学校選択制における教育改革 c 杉田雅実
なぜ学校選択制が必要? 生徒・保護者の選択の幅を広げるため 特色ある学校・魅力ある学校作り 教員の意識改革 生徒・保護者にも学校の運営責任を持っ てもらう
学校選択制が始まった背景 1997 年 文部省 「通学地域制度の弾力的運用について」 ① 地域の実情に即し、保護者の意向に十分配慮した 多様な工夫 ② 指定校変更の際、地理的、身体的、いじめの対応 以外の場合でも生徒の具体的な事情に則して、保 護者の申し立てによって認めることができる ③ 保護者に適切な情報を提供すること、就学につい て相談できるようにすること ⇒指定校変更制の運用の弾力化、学校選択制の導入
指定校制度 地方自治体は複数の学区に分け、住民票 の住所に基づき、就学すべき学校を生徒 1 人につき、1校指定する制度 原則的に変更不可 生徒・保護者にやむを得ない理由がある 場合に限り、申請によって指定校を変更 できる いじめ、病気、兄弟が別々の学校になる な ど
日本の学校選択制 自由選択制 – 当該市町村のすべての学校のうち希望する学 校に就学を認める 近隣区域選択制 – 従来の学区は残したままで隣接する学校区域 の希望する学校に就学を認めるもの ブロック選択制 – 当該市町村内をブロックに分け、そのブロッ ク内の希望する学校に就学を認めるもの
日本の学校選択制 特認校制 – 従来の学区は残したままで、特定の学校につ いて学区に関係なく当該市町村のどこからで も就学を認めるもの 特定地域選択制 – 従来の学区は残したままで特定の地域に居住 する者について、学校選択を認める
学校選択制の実施数 2005 年 3 月文部科学省
東京都における学校選択制 ~特徴~ ・地元の学校に通う権利が保証 ・希望が出せるのは1校のみ ・ 1 クラスの上限は 40 人 ・定員を超えた場合は公開の場で抽選 ※抽選に外れても補欠合格もある
東京都における学校選択制 ~各自治体の取り組み~ ・説明会や授業公開による情報提供 ・ホームページでPR ・合同説明会 ・各学校の紹介パンフレットを作成
アンケートによる評価 制度自体には生徒・保護者の 6 ~ 8 割が肯 定的 利用率 15 %~ 30 % – 中学校の方が小学校より利用されている 理由 – 通学距離や交通の便 – 小学校の友人と同じ所に行きたい – 部活動(中学校のみ) – 校風・伝統、学校行事、学校の評判なども
問題点 キャパシティの問題 学校間の人数の偏り 戦略的選択行動 受け入れ枠の問題 地域の一体感の喪失
キャパシティの問題 キャパシティの多い区 – 少子化で教室が余っている – 私立校の充実 (区によっては生徒の約半分が私立という結果 も) キャパシティの少ない区 – 人口増加 – 学校の統廃合 → 第2.3希望を聞くことで改善 選択の自由 VSVS 学校間の人数の偏りの是正
学校間の人数の偏り キャパシティのある学校は設定人数を超 えて受け入れる 2008 年 10 月 22 日『毎日新聞』朝刊一面 「学校選択制で格差」 2008 年春の各校の入学率 8.1 %~ % 人数が少ないことによる弊害 人数を厳格にすることは「選択の自由」 を制限してしまう
その他の問題 戦略的選択行動 – 第1希望しか書けないので、第1希望が人気 校の場合、第2.3希望を書く 受け入れ枠の問題 地域との一体感の喪失 – 学校選択制導入前後の自治体参加率はそれほ ど変化が見られない – 客観的なデータがない
アメリカの学校選択制 1955 年 経済学者ミルトン・フリードマ ン 「教育バウチャー制度」の提唱 「もし親が子どもを公立学校に通わせない のならば、その代わりに授業料クーポン を発行し、他の私立学校で教育費用とし て使用できるようにするべきだ」
多様な学校選択制 公立学校 – 公立学校選択制(オープンエンロールメン ト) – チャータースクール – 落ちこぼれ防止法による学校選択 私立学校 – バウチャー制度 – タックス・クレジット
公立学校 オープン・エンロールメント – 従来の学区外の公立学校を選択できる制度 チャータースクール – 特別認可をもとに開設された公立学校 – 誰でも申請可能、学区・教育委員会の方針から自 由、通学区域を持たない 落ちこぼれ防止法による学校選択 – 2年連続で学力目標を達成できなかった生徒には 別の公立学校に転入する権利を認めなければなら ない
私立学校 バウチャー制度 – 主に貧困家庭の子どもや障害者に対して教育 バウチャーと呼ばれるクーポン券を配布する ことで私立学校の就学の学費を州が支援する 制度 タックス・クレジット – 民間組織や個人が私立学校就学支援を行って いる民間財団に寄付した際に、寄付金額を税 控除の対象にする政策
ボストンの事例 1974 年 強制バス通学 公立小中学校における各人種の生徒数の均 衡を保つために特定の学校に入学させ、無料 でバスを提供 1987 年 強制バス通学の緩和 ⇒学校選択制へ 1999 ~ 2005 年 「ボストン公立学校方 式」
ボストン公立学校方式 生徒の学校の選好順位 学校の生徒の選好順位 学校の定員 しかし … 第1希望が人気校の場合、通らない可 能性が大きいので、第2希望の学校を第 1希望に ⇒より柔軟な新制度へ移行 に基づいて中央集 権的に割り当てる
政策提言 公立学校だけではなく、 私立学校も視野に入れた学校選択制 ⇒ バウチャー制度の導入 多様な学校選択制の導入
バウチャー制度の利点 政府や自治体が認定した機関でしか利用 できない 必要性を認められた個人にのみ支給され るという制限を加えられる 利用者の選択権が確保でき、競争によっ てサービスも良くなる
不登校生徒対策 バウチャー制度を不登校の生徒に適応 不登校生徒のための教育費用は活用さ れずに、学校に回っている (新たに費用がかからない) それを本人もしくは保護者に回す ⇒フリースクールなどに通うきっかけ に
経済状況による教育格差の是正 首都圏の6人に1人は中学受験 しかし … 費用がかかる ! 例)受験対策(塾)200万円 入学金 平均 25 万円 寄付金・施設負担費 14 万円 授業料 60 万円 / 年 ⇒中学受験 + 中学 3 年間の合計 410 万円 !!!!!
まとめ 少子化の現在、子ども1人1人に 質の高い教育を受けさせることが できるようにするべき ! 多様化する価値観に合わせた 学校作りが必要 !
~論点~ 学校選択制の是非について バウチャー制度の導入について
参考文献・資料 安田洋祐『学校選択制のデザイン』 2010 年NTT出版 教育バウチャー制度について her1.html her1.html All About 毎日新聞データベース