国際収支統計 専修大学 経済学部 経済統計学 (作間逸雄). 『日本経済新聞』 2014 年 9 月 8 日夕刊.

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国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
三面等価の原則 生産面からみたGDP =支出面からみたGD P =分配面からみたGD P. [ 備考 ] 内閣府経済社会総合研究所「 SNA ・1統計資料・国民経済計算確報・平成14年度確報(平成16年4月19日)・計数票・第1部 フロー編 1.統合勘定( 1 )国内総生産と総支出勘定、及び、 4.
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
有斐閣アルマ 国際経済学 阿部顕三・遠藤正寛 第 1 章 国際貿易の概観 ー自由化への歩みと 現状ー ー自由化への歩みと 現状ー 1.
US Corporate Sector 九州大学ビジネススクール 村藤 功 2014 年 10 月 27 日.
金融経済論(小川英治) 1 貨幣供給. 金融経済論(小川英治) 2 ハイパワードマネーとマネー サプライ ハイパワードマネー or マネタリーベース or ベースマ ネー =中央銀行が供給する現金通貨。 ハイパワードマネー( H )は、公衆保有の現金通貨 ( C )と銀行保有の支払準備( R )から構成される。
国際経済学 (13) 貿易と対外純資産 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2013 年 2 月 18 日.
第5章 どのように 国際的に 資金が 流れるのか 加藤 栞.
2 国際収支と国際貸借 2-1 国際収支と国際収支表 2-2 国際収支と国民経済 2-3 国際収支と国際貸借.
経済と株価ー講義② 企業活動と付加価値①・・・GDP上の考察 ・マクロ経済学上の付加価値 ・GDP統計の相互関係 ・GDP統計とは①~③
国際収支表をどう読むか 国際収支の均衡 国際収支とGDP
専修大学 経済統計学(経済学部)・ 現代の経済/経済の世界(法学部) 作間逸雄
日本経済新聞 2005年11月8日.
第9週(第3章[2]) §2 資金過不足と貯蓄・投資の関係(p.49~65) Q1) 家計部門 Q2) 企業部門
マクロ経済学初級I 第6回.
第1章 国民所得勘定.
金融法人分析 九州大学ビジネススクール 村藤 功 2014年10月22日.
国民経済計算 System of National Accounts
US Federal Government Sector
マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰.
国際収支と為替相場 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
政府部門を含む閉鎖経済の乗数効果 専修大学 「経済の世界」 作間 逸雄.
(出所)小峰隆夫(2003)『最新日本経済入門[第2版]』、日本評論社、p.186。
国際収支と為替相場の基礎的概念 MBA国際金融2015.
国際収支 2007年6月1日.
第70回 しがくセミナー ~日本のグランドデザイン~
マクロ経済学(Ⅱ) ゴ    イツリョウ 担当: 呉  逸良 マクロ経済学(Ⅱ).
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
国際収支について.
第8章 国際収支と国際投資ポジション 対外経済関係の鳥瞰図.
QE 専修大学 経済統計学・経済の世界 作間逸雄.
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
セルビア共和国 経済・構造改革 ー挑戦と達成ー
有斐閣アルマ 国際経済学 第1章 国際貿易の概観           ー自由化への歩みと現状ー 阿部顕三・遠藤正寛.
GDPに関連した概念.
4 国際通貨 1 国際通貨の基礎理論 2 国際通貨の機能と選択 3 管理通貨制度下の国際通貨 国際金融2002(毛利良一)
国民経済計算(SNA)とは 国際連合が示す基準に従って、世界各国が比較可能な形で、それぞれの経済の毎年の循環の姿を、体系的に明らかにすることを目的としたもの。 日本では、内閣府経済社会総合研究所   国民経済計算部が、年1回   「国民経済計算年報」を発行.
III 長期の実物経済.
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財政赤字 マクロ経済分析 畑農鋭矢.
第8章 開放マクロ経済学.
第4回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
政府の勘定 プライマリー・バランス ドーマー条件
国際経済の基礎12 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月20日
国際経済学11 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年1月25日
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中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
財務諸表とは テキスト第3章 田宮治雄.
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III 長期の実物経済.
国際貿易の外観.
中国の経済統計と国際的統計水準 ―第7回日中経済統計専門家会議の閉会にあたって―
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V. 開放経済のマクロ経済学.
V. 開放経済のマクロ経済学.
元高の原因を追求    九州産業大学 金崎ゼミ 張 雷 徐 雲飛 .
第2章 『法人企業統計』の説明を書く.
小 平 市 の 財 務 書 類(平成26年度概要版) 財 務 4 表
第9章 国民経済計算 ー 経済統計 ー.
産業空洞化と低賃金化 ● 企業活動の国際化 → 先進国の産業空洞化→先進国での低賃金化 ● 日本企業の利益額: 国内生産 ≒ 海外生産
有斐閣アルマ 国際経済学 第9章 国際要素移動 阿部顕三・遠藤正寛.
第7章 単回帰で「消費関数」を計測する 1.所得の定義 1.1 国民純生産 国内総生産(GDP) ⇔ 所得
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
均衡予算の乗数効果 専修大学 経済の世界 作間 逸雄.
第3回講義 文、法 経済学.
事業法人分析 九州大学ビジネススクール 村藤 功 2014年10月22日.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年1月18日
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国際収支統計 専修大学 経済学部 経済統計学 (作間逸雄)

『日本経済新聞』 2014 年 9 月 8 日夕刊

『日本経済新聞』 2014 年 5 月 12 日

最近の国際収支( 付け 『日本経済新聞』)

フロー部分とストック部分が ある フロー部分「国際収支統計」 ストック部分「本邦対外資産負債残高 」

新旧の変更点

外貨準備の符号表示の変更 5版では、外貨準備増減は、外貨準備 が増えた場合、マイナスになる。現在 、金融収支に含まれる外貨準備項目は 、増えた場合、プラス。 従来の資本収支(例えば、証券収支) も、資金流出(居住者が対外資産を買 ったら)、マイナス。資金流入(負債 増加、資産減少)がプラス。

外貨準備の符号表示の変更(続 ) 5 版準拠: 経常収支+資本収支+外貨 準備増減+誤差脱漏= 0 6 版準拠: 経常収支+資本移転等収支 -金融収支+誤差脱漏= 0

国民経済計算統計の一部として の 国際収支統計(1) 93SNA の成立( 1993 年) IMF 国際収支マニュアル第5版の成立 (1993 年) 財務省・日本銀行のマニュアル第5版 に沿った国際収支統計の改訂( 1996 年) 内閣府の国民経済計算の 93SNA 移行 ( 2000 年) 緊密な協力・統合

国民経済計算統計の一部としての 国際収支統計(2) 08SNA の成立( 2008 年・ 2009 年) IMF 国際収支マニュアル第6版の成立 ( 2008 年) 財務省・日本銀行のマニュアル第 6 版に 沿った国際収支統計の改訂( 2014 年) 内閣府の国民経済計算の 08SNA 移行 ( 2016 年?) 緊密な協力・調和

国民経済計算統計の一部として の 国際収支統計 CIX YF+T DSK (-N) ML 記号の説明 C:最終消費支出(民間、政府) I:総資本形成 X:財・サービスの 輸出 Y:純付加価値 F:第1次所得の純 受取 T:その他の経常移転の純受取 D:固定資本減耗 S:貯蓄 K:資本移転の純受取 M:財・サービスの輸入 L:純貸出(海外に対する債権の変 動) N:非金融非生産資産(商標権等)の 純購入

海外部門の連結勘定(復習) C 11 I 11 P 12 + C 1 2 Y 11 F 12 + T 1 2 D 11 S 11 K 12 P 21 C 21 + F 2 1 + T 21 K 21 + L 21 P 21 C 21 F 21 T 21 K 21 L 21 C 11 I 11 P 12 + C 1 2 Y 11 F 12 + T 1 2 D 11 S 11 K 12 P 21 C 21 + F 2 1 + T 21 K 21 + L 21 海外部門の連結勘定 P 12 C 12 F 12 T 12 K 12 輸入 M 輸出 X

貯蓄投資差額と経常収支 第3行、第3列のバランス関係は、次式であらわさ れる。 D+S+K=I+L+N 第4行、第4列のバランス関係は、次式であらわさ れる。 M+L+N=X+F+T+K 後者が国際収支統計の背景にある恒等式である。 2 つ の式を比較することにより、以下の恒等式が得られ る。 経常収支= X+F+T-M=L+N-K=D+S-I =貯蓄投資差額

経常収支に対する S-I バランスア プローチ(復習) 経常収支=貯蓄投資差額であることを用 いて、経常収支に対する新しい見方が可 能になる。 CB=S-I =( S P + S G ) - ( I P + I G ) = ( S P - I P ) + ( S G -I G ) = ( S P - I P ) + ( T-C G - I G ) 民間貯蓄 投資差額 政府貯蓄 投資差額 民間貯蓄 投資差額 政府黒字 双子の赤字

国際収支統計の概念的枠組み 貸方(海外勘定としては借方) Credit =受取 借方(海外勘定としては貸方) Debit =支払 財の輸出 サービスの輸出 第1次所得の受取 その他の経常移転の受取 対外負債の純発行 資本移転の受取 無形非生産資産の処分 財の輸入 貿易収支 (1) サービスの輸入 サービス収支 (2) 第1次所得の支払 所得収支 (3) その他の経常移転の支払 経常移転収支 (4) (1)+(2)+(3)+(4) 経常収支 外貨準備に含まれるもの以外の対外金融資産 の純取得 投資収支 (5) 資本移転の支払 無形非生産資産の取得 その他資本収支 (6) (5)+(6) 資本収支 外貨準備増 (-) 減 誤差脱漏

国際収支統計の概念的枠組み 貸方(海外勘定としては借方) Credit =受取 借方(海外勘定としては貸方) Debit =支払 財の輸出 サービスの輸出 第1次所得の受取 その他の経常移転の受取 対外負債の純発行 資本移転の受取 非生産非金融資産の処分 財の輸入 貿易収支 (1) サービスの輸入 サービス収支 (2) 第1次所得の支払 第1次所得収支 (3) その他の経常移転の支払 第2次所得収支 (4) (1)+(2)+(3)+(4) 経常収支 対外金融資産の純取得 うち、外貨準備 金融収支 (5) 符号を逆にする 資本移転の支払 非生産非金融資産の取得 資本移転等収支 (6) 誤差脱漏(7)

国際収支統計を見る上の 注意点 外貨準備は通貨当局の管理下にあるすぐに利用可能 な対外資産の増減を計上する項目。貨幣用金、SD R、IMFリザーブポジションが含まれる。 外貨準備が金融収支の一部分になった。 金融収支は、証券投資、直接投資等々に分類される が、直接投資とは? 第一次所得収支の大半は、投資収益。直接投資企業 の再投資収益とは? 委託加工・仲介貿易とは?

経常収支 (a+b+c) Current account (a+b+c) (a) 貿易・サービス収支 (a)Goods & services 貿易収支 サービス収 支 Goods 輸出輸入 Services ExportsImports 平成 8 年 1996C.Y.74,94323,17490,346430,153339,807-67,172 平成 9 年 1997C.Y.115,70057,680123,709488,801365,091-66,029 平成 10 年 1998C.Y.149,98195,299160,782482,899322,117-65,483 平成 11 年 1999C.Y.129,73478,650141,370452,547311,176-62,720 平成 12 年 2000C.Y.140,61674,298126,983489,635362,652-52,685 平成 13 年 2001C.Y.104,52432,12088,469460,367371,898-56,349 平成 14 年 2002C.Y.136,83764,690121,211489,029367,817-56,521 平成 15 年 2003C.Y.161,25483,553124,631513,292388,660-41,078 平成 16 年 2004C.Y.196,941101,961144,235577,036432,801-42,274 平成 17 年 2005C.Y.187,27776,930117,712630,094512,382-40,782 平成 18 年 2006C.Y.203,30773,460110,701720,268609,567-37,241 平成 19 年 2007C.Y.249,49098,253141,873800,236658,364-43,620 平成 20 年 2008C.Y.148,78618,89958,031776,111718,081-39,131 平成 21 年 2009C.Y.135,92521,24953,876511,216457,340-32,627 平成 22 年 2010C.Y.190,90365,64695,160643,914548,754-29,513 平成 23 年 2011C.Y.101,333-33,781-3,302629,653632,955-30,479 平成 24 年 2012C.Y.46,835-83,041-42,719619,568662,287-40,322 平成 25 年 2013C.Y.32, ,521-87,734678,290766,024-34,786

資本移転等収支 Capital account (b) 第一次所得収支 (c) 第二次所得収支 (b)Primary income(c)Secondary income 61,544-9,775-3,537 68,733-10,713-4,879 66,146-11,463-19,313 64,953-13,869-19,088 76,914-10,596-9,947 82,009-9,604-3,462 78,105-5,958-4,217 86,398-8,697-4, ,488-8,509-5, ,503-8,157-5, ,277-12,429-5, ,818-13,581-4, ,402-13,515-5, ,312-11,635-4, ,173-10,917-4, ,210-11, ,322-11, ,755-9,892-7,436 平成 8 年 1996C.Y. 平成 9 年 1997C.Y. 平成 10 年 1998C.Y. 平成 11 年 1999C.Y. 平成 12 年 2000C.Y. 平成 13 年 2001C.Y. 平成 14 年 2002C.Y. 平成 15 年 2003C.Y. 平成 16 年 2004C.Y. 平成 17 年 2005C.Y. 平成 18 年 2006C.Y. 平成 19 年 2007C.Y. 平成 20 年 2008C.Y. 平成 21 年 2009C.Y. 平成 22 年 2010C.Y. 平成 23 年 2011C.Y. 平成 24 年 2012C.Y. 平成 25 年 2013C.Y.

金融収支 Financial account 直接投資証券投資金融派生商品 Direct investment Portfolio investment Financial derivatives(other than reserves) 72,72328,64837,0828, ,46725,910-41,4027, ,22622,14157,989-1, ,83010,60430,0223, ,75736,90038,4705, ,62937,00156,291-1, ,96824,331131,486-2, ,86029,643114,731-6, ,92835,789-23,403-2, ,44451,70310,7008, ,49470, ,961-2, ,77560,203-82,515-3, ,48289,243287,867-24, ,85957,294205,053-9, ,57862,511132,493-10, ,28493, ,255-13,470 49,15894,99932,2155, ,310130, ,83855,516 平成 8 年 1996C.Y. 平成 9 年 1997C.Y. 平成 10 年 1998C.Y. 平成 11 年 1999C.Y. 平成 12 年 2000C.Y. 平成 13 年 2001C.Y. 平成 14 年 2002C.Y. 平成 15 年 2003C.Y. 平成 16 年 2004C.Y. 平成 17 年 2005C.Y. 平成 18 年 2006C.Y. 平成 19 年 2007C.Y. 平成 20 年 2008C.Y. 平成 21 年 2009C.Y. 平成 22 年 2010C.Y. 平成 23 年 2011C.Y. 平成 24 年 2012C.Y. 平成 25 年 2013C.Y.

誤差脱漏 Net errors & omissions その他投資外貨準備 Other investmentReserve assets -40,44239,4241, ,1337,66041,645 67,118-9,9865,558 -1,06487,96320,184 15,68852,60918, ,17549,3644, ,18957,9691, ,728215,288-19, ,542172,675-30,879 68,45624,562-18, ,90337,196-37, ,36242,97419, ,06732,00149, ,26625,26530, ,92536,017 44,010137,89730, ,445-30,5153,126 14,27138,504-41,217 平成 8 年 1996C.Y. 平成 9 年 1997C.Y. 平成 10 年 1998C.Y. 平成 11 年 1999C.Y. 平成 12 年 2000C.Y. 平成 13 年 2001C.Y. 平成 14 年 2002C.Y. 平成 15 年 2003C.Y. 平成 16 年 2004C.Y. 平成 17 年 2005C.Y. 平成 18 年 2006C.Y. 平成 19 年 2007C.Y. 平成 20 年 2008C.Y. 平成 21 年 2009C.Y. 平成 22 年 2010C.Y. 平成 23 年 2011C.Y. 平成 24 年 2012C.Y. 平成 25 年 2013C.Y.

国際収支の発展段階説 ( Crowther ) 『通商白書』 2002 年

国際収支の発展段階説 ( Crowther )