冨川喜弘 (国立極地研究所・トロント大学)
現代地球科学、地球環境史 海保邦夫 教授 担当 (次週以降)
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
渦位(Potential Vorticity)と角運動量の保存
ジェット気流が延々と吹き続けている理由を理解する
風成海洋大循環 (準地衡流渦位方程式+エクマン層の力学)
一成分、二相共存系での平衡 一成分 固液共存系    氷-水.
第6章:熱帯域の不安定について(個別的?)かき混ぜか 6ー1:成層圏内の傾圧不安定(?)で起こっている例
第9章:中層大気の不安定擾乱について -不安な雲のうかび出て ふたたび明るく晴れるのは-
*大気の鉛直構造 *太陽放射の季節・緯度変化 *放射エネルギー収支・輸送 *地球の平均的大気循環
地学実験及び同実験法 第7回:フーコーの振り子.
ストークスの定理と、 渦度・循環の関係を 直感で理解する方法
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
水の災害について学ぶ 国土交通省 北海道開発局 事業振興部 防災課.
近年の北極振動の増幅 Recent Arctic Oscillation amplification
2013年7月のヤマセについて 仙台管区気象台 須田卓夫 昨年のまとめ(赤字は研究会後の調査)
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
バングラデシュにおける対流活動と局地風に関する研究
ロスビー波( Rossby wave) 渦度 (vorticity) 順圧非発散流(絶対渦度の保存) ポテンシャル渦度(渦位)
中性子干渉実験 2008/3/10 A4SB2068 鈴木 善明.
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第2章(pp.12-22)
Alfvén波の共鳴吸収・ 位相混合とコロナ加熱
GISを用いた 『日向』『日影』地名の 立地の解析
講義ノート(ppt)は上記web siteで取得可 #但し、前日に準備すると思われるのであまり早々と印刷しない方が身の為
回転系における潮流海底境界層の 乱流に関する数値的研究
渦位(Potential Vorticity)と角運動量の保存
2009年秋の北極海ラジオゾンデ観測によって観測された 大気の順圧不安定とメソ渦列
地学P 回転水槽実験.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
Iida, O., N. Kasagi and Y. Nagano
産総研・計測標準 寺田聡一 東大地震研 新谷昌人、高森昭光
集合住宅団地における棟間気流性状および 外壁面対流熱伝達率の実測
流速ベクトル.
傾圧不安定の直感的理解(2) ー低気圧軸の西傾の重要性ー
冬季、東シナ海・日本南方海域における 温帯低気圧の発生に関する気候学的研究
傾圧不安定の直感的理解(2) ー低気圧軸の西傾の重要性ー
建築環境工学・建築設備工学入門 <空気調和設備編> <換気設備> 自然換気の仕組みと基礎
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
落下水膜の振動特性に関する実験的研究 3m 理工学研究科   中村 亮.
宿題を提出し,宿題用解答用紙を 1人2枚まで必要に応じてとってください 配布物:ノート 2枚 (p.85~89), 小テスト用解答用紙 1枚
北極振動の増幅と転調は 何故20世紀末に生じたか? Why was Arctic Oscillation amplified and Modulated at the end of the 20th century? 地球環境気候学研究室 鈴木 はるか 513M228 立花 義裕, 山崎 孝治,
将来気候における季節進行の変化予測 (偏西風の変化の観点から)
スケールモデルサイトにおける 「風の道」の野外実験
卒論中間発表 2001/12/21 赤道の波動力学の基礎 北海道大学理学部 地球科学科 4年 山田 由貴子.
波動力学 不安定論(波の共鳴) 大気大循環 特に中緯度の高低気圧の発生 傾圧不安定とフェレル循環 人工衛星データの見方 流れの不安定論
冨川喜弘 (国立極地研究所・トロント大学)
振幅は 山の高さ=谷の深さ A x A.
従来研究 本研究 結果 南極大型大気レーダーPANSYで観測された大気重力波の数値モデル再現実験による力学特性の解明
共生2-3相関チャート ※共生2のグループ分け 炭素循環 陸域(炭素循環、 植生動態) 海洋 大気組成 大気化学 エアロゾル 寒冷圏モデル
Presentation transcript:

不安定論(波の共鳴) 大気大循環 特に中緯度の高低気圧の発生 傾圧不安定とフェレル循環 人工衛星データの見方 流れの不安定論 担当:島田浩二 9 号館 501

大気大循環 海洋熱塩循環は赤道非対称であったが、 大気循環場は基本的に赤道対称 大きく分けて2種類の循環が存在 (①ハドレー循環、②フェレル循環) ①:本質的には、海洋熱塩循環と同じ 重いところで沈降し、軽いところで上昇 するいわゆる対流 ②:流れの不安定によって起こるもの

渦度を復元力とする波について ポテンシャル渦度(渦位) 回転を感じるシステムでの渦度 今、層厚が一定であるとすれば、北に変位した場所では、マイナスの相対渦度(時計回りの二次流)、 南に変位している場所ではプラスの相対渦度(反時計の二次流)が発生する。 二次流によって、等渦位線(位相)は西 に伝播してゆく。これが、ロスビー波の 西進のメカニズムである。

コリオリ力の変化が小さい場合(小ス ケールの場合)には、相対渦度が効い てくる。

流れの不安定 コーヒーにクリームを入れて混ぜるとき、どのようにして混ぜているのだろうか?そこにヒントがある。

不安定な流れの非線形発展

周囲の渦度に対して、 低渦度になるところには反時計回りの(正の) 2 次 循環 高渦度になるところでは時計回りの(負の) 2 次循 環 ができる。

2 次循環が、渦度フロントの乱れを増幅するように 作用するとき、不安定が起こる。 上記の位相関係が長時間維持されることが必須とな る。 すなわち、青のフロントと赤のフロントに現れる擾 乱のスケールと位相速度がほぼ一致することが条 件。

流れの不安定とは? 共振、共鳴と理解すればよい

応用編 波の位相速度(伝播速度)は、波の波長に よって異なる。 例えば、ロスビー波の場合、 したがって、共振(共鳴)条件を満たす波は、 ある波長の波に限定されてしまう。 海岸線が直線的なら、最も成長速度が速い波 長の波動擾乱が現れる。 しかし、海岸線が直線的ではなく、凹凸があ る場合で凹凸のスケールで共振(共鳴)が起 こるのなら、凹凸のスケールの波が現れる。

不安定が起こりうる条件を満たす 最も単純な系 * でメカニズムを探る * 系に波が2つ存在する

流氷研レーダー 黒⇒海、白⇒ 氷 【砕波 型】 振幅の増大、減少を繰り返す。増大 - 減少のステージ変化は位相差が π の時に起こる。 沿岸域で活発な流体混合(マクロ的には、流れの安定化)

人工衛星画像を見たとき、上流側に砕波 し、細かく入り乱れているパターンがあ れば、それは、順圧不安定。 順圧不安定で、細かく入り乱れるパター ンが現れれば、位相関係が波を成長させ る状態と減衰させる状態が交互に起こっ ている。

同じ流れであっても、擾乱のスケール が異なれば、違うパターンを呈する。 もし、渦が沿岸から切り離され沖に輸 送されるのなら、そのようなことが起 こっている海域が外洋環境を決めるの に大事であると言える。

短い波長の 不安定波 (最大成長率) 【砕波型】 長い波長の 不安定波 地形規定のスケール 【渦対 型】 振幅が増大する位相関係が維持される 沿岸水の外洋への効果的な輸送 基本流は同一であるが、 不安定波の波長を倍にすると・・・

沿岸水の 外洋への輸送 さて、この画像を見て、北 極海沿岸の流れは、このと きどちら方向であるかを答 えよ。 凹凸のある 海岸線 比較的直線的

ケルビン・ヘルムホルツ不安定 鉛直混合を考えるときに大事な現 象 軽い 重い 中間

大 小 小

宗谷暖流の場合と、渦度の大小パターンが同 じことが分かる。 ⇒同じことが起こる。(物理は同じ) 小 大 小

さて、最後に傾圧不安定 (フェレル循環(ロスビー循 環)) 順圧不安定や KH 不安定では、渦度のパ ターンが重要であった。渦度の大小に 起因する波の共振(共鳴)が不安定で あることを述べた。 傾圧不安定も、同じメカニズムでおこ る。 どの波とどの波が共振(共鳴)するの かを考えることが第一。

上空の空気の積み重なりを考え る 地表面では、ほとんど同じ圧力 =上に乗っている空気の質量が同じ 冷たい空気 暖かい空気 北 南

上空では、どうなっている か? 地表面では、ほとんど同じ圧力 =上に乗っている空気の質量が同じ 冷たい空気 暖かい空気 北 南 質量は小 質量は大 この高度より上に乗っている 大気の質量を考える 高圧低圧

地衡風(地衡流) 北に向かうにつれて、圧力pは減少 :西風 上空にゆけばゆくほど、 南北の圧力差は大きくなる

HL

南北

渦度はどうなっているか? 南北

簡単にしてみる 大 大 小 小 南北

渦度前線があるとして考える 北南

ー + 上から見る 上層:q大 上層:q小 下層:q小 下層:q大 北 南 - +

波の伝播速度には、やはり波長依存性 がある。上層と下層の波の速度がほぼ 同じとき、擾乱は成長する。 つまり、あるスケールの波が卓越する はず。 大気の場合、中緯度域で4~5波にな る。 (高低気圧の一組で 5600 km~ 7000 k m)

日本 アメリ カ ロシア

ー + 上から見る 上層:q大 上層:q小 下層:q小 下層:q大 北 南 - + 北に向かうところは、 等密度面が低い 南に向かうところは、 等密度面が高い 等密度面 高度

面白いことに気付く フェレル循環は、 冷たいところで上昇、暖かいところで下降 する意味が分かった!

おしまい