準備書面 (20),(24),(25) の概要 主に島崎氏の学会発表と熊本地震について 平成28年6月8日 1.

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準備書面 (20),(24),(25) の概要 主に島崎氏の学会発表と熊本地震について 平成28年6月8日 1

島崎邦彦氏の経歴 地震学、東京大学名誉教授 日本地震学会、日本活断層学会所属 1970 年 東京大学大学院地球物理学専攻修士課程修了 同年 東京大学地震研究所助手 1974 年 理学博士(東京大学) 同年 カリフォルニア工科大学研究員 1980 年 東京大学地震研究所助教授 1989 年 東京大学地震研究所教授 2006 年 日本地震学会会長 2009 年 地震予知連絡会会長 2012 年 原子力規制委員会委員(委員長代理) 2014 年 同委員退任 ほかに、地震調査研究推進本部地震調査委員会委員、 同長期評価部会部会長、 地震防災対策強化地域判定会委員、 交通政策審議会委員、同気象分科会会長、 中央防災会議専門委員、 日本活断層学会会長、 震災予防協会理事などを歴任 2

島崎氏の学会発表 3 ・2015年5月 日本地球惑星科学連 合大会 ・ 同年10月 日本地震学会秋季大会 ・同年11月 日本活断層学会秋季学術 大会 ・2016年5月 日本地球惑星科学連 合大会 ほぼ同じ内容で4度にわたり学会発表

島崎氏の学会発表内容 (1) 断層の長さL( m )から地震モーメントMo( Nm )を求める4つの関係 式を比較 「分かりやすさを重視して表現」 「(4)と他との差は顕著で、推定される地震モーメントの値は、ほかに比べて著し く小さい」 T YM ERC IM 4

島崎氏の学会発表の内容 (2) 1891 年 濃尾地震 1930 年 北伊豆地震 2011 年 福島県浜通 り 1927 年 北丹後地震 1943 年 鳥取地震 1945 年 三河地震 1995 年 兵庫県南部地 震 観測記録 入倉・三 宅 (2001) 0.29倍 0.5倍 0.26倍 0.27倍 1.9倍 0.46倍 平均0.35倍の過小評価、実測値を過小評価する割合:6 / 7 ケース 傾斜角 60 ° 傾斜角 30 ° 5

島崎氏の学会発表の内容 (3) 日本地球惑星科学合 2016 年大会 静的変形の実測値が、入倉・三宅式を用いた断層モデル で説明可能かどうかを調べた。測量によって地震時の静的 変形が観測されている 1927 年北丹後地震、 1930 年北伊豆地 震、 1943 年鳥取地震について、既存の断層面積の推定値 ( Abe, 1978; Kanamori, 1973 )から、入倉・三宅式を用いて 平均的なずれの量を求め、これから推定される変形が実測 値と調和的かどうかを検討した。その結果、入倉・三宅式 では実測値の 1/4 以下の変形しか説明できないことがわ かった。以上から、次のように結論することができる。 日本の上部地殻を断ち切るような高角の断層で発生する 大地震の地震モーメントの推定には入倉・三宅式を用いる べきではない。 ・断層面積の推定値から変形を推定 する場合、入倉・三宅式では 実測値の1/4以下の過小評価 ・高角の断層の地震モーメントの推 定には入倉・三宅式を用いるべきで ないと断言! 6

島崎氏の発表の射程 (1) ・島崎氏が入倉・三宅 (2001) を変形するために仮定した条 件 地震発生層:厚さ14km 断層傾斜角:垂直 (傾斜角60度の場合は係数1.09⇒1.45) ・ FO-A ~ FO-B ~熊川断層の条件 地震発生層:厚さ15km 断層傾斜角:垂直 (「不確かさの考慮」で傾斜角75度) 双方の条件は ほぼ同じ。 島崎氏の指摘の 射程が及ぶのは 明白。 西日本の断層で標準的ケース 7

島崎氏の発表の射程 (2) 島崎氏の裁判所宛ての陳述書 島崎氏は、規制員会の元委員 (地震、津波等担当)として、 一審被告の言う「詳細な調査等」 がどのようなものか熟知している。 その島崎氏が、「詳細な調査等」を しても過小評価の可能性は変わら ないと明言している。 規制委員会の元委員という立場を 押して、御庁宛ての陳述書を作成 した意味を、感じ取っていただきたい。 8

推本のレシピ 松田式 入倉・三宅式 レシピでは、 松田式と 入倉・三宅式を 併記。 「詳細な調査」を すれば 松田式を排除 するという 記述はない。 9

熊本地震の衝撃 崩落した阿蘇大橋(左) と 南阿蘇村の道路(上) 10

熊本地震の衝撃 ・ほぼ同じ場所で立て続けに震度7 ・前震に耐えた建物が本震で倒壊す るケース多数 ・新耐震基準を満たす建物でも倒 壊多数 11

熊本地震の衝撃 4月14日のM6.5の地震(前震)での益城観測点 地中観測記録 237ガル(NS方 向) ↪ これを2倍した簡易はぎとり波 470ガル 震源近傍では 1,000ガルを 超えていた 可能性が高い! 12

熊本地震の衝撃 益城観測点の地下地震観測記録(南北方向237ガル) (M6.5,Xeq=約13km)を2倍化して得られる はぎとり波応答スペクトル(約470ガル)は, 川内原発の市来断層帯市来区間(M7.2,Xeq=14.29km) の耐専スペクトル(内陸補正なし)(約460ガル)とほぼ等しい 一審被告が「信頼性が高い」と評価する耐専スペクトルでさえも, ばらつきはかなり大きい 13

大飯原発の立地条件 【 H 大飯発電所 地震動評価につい て】 大飯原発の数km以内には、長さ60㎞を超える FO-A~FO-B~熊川断層や、孤立した短い断 層であるFC-C断層がある NRC(米国)の基準であれば、大飯原発は立 地不適(原子力基本法2条=国際基準を要求) 「応答スペクトルに基づく手法」を補助的にしか行 わないのであれば、せめて「断層モデル」でも「修 正レシピ」により松田式を適用すべき 新潟―神戸歪み集中帯に立地し、地域性として も地震のリスクは相対的に高い 現在の基準地震動(最大856ガル)では明ら かに過小評価 14