保育者養成教育機関における模範 映像提示・練習映像提出を併用し たピアノ実技指導の実践 中平勝子（長岡技大） ○ 深見友紀子（京都女子大学） 赤羽美希（深見友紀子ミュージックラ ボ）

背景  ピアノ実技指導に対する様々な工夫 教員ではない他者（主に同グループの学生）からの 観察による問題発見・原因究明・解決（中島，２０ ０２） 練習カルテの活用（今泉，２００４） ↓ 対面授業を前提として，演奏者の長所・短所を 「他者」が確認 ↓ 演奏者本人が演奏の長所・短所を確認できない ↓ ピアノ実技を「自分で」訓練することは難しい

本実践の目的  ピアノ実技指導の改善 リアルタイム対面（同期）指導を補う 自身の演奏映像を「提出」させることを併用 「模範演奏」の提示を追加  「どう弾くべきか」を学習者が何度でも確認で きる ピアノ実技指導教育の新しい形 （教育の情報化の導入）

実践概要  実践場所・科目 京都女子大学発達教育学部児童学科 児童音楽Ｉ（２年次前期、保育士・幼稚園教諭免許取得必須科 目）  在学生が唯一履修することのできるピアノ実技科目 履修者：１０５名  実践時期 平成１９年７月  利用機器 フジノン株式会社製「ＫＳ２０（研修君）」 学習管理システムに模範演奏をアップロード 模範演奏をＤＶＤで配布

実践概要  授業構成 １週あたり連続２コマ（１８０分） 常勤教員１名＋ピアノ教師４名＋声楽教師１名 授業内容  声楽指導（集団レッスン）  ピアノ実技指導（グループ個人レッスン）  コードネーム・楽典の理解（講義 後半のみ）  試験（中間実技・期末筆記・期末実技）

実践概要  ピアノ実技課題楽曲 「子どものうた 200 」「続 子どものうた 200 」（チャイルド本社） 仏教系の保育園・幼稚園で日常的に歌ってい る曲 声楽授業で配布した弾き歌い曲

映像提出の方法  ＫＳ 20 （研修君）を 利用 映像録画は通常のビ デオデッキと同じ操 作 必要に応じて映像内に書き 込み可 Mpeg2 で録画， DVD へ焼 きつけ可能 映像ファイルをバー コードで管理できる 学生自身で簡単に映像提出できる データ管理が楽 → 教員の労力を少しでも減少させる 本実践用に，内視鏡技術を応用した 延長カメラを装着

実践概要 グループ個人レッ スン 通常、ピアノ実技 は非常勤もしくは 専任講師によるグ ループ個人レッス ン 自主訓練 学生は模範演奏を 視聴した後，自分 のピアノ演奏を撮 影し，教員に提出 実技試験 実技試験の曲目申 請は本人による

期末実技試験までの流れ  期末実技試験前の指示 試験方法に関するもの  中間実技試験以降に練習した曲の中から、３曲を試 験当日自己申告し，３曲から抽選で１曲を演奏 練習に関するもの  模範演奏の配信サイトの URL 連絡と模範演奏のＤＶ Ｄを２人に一枚配布 → 閲覧する様に．  練習した曲のピアノ演奏を自主的に、なるべく最低 １曲は録画・提出  期末実技試験実施時の注意 複数名の教員で採点，各得点を平均

実践結果  期末実技試験での採点 歌，ピアノ演奏の完成度 演奏姿勢，顔の表情 弾き歌いとしての完成度  映像提出状況によって実技能力の差は認められ たか？ 昨年度と違い，成績に反映させない． → 今年度は学 生の自主性を尊重 映像提出をするには練習が不可欠  模範演奏を視聴することで学生の演奏に変化が 見られたか？ 昨年度と違い，模範的なものを提示

実践結果（映像提出回数による考察）

実践結果（提出曲による考察） 曲名 平均点 （点） 標準 偏差 しゃぼん玉 とんぼのめがね あめふりくまのこ 思い出のアルバム もりのくまさん 犬のおまわりさん ぞうさん その他 元データが少ない ため，分析不可 情感的な曲 平均点が上記２つと比べ７点 以上高い 平易な曲

実践結果 映像提出 期末実技試験平均点 平易な曲情感豊かな曲 全く提出せず ６８．７７３．７ 課題曲以外を提出 ７０．７７６．３ 課題曲を提出 ７２．６８０．９ 平均点の伸びの差は２倍近く → 模範演奏から情感を感じ取った差か？

まとめ  映像提出を併用したピアノ実技指導は 期末実技試験にも良い影響を及ぼす  実技試験の平均点は映像提出回数に比例  映像提出を行ったものとそうでないものの間に は期末実技試験に大きな得点差  ＤＶＤなどによる模範演奏の視聴は 演奏の正確さにそれ程大きな影響はないと考 えられるが 情感を伝えるには良い手法であることが確認 された

実践結果 映像提出 （回） 録画人数 （人） 期末平均点 （点） 標準偏差 映像提出を全く行わない学生と １回でも行った学生とでは平均点 の伸びが違う ３回映像提出を行った学生は２タイプ に分かれる ・努力した学生 ・期末試験の点の悪さを予測した 映像提出回数と期末平均点 の相関係数０．６６ → 正の相関

実践結果（提出曲による考察）  収録曲とテスト時演奏曲が一致 平均７６．８点，標準偏差６．３５  収録曲とテスト時演奏曲が不一致 平均７３．２点，標準偏差７．３４ 平均点に３点以上の開き 標準偏差の値はほぼ同一 練習成果を収録・提出した 曲は，テスト時にも良い演奏 ができる