乱れた磁場中を運動する 相対論的粒子からの放射 宇宙進化グループ 寺木悠人. 目次 1、本研究のモチベーション 2、モデルと定式化 3、計算結果 4、議論 5、まとめ.

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乱れた磁場中を運動する 相対論的粒子からの放射 宇宙進化グループ 寺木悠人

目次 1、本研究のモチベーション 2、モデルと定式化 3、計算結果 4、議論 5、まとめ

本研究は「ガンマ線バースト」という天体の 放射メカニズムの解明を目的としたものである。 ガンマ線バーストとは? では 20~600keV 光子のカウントレート 秒 時間 ( 秒 ) 残光 X 線、可視光、電 波 即時放射 ガンマ線: ~ 250keV 継続時間: BATSE catalog より 宇宙論的距離( Gpc :100 億光年のスケール)で起こる 宇宙で最も明るい爆発現象( : 太陽の 倍 )

ガンマ線バーストの標準的な描像 即時放射(ガンマ線バース ト) 残光 (X線、可視光、 電波) 即時放射も残光も衝撃波で エネルギーを解放し、 シンクロトロン放射で光って いる と考えられている。

即時放射のスペクトル Briggs et al 1999 光子エネルギー (MeV) 光子数 N (E) 0.011100 観測結果

低エネルギー側のべき指数 の分布 Kaneko et al 2006 BATSE シンクロトロン放射モデ ル ではスペクトルを 再現できない ガンマ線バーストが 多数存在する!!

衝撃波面近傍で起こるプラズマ不安定 ワイベル不安定性 に注目 衝撃波面 乱れた磁場 が発生 PIC シミュレーション by Sironi & Spitkovsky

乱れた磁場中を運動する電子からの放射は シンクロトロン放射か? 粒子が相対論的運動を していると、放射の方向は 運動方向に集中する。 E(t) t 観測者は放射がパルス状に 見える この放射の時間変動を フーリエ変換することで シンクロトロン放射の スペクトルが得られる。 の距離以上ジャイロ運動で きるか シンクロトロン放射と見なせるかどうかは シンクロトロンの描像 がひとつの指標となる。 ・

この距離と磁場の乱れのスケール との比を見積もってみると・・・ ワイベル不安定性の最大成長波長は線形解析すると、スキンデプス 程度。 比例係数を として、最大成長波長を 微妙である。シンクロトロン 放射 ではなくなり、スペクトルの 形が 変わる可能性がある。これは 詳しく調べる必要があ る! PIC シミュレーションの結果より が典型的な値とされている。 この値を用いて見積もると プラズマ振動数 シェルの相対運動のローレンツ因子 衝撃波面静止系でのワイベル不安定 を起こす電子のローレンツ因子 と書く。 ただしここで シンクロトロン放射 ジッター放射

モデルと定式化 (1) 乱れた磁場 磁場は乱れた磁場のみを考え、 3次元等方のコルモゴロフ乱流型とする。 最大波長と との比 でパラメータ を定義する。 放射を特徴付ける

モデルと定式化 (2) 運動と放射スペクトル 用意した磁場の中に電子群(粒子数 30~80) を注入し、 運動方程式を解く。電子のローレンツ因子は 10 とした。 得られた加速度から、リエナール=ヴィーヒェルト ポテンシャルを用いて直接的に放射スペクトルを計算 観測者方向の単位ベクトル遅延時間 例: =3 、 =5 の 場合

結果 (1) δ = =50 は乱れた磁場の最大波長がラーモア半径の 5 倍の場合に対応。 この場合はシンクロトロン放射のスペクトルと ほぼ一致。 緑の破線はシンクロトロン放射のスペクトルの解析解。 で規格化。 低振動数領域で 光子数スペクトルに 直すと デスラインの値

結果 (2) δ = =5 低振動数側にブレイクが現れ、それより下の振動数領域 では、シンクロトロン放射より ハード になっている。 高振動数側も シンクロトロン放射 スペクトルからずれる。 ブレイ ク

結果 (3) δ = =3 ガンマ線バーストの観測結果 の ような二つのべき型をつない だ ような形になる。 そして低振動数側は シンクロトロン放射よりも ハードなスペクトルとなって いる。 ! つまり、自然に ”Line of Death” よりも ハードな低振動数側のスペクトルが達成され た 。 だった。 ガンマ線バーストは衝撃波で達成される の値

議論:なぜハードになったのか の場合に、スペクトル指数はどのように決まっているか。 ・ある程度の時間でビーミングコーンが視線方向からはずれ、見えな くなる。 ・運動方向と視線方向の間の角度 について拡散近似を用いると、 時刻 t に である確率は 放射が時間 t 見え続ける確率が に比例する。 になると考えられる。 この間、観測者は見えている 観測者

まとめ 乱れた磁場中を運動する電子からの放射スペクトル を 第一原理的に 調べた。 放射スペクトルを特徴付ける の値はガンマ線 バーストではオーダー1( )が 予想される。 その結果従来のシンクロトロン放射モデルで説明で きなかった のガンマ線バース トのスペクトルの説明ができた。 しかし、 よりハードなガンマ線バースト も存在する。これらの説明については今後の課題と する。 がこの範囲の場合のスペクトルを 初めて明らかにした。

おわり ご清聴ありがとうございました。

様々な δ の場合のスペクトルの形

における 放射公式 被積分関数の位相は の時位相はほぼ一定と見なせ、放射は によらなくなる。 と考えると、 つまり、スペクトルの低振動数領域と同じ。

θ L_rad L_0 L_rad L_0 直線近似が破れるブレイク

議論 : なぜハードになったのか (2) 側から考えると理解しやすい。 低振動数側は振動数によらないスペクトルになる。 しかし、いつまでも視線方向にいるわけでは なく、ある確率でビーミングコーンが視線方向 を離れる。その確率が 定性的には長い時間放射が見え続ける電子は 少ない。つまり低振動数成分が小さくなる。 それを定量的に表すと となる。左図はそのイメージ。

議論:なぜハードになったのか (3) この描像だと、磁場の大きさが同じ場合を考えると、 ジャイロ運動している 電子のほうが早く見えなくなってハードになるように思える。 θ 実はシンクロトロン放射は、 ある一つの見込み角のみの場合は 真横から見た場合に比べ斜めから見た場合は ピークの振動数と強度が下がるので 電子を見込む角度について平均をとる と、その分ソフトになる。 乱れた磁場の場合はスペクトルに方向依存性がない。

低エネルギー側のべき指数 の分布 Kaneko et al 2006 BATSE 本研究の結果より 程度まではハードに なりうることがわかった。 しかし、よりハードなGRB は存在する。 これについてはさらなる 研究が必要。

最近のフェルミに観測結果 青がLGRB、赤がSG RB 従来の デスライン 本研究で達成した LGRBの中心値は SGRB の中心値は どちらも乱れた磁場の 効果を考えると典型的 な 値。

高エネルギー側のスペクトル指数

ジャイロ運動近似が破れるブレイク

振動数とビーミングコーンの関係 シンクロトロン放射の場合 として

F(ω)F(ω) 粒子分布を反映したスペクトルでは ハードな低エネルギー側は再現できない

δ =1 の場合

の場合

見込み角 = 20度

相対論的ビーミング 系 系 系に対し 系 は速度 で 方向 に運動 このとき であるから の条件で

δ <1の場合

δ ~1の場合

の 場合