2016 年度 計量経済学 講義内容 担当者: 河田 正樹

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回帰分析入門 経済データ解析 2011年度.
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2016 年度 計量経済学 講義内容 担当者: 河田 正樹

計量経済学とは さまざまな経済理論にもとづき数式の形で表さ れた経済モデルを、データを用いて、統計的手 法によって検証するもの。 経済理論は因果関係の積み重ねである。 (例) 「利子率を下げると消費が拡大し、需要が喚起される」 このような論理の積み重ねによって、経済の現状把握・ 予測をおこなうことを定性的分析という。

これから一歩踏み込んで、 これから一歩踏み込んで、 「利子率を ○ %下げると消費が拡大し、△△円程度の需要が喚起され る」 というように、数量的な把握をするものが定量的分析で ある。 というように、数量的な把握をするものが定量的分析で ある。 このような定量的分析をおこなうために、統計データが 用いられる。 このような定量的分析をおこなうために、統計データが 用いられる。 統計データを用いた定量的分析のことを、計量分析とい う。経済分析における計量分析が計量経済分析である。 統計データを用いた定量的分析のことを、計量分析とい う。経済分析における計量分析が計量経済分析である。

関連する科目 これらの科目は、計量経済学を理解する上で重要である。 特に統計学は、計量経済理論の基礎となる。 これらの科目は、計量経済学を理解する上で重要である。 特に統計学は、計量経済理論の基礎となる。 「計量経済学」の講義では統計学を履修済みであることを 前提とするが、最初の数回において要点を復習しながら 進める。 「計量経済学」の講義では統計学を履修済みであることを 前提とするが、最初の数回において要点を復習しながら 進める。 統計学・計量経済学関連科目関連図(徳山大学経済学部)(河田作成)

計量経済分析の手順 モデルの定式化 モデルに含まれる変数と実際のデータの対 応 パラメータの推定と統計量の算 出 モデルの検討 政策・予測への応 用 <ステップ1 > <ステップ2 > <ステップ3 > <ステップ4 > 合格 不合格 <ステップ5 >

<ステップ 1 > モデルの定式化 モデルの定式化は、おもに経済理論にもとづい ておこなわれる。 モデルの定式化は、おもに経済理論にもとづい ておこなわれる。 経済理論から 経済理論から 所得 ↑ → 消費 ↑ 所得 ↑ → 消費 ↑ という関係が導かれる。これを数学の用語を用 いて表現すると、 という関係が導かれる。これを数学の用語を用 いて表現すると、 「消費は所得の関数である」 「消費は所得の関数である」 といえる。

これを数式の形で表したものが消費関数であ り、代表的なものがケインズ型消費関数であ る。 これを数式の形で表したものが消費関数であ り、代表的なものがケインズ型消費関数であ る。Y(消費) = a + b X(所得) ↑ ↑ 結果 原因 X( 所 得) Y=a+bX

定式化したモデルについて、おもに 2 種類の 疑問が考えられる。 定式化したモデルについて、おもに 2 種類の 疑問が考えられる。 1 関数型への疑問 たとえば Y = a + bX 2 ではいけないのか? ⇒ 所得と消費の散布図からを描くことに よって最適な関数型が選択される。 ⇒ 所得と消費の散布図からを描くことに よって最適な関数型が選択される。 どちらでも構わないような場合には、解 釈しやすい、より単純なもの( 1 次式など) が選ばれる。 どちらでも構わないような場合には、解 釈しやすい、より単純なもの( 1 次式など) が選ばれる。

<ステップ 2 > モデルに含まれる 変数と実際のデータとの対応 最初に分析目的に応じて、 2 種類の統計データの うちどちらを用いるかを決める。 最初に分析目的に応じて、 2 種類の統計データの うちどちらを用いるかを決める。 – 時系列データ データを時間の順序にならべたものであり、過去の変動から現 状を把握し、将来を予測するなどの目的に用いる。 – クロスセクションデータ ある 1 時点において何らかの属性に関してならべたものであり、 地域差などの現状を把握するために用いる。 その上で「所得」「消費」といった経済学の概 念に対応した最適なデータを選ぶ。 その上で「所得」「消費」といった経済学の概 念に対応した最適なデータを選ぶ。

ここでは、日本全体の家計についての時系列 データを用いて分析をおこなう。 ここでは、日本全体の家計についての時系列 データを用いて分析をおこなう。 「所得」は実質家計可処 分所得、「消費」は実質 家計消費支出をもちいる。 これらはともに国民経済 計算から得られたデータ である。 「所得」は実質家計可処 分所得、「消費」は実質 家計消費支出をもちいる。 これらはともに国民経済 計算から得られたデータ である。

<ステップ 3 > パラメータの推定 パラメータ(回帰係数)の推定は、散布図にX, Yの関係をもっともよく表す直線を書き入れる ことである。 パラメータ(回帰係数)の推定は、散布図にX, Yの関係をもっともよく表す直線を書き入れる ことである。

回帰係数の推定値は最小 2 乗法という方法で 求めることができる。 回帰係数の推定値は最小 2 乗法という方法で 求めることができる。 最小 2 乗法はデータの各点と直線との距離 (これを残差という)の 2 乗和が最小となる ように直線を引く方法である。 最小 2 乗法はデータの各点と直線との距離 (これを残差という)の 2 乗和が最小となる ように直線を引く方法である。 推定値は次のような 式で求められる 。 (詳しくは第 2 章で)

このデータに最小 2 乗法を適用した結果、直 線の方程式は Y= X となっ た。 このデータに最小 2 乗法を適用した結果、直 線の方程式は Y= X となっ た。 これより、たとえば X=320 のときの Y が、 これより、たとえば X=320 のときの Y が、 Y= ×320 = と求められる。 と求められる。 ⇒ 将来の消費額の予測

<ステップ 4 > モデルのテスト パラメータを推定したモデルは、経済学的な 面と統計学的な面から検討される。 パラメータを推定したモデルは、経済学的な 面と統計学的な面から検討される。 回帰係数の検定で、よくおこなわれるのが 回帰係数の検定で、よくおこなわれるのが H 0 : b=0 vs. H 1 : b≠0 という検定である。 この検定で、 H 0 が採択された場合、 この検定で、 H 0 が採択された場合、 Y=a+bX Y=a+bX となるので、真の回帰式は Y=a とな る。 0

この式は、「 Y の大きさは X の 値にかかわらず一定値aをと る」ということを表している。 この式は、「 Y の大きさは X の 値にかかわらず一定値aをと る」ということを表している。 回帰分析は、Xの大きさが大 きくなることが原因となって Yが大きくなる(または小さ くなる)ときに行う分析であ るので、 H 0 が採択された場合 には、「この分析は行う意味 がなかった」ということに なってしまう。 回帰分析は、Xの大きさが大 きくなることが原因となって Yが大きくなる(または小さ くなる)ときに行う分析であ るので、 H 0 が採択された場合 には、「この分析は行う意味 がなかった」ということに なってしまう。 (統計的検定については第 1 章で復習し ます) (統計的検定については第 1 章で復習し ます) Y X Y= a a

また、回帰分析を行う場合にはさまざまな仮 定がなされている。 また、回帰分析を行う場合にはさまざまな仮 定がなされている。 しかし現実のデータ(特に経済データ)はそ の仮定を満たさないことが多く、その場合に は最小 2 乗法で求めたパラメータ推定値が信 用できない。 しかし現実のデータ(特に経済データ)はそ の仮定を満たさないことが多く、その場合に は最小 2 乗法で求めたパラメータ推定値が信 用できない。 そこで、以下のような諸問題に対する対処が 必要となる。 そこで、以下のような諸問題に対する対処が 必要となる。 (詳しくは第 4 章で) 多重共線性 多重共線性 系列相関 系列相関 不均一分散 不均一分散