三環系抗うつ薬の OVER DOSE による 中毒症状 12 班: 永川敦士 佐々木結実 黒木悟郎 田邊隆哉 細木敬祐 指導: 倉増敦朗 先生
発表の流れ 1Case History と Introduction 2TCA の薬理作用と副作用 3TCA Over Dose による中毒症状 4TCA の代謝と動態 5TCA Over Dose の対処法
Case History と Introduction
患者 31 歳のうつ病女性 三環系抗うつ薬を一瓶(50 capsules )服用 しばらくして強直性間代性の痙攣を起こす。 Vital Signs 血圧 80/50mmHg 脈拍 130 beats/min. 呼吸 18 breaths/min. 体温 37.6 ℃ 血糖値 100mg/dl 酸素飽和度 99% 胃洗浄・活性炭の施行 心電図 QRS duration 延長を伴う洞性頻拍 炭酸水素ナトリウムの静注指示
TCA 中毒の現状 70 ~ 80 年代のアメリカでは急性薬物中毒で 入院する患者は、 TCA によるものが最多で、 薬物服用による死因としても TCA が最多と 報告されている。現在のアメリカでも 五大薬物中毒死の一つと言われている。 日本では明らかではないが、中毒症例のう ち amitriptyline が 15 位、 imipramine が 18 位で、 両者の合計が 2.8 %であり、幸いなことに 欧米より少ない。
TCA の薬理作用 と 副作用
TCA の作用 うつ病は、 NA やセロトニンなどのアミ ンと 密接な関係を持つと言われる。 三環系抗うつ薬( TCA )は、 NA やセロ トニンの再取り込みを行うアミントラ ンスポーターを阻害し、シナプス間隙 のアミン濃度を高める。
TCA の副作用 抗コリン作用口渇,目のかす み 尿閉,痴呆 H 1 受容体遮断鎮静,眠気 α 受容体遮断起立性低血圧 キニジン様作用不整脈 けいれん誘発
TCA Over Dose による 中毒症状
TCA の中毒症状 中枢神経症状けいれん 高体温 心的動揺・興奮状態 心毒性 QRS duration 延長 不整脈・頻拍・伝導障害 等の心症 状 その他低血圧呼吸低下 腸・膀胱麻痺
TCA 中毒による CNS 症状 昏睡、痙攣、 myoclonus (筋間代)など 典型的パターン: TCA 服用後まもなく興奮や情動不安 (ときに myoclonus 、強直性間代性発作や 筋失調症を伴う)の後、速やかに昏睡へと進 む。 用量が少ない場合は昏睡までいかない。 用量が多い場合に昏睡や発作へと進む。
TCA の CNS への毒性は ・抗コリン作用 ・中枢神経伝達物質の変化 によると言われている。
中枢伝達物質の変化 中枢神経伝達物質再取り込み阻害 抗コリン作用 ムスカリン性アセチルコリンレセプ ター遮断
TONIC-CLONIC SEIZURE 強直性間代性けいれんと意識消失 部分発作から引き続いておきる 失禁,唾液過剰分泌,舌を出す 脳全体の脳波に spike
けいれん TCA が GABA 受容体の Cl - チャネルを介し て Cl - の透過を阻害することでおきる。
TCA の種類によって Cl - チャネル阻害の程度は異なる。 阻害の程度が大きい薬物ほど、 けいれんをおこしやすい。
薬物濃度 E. Malatynska et al. 1988
けいれん発作を生じた患者 数
Cardiac arrythmias 不整脈 TCA 投与で大変問題になるのは、 TCA の副作用により、不整脈が発生し、 [ 死 ] へと繋がってしまうことである。
では何故? TCA の overdose で 不整脈が起こるのか?
まず、 cardiac arrythmias 不整脈 とは 「正常な拍動から逸脱した心筋の脱分 極」 的確な診断 と 理にかなった治療 が必要
不整脈の発生機序 1.Disturbances of impulse formation (興奮生成異常) 正常自動能の亢進あるいは低下 異常自動能の発生 2.Disturbances of impulse conduction (興奮伝導異常)
TCA の副作用のうち … ☆ Na + channel blocking 作用が 最も 不整脈に大きく関係する。
TCA の副作用 心筋に関わることでは 強力な☆ Na + channel blocking And other effects, 1. Ca 2+ channels inhibiting (phase 2) 2. slowing of the repolarization (phase 3) 3. slowing of spontaneous depolarization (phase 4 )
こいつを、 block ! 静止電位 = 細胞の外側から内側へ急速に Na イオンが流入し活動電位を形成している. ( Na 電流=赤い部分) TCA の副作用により、 Na 電流が block される( phase 0 ) 。 強力な☆ Na + channel blocking Purkinje fiber の活動電位 phase 0
Purkinje fiber の活動電位 And other effects, 2 伝導系細胞に興奮伝導異常が 起こりやすくなり、不整脈が生じやすくなる。 静止電位 = ( TCA の副作用として) phase3&4 を遅くする ( TCA の副作用として) 特に phase 2 に大きく 関わる Ca 2+ channels inhibiting
TCA を過剰に服用した場合 最も特徴的な変化 → QRS durati onの延長 (持続時間)
QRS duration とは?
TCA を過剰に服用すると ⇔ この時間が延長する
QRS 延長の原因 1心室内における伝導遅延 2不連続的に起こる bundle branch block
↑ ↑↑ 心室内の伝導遅延 ← bundle branch block
なぜ QRS durationの延 長が重要か? ← 「 QRS 持続時間が延長すること」 自体は無害ではあるが …
TCA を過剰に服用した場合 様々な副作用 → 患者は危険な状態 どれほど危険な状態にあるのかを調べるため の「指標」が必要
指標 患者の副作用を、予測するためには 1.TCA 又はその代謝産物の 「血中濃度」を調べる 2.QRS duration を調べる → 1は、あてにならない。 → 2の方が重要!!!
QRS 持続時間 QRS 持続時間(正常 : s )が延長し ていくと、 TCA の一般的な副作用が現 れるが、特に …
・ QRS 持続時間 > 0.16s ventricular arrhythmias ・ QRS 持続時間 > 0.10s 中枢神経系の異常 seizure
TCA 副作用 洞性頻拍 (それほど重要ではない) 抗コリン作用と カテコールアミン 再取り込み阻害 Na + channel blocking (伝導遅延)とリエントリー 心室性不整脈 (心室性頻拍が一般的) ⇒ QRS duration が重要!
心室性頻拍は重篤な低血圧を伴いやすく、 この二つを放置すると ↓ 心室細動に移行 ↓ 心臓急死 cardiac sudden death
TCA の代謝と動態
肝臓で代謝脱メチル化= CH 3 基解離 Hydroxylation = OH 基付加 血液・組織中にジメチル化・ OH 化された 様々な代謝物が混在。これらも毒性を示す。 例: ラット体内のイミプラミン代謝・動態 IMI → DMI → diDMI ↓ ↓ 2-OH-IMI 2-OH-DMI 肝臓で IMI は素早くに DMI に変化 血中代謝物 DMI : 98% IMI :~ 2% 2-OH-DMI 2-OH-IMI diDMI は極僅か (DeVane et al. 1984)
Imipramine (IMI) Desipramine (DMI) Amitriptyline (AMI) Lidocaine H+↓H+↓ ↑H+↑H+ ↑ OH ↓ ジメチル化 ↓
組織親和性が高い 薬物の脳内濃度は血中濃度の 20 倍 血中濃度は指数関数的に減少 半減期 IMI : 2.5h DMI : 30h 組織から薬物が移行し、除去に時間を要す る。 尿中排泄はグルクロン酸抱合と、 (特に) OH 化で加速される。 代謝無しの尿中・胆汁中排泄は僅か。
(nmol / l) 服用後経過時間 (hour) (L. Gram et al. 1983) DMI ▼ ↓ ← IMI ■ 2OHDMI ← ▽ ↑ 2OHIMI □
TCA Over Dose の対処法
TCA 中毒の治療薬 NaHCO 3 が殆どの場面で使用される 心毒性を緩和する QRS duration 延長 心室性不整脈 E-C Coupling 不全 けいれん・頻拍に対する効果は不明 NaHCO 3 の作用機序?
有効因子は Na + ? HCO 3 - ?
犬 : AMI で心室性不整脈を起こす。 静注物効果 NaHCO 3 不整脈 頻度減少 正常拍動 持続時間延長 QRS prolongation 緩和 高張食塩水有意な変化無し 解毒効果は CO 2 分圧上昇か ? pH 上昇か ? → HyperVentilation ( CO 2 分圧低下・ pH 上 昇) pH 不整脈発生率 100% 50% 0% → pH 上昇が毒性緩和 (S. Nattel et al. 1984)
NaHCO 3 の微視的効果 プルキンエ束:犬の心臓より切り採る。 → Tyrode 液のみ、または Tyrode 液+高濃度 Amitriptyline に浸す。 → 電極で刺激して膜電位の時間変化を観測。 低 CO 2 Tyrode 液、 NaCl 、 NaHCO 3 を添加 → 活動電位 上昇 ( 収縮力増強・ APD 延長 ) ΔV/Δt 増加 ( 伝導速度上昇・ QRS 短 く ) (B. Sasyniuk et al. 1984)
Low CO 2 = High pH
(B. Sasyniuk et al. 1984) ΔtΔt ΔVΔV Action Potential
Na + と pH 上昇の両方が効く。 [Na + ] 上昇 → イオン濃度勾配増大 → unblocked channel の Na + 電流増大 pH 上昇 → TCA の channel block を阻止( ? ) 事実 Lidocaine ion 型 = channel blocking ( Lidocaine 非 ion 型はブロックしない。 麻酔効果は pH に依存する。) 仮定 TCA ion 型 = channel blocking (?) TCA はアミンで pH 低下で ion 型増、 pH 上昇で ion 型減 → block し難い。
Over Dosed 患者の対処法 胃洗浄・活性炭の服用 = 固形・水溶 TCA の回収 意識障害のある者では気道確保 心電図を観察 = QRS duration は重要な指標 血中ガス濃度の監視 けいれん・興奮状態を示す者は体温測定 _ 重症者には NaHCO 3 を静脈注射