第24回 画像研究会 in 金沢 乳房画像におけるディジタルの 有用性について 名古屋大学医学部保健学科 市川勝弘
ディジタルマンモグラフィの品質管理の ある記事に関して...
・基本的に石灰化は,微細で高コントラストである。 (腫瘤の辺縁情報の微細さとはレベルが違う) (腫瘤の辺縁情報の微細さとはレベルが違う) ・低コントラストな石灰化は,S/F系で描出できているものは 比較的大きい。 (後で述べるように高ガンマな乳腺用フィルムは粒状性に劣り,低コントラストかつ 微細なものは描出するのはほぼ不可能) ・基本的に腫瘤は,低コントラストで,微細ではない。 ・腫瘤の辺縁情報には,石灰化と同じレベルの解像度を 要求しない。(0.1mm以下の細かい辺縁形状情報を読み取るのは非常に困難)
・濃度階調は重要性である。ステップファントムは ディジタルだけに必要でなく,アナログでも必要である。 LUTに応じた テストパターンで 対応化 (但し,DR圧縮処理 使用時は対応不可) ・濃度階調は重要性である。ステップファントムは ディジタルだけに必要でなく,アナログでも必要である。 ・ディジタルでは,自由な階調を設定できるだけでなく,後に述べる,ダイナミックレンジ 圧縮(イコライゼーション処理)により,階調だけで表せない特性が実現できる。よって ステップファントムの意味は再認識せざるを得ない。) ・そもそもACR推奨のファントムは,品質管理(一定に範囲の性質の安定性などを調べる) のために作られたものである。画質の良否を調べるなど多目的に用いることは困難である。 ・ファントムに表現されている情報が,画質特性のどれに相当するかを見極めることが できない以上,画質向上のための最適なパラメータは見つけるのは困難。
・それは,コントラストが一定で,画質の確認に有用であるから。 この意味を理解する のは困難である ・ファントムでの確認は重要である。 ・それは,コントラストが一定で,画質の確認に有用であるから。 ・ステップファントムを追加し,より臨床に近くなった以上 それを利用した方が,パラメータの検討が楽である。 (臨床画像上の注目点が画質の何に該当し,どのパラメータに相当するかを理解していること は最低限必要である。それが理解できない以上,臨床画像からの調節は困難である。) ファントムによる調整 → 臨床画像 理論的で 効率的 感覚的で 非効率 臨床画像による調整 → ファントム画像
・ダイナミックレンジは,重要である。しかし,S/F系では それを犠牲にして,コントラスト重視にした。 それを犠牲にして,コントラスト重視にした。 (高ガンマ,狭いラチチュード。いくら高輝度シャーカウテンを採用しても狭いラチチュードを を視覚的に補うことは困難。) ・ディジタルでアナログと同じ画像を望む以上,ダイナミック レンジは犠牲にされる。 ・粒状性は重要である。 ・S/F系では,コントラストを重視して,粒状性を犠牲に してきた。それ以上に悪い粒状性はディジタルでは 異常条件として容易に事前に検出できる。
・高ガンマのS/F系は,粒状性が悪いために,濃度分解能は 必ずしも良くない。 必ずしも良くない。 (これは,有名な「針とビーズの画像」の理論ですでに既知な事実である。FPDなどの ディジタルシステムの濃度階調はそれに対して,劣るとは考えにくい。(実際に十分である)) ・狭い範囲に,広い露光量範囲の情報を描出するのは ディジタルのが得意である。 ・ディジタルでは,最高濃度とコントラストは独立した パラメータである。(最高濃度を上げなければコントラストが不足するのは S/F系の性質による制限である。ディジタルでは独立して考えられる)
目指す画質は,鮮鋭度以外は,ディジタルの性能劣化を強要 することになりかねない。 S/F系の写真 ディジタルの写真 高鮮鋭度 やや劣る鮮鋭性 高コントラスト 高コントラスト (厳しい管理が必要) (容易に実現化) 狭いラチチュード ラチチュード広域化が可 (濃度制御が難しい) (濃度制御は容易) 悪い粒状性 比較的良い粒状性 目指す画質は,鮮鋭度以外は,ディジタルの性能劣化を強要 することになりかねない。 鮮鋭度だけ劣るとも考えられるディジタルは,PACSの様々な利点を加味すれば,鮮鋭度の欠点の占める 割合は,かなり少ないのではないか。
技術の高度化によって,今,求められるもの ・高い読影能力と高い診断的知識 Collaboration ・高度な技術に対応できる画質と機器に 対する知識と経験,さらに臨床現場の 特質を十分に理解できる臨床経験。 (今のところ診療放射線技師が該当する) 単なる,私の私見ではあります。
Digitalの有用性について ・広いダイナミックレンジ ・画像処理 ・保存性,ネットワーク伝送 しかし... この有用性が通用しないのが、乳房の常識。 しかし...
・狭いダイナミックレンジを必要とする? とにかく、高コントラスト!!!
解像度的に必ず劣る。これが絶対的 画像処理、保存性、ネットワーク伝送に関しては... ・画像処理は、読影の一貫性に影響する。 ・画像拡大などの操作が煩わしい。 ・解像度を前提にするので、フィルムにせざるを得なく なり、保存やPACSの話にはならない。 解像度的に必ず劣る。これが絶対的
ディジタル対応のファントム ステップファントムが,特徴である。
ディジタルの欠点 ー 絶対的な解像度の差 ー FPD ピクセルサイズ:0.1mm Min-R 2000 (名古屋市立大学病院ご提供) ー 絶対的な解像度の差 ー FPD ピクセルサイズ:0.1mm Min-R 2000 (名古屋市立大学病院ご提供) (安城更生病院ご提供)
FPD(2000D) ・実は、Min-Rより、同等か小さいレベルまで見える。 ・これは、後に述べる「ノイズ特性」が良いためである。 ・しかし、石灰化の形状は、表現できない。
0.3mmの模擬石灰化(RMI156ファントム) 20μm 30μm 40μm 50μm 70μm 100μm 50~70μm以下なら、形状を再現できそうである。
フィルム画像のディジタイズに用いた機器 ディジタルカメラ Nikon D70 3040x2014-pixel 12bit マイクロレンズ Nikon Micro-Nikkor 60mm f/2.8D XY方向移動式カメラ固定台 エスエス技研 10μm以下のサンプリング ピッチでデータ取得可!
・しかし、50μmのサンプリングピッチであっても、 特性は、それ以下であることが多い。 50μm これも、50μm ・やはり現状では、解像度が満足できるものではない。 ・画素サイズによってほぼ解像度が決まるFPDなら、 満足できる可能性がある。 ただし、解像度がやや低いことは有用性に作用する部分がある。
S/F系の高コントラスト化、高解像度化で 劣化する特性 ・粒状性(ノイズ) →低コントラストな対象の分解能低下 ・ラチチュード →全体的な観察は不可!
解像度に劣るディジタルにおける 粒状性(ノイズ)は...
粒状性(ノイズ) Min-Rシステムの画像 高コントラストなりに、粒状性的に劣る画像。 では、ディジタルではどうか... Fiber pattern がみづらい 高コントラストなりに、粒状性的に劣る画像。 では、ディジタルではどうか...
粒状性(ノイズ) Min-RシステムとFPD(2000D)の比較 Min-R 2000D 粒状性に優れ、低コントラストな対象に有利
ノイズと解像度の関係 FPD(100μm)と Min-Rの解像度の 比較 MTF ・ディジタルでは、サンプリングアパーチャの特性(ピクセル サイズ)によってノイズも抑制される(ノイズもボケる)。 また、付加されるノイズは僅かである。 ・フィルムでは、高解像度ゆえに、ノイズは抑制されにくい。 また、高コントラストフィルムは、フィルムそのものの粒状性が 悪く、それがそのまま 画像に現れる。
粒状性(ノイズ) Min-RシステムとFPD(2000D)の比較 Min-R 2000D ノイズ特性は、解像度による影響が大半となるディジタル が有利。例え、ディジタルの解像が向上しても、付加される ノイズが無く、依然として有利。
ディジタルのダイナミックレンジ の有効性
ディジタルの特徴である、広いダイナミックレンジを 有効に使う技術はほぼ確立されている。 アナログでは、とにかく!高コントラストでラチチュードは 考慮されていない。しかし... ディジタルの特徴である、広いダイナミックレンジを 有効に使う技術はほぼ確立されている。
一般に、高コントラストを実現すれば、濃度の大きく 違う領域は、同時に表現できない。 黒つぶれ 高コントラスト化 コントラスト↑
高コントラストを維持して、広いダイナミックレンジをもつ 画像の作成が、ディジタルでは実現可能 黒つぶれ コントラスト維持 ダイナミックレンジ圧縮 (イコライゼーション) コントラスト維持 こんな話は、もう何度も聞いた。 確かに......
・臨床例は、CRシステムがほとんど。 →CRシステムの処理例では、CRの特性に制限 されてしまう。画像処理は優れたデータで生きる。 そこで、 ・優れた特性を持つFPDで、CRシステムに匹敵した 処理の適用を試みた。 (画像処理技術は CRシステムが先行しているため。)
2000Dの生データに対して、KONICAのHybrid処理を適用 フィルムの特性を 近似した画像 DR圧縮を適用 DR圧縮を適用
DR圧縮なし DR圧縮あり DR圧縮処理は、局所のコントラストに不自然さを与えることはない。
ディジタルの解像度を補う技術 波形再生処理による画像拡大(補間)
・画像拡大処理には、処理速度などの理由で、リニア補間による 単純拡大処理が多用される。しかし、リニア補間は、解像度を 犠牲にする。 画像 フーリエ変換 逆フーリエ変換 周波数領域での補間処理 &周波数強調 拡大画像 波形再生による 拡大処理の過程
波形再生処理による画像拡大 60μmから波形再生拡大 20μm 60μmから単純拡大 サンプリングによる劣化のみの解像度変化にとどめ、 ダウンサンプリング &拡大 20μm 60μmから単純拡大 サンプリングによる劣化のみの解像度変化にとどめ、 さらに周波数処理により解像を補うことが可。
波形再生3倍拡大 単純3倍拡大
ディジタルの有用性 ・ノイズに対しては、有利である。 *F/Sに対して、ノイズの因子が少ない。 ・SN比の高いディテクタにより、画像処理は 非常に有効なものとなる。 *非常に高いコントラストと広いラチチュード の両立 *解像度低下を補う拡大処理 PACSの利点を加味すれば、解像度による欠点は、現時点 でも大きなウエイトを占めるとは考えにくい。
ご清聴ありがとうございました。