食べ物と栄養 2013 年 10 月 22 日(火) 金子弥生 動物生態学④
講義内容 1.生息地とは 2.哺乳類の食性: ①食肉目 ②草食獣 3.食物の評価 4.栄養要求 5.栄養状態を表す指数
4. Food and nutrition 食べ物と栄養 野生動物の保護管理(保全、持続的利用、 管 理)に関連して求められる食べ物と栄養の 知識 希少種保全のために十分な餌があるか 持続的利用のために必要な餌資源は何か 害獣管理のために餌資源を減少させられ るか 餌の利用可能量と動物の栄養要求の関 係を明らかにする
生息地 (habitat) とは? 生物の生活場所 資源(食物、水、カバー)と環境条件(気温 、降水量、捕食者や競争相手の有無など)が 組み合わさって、ある種が生存し繁殖できる ようにする場所 (Morrison ら 1992) * カバー: その下で動物が隠れるもの。巣穴、樹洞など
生息地を制限する要因 食物 水 カバー 気温 降水(雪)量 競争相手 捕食者 動物にとって必要な資源 環境条件
動物 人間 (調査者) 生息地 生息地評価 個体群として の評価 生息地利用 様式の評価 野生動物調査 個体間関係、社会構造、生理的要因、個体数の制限要因 ホームレンジ なわばり 環境収容力
講義内容 1.生息地とは 2.哺乳類の食性: ①食肉目 ②草食獣 3.食物の評価 4.栄養要求 5.栄養状態を表す指数
哺乳類とは? 脊椎動物(背骨を持った動物)のうち、 - 体が毛で覆われている - 母乳で子育て - 特異な顎関節
哺乳類の特徴 体温調節 授乳 顎関節の変化にともなう顎筋肉の発達 → 食物を体内で燃やして体の中から温度調節(内温 性) メリット:気候変動(寒冷化)条件でも生き残れ た デメリット:体温維持のためのコストがかかる → 乳腺の発達により、未成熟な状態でも出産可能に メリット:生まれたばかりの子供の栄養を確保 デメリット:長い子育てにより、親に対する負 担が増加 → 複雑化した顎関節と歯の分化 メリット:利用可能な餌が変化してもすぐに対応できる 食事と呼吸を同時に行える デメリット:歯の特殊化が進みすぎて絶滅する種あり
爬虫類と哺乳類はどう異なるのか?
哺乳類の起源 古生代石炭紀(約三億年前): 爬虫類の中に単弓亜網(獣歯類)の 出現 ‐咀嚼機能 ‐顎関節
爬虫類 獣歯類 哺乳類 顎関節= 方形骨+関節骨 顎関節= 方形骨+関節 骨 と 鱗状骨+歯骨 を共存 顎関節= 鱗状骨+歯骨 方形骨+関節骨 → 耳小骨
顎関節= 鱗状骨+歯骨 方形骨+関節骨 → 耳 小骨 咀嚼機能の発達 歯の分化 聴覚の発達(3つの骨を 使った体内での音の増 幅) 頭部を地面から上方へひ きはなす
食肉目の進化の特徴 1. 肉食性への適応:効率よい栄養吸収 巨大な犬歯:獲物の脊髄の破壊、頸動 脈の切断や気管の圧迫 ネコ科、ハイエナ科 犬歯を支える咀嚼筋も発達 2.裂肉歯:肉の切断
サーベル タイガー Sumilodon (絶滅)
犬歯ネコ Hoplophoneus (絶滅)
食肉目の進化の特徴 3. 犬歯、裂肉歯と臼歯を共存 → 食物の栄養可能性にあわせて 雑食性にスイッチ → 臼歯を退化させたクレオドンとの 競争にも勝利 → さまざまな環境へ適応
食性の表し方 出現頻度(%) ・陸生生物の低い出 現 ・植物質の高い出現 ・ミミズの検出 ・人工物の検出無し 多摩川のニホンイ タチの食性 ( 、池 田ら)
スペシャリスト ジェネラリスト
アードウルフ アリ食に適応
草食獣の消化形態 消化戦略 草食獣(哺乳類の約 90 %)はほとんど消 化できないセルロースとヘミセルロース 消化する必要がある 小腸を長くする (例外 パンダ) 微生物の利用(バクテリア、菌類、原生 動物)して醗酵によってセルロースを消 化する
反芻動物 Ruminants (ウシ・ヒツジ・アンテロープ・シカ・ヌー・ラ クダなど) stion/herbivores/rumen_anat.html 植物を口で咀嚼 し、反芻胃 (ルーメン)に 送って部分的に 消化した後、再 び口に戻して咀 嚼する、という 過程を繰り返す ことで食物を消 化する。
ビデオ鑑賞(20分) BBC(英国)科学シリーズ 「ベルベットの前足」 哺乳類の進化と食肉目の歯の発達