組織活性化と 労働移動 小林盾(シカゴ大学) 2005 年 3 月 5 日 数理社会学会 新潟国際情報大学.

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組織活性化と 労働移動 小林盾(シカゴ大学) 2005 年 3 月 5 日 数理社会学会 新潟国際情報大学

アウトライン  労働移動は,組織を活性化するのか ?  転職経験者と転職希望者は,フリー ライダーか?  質問紙調査, 657 人  全国,男性,ホワイトカラー労働者

背景  離職率= 14 ~ 16% ( 02 年で 682 万 人)  転職入職率= 8 ~ 10% ( 363 万人)  14% の組織が「転職で活性化」戦略 (労働省 00 )  労働移動は,組織を活性化するのか ?  活性化 =フリーライダーが少ない

問題  転職経験者と転職希望者は,フリー ライダーか?  フリーライダー=貢献が不十分  貢献者 =十分  転職は「諸刃の剣」 貢献者 フリーライ ダー

先行研究  活性化研究と転職研究のリンク希薄  活性化研究  高橋 97 :活性化 ↑→ ぬるま湯 ↓  転職研究  連合 99 :収入 ↓ ,満足 ↑ ,規模 ↓

仮説  労働者が合理的なら, H1 転職経験者は,貢献者 (マッチングを改善) H2 転職希望者は,貢献者 (フリーライダーから退出) 貢献者 転職希望 転職経験 ++

問題 データと変数 結果

転職と働き方に関する意識調査  マイボイス社,インターネット上  2004 年 3 月 3 日 17 時~ 4 日 18 時  自計式,質問紙, 73 ~ 100 問  全国, 代,男性  雇用,フルタイム労働者  N=810 (回答率 34% ,計画標本 2,400 )

サンプリング  モニター 15 万人  → 該当する 48,850 人  →2,400 人をランダムサンプリング  → 「働き方と転職に関するアンケート」  → 最初に答えた 815 人 →810 人  謝礼として 250 円

ウェブページで公 開

項目  日常生活,公正感  働き方,職場の雰囲気  職場の満足  転職経験,理由,準備,結果  属性 そう思う どちらともいえない そう思わない ややそう思う あまりそう思わない

属性  分析対象=ホワイトカラーの 657 人 (専門,管理,事務,販売)  平均 38.8 歳,大卒 69.1% ,既婚 71.2%  課長以上 29.2% ,勤続 11.9 年  年収メディアン =5-700 万( 32% )  300 人以上 51.9% ,うち 1000 人以上 36.7%

モデル  転職経験 チームワーク度 転職希望 (ダミー) 教育度 ( 5 値) ( 5 値)  モチベーション,コミットメント  貢献傾向,職場満足  勤続年数,大卒ダミー  既婚ダミー,課長以上ダミー  1000 人以上ダミー,職業・産業ダミー

従属変数( 5 値)  チームワーク度(ノルマ的)  「同じチームの仲間が熱心に働いている ときは,自分はむしろ手を抜くほうだ」 (逆転)  教育度(プラスアルファ的)  「職場の後輩の面倒はよく見るほうだ」  転職希望  「良い機会を見つけたら,転職したいと 思う」

統制変数 1  モチベーション( α=.56 ,平均値)  「自分の仕事については,人並のやり方に は満足せずに,つねに改善するよう心がけ ている」  「自分は,短期的見通しというよりも,長 期的展望に基づいて仕事をしている」  コミットメント ( α=.68 )  「自分が所属する組織(会社・団体)に対 して,高い忠誠心を持っている」  「自分が日常的に接する職場の仲間に対し て,強い連帯感を感じる」

統制変数 2  貢献傾向( α=.54 )  「自分個人の利益より,自分が所属す る集団の利益を重んじるほうだ」  「粘り強く物事に取り組むほうだ」  「周囲の人が面倒くさがってやりたがら ないことなも,自分は進んで行うほう だ」  「班やグループで分担する仕事や義務な どは,なるベく避けるほうだ」(逆転)

問題 データと変数 結果

記述統計  転職経験: 41.1% (就業 02 で 48% )  転職を希望: 61.5% ( 12% )  チームワーク: 65.2% (組織調査で 62% )  後輩を教育する: 51.7% ( 51% )

モデル(再)  転職経験 チームワーク度 転職希望 (ダミー) 教育度 ( 5 値) ( 5 値)  モチベーション,コミットメント  貢献傾向,職場満足  勤続年数,大卒ダミー  既婚ダミー,課長以上ダミー  1000 人以上ダミー,職業・産業ダミー

y = チームワーク度,教育度 回帰分析 (N=657) ,非標準化係数 †p<.10, *.05, **.01, ***.001 チームワーク度教育度 転職経験.15 *.16 * モチベーション.13 **.36 *** コミットメント.09 *.18 *** 職場満足 –.07 †–.06 † R2R

 2 群の差の検定で有意( 5% 水準)

y = 転職希望 回帰分析 (N=653) ,非標準化係数 (モチベーションと職場満足を除いた) 大卒以上ダミー –.16 * 勤続年数 –.03 *** 公務員ダミー –.60 *** –.61 *** チームワーク度.09 * 教育度.10 ** コミットメント –.27 *** –.28 *** R2R

 2 群の差の検定で有意でない ( p>15% )

分析結果 後輩を教育 転職 希望 転職 経験 + + チームワークで手 を抜かない + +

結論  転入するのは,貢献者  しかし,転出するのも貢献者  労働移動は,組織活性化に諸刃の剣  組織の課題は,貢献者の定着 貢献者 フリーライ ダー

課題  マクロの組織業績にリンク ?  パネルデータで因果関係 ?  インターネット調査の代表性 ?

職業 この調査就業構造基本調査 02 専門 38.9%26.4% 管理 5.4%11.2% 事務 32.7%30.8% 販売 22.9%31.6% 人数 65715,790,300

産業 農林水産鉱.2%.3% 建設 7.5% 6.7% 製造 33.5%16.3% 運輸・通信 8.0%11.0% 卸・小売・飲食 9.5%25.6% 金融・保険 5.7% 5.0% 不動産 2.1% 1.9% サービス 20.5%14.1% 公務員 6.2% 6.5% その他 6.8%12.8% 人数 66315,790,300 (就業構造基本調査 02 )