SSA湘南外科グループ 湘南鎌倉総合病院外科(血管外科) 荻野秀光 下肢動脈閉塞性動脈硬化症 足の動脈閉塞について SSA湘南外科グループ 湘南鎌倉総合病院外科(血管外科) 荻野秀光
動脈の役割とは? 心臓から送り出される血液が流れる管 血液を介して酸素や栄養を各臓器や組織に運ぶ 自律神経の命令で拡張や収縮をして血圧を調整
動脈の構造
動脈硬化とは? 内膜に血液のコレステロール等がたまり、壁が変性して弾力性を失い硬くなる 危険因子 肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、喫煙、運動不足、ストレス 加齢 「ヒトは血管とともに老いる」
動脈狭窄と閉塞
下肢動脈の流れ 腹部大動脈 腸骨動脈(内、外) 大腿動脈(浅、深) 膝窩動脈 下腿動脈 (前後脛骨、腓骨)
下肢閉塞性動脈硬化症 arteriosclerosis obliterans:ASO 下肢の動脈が、動脈硬化により狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)して血行が悪くなり発症する。 ASO患者の多くは下肢のみならず、脳・頸動脈、冠動脈などにも動脈硬化を生じている。 完全に血行が途絶えると、足先から壊死して切断が必要になる。
下肢動脈閉塞症の症状 Ⅰ期 冷え、しびれ、血色不良 Ⅱ期 間欠跛行(はこう) 一定の距離を歩くと、ふくらはぎが締め付けられるように痛くなり、休むと回復する Ⅲ期 じっとしていても痛む Ⅳ期 傷が治りにくい、潰瘍(皮膚のえぐれ)、壊死(黒くなる)
脊柱管狭窄症 ASOと症状がよく似ている。 (歩行時に痛みが増強する) 脊椎の変形が神経を圧迫して起こる下肢の痛み。 (歩行時に痛みが増強する) 脊椎の変形が神経を圧迫して起こる下肢の痛み。 整形外科や脳神経外科が治療を担当する。
ASOと脊柱管狭窄症の比較 症状の比較 診断方法 ASO 安静時痛 あり なし 歩行時痛 片側のみ 両側 腰痛 まれ しびれ感 足と下腿 あり なし 歩行時痛 片側のみ 両側 姿勢と症状 休めば改善 かがんで軽減 腰痛 まれ 自転車時疼痛 しびれ感 足と下腿 臀部大腿 下肢動脈拍動 減弱 皮膚温左右差 X線検査 正常 狭窄部あり 冷水負荷 回復悪い 普通 症状の比較 診断方法
Ankle-Brachial pressure Index 下肢の血行検査 触診 Ankle-Brachial pressure Index (ABI)
超音波検査(ドップラー)
造影CT検査 MRA
血管造影検査 (カテーテル検査)
治療方針の3本柱 下肢の循環障害への対応 全身の主要臓器(脳、心臓、腎臓)への対応 動脈硬化のリスクファクターへの対応
下肢の循環障害への対応 運動療法:・トレッドミルでの歩行訓練(3.2km/h) 薬物治療:血管拡張薬、抗血小板薬、抗凝固薬 Ⅰ・Ⅱ期 ・週3回、約1時間ずつ3ヵ月以上続ける。 ・疼痛発生まで歩行し、疼痛緩和まで休息し、 歩行を繰り返す。 薬物治療:血管拡張薬、抗血小板薬、抗凝固薬 血管内治療(カテーテル治療) バイパス手術 下肢切断術 Ⅰ・Ⅱ期 Ⅰ・Ⅱ期 Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ期 Ⅲ・Ⅳ期
血管内バルーン拡張術
血管内ステント留置術
バイパス手術 人工血管や自己の静脈等を使って閉塞した動脈をまたいで、血流を再建する手術法 膝までの血管での治療成績は良好だが、膝下へのバイパスは困難な事が多い
全身の主要臓器(脳、心臓、腎臓)への対応
・動脈硬化のリスクファクターへの対応
初期患者の日常生活と注意・理学療法 1:日常生活の管理 1)手足の保温に気をつける。 2)深爪などの外傷を避け、皮膚の手入れをする。 3)長時間の起立や正座、しゃがみ込んだ状態を避ける。 4)快適な温度(23から25℃)を心掛ける。 5)足の温浴(傷がない場合)、清潔を保つのも効果的です。
2:食事について 1)コレステロールや脂肪分の多い食べ物は控える。 2)減塩 3)標準体重を維持する。
3:危険因子を取り除こう タバコは最大の危険因子です。タバコに含まれている物質の中の主にニコチンと一酸化炭素が動脈硬化を悪化させます。禁煙を必ず実行するようにしましょう。 高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満などは動脈硬化を促進します。まず、喫煙している人は禁煙を実行する事が大切です。それから、食生活を改善し、適度な運動などをして危険因子を取り除く努力をしましょう。
4:毎日歩きましょう 毎日歩行運動を続けていくと側副血行路(狭窄、閉塞動脈部位をまたぐ血管)が発達します。側副血行路が発達すると血流が改善されますので歩行運動は毎日続けるようにしましょう。寒い日は屋外で行わず、屋内で行いましょう。
まとめ 動脈硬化の要因を正しく理解しましょう! 動脈硬化の要因のほとんどは、生活習慣の改善や適切な内科治療で改善できます! 下肢閉塞性動脈硬化症 (ASO)の症状を正しく理解し、心当たりがある方は専門医の診察を受けましょう! ASOは全身血管病の一部分症であり、他の動脈硬化性疾患(脳梗塞、心筋梗塞、腎不全など)を疑って、検診も受けましょう!