年金改革の経済学3
コラム10 社会保険庁改革の決め手は「可視化」 コラム10 社会保険庁改革の決め手は「可視化」 底なしのスキャンダル 政治家や有名人の未納情報の漏洩 年金保険料の福利厚生費(ゴルフ道具やマッサージ機器等)への流用 グリーンピア・サンピアといった年金福祉還元事業の赤字化 国民年金保険料の不正免除
2007年5月に発覚した「年金記録問題」 宙に浮いた年金記録問題 消えた年金記録問題 社会保険庁職員による保険料の横領問題 厚生年金の改ざん問題 遡及(そきゅう)脱退 政府管掌健康保険の診療報酬明細書(レセプト)を抜き取り
社会保険庁の体質 「パソコンの操作時間は45分ごとに15分の休憩」 「1人1日のキータッチは平均5000以内に限る(通常、これは1時間以内の労働量)」 労働組合が「中央集権化の支配機構を強め、独占資本のための合理化である」として、オンライン化に反対運動 しかし、問題の背景は、体質や資質だけではない。ガバナンスの問題。
通常の企業の労働組合というものは、企業の利潤や運営を第一に考える経営者と、利害が対立している組織と位置づけ 社会保険庁という組織には、こうした経営者側との利害の対立がない。 保険料納入とそれが受給に反映されるまでの長い「時点差」の問題 解決策は、国税庁による管理 国民への可視化。預金通帳化、宝くじの発行も一案。
年金問題の解決策 賦課方式から積立方式への移行こそが急務 しかし、「真っ白なキャンバスに今から新しく絵を描くように」積立方式を選ぶことはできず、現在の賦課方式の「清算」をしてからしか積立方式に切りかえられない。 2重の負担問題とは この2重の負担があるために積立方式移行は現実的ではなく、一度、賦課方式を選択した以上は積立方式に戻ることはできないという専門家の主張
積立方式への誤解 ①「2重の負担があるから積立方式に移行できない」 ②「積立方式は個人勘定なので、保険機能を持たない」 ③「積立方式はインフレに弱い」 ⇒これらは全て嘘。 「フィッシャー効果」
積立方式移行の実際
年金債務は、670兆円。積立金は130兆円なので、純債務は540兆円。
世代間不公平の解消はそれほど大きいわけではない。2重の負担が大きすぎる結果。
①老後の年金受給に見合った保険料率と、②2重の負担分の保険料率に、区分経理 ①は、いわば、純粋な積立方式であった場合の保険料率 1980年生まれの5.7%、2010年生まれの7%もの保険料率が、2重の負担分に対応 「積立金を2100年以降も枯渇させない(政府が赤字国債を発行しない)」というルール(制約)の下では、なかなかこれ以上、2重の負担分を減らすことが出来ない。
現実的な改革案 「基礎年金財源の税方式化」と同じタイミングで積立方式移行を図る 厚生年金の基礎年金拠出金分の保険料が不必要。本来、厚生年金の保険料率は大幅に下げることが可能だが、下げずにおいて、将来にわたって保険料率を固定。 見かけ上、保険料率を引上げずに、実は保険料率を一気に引上げたことと同じ効果が得られ、積立方式へ移行可能
2009年以降の保険料率を14.35%に固定することにより、積立方式に移行できる 2008年10月現在の厚生年金保険料率は15.35%なので、ちょうど保険料率を1%引下げることができる計算。 世代間不公平は大幅に解消 2重の負担としてあった膨大な過去の純債務分の追加負担は、基礎年金拠出金が無くなったことにより打ち消された 厚生年金受給者の基礎年金分(1階部分)が無くなるわけではない。
この無くなった2重の負担分は誰が負担しているのかといえば、まずはとりあえず、国が肩代わり。国の負債として区分経理。 この軽減策として、まずは、相続税からの徴収 クローバック制度 基本は消費目的税化。 基礎年金の消費目的税は、国民年金加入者にとっては基礎年金の対価、厚生年金加入者にとっては2重の負担の追加負担分という仕分け
同じ消費税率負担では、厚生年金加入者の負担が重く、不公平。 過去からの相続税徴収分に応じて、税の還付もしくは所得税の控除がなされるという制度導入。 少なくとも初めの30年程度の間、厚生年金受給者の実質的な消費税率(基礎年金目的税から税還付・税控除を差し引いたもの)を低く抑える。 景気を悪化させる効果も抑える 相続税徴収及びクローバックへのプレッシャーも厳しいものになり、取立てが進む。
相続税収がやクローバックが無くなったその後はどうするかといえば、税還付・控除分を持続させるために、国債発行による財源調達 つまり、政府が赤字国債をロールオーバーして負担(積立金がプラスという制約から解き放つ)。 基礎年金財源の消費目的税も積立勘定を持たせて、税率を平準化することが望ましい。