第一章 毎日使う道具の精神病理学 誰のためのデザイン D.Aノーマン □これを理解するには工学士の資格が必要です □毎日の生活の中の不満 第一章 毎日使う道具の精神病理学 □これを理解するには工学士の資格が必要です □毎日の生活の中の不満 □毎日使う道具の心理学 2006/6/8 小野田 篤
これを理解するには工学士の資格が必要です 使い方のわからない最新式のデジタル時計 使いこなせない洗濯機やカメラ 操作方法が理解できないミシン 目的のバーナーを点火できないコンロ 人をまごつかせるドア・・・ デザインの悪いものは、間違った手がかりをユーザに与え、間違わせたり、正しい解釈を邪魔し、使いにくく、使っていていらいらしてくる。 人の頭は巧妙に作られていて、よくデザインされたものは、容易に解釈したり理解したりすることができる。
毎日の生活の中の不満 可視性 ドアには、「開ける」「閉じる」の2つしかない。 毎日の生活の中の不満 可視性 ドアには、「開ける」「閉じる」の2つしかない。 しかし、そのための方法は、押すのか、引くのか、右からか、左からか、横にスライドさせるのか、上にスライドさせるのか等、いくつかの方法がある。 デザインは適切な情報(ドアの開け方)をユーザに伝えなければならない。 このドアはどうやって開けるのだろうか そのために、可視性(visibility)の原則が有効である。どうしたらドアを開くのかを自然に伝えるシグナル(蝶つがい、取手)をドアに埋め込むのである。ユーザが自然に解釈できるデザインを自然なデザインと呼ぶ。
毎日の生活の中の不満 対応付け 映写幕が操作する部屋から見えず、うまく操作できない 毎日の生活の中の不満 対応付け ボタンが1つしかないプロジェクターは、どのようにスライドを進め、どのようにスライドを戻すのかわからない 映写幕が操作する部屋から見えず、うまく操作できない この問題には対応付け(mapping)が大きく関わっている。 このトイレの鍵は、閉まっているのか、閉まっていないのか、自然に対応付けすることができるだろうか?
毎日の生活の中の不満 理解できないデザイン 毎日の生活の中の不満 理解できないデザイン 保留機能が使いこなせない新しい電話機 使いこなせず、ひとつの設定しか使っていないなんでもできる新しい洗濯機兼乾燥機 ユーザがこれらのものを使いこなせない理由 1.教示がよくない 2.操作が可視的ではない 3.操作の結果が目に見えない
毎日の生活の中の不満 まとめ ユーザは操作に関する手助けを求めており、どの部分がどのように機能するか、ユーザがその装置とどのようにやりとりしたらよいかをはっきりさせなければならない。 そのために、可視性を高め、しようとしている行為と実際の操作の間の対応付けをしめす必要がある。
毎日使う道具の心理学 アフォーダンス 『英国国有鉄道の待合室のパネルに強化ガラスが使われている時は、ガラスが割られ、ベニヤ板が使われている時はいたずら書きや、ナイフで削られたりした』 この例にはアフォーダンス(affordance)が関わっている。アフォーダンスとは、事物の知覚された特徴あるいは現実の特徴、とりわけ、そのものをどのように使うことができるかを決定する最も基礎的な特徴の意味で使われる。 ガラスは透き通してみたり、壊したりするためのものである。一方、木は堅さや不透明さが必要な時、支える時、彫刻する時に使われる。そのため、国有鉄道のガラスは割られ、ベニヤ板はいたずら書きされた。 アフォーダンスは物をどう取り扱ったらよいかについての強力な手がかりを提供することができる。
ちょっと寄り道 アフォーダンス アフォーダンスはもともとジェームス・J・ギブソンが「与える/もたらす」という意味のaffordを名詞かして、作り出した言葉である。 アフォーダンスとは、動物に環境が提供する意味・価値のことである。しかし、D・A・ノーマンは環境から動物が読み取る意味・価値であると考えた。 ジェームス・J・ギブソン D・A・ノーマン
毎日使う道具の心理学 毎日使う道具は二万個もある 毎日使う道具の心理学 毎日使う道具は二万個もある 電灯の取り付け具、電球、ソケット、壁掛け式時計、目覚まし時計、筆記具、服の留め具・・・・毎日使う道具は二万個ほどもあるだろう。 それらの道具を使うために、使い方を学ぶ必要がある。ひとつの道具の使い方を学ぶのに一分かかるとしても、二万個の道具の使い方を学ぶために、333時間かかってしまう。 この問題に対して、解答の一部は、人の心がどのように機能するか、人の思考と認知に心理学の中にある。さらに一部には、操作をわかりやすくしたり、操作の良いイメージを持ちやすくしたり、人が既に持っていると思われるほかのものについてのイメージを利用したりするデザイナーの能力にも依存している。デザイナーには、人間に関する知識と、ものがどのように機能するかに関する知識のふたつが重要である。
毎日使う道具の心理学 概念モデル1 上の写真を見て、この自転車では走れないということがすぐわかる。それは、自転車がどのような仕組みで動くのかという概念モデルをもっており、その動きを心の中でシミュレーションしたからである。このようなシミュレーションができるのは、部分が目に見え、その意味するところが明白だからである。
毎日使う道具の心理学 概念モデル2 ものがどのように機能するかについての他の手がかりは目に見える構造、特にアフォーダンスと制約と対応付けからだ。 はさみを見れば、できることは限られていることがわかる。はさみの穴は指を差し込むことをアフォードし、穴の大きさはどの指を使うかを限定するための制約をしめしている。大きな穴と小さな穴により、差し込む指の対応付けもされている。 逆にデジタル式腕時計は、ボタンと機能の間に制約も対応付けもなく使いづらいのである。