Gender Gap を示すもの ーGender Gap Report 2012 を読んで― ジェンダーリサーチクループ 第1期プラン・アカデミー アクション計画 制作作品 Gender Gap を示すもの ーGender Gap Report 2012 を読んで― ジェンダーリサーチクループ
Gender Gap Report を読んでみよう 世界経済フォーラムは、2006年から世界各国の文化や社会制度における男女格差を分析し、グローバルジェンダーギャップレポートとして公表しています。男女平等の達成度に応じて国を順位付けするこのレポートで、2012年、日本は、135か国中101位とされました。2006年以降、日本は、毎年低い順位にとどまっています。なぜでしょうか。また、この順位が示す意味を、日本に住む私たちはどう捉えたらよいのでしょうか。
ジェンダーギャップ指数って 何かなぁ? ジェンダーギャップ指数とは、ジェンダーギャップ、つまり男女の格差を表す複数のデータを統一し、わかりやすく示すために作成される指標です。ここでは、世界経済フォーラムが作成しているグローバルジェンダーギャップ指数について見ていきます。
ジェンダーギャップは、 社会的・文化的に作られる 男女による格差 労働の機会 賃金 労働に関する意思決定 専門性・高等技能 ジェンダーギャップとは、文化や社会制度に存在する男女の格差です。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は、この文化や社会制度を具体的に、経済・教育・健康・政治という4つの分野ごとにその格差を分析しています。 経済分野では、労働者数における男女の比率や、賃金の男女差、管理職に占める男女の比率、技術職や専門的な職場での男女比などが分析されています。
識字率 就学率 ジェンダーギャップは、 社会的・文化的に作られる 男女による格差 教育の分野では、学校などの教育課程への入学者数における男女比や、男女別の識字率が分析されています。
ジェンダーギャップは、 社会的・文化的に作られる 男女による格差 出生時の男女差 健康生存期待年数 健康の分野では、新生児の男女比率や、生まれた後の子どもの命が男女の別なく守られているかどうかが分析されます。
ジェンダーギャップは、 社会的・文化的に作られる 男女による格差 女性の議会占有率 女性大臣の数 女性国家元首の在位年数 政治の分野では、国会議員の男女比率や、大臣職の男女比率、さらに国のトップである国家元首を女性がどれだけ務めているか、といったデータが分析されます。
ジェンダーギャップ指数を見るためのデータ ILO(世界労働機関) UNDP(国連開発計画) UNESCO(国際連合教育科学文化機関) CIA(アメリカ合衆国中央情報局) WHO(世界保健機関) IPU(列国議会連盟) ジェンダーギャップ指数の算出の基となるこれらのデータは、様々な国際組織や情報機関によって調査収集されたものを使います。たとえば、労働に関するデータはILO、識字率はUNESCO、新生児における男女の比率はCIAのデータベースからとられています。 それでは、2012年の分析結果を見てみましょう。 それぞれのサブ指数は、これらの国際機関や情報機関によって発表されたデータに基づいて比較されています。
世界平均値 経済 0,6 健康 0,96 教育 0,93 分析対象となった135カ国は、この時点で世界人口のおよそ9割を網羅しています。経済・教育・政治・健康の分野における、ジェンダーギャップ指数の平均値はこのようになりました。 指数は、男性1に対する女性の比率を表すよう計算されています。経済分野でのギャップ指数の値は0.6、つまり、女性の労働者人口や賃金の額は、男性の6割に相当するということを示し、ジェンダーギャップが6割まで解消されたとも表現されます。このチャートによれば、教育と健康の分野では、ジェンダーギャップは9割がた解消されていますが、経済の分野では明らかな男女差が存在し、政治の分野ではほとんど格差が解消されていません。次に、日本のデータについて見てみましょう。 政治参加 0,2
日本のジェンダーギャップ指数 総合 0,653 101位/135ヵ国 経済 0,576 健康 0,979 教育 0,997 経済 0,576 健康 0,979 教育 0,997 チャート上の黒い線は世界平均、ブルーの線は日本の分析結果を示しています。 これを見てわかるように、経済・教育・健康の分野では日本はほぼ世界平均に近い値をとっています。しかし政治の分野では、男女格差の解消が大幅に遅れています。4つのジェンダーギャップ指数の平均に当たる0.653という数値が、日本のグローバルジェンダーギャップ指数の値となります。この値に基づいて順位づけされた結果、日本における男女格差の解消レベルは、135カ国中101位となりました。ちなみにランキングのトップ5カ国は、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、アイルランド、一方最下位の5か国には、サウジアラビア、シリア、チャド、パキスタン、イエメンが入っています。 総合 0,653 101位/135ヵ国 政治参加 0,070 世界平均 0,2
Figure10 教育達成度と経済参加との関係 に見る日本の可能性 グローバルジェンダーギャップレポートによれば、国の競争力の最も重要な決定要因は人であり、具体的には人のスキルや教育、労働生産性であるとされています。しかし経済の分野と教育の分野で、男女格差の解消の度合いは大きく異なっています。ここからどんなことが読み取れるでしょうか?ここで、2012年のレポートの中でFigure10として紹介されているグラフを見てみましょう。
Ⅰ Ⅳ Ⅲ Ⅱ 教育達成度と経済参加との関係 日本 北欧諸国 フィリピン モザンビーク パキスタン ネパール 教育達成度 経済参加 Figure10は、横軸に教育の格差、縦軸に経済の格差の値を取り、135カ国それぞれがどの位置にあるかを示したものです。グラフでの位置が右になるほど、その国では男女が平等に教育機会を与えられており、また、上へ行くほど、経済分野への女性の進出度が高いことを表します。 データのまとまり具合から、4つの大きなグループを見出すことができます。グラフの右上、第Ⅰグループは、教育機会が男女均等で、女性の経済進出度も高い国々です。ランキングのトップを占める北欧諸国や、アジア地域でトップのフィリピンなどがここに入ります。その下の第Ⅱグループは、教育機会は男女均等ですが、経済面での男女格差が拡大します。日本がこれにあてはまります。第Ⅱグループから左へ行くと、教育と経済の両面で男女の格差が著しい第Ⅲグループです。グラフの左上、第Ⅳグループでは、教育の格差は残ったまま、経済分野での女性の進出度が増します。 教育達成度
日本 日本が属する第Ⅱグループでは、女性の教育に投資されていても、女性が働く時の障害が根本的に取り除かれていません。例えば、雇用における男女格差を解消することで、日本のGDPを16%増大できるとする研究報告があります。また、女性の経済力を高めることは、消費活動の分野で新たな市場を開拓するとも言われており、こうした、いまなお活用されていない人材の経済参加を促すことは、国力の一層の充実と発展の可能性を秘めています。
©プラン・ジャパン 今、なぜ男女格差が注目されるのでしょうか。 世界の一部の国や地域では、今なお女性や少女の基本的な権利が認められず、日々の暴力や貧困によってその命が危険にさらされています。一方で女性が教育を受け、経済活動に参加することによって、その家族や地域の財政が好転し、子どもたちの健康が守られ、豊かな未来へとつながってゆく、そうした事例が報告されています。男女の格差を解消し、社会や経済システムに今以上に女性が参加することは、決して女性だけの利益ではありません。それは男性と女性が互いを尊重し、ともに責任をわかちあい、双方が自分らしく生きられる、より良い世界の実現に向けた重要なステップなのです。 ©プラン・ジャパン