ド・プロニーの計算プロジェクト 林晋 2012.05.30.

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ド・プロニーの計算プロジェクト 林晋 2012.05.30

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計算機部品=ヘアドレッサー アンシャン・レジームの象徴だった貴族のヘアドレッサーたちが革命で失業。参考リンク。その失業対策を兼ねヘアドレッサーを「コンピュータ」として雇用。 もちろん、本来の目的は「正しい数表」を作ること。当時は対数表が航海のための計算にも使われ重要だった。今のコンピュータの地位! これについては比較的易しい論文がある: Work for the Hairdressers: The Production of de Prony’s Logarithmic and Trigonometric Tables, 1990, vol. 12, I, Grattan-Guinness,IEEE Annals of the History of Computing 参考 2017/2/27

計算の分業体制 ヘアドレッサーは掛算,割り算が正確にできないので,足し算,引き算に,すべての計算を分割・分業化した。 実はほとんどすべての連続関数(演算)は、引き算・足し算の繰り返しだけで近似的に計算できる。これを階差計算の原理という。 つまり、大量の計算をすることを厭わなければ、この世の計算の多くは、足し算・引き算の繰り返しだけでできるということ。 バベッジのPowerPoint資料で説明したもの! 2017/2/27

計算の分業体制 計算プロジェクトのチームは,次の三つの階層からできていた。 このプロジェクトの詳しい仕組みは? 階差計算の原理とは何か? 理論家 それをもとに計算計画を立てる人 そして,失業中のヘアドレッサーである「コンピュータ」 このプロジェクトの詳しい仕組みは? 階差計算の原理とは何か? それが先に見たバベッジの本で詳細に説明されている。(というより、それがあるので、このプロジェクトのことがわかる。) 2017/2/27

フランスの大対数表 (§241-243) 知的労働の分業が機械的操作(労働)の場合と同様に可能であり,それはどちらも時間の節約,時間の経済,に結びつく. (241) 歴史上最大規模に行われたフランスのド・プロニーの計算プロジェクトが,この考え方の現実性を説明している (242) その考え方の元はアダム・スミスの国富論にあることをド・プロニー自身が語っている。(243)

フランスの大対数表続き (§244-245) ド・プロニーが考えた組織構造は三層構造による「知の分業」だった(244) フランスの大対数表続き (§244-245) ド・プロニーが考えた組織構造は三層構造による「知の分業」だった(244) 上級層 First section: 数学者。数式を考える。 中級層 Second section: 数学者が考えた式を具体的計算に書き換える(コンパイル)。7,8名の人からなる。また、計算の検証(検算)もする。 下級層 Third section:実際に計算をする人たち(60-80名)。足し算、引き算しかできないヘアドレッサー(の棟梁の下働きだったらしい)。 Amazon堺FCの話か?

フランスの大対数表 (§244-245)続き 最下層の労働の量は大きいが、労働の価格は安くてすむ (at an easy rate, Amazon FCピッカーの労賃は低い。「部品だから…」)。 最上層の仕事は大変だが(extertions)、一度やれば済む。(Amazon FCの仕組みは一度考えて作れば、後は機械のように動く。) しかし、計算機(a calculating-engine) が作られて最下層を置き換える時には、数学的見直しが必要かもしれない。(245)