株式投資戦略 ~新たな株式投資の流れを交えながら~ 東京大学イノベーションケーススタディー 株式投資戦略 ~新たな株式投資の流れを交えながら~ 2011年6月28日 三菱UFJ信託銀行株式会社 株式運用部
アナリストによる企業調査
1.株式投資で運用収益をあげるための考え方
2.アナリストとは
3.アナリストの仕事の流れ
4.企業分析・業績予想 ~ 3C分析とは ~
5.企業分析・業績予想 ~ 市場分析 ~
6.企業分析・業績予想 ~ 企業分析/財務分析とは ~ 6.企業分析・業績予想 ~ 企業分析/財務分析とは ~
7.企業分析・業績予想 ~ 企業分析/EPS予想 ~ 7.企業分析・業績予想 ~ 企業分析/EPS予想 ~
8.企業分析・業績予想 ~ 取材活動(確認事項) ~ 8.企業分析・業績予想 ~ 取材活動(確認事項) ~
9.妥当株価の算出 ~ コンセンサス・ギャップ ~ 9.妥当株価の算出 ~ コンセンサス・ギャップ ~
10.妥当株価の算出 ~ バリューエーション ~
11.アナリスト歳時記
新たな株式投資の流れ ~ ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した運用の広がり ~ 新たな株式投資の流れ ~ ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した運用の広がり ~
非財務 (含むESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み) 1.SRIの定義 SRI(社会的責任投資)=「財務」+「ESG(非財務)」を考慮した投資 見える価値 (有形資産) 財務 見えない価値 (無形資産) 経営者 環境 社会 非財務 (含むESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み) 体制・プロセス ガバナンス 従業員など ステイクホルダー 出所:イノベスト資料などから三菱UFJ信託銀行作成
2.変化するESGの位置付け ESGの位置付けの変化に伴ってSRIの「投資目的」や「呼び名」も変化 当初 近年 運用資産総額 近年、投資家は、企業のESG(環境 ・ 社会 ・ ガバナンス)への取り組みを企業業績に影響しうる 「非財務」情報と位置付け、運用収益を追及するために、企業を評価する際に考慮しつつある。 ESGの位置付けの変化に伴い、ESGを考慮する運用を「責任投資」や「ESG運用」等と呼び始めた。 <当初> <近年> 投資目的 自己実現 → 運用収益の追及 投資家 個人中心 → 機関投資家にも広がり 受託者責任 ? → 反しない/考慮すべき 評価の視点 価値観 → 企業業績・持続性への影響度 呼び名 SRI → 責任投資・ESG運用 当初 近年 運用資産総額 (出所)イノベスト社の資料を基に三菱UFJ信託銀行作成
3.ESGの位置付けが変化した理由① ~ E(環境)の経済への影響 ~ 3.ESGの位置付けが変化した理由① ~ E(環境)の経済への影響 ~ スターン・レビュー(地球温暖化の経済的な影響に関する報告書) 世界で初めて経済モデルを用い、地球温暖化の経済的な影響を予測した英国政府の公式文書。 元世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターン博士がとりまとめ、2006年10月に公表。 地球温暖化が実体経済に及ぼす影響度が示されたことにより、運用収益を追及する機関投資家も、 投資判断時に環境問題を考慮するようになった。 <報告書概要> ~ 気候変動によるコストを気候変動が起こらない場合と比較したGDPへの影響度を試算 ~ 試算シナリオ① 将来、気温が2~3度上昇した場合 = 世界のGDPが0~3%減少するに等しい影響あり。 試算シナリオ② 将来、気温が5~6度上昇した場合 = 世界のGDPが5~10%減少するに等しい影響あり。 途上国のGDPは10%超の損失を被る可能性あり。 <結論> 気候変動の被害は甚大(地球温暖化対策を採らなかった場合、世界のGDPを5~20%削減) 気候変動を回避するための費用は抑制可(温室効果ガス排出削減コストは世界GDPの1%) 早期に気候変動へ対応することにより、経済的な優位性を獲得できる可能性が高まる <「気候変動の経済学(スターン・レビュー)」、英国大使館HPなどを参考に三菱UFJ信託銀行作成>
4.ESGの位置付けが変化した理由② ~ E(環境)の企業業績への影響 ~ 4.ESGの位置付けが変化した理由② ~ E(環境)の企業業績への影響 ~ UNEP FI(国連環境計画 金融イニシアティブ)報告書 UNEP FIは、2010年10月に、世界の人的活動による環境被害額が、年間 594兆円(2008年)と 世界のGDPの11%に相当すると発表。 環境被害総額のうち、世界の上場企業トップ3,000社がもたらした被害額は194兆円(*)にのぼり、 企業利益の50%以上は環境被害により消滅するリスクがあるとして、投資家が企業を評価する際に、環境問題を考慮する重要性について改めて警鐘を鳴らした。 世界の人的活動による環境被害(要因別) *MSCI All Country World Indexに基づくポートフォリオ構成銘柄による試算 (出所) UNEP FI & PRI “Universal Ownership” Trucost Plc
5.ESGの位置付けが変化した理由③ ~ESGの株価への影響~ 5.ESGの位置付けが変化した理由③ ~ESGの株価への影響~ 「ESGへの取り組みは株価を形成する重要な要素」との認識の広がり 定性的な情報が多いESGは、企業を評価する際に考慮することが難しいとの見方が残るものの、株価形成要素に占める無形資産の比率が上昇し、株価評価における定性的な情報の重要性が高まったことも、ESGの位置付けが変わった要因の1つとなっている。 市場価格 (S&P 500) 無形資産 有形資産 (出所)Juergen H Dalum, Intangible Assets and Value Creation, John Wiley & Sons, 2002
6.金融危機後、増加する欧州SRI市場と減少する日本SRI市場 欧州では、金融危機後、投資リスクを軽減するために、ESG(環境・社会・ガバナンス)などの非財務情報を含む、より幅広い視点から投資判断を行う投資家が増加し、SRI市場が拡大。 日本でも、投資リスクを回避する投資家は増加したが、主に資産配分変更で対応。一方、欧州と異なりSRIへの投資は減少に転じ、この結果、欧州と日本のSRI市場規模の差が拡がった。 欧州と日本のSRI市場 (注) 2009年の欧州SRI市場の対象国は、2007年に比べ増加。 SRI市場伸び率は、2007年のデータを2009年と比較可能な基準に再計算し算出したもの。 日本の年金基金向けSRI市場規模、SRI市場シェアは推定値。 (出所)European SRI Study 2010、SIF-Japan日本SRI年報などより、三菱UFJ信託銀行作成
7.欧州と日本における年金基金スタンスの違い SRIを回避する年金基金スタンスに関し、日欧で大きな相違は存在しない SRIが増加する欧州においても「パフォーマンスへの懐疑心」や「受託者責任問題への懸念」など、SRIに悲観的な年金基金は未だ存在し、日本が「特別な状況」にある訳ではない。 日本と異なり、欧州でSRIが普及した主因の一つは「外部からの圧力」である 欧州でSRIが普及し始めた主因の一つは、労働組合の圧力や政府当局の規制、世論の高まりなど、外部関係者が年金基金に対してSRIへの投資を求めたことである。
8.欧州各国年金基金の具体的事例 欧州年金基金がSRI投資を拡大した主因は、下表の様に各国毎に異なる。但しいずれのケースも、年金基金を取り巻く外部関係者からのSRI投資要請を受け、投資を拡大してきた経緯がある。 (出所)年金シニアプラン総合研究機構より三菱UFJ信託銀行作成
9.金融危機を境に変化を見せる欧州運用機関のスタンス 金融危機前は、運用収益を向上させる目的でESG要素を考慮する運用機関が増加 ☛企業業績への影響が大きい「気候変動」や「水」などのESG要素 金融危機後は、投資リスク削減と持続的な運用収益維持を目的とする運用機関が増加 ☛通常の運用でもESGを考慮する投資(下表「インテグレーション」)が拡大。 金融危機前後で、運用機関におけるESG要素を考慮する主目的が広がりを見せたことも、欧州におけるSRI市場拡大の主因の一つとなった。 出所:European Asset Owners, December 2010, EUROSIF European SRI Studyより三菱UFJ信託銀行作成
10.今後の日本におけるSRI市場拡大の可能性 年金基金に対する外部要請の高まり 日本においても、「連合」が年金基金などに対し責任投資を働きかけるために、2010年12月に「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」を策定するなど、新たな外部要請の動きが見られ始める。 運用機関スタンス変化の可能性 国内株式市場の低迷が続く中、日本の運用機関にも、持続的な運用収益を追及するためにはESG要素の考慮が重要との認識が広がり、SRI運用普及の進む可能性が予想される。 連合「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」 2010年12月、年金基金などに対し責任投資を働きかけていくためにガイドラインを策定 連合は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) など、公的年金制度の積立金の運用機関に対しても、 責任投資を求めていく方針 2011年6月からは、連合内に責任投資を推進する 会議を立ち上げ、実際の年金基金の責任投資への取り組みの進捗状況をモニタリング 欧州のESGを考慮する運用の定義 ESGに基づく企業選定 67% 企業の持続性の監視 59% 高リスク企業、業種排除 36% 環境関連企業への投資 24% マイクロファイナンスへの投資 16% 出所:連合「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」、European Asset Owners, December 2010より三菱UFJ信託銀行作成
検討課題 ~ ビール業界を事例とした演習 ~
1.企業分析・業績予想のポイント 市場(Customer)、競合(Competitor)、 企業(Company)の3つの観点からの分析例
2.業界データ事例 【ジャンル別シェア推移】 【店頭価格データ】
3.セグメント別営業利益の計算方法
4.ディスカッション (ステップ1) アナリストの立場になり、以下の視点も交え、企業分析を行ってみましょう。 酒類事業 海外展開 (ステップ1) アナリストの立場になり、以下の視点も交え、企業分析を行ってみましょう。 事業構成 酒類事業 海外展開 中期経営計画 財務戦略 ・ ・ ・ ・ ・ (ステップ2) みなさんの企業分析の結果を聞かせてください。 (ステップ3) 実際の株価推移と比較してみましょう。 結果は、・ ・ ・ ・ ・。 どうでしたか?
ご留意事項等 本資料は、お客様へ運用に関する情報をご提供するもので、弊社が特定の有価証券や取引を推奨するものではありません。 本資料に記載している弊社の見解等は資料作成時におけるものであり、経済環境の変化、相場の変動、年金制度もしくは税制等の変更によって予告なしに内容が変更されることがありますので、予めご了承下さい。 本資料に記載している情報は、信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その内容の正確性・完全性の保証は致しかねます。また、本資料に記載している数値は、あくまで過去のデータや一定の前提値等に基づく分析及びシミュレーションであり、実際の運用成果等を約束するものではありません。分析手法、モデル及びシミュレーション手法は前提条件に大きく左右されるほか、その内容も情報提供時から予告なしに変わっている可能性があることをご留意下さい。なお、前提条件には当該資料に記載した内容のほか、分析手法、モデル、シミュレーションの内容も含みます。 本資料の分析結果・シミュレーション等を利用したことにより生じた損害は、弊社は一切責任を負いません。 弊社は、いかなる場合であっても、本資料の提供先ならびに提供先から本資料を受領した第三者に対して、あらゆる直接的、または間接的な損害等について、賠償責任を負うものではありません。また、本資料の提供先ならびに提供先から本資料を受領した第三者の弊社に対する損害賠償請求権は明示的に放棄されていることを前提とします。 本資料の著作権は三菱UFJ信託銀行に属し、目的を問わず無断で引用または複製することを禁じます。 本資料に関するお問い合わせ先 三菱UFJ信託銀行 株式運用部 加藤 正裕/03-6214-7270 (受付時間:9:00~17:00(土日・祝日除く))