Ⅰ.自動車の進化とその意義 1.自動車はどうやって生まれてきたか 2.自動車はどのように進化してきたか 3.自動車の意義と功罪
キュニョーの砲車 1769年 ★ 自動車第 1 号は フランス ルイ 14 世軍のジョセフ・キュニョー作 ★ イギリスで蒸気機関の原理が発明されて間もない 1769 年 ★ 砲車をけん引するために作った巨大な蒸気車 ★ 時速 5~6 キロで走ったといわれる。 フランス革命(1789)以前に最初の自動車があったのは驚きである 最初の自動車は?
キュニョーの蒸気自動車 構造図 大きなボイラ-をフロントに備えた前輪駆動(FF) 前輪荷重が重く、操縦性はかなり悪かった。 駆動方式は?
少しさかのぼると
Leonard da Vinci スケッチだけで 製作はされなかったらしい 動力は? ゼンマイ 最初のアイデアは15世紀?
実際に ゼンマイ自動車を作った人もいた 1665年にドイツの時計職人 ステファンが作ったゼンマイ 自動車 時速1.5kmで走り、15分?ごとにハンドルを回してネ ジを巻いた
もっと楽なものを その欠点は? 16世紀に オランダで作られた 風力推進車 風が吹かないと走れない 向かい風では走れない
横風でも走れる? 風力推進車 横方向からの風でも走れるように、羽根車で風を受け、ギア (歯車) で車輪に力を伝える構造 うまく走ることはできただろうか? 風の変換効率が低いので、 まともには走れなかった
全方向の風で走れる 風力推進車 垂直な風車に風を受け車輪に伝える 走行速度が遅くて実用にはならなかった ここで 一言 「人間は努力する生物である」
蒸気自動車の時代 18世紀~20世紀初め
初期の蒸気自動車 Trevithick's London Steam Carriage of 1803
初期の蒸気自動車 ・重量 2.5トンもあった三輪蒸気自動車 ・運転者が前に乗り、後ろにはボイラーマン付き
恐怖の蒸気自動車時代 1829年 ガーニー製 蒸気自動車列車 蒸気ボイラーが爆発しやすく 死者約1万人、負傷者1万7000人 何が恐怖だったのか?? ⇒ そこで、牽引車と客車とを分離した
オットーサイクルエンジン 内燃機関自動車の誕生 (1876 )
ダイムラー モーターサイクル 1885 本格的自動車の誕生 (内燃機関付き自動車) ・ベルトによる後輪駆 動 ・サスペンションなし ・排気量 264 cc ・最高速 12 km/h
ベンツ三輪自動車 世界最初のガソリン・エンジン自動車 1885年 (複製 交通博物館 蔵) ・排気量 984cc ・最高速度 16km / h ・車両重量 263 kgf
ベンツ三輪自動車のメカニズム 1885年 ・排気量 984 cc (ボアxストローク : 91.4 x 150 mm ) ・最大出力 0.9 馬力( 0.7KW )/ 400rpm ・むき出しのクランクシャフト ・大きな縦置きフライホイール ・ベベルギアで動力を直交変換 ・斜め掛けベルトで動力伝達
Ⅰ.自動車の進化とその意義 1.自動車はどうやって生まれてきたか 2.自動車はどのように進化してきたか 3.自動車の意義と功罪
自動車の黎明期には 様々なタイプが混在した ・蒸気自動車 ・電気自動車 ・内燃機関自動車
19世紀後半までは自動車の主流は蒸気自動車だった 下記のうちのどれでしょうか? □ 性能がガソリン車に負けていた □ ボイラーの水垢取りがたいへん □ スタートするまで時間がかかる □ 燃料の入手が難しい □ 重量が重くて原動機が大きい □ 騒音が大きい ○ 排気ガスが少なく クリーン ○ 変速機が不要で運転が容易 参考:蒸気自動車がガソリン車より優れていた点 レ Q. その後、蒸気自動車が衰退してしまった最大の理由は何か?
電気自動車も数多く作られていた ~1900年ごろのチラシ Q. なぜ電気自動車はガソリン車に負けたか? ① 航続距離が短い ② 充電に時間がかかる
自動車の速度記録 蒸気自動車 電気自動車 ガソリン車 km/h キューニョ トレビシック スタンレー T型フォードが生まれた頃は 蒸気自動車、電気自動車のほうが ガソリン車よりも高性能だった
1895年アメリカ 保有台数 3700台 蒸気自動車 2900台 電気自動車 500台 ガソリン自動車 300台 ※ 1900年 電気自動車 生産 4000台 (シェア 40%) なぜ ガソリンエンジンが勝ち残ったのか? 【長所】 ○ 後続距離が比較的長い ○ 始動が短時間 ○ 整備メンテナンス容易 (良質の水不要) 【短所】 × 振動・騒音 × 排気ガス × 発進・変速装置必要 △ 運転操作が複雑 主な理由 ★ 質の悪い水でも走れる ★ アメリカ(テキサス州)での油田発見 ★ 航続距離が長い
T型フォード 1908 ヘンリーフォード 1863 ~ 1947 総販売台数 1,500 万台 自動車を大衆化させた フォード 自動車の普及にフォードが果たした役割は極めて大きい
アメリカにおける自動車販売台数の推移 ★ 一般労働者でも買える価格とすることで、爆発的に販売台数が伸びた。 ⇒ 車が「金持ち」のものから、「大衆」のものになった
T型フォードがもたらしたもの: 階層社会 大量消費(使い捨 て) 環境問題 大量生産の発達は、単に自動車を一般大衆に広めただけでなく 階層社会から民主社会への転換の契機ともなった。 しかし同時に 大量生産は、資源問題、環境問題の要因にも・・・ あらゆるものが「正」の側面と「負」の側面の両面を持っている 大量生産方式の開発⇒消費財の大衆化 民主社会 への転換
Ⅰ.自動車の進化とその意義 1.自動車はどうやって生まれてきたか 2.自動車はどのように進化してきたか 3.自動車の意義と功罪
自動車の意義 (プラスの面) 個人 社会 移動が容易移動が容易 交際範囲が拡がる 行動範囲が拡大 快適に移動でき る 友人・家族との 和 運転が楽し い モータースポー ツ 技術が必要 豊かな生活豊かな生活 社会資本整備 物流が活性化 産業が発達 技術が進化 都市が発達 経済が向上 豊かな社会豊かな社会
GDPの8% :40兆円を生み 出す 出典: 日本自動車工業会『 2003 日本の自動車工業』 輸送機械が日本の産業を牽引 自動車は基幹産業である 【日 本】 中国・インドなど、国策として自 動車産業を振興する国家が多い。 道路・運送業などの関連を含めればさらに大きい
順位国名 GDP 人口 兆円万人 1 米国 1, ,650 2 日本 ,796 3 ドイツ ,249 4 中国 ,450 5 英国 ,020 6 フランス ,074 7 イタリア ,747 8 スペイン ,339 9 カナダ , ブラジル ,640 世界各国の GDP総額と 自動車企業 売上額との位置づけ 順位国名 GDP 人口 兆円万人 27 南アフリカ , ギリシャ , TOYOTA 24.0 [29] 30 アイルランド イラン , フィリピン , アラブ首長国連 邦 HONDA 11.1 [15] 53 エジプト , ウクライナ 9.4 4, 自動車企業の連結売上額は、途上国のGDPを超 える □ トヨタ 世界 GDPの 30 位相当 □ ホンダ 〃 〃 50 位相当 ちなみに HGTの研究開発費は 栃木県全体の予算に近い
自動車の功罪 負の部分 個人 社会 大気汚染大気汚染 交通事故交通事故 資源消費資源消費 金の心配 燃料代の負担 維持費がかかる車両代の負担 事故・怪我の心配 騒音がある ストレスストレス 健康を害す る 社会資本整備 交通事故 交通渋滞 温暖化 環境問題 社会の負担社会の負担 資源問題
キュニョーの蒸気自動車 自動車第一号は同時に 交通事故第一号 でもあった 自動車の歴史は同時に事故との闘いの歴史 その理由は、 フロントが重く操縦性が悪い ⇒曲がらない、止まらない
■ 蒸気自動車の速度を規制 郊外で時速 8km 、 市内で時速 3.2km ■ 乗客の乗車を禁止 荷物のみの運搬 多くの道路橋の横断禁止 ■ 乗務員が自動車の前を歩き 赤旗を振って危険を周知させることを義務付け 【赤旗法】 イギリス 1865 年制定 この法律が英国の自動車の発達を 30年ほど遅らせることになった
シボレー コルベア ● リアへヴィー、かつ スウィングアクスルのジャッキング現象 から ファイナル・オーバーステアとなり、転覆しやすかった。 ● 燃料タンク設計に欠陥があって追突されるとすぐ炎上 ● 「市場最悪の欠陥車」と言われた。 ⇒ リコール制度のきっ かけ リアエンジンリアドライブ 水平対向6気筒 2300cc リアサス:スウィングアクスル 1960 - 66 洗練されたデザインで好まれたが・・・ 欠陥車問題 ⇒ PL法 (製造物責任)
途中省略 世界の自動車事故死者数 (年間) 全世界 117万人 (WHO) 中国 10.7 万人 インド 9 万人 アメリカ 4.2 万人 ロシア 3.5 万人 南アフリカ 1.2 万人 交通戦争と呼ぶに相応しい人数だが、 利便性が高いことと、故意性が低いことから是認されている WHO によれば、 ・死亡 117 万人( 2004 ) 負傷 5000 万人 ・2020には 健康阻害要因 の 3位となる
CO2 排出のカテゴリー別要因 運輸は約20%だが 削減努力は必要
自動車の効罪 プラス マイナス 我々の役割は プラスを増やし マイナスを減らすこと 社会 個人 事故 維持費用 燃料代 温暖化 排気ガス 渋滞 騒音 環境問題 ストレス スポーツ 交際範囲 快適 楽しい 便利 インフラ整備 経済の発達 都市発達 技術進化
■ ニーズが進化を促す ■ 周囲の環境が技術の優劣を決める ■ 人間は努力する生き物である ■ 知恵と工夫と情報の共有がキー 自動車が進化する要因は・・・ 「Ⅰ. 自動車の進化とその意義」 マトメ 自動車には「功」と「罪」がある・・・ ■ 「功」を高め、「罪」を減らすことが技術 者の責務
「Ⅰ. 自動車の進化」で、皆さんに感じていただきたいことは 1.人間は努力する生き物である。 ・ 自動車がここまで進化したのには、先人たちの絶え間ない工夫と努力の賜物です。 有名なキュニョー大尉や、ダイムラー、ベンツ以外にも、無名なたくさんの人々 の努力の総合的な結果です。 ・ ニーズを的確に捉え、絶えざる向上を心がけることが大切です。 2.技術進化には「社会ニーズ」と「環境への適合」が大切である。 ・ 自動車の黎明期には、蒸気、電気、内燃機関などいろんなタイプが混在したが、 20世紀の環境にもっとも適合したガソリン機関付自動車が勝ち残った。 → 21世紀に同じことが言えるとは限らない。 ・ 消費者ニーズ、社会の要請は時代とともに変化する。 → 感度高く対応できるものが生き延び、そうでないものは絶滅する。 3. 自動車には個人レベル、社会レベル 双方での 「功罪」が入り混じっている。 ・ 自動車の発達は、現代文明や社会システムの形成に大きな役割を果たしてきた。 ・・・それが、各国々が自動車産業を重視する動機である。 ・ 自動車の「功」を伸ばし、「罪」を無くす(減らす)ことが技術者の責務である。 ・・・この為に、あらゆる努力をし続けることが重要である。