行動障碍の軽減と 地域生活への支援 ~これまでの取り組みと今後の課題~ 希望が丘 しらさぎ寮 強度行動障碍特別支援事業

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J.Kominato 個別ケアプラン作成の留意点 個別ケアプラン作成の留意点 J.Kominato.
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介護支援サービス(ケアマネジメント) 要援護者やその家族がもつ複数のニーズと社会資源 を結びつけること。 要援護者の生活の質を高めること。 保健,医療,福祉,住宅等の各種公的サービスだけ でなく,家族、ボランティア,近隣等の支援とも調整 し,在宅生活を支えていくもの.
社会福祉法人 しがらき会. 職場適応援助者(ジョブコーチ) 支援 障害者の円滑な就職及び職場適応を図るため、 ジョブコーチが事業所へ一定期間出向き、障 害者及び事業主に対して、職場適応に関する 様々な直接的支援や専門的助言等を行います。 最終的に事業所内部の自然な支援体制(ナ チュラルサポート)の中で職業を継続してい.
障害者自立支援法の抜本的な見直し に向けた緊急措置 2007 年 12 月 障害保健福祉関係主管課長会議 H19.12.26 資料2.
1.現 状 ○ 発達障害は、人口に占める割合は高いにもかかわらず、法制度もなく、制 度の谷間になっており、従来の施策では十分な対応がなされていない ○ 発達障害に関する専門家は少なく、地域における関係者の連携も不十分で 支援体制が整っていない ○ 家族は、地域での支援がなく大きな不安を抱えている 2.発達障害者支援法のねらい.
今さら聞けない 2015 報酬改定の見方 (受講者用メモ) 沖縄フォーラム 2015 分科会. 経営実態調査 基本報酬の増減に大きな影響 費用対効果の甘い事業は減額 ポイン ト1.
特別支援教育につい て. 「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」 ( 文 部科学省 答申) <特別支援教育の在り方の基本的考え方> 特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象の障害だ けでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて 障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、そ.
設置者・管理者の責務② ~職員の育成指導等~ 平成 26 年度 青森県障害者虐待防止・権利擁護研修 公益社団法人 日本社会福祉士会 平成 26 年度障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修から.
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市町村による精神障がい者の地域移行を進めるための支援策について(案)
平成26年度 診療報酬改定への要望 (精神科専門領域) 【資料】
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桑 名 市    市議会定例会[6月] 提出議案の概要について.
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
Ⅱ.高齢者に係る地域アセスメントの    手法について
ⅩⅠ 落着きのない子供たちの理解 ADHDと思われる子どもに 関わる教師や保護者の悩み 診断名は別として
課題整理表 資料10 次期狛江市障害者計画・ 障害福祉計画策定に向けた この課題整理表は、 ①国が示した障害福祉計画に係る基本指針
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
PT、OT、ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業(新規) 平成20年度予算額(案) 42,790千円              
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障害のある人の相談に関する調整委員会の設置
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4 第3次障害者基本計画の特徴 障害者基本計画 経緯等 概要(特徴) 障害者基本法に基づき政府が策定する障害者施策に関する基本計画
平成27年度 埼玉県障害者 虐待防止・権利擁護研修
重症心身障害児者等 コーディネーター育成研修 3 支援体制整備④ 資源開拓・創出方法
Ⅲ.サービス開発の方法.
重度障害者等包括支援について.
重症心身障害児者等 支援者育成研修テキスト 5 ライフステージにおける支援① 各ライフステージにおける 相談支援に必要な視点
手話言語に関する部会について 西脇市障害者地域支援協議会 事務局会議 障害福祉関係者会議 事業所連絡会 サポートノート関係会議
「就労支援に係る相談支援機関」 障害者就業・生活支援センター 障がい者 自立・安定した職業生活の実現 雇用と福祉のネットワーク 福祉施設等
事例紹介(抜粋) ・特別支援学校高等部卒業後、近隣のB事業所へ2年通うが、トラブルを起こし、平成25年4月に退所。現在まで自宅で過ごしている。1か月経過した頃から「外出したい」と言うようになり、やり取りの中で不安定になる様子も見られ始め、支援に限界を感じ始めた。母が市役所へ相談。市役所は計画相談の対象として、市内のC相談支援事業所に計画相談の依頼を行う。C相談支援事業所はMさん・母と数回面接を実施し、サービス等利用計画を作成。Mさんの特別支援学校の同級生が3名いるK生活介護事業所を日中支援の場として調整を
市町村 域 都道府県 障害保健福祉圏域 受講番号:
市民福祉推進委員会 障がい小委員会委員長 眞保 智子
資料2 介護保険制度改革の方向.
2日目 15:45~15:55〔10分〕                     閉 会                           この時間は、都道府県で開催される強度行動障害支援者養成研修の実施に当たってのお願いをいくつか述べさせていただきます。
高齢者の救急搬送に係る意見交換会 資料7 1 意見交換会開催に至る経緯と今年度の取り組み  平成26年度    病院連絡会議にて,高齢者の救急搬送に関して,患者及び家族の延命治   療の希望確認ができているかの課題提起がなされた。  平成27年度   (1)介護サービス事業者協議会主催研修会および施設ごとの講演会の開催.
特別支援教育 障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,児童生徒一人一人の教育的二一ズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導や必要な支援を行うものである。 (「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」平成17年12月8日.
介護支援専門員 ケアマネジャー サービス担当者会議.
若年性認知症支援コーディネーター設置等事業
地域ネットワークを構築 相談支援事業が核 甲賀地域障害児・者サービス調整会議(甲賀地域自立支援協議会)の運営 図3 約80機関で構成
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
就労支援におけるネットワークの必要性とメリット
相談支援従事者初任者研修のカリキュラムの改正について
<資料 2> 静岡市障害者自立支援協議会専門部会の活動状況について
重症心身障害児者等 コーディネーター育成研修 2 計画作成③ 重症心身障害児者等の ニーズ把握事例 ~久留米市のコーディネートの現状~
平成24年4月から 業務管理体制整備の届出が必要となります。 休止・廃止届を事前届出制にするなどの制度改正が併せて行われました。
障害者自立支援法等の一部を改正する法律案の概要
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
学校保健・保健活動セミナー 子どもの育ちを地域で支える 各地区の小児科医が『子どもの病気と健康』に 関するテーマを講演します
いきいき笑顔応援プロジェクトによる支援の流れ確認シート
Ⅱ.高齢者に係る地域アセスメントの    手法について
今後めざすべき基本目標 ―「ケアの流れ」を変える―
重症心身障害児者等 コーディネーター育成研修 2 計画作成① 重症心身障害児者等の 意思決定支援
施設入所者の地域移行について 施設入所者の状況について 資料2
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大阪市の依存症対策 現状と課題 H29事業 共通 アルコール依存 薬物依存 ギャンブル等依存 治療が長期間に及ぶ-薬物治療の効果は限定的
全国介護保険担当部(局)長会議資料 ~介護保険制度改正の検討状況等について~
発 達 障 が い 児 者 支 援 に 関 す る 主 な 取 組 平成30年度当初予算 218,554千円
障がい者多数雇用事業所サポート事業 【大阪府商工労働部雇用対策課】
発 達 障 が い 児 者 総 合 支 援 事 業 平成29年度予算 218,128千円
介護保険サービス基準設定の基本的考え方について
あいサポート条例(愛称)素案の概要 1 制定の目的 2 条例案の内容
平成31年度燕市障がい者自立支援協議会 運営方針(案)
( 平成29年6月30日時点精神科病院長期入院者数[暫定値] )
(浜松市発達相談支援センタールピロ 所長)
~「依存症対策のあり方について(提言)」(平成29年3月)と府の対応~
特別支援教育総合推進事業 特別支援教育 推進員 高等学校 1(新)特別支援教育総合推進事業【4,752千円】 県教育委員会 特別支援学校
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行動障碍の軽減と 地域生活への支援 ~これまでの取り組みと今後の課題~ 希望が丘 しらさぎ寮 強度行動障碍特別支援事業 行動障碍の軽減と    地域生活への支援  ~これまでの取り組みと今後の課題~ 希望が丘 しらさぎ寮  強度行動障碍特別支援事業                  支援スタッフ  大山 敦子

Ⅰ はじめに (1)事業受託までの経緯 ・ 平成 2年 自閉症支援に対する取り組みを開始 Ⅰ はじめに (1)事業受託までの経緯 ・ 平成 2年  自閉症支援に対する取り組みを開始 ・ 平成 3年  今で言う「強度行動障碍」を持つ方が入所 ・ 平成 6年  「強度行動障碍」について研究を始め、行動障碍や            集団適応困難の方への支援について検討 ・ 平成 7年  「特別支援クラス」の設置と活動開始            個別支援棟「ステップハウス」完成 ・ 平成 9年  「強度行動障害特別支援事業」受託に向け検討開始 ・ 平成11年  支援棟「すずらんハウス」完成 ・ 平成12年  1月1日事業認可

(2)事業の概要 1 強度行動障碍 障碍特性を理解した養育と早期対応が改善を促進する 1 強度行動障碍 定義 :  ・ 行動面から定義され、行政から提唱された概念       ・  発達障碍児者の著しい環境不適応であり、日常生活での         行動異常が、高頻度と強度の形で出現し、養育上著しく処         遇困難 成因と背景 : ・  生育環境と障碍に起因する素因との相互作用           ・  障碍特性による特異な行動と、その行動が持つ意味へ            の理解不足 → 行動に対する制止や拒否 → ストレスを 増大~行動異常 → 行動へのマイナス的評価・・・悪循環 特徴 : ・ 複数の要因が複雑に絡み合っている。   ・ 通常では理解できないようなきっかけで起こる。 障碍特性を理解した養育と早期対応が改善を促進する

(2)事業の概要 2 強度行動障碍特別支援事業 ・ 目的 : 著しい不適応行動を示すため、日常生活を送ることが 2 強度行動障碍特別支援事業 ・ 目的 : 著しい不適応行動を示すため、日常生活を送ることが          非常に困難な者に特別な支援を行い、行動障碍の軽 減を図る。 ・ 対象者 : 定員は4名を標準とする ・ 期間 : 3年を限度 ・ 判定基準 : 「強度行動障害基準表」(厚生労働省)           各項目の頻度により、点数化し、10点以上を「強度行 動障碍」とみなす。(事業対象は20点以上)           医学的、心理的、社会的及び教育的見地から 検討を加える。           その際、障碍の態様や限度によって医療処遇が 適当 な者は対象から除く。 

(3)事業終了後の支援(移行先) ①全国的な動向 他に選択肢が無い! 移行先を決めた理由・・・

(3)事業終了後の支援(移行先) 1 2 ②しらさぎ寮の場合 3 4 5 6 30→未判定 在 宅 24→15 22→11 28→22 事業前所属 判定基準点推移 終了後 1 成人施設(入所) 30→未判定 在  宅 2 24→15 成人施設(入所):同一法人 3 22→11 4 児童施設(入所) 28→22 支援継続(H17.10~事業対象) 5 32→15 成人施設(入所):他法人 6   25→ 4

Ⅱ 取り組みの実際 (1)対象 第二期支援対象者 支援期間 : 平成15年1月16日~17年12月31日 Ⅱ 取り組みの実際  (1)対象 第二期支援対象者 支援期間 : 平成15年1月16日~17年12月31日 主訴 : 養護学校を卒業後、作業所を利用しながら、在宅生活を送っ       ていたが、双方共に適応できなかった。また、家庭生活にお いても日常的にパニックがあり、穏やかな生活を送るために パニックを軽減したい。 3年後の事業支援終了後は、家庭に帰り、地域での生活を 希望。 入所前判定 : 32点

(2)行動改善に向けたアプローチ ①成因と特性の把握・理解 行動の意味を考える。  行動の意味を考える。  なぜ、その不適応行動と呼ばれる行動をとらなければならないのか。    その行動をとらざるを得なかったのか。 ※ 気持ちは受容するが、行動は受容しない ※ (社会的に認められない行動は認めない) 推 測 ・・・ アセスメント(事前調査、行動観察etc・・・) スタッフは、常に知識と能力を高めること・自己研鑽が必要。 知識は、『知っている』ではなく『理解している』ことが必要。

(2)行動改善に向けたアプローチ ②支援するその方への理解 ③理解者・通訳者としての支援者 ④環境調整 ラポートの形成 特別な手法やプログラムが先にあるのではなく、「支援を必要とする人」が先にある。 ③理解者・通訳者としての支援者 ラポートの形成 ④環境調整 ストレスの軽減 多少崩れても元に戻ることができる 生活リズムの確立。 基本となる活動と日課。

(2)行動改善に向けたアプローチ ⑤不適応行動を適応行動へ ⑥経験と学習 不適応行動を減らすだけでは、別の不適応行動が表出する恐れがある。 適応行動を伝えなくては、不適応行動は減らない。 適応行動ができた時・しようとした時、それをしっかり認め、誉める。 一度、表出した行動は、表出しやすくなる。 ⑥経験と学習 本来持っている能力を引き出す。 新しい学習を通し、活動の幅を広げる。

対 象 者 の 場 合・・・ 事業終結判定 : 2点(自傷1点、多動1点) ① 言語と触覚による理解 ② 快・不快刺激の調査と要求行動の把握 ① 言語と触覚による理解 ② 快・不快刺激の調査と要求行動の把握  ③ ルーティン化された日常活動 ④ 社会資源の活用  ⑤ 統一した声がけ  ⑥ ご本人の行動及び心理的な成長に合わせた支援の方向性・方法     の修正 事業終結判定 : 2点(自傷1点、多動1点)

(3)家庭生活に向けた支援 イ) 再アセスメント 日中活動の場を利用し、家族と共に暮らしたい。 イ) 再アセスメント 日中活動の場を利用し、家族と共に暮らしたい。 生まれ育った地域で、地域の人達や家族の手助けを得てグループホームで生活をさせたい。 できるだけ身近な場所にサービス拠点が欲しい。 諸手続きが簡単で、緊急時に、すぐに使えるサービスが欲しい。 家族で外食ができるようになりたい。 自分の子どもを受けれてくれる事業所はあるのか。 自分の子どもに合う環境、サービスを提供してもらえるのか。

(3)家庭生活に向けた支援 ロ) 現 状 デイサービス、ショートステイ~いずれも希望を満たす利用は困難。 ロ) 現 状 デイサービス、ショートステイ~いずれも希望を満たす利用は困難。 NPO法人のサービス~支援費対象外サービスで常態的利用は経                済的に限界あり。 平成18年1月より、しらさぎ寮一般入所に切り替え、地域生活に備える。(3月中旬移行予定) ※「地域移行の期限を定めて支援した方が良い」とアドバイスを   いただく(ケア会議時、就業・生活支援センター鈴木主査より)

(3)家庭生活に向けた支援 ロ) 現 状 社会福祉協議会 各種事業所 デイサービス 親の会 しらさぎ寮 NPO法人 しらさぎ寮 福祉事務所 就業・生活支援センター 親の会 デイサービス しらさぎ寮 ロ) 現 状 社会福祉協議会 各種事業所 デイサービス しらさぎ寮  親の会 NPO法人 しらさぎ寮  希望が丘診療所 療育訓練センター しらさぎ寮

(3)家庭生活に向けた支援 ハ) 課 題 ご家族への負担が増さない支援 ① 環境の整備 ・ 居住地内にサービス事業所が無い。 ハ) 課 題  ご家族への負担が増さない支援 ① 環境の整備 ・ 居住地内にサービス事業所が無い。 ・ 理解し、支えてくれる人材。 ② ご本人 ・ 自発的な選択。

(3)家庭生活に向けた支援 ニ) 展 望 生まれ育った町で! 権利保障 余暇・社会参加支援 短期入所事業 デイサービス 支援当事者 相談支援 ニ) 展 望  生まれ育った町で! 権利保障 余暇・社会参加支援 短期入所事業 デイサービス 支援当事者 相談支援 家族支援 連携医療機関 ケアホーム グループホーム

Ⅲ 考察 ① 行動障碍は、生まれながらの持っているのではなく、二次 的障碍である。 ② 支援は、本人のみならず、ご家族にも及ぶ。 Ⅲ 考察 ① 行動障碍は、生まれながらの持っているのではなく、二次    的障碍である。 ② 支援は、本人のみならず、ご家族にも及ぶ。 ③ 共同療育者としてのご家族。 ④ 支援は、事業対象の3年のみならず、その後も継続する。 ⑤ 支援は、単一の資源や個人で成り立つものでは無い。その ためにも連携が重要である。

Ⅳ まとめ ・ 支援に「これで良い」、「これで終わり」は存在しない。 ・ 必要な支援を、必要な方へ Ⅳ まとめ ・ 支援に「これで良い」、「これで終わり」は存在しない。 ・ 必要な支援を、必要な方へ ・ 場所のみならず、人も含めた地域資源の整備と充実が    急務である。