2006年度 商法Ⅰ (商法総則・商行為法) ・そもそも大学で法律を学ぶ意味はどこにあるのか? 2006年度 商法Ⅰ (商法総則・商行為法) ・そもそも大学で法律を学ぶ意味はどこにあるのか? ・効果的に法律を理解するためには、どういう点に注意すればよいのか? ・商法、会社法とは法律のどんな分野に関するルールなのか?
法律を学ぶことの意味 卒業に必要な単位を取得 法律知識の修得(資格試験や公務員試験、社会生活における転ばぬ先の杖など) 法律の勉強を通して社会を知る(社会人になるための準備) 法律の解釈を学ぶことを通じて論理的な読解力(読み)、思考力(考え)、表現力(話し、書く)を身につける 論理的思考力は、論理的な大系でできている法律を学ぶことによって自然と身につくはずである。 論理的思考の例として「三段論法」というものがある。これを法律の分野では「法的三段論法」として用いる。
法的三段論法とは? 大前提:法律や判例(またはその解釈)(法規範・ルール) 小前提:事実関係 結論: 大前提(ルール)を小前提(具体的事実)へ適用(あてはめ) ※大前提(X)+小前提(Y)=結論(Z)
法的三段論法の具体例 大前提:刑法199条「人を殺した者は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処する。」 小前提:Aさんは、Bを包丁で刺した。その結果Bは死亡した。 結論:(例)Aを10年の懲役に処する。 Bが大学生のB君であった場合、大学生C君が飼っている犬であった場合、Bが妊婦であり、胎児のCも死亡した場合 ・スポーツなどでも同様 X:野球のルール Y:投手の投げた球が直接打者の足に当たった。 Z:デッドボールとして打者は1塁に進塁できる。
ANSWER X+Y=Zという論理の難しさ 下の(a)と(b)の二つの数式が、どちらも正しいといえるように合理的な説明をしなさい。 (b)は2進数(法)での数式(00=0、01=1、10=2、11=3・・・)、(a)は、10進数(法)、16進数等2進数以外における数式 ANSWER
論理的思考力を身につけるには? 法的三段論法は論理的思考そのもの、法律の勉強にこの論理的思考力は不可欠、ということは、法律をしっかり学ぶことで論理的思考力が養われる そのためには:法律(条文)を知ること、法律解釈の仕方を知ること、過去に裁判所が具体的な事件について法律を解釈し適用することで示された特定の裁判における裁判所の法律的判断(判例)を理解する、多くの判例を理解することで、具体的な事実から法律上の問題点を抽出する力を養う 1 条文を読みこなし、使いこなせるようになること 2 教科書・判例を中心に法律の解釈を学ぶ
商法・会社法とは? 商法(1条1項):商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除いて商法が適用される。 会社法(1条):会社の設立、組織、運営および管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除いて会社法が適用される。 会社法(5条):会社の行為=商行為 商法総則は個人商人、会社法は会社、商行為法は両者を対象とする。
商法・会社法と民法 商法・会社法も民法も私人間の法律関係を規律する法律であり、「私法」に属する点で共通する 民法が一般私人(市民)の生活関係を規律するのに対して、商法・会社法は企業(個人商人・会社)の生活関係を規律する→民法は私法の一般法 商法・会社法は民法に対しては特別法という関係にある 商法や会社法の理解には、民法の基礎知識が必要になる。
例えば 権利能力、意思能力、行為能力、責任能力 意思表示、錯誤、心裡留保、虚偽表示 法律行為、無効、取消し 債権と債務、債務の履行・不履行 契約、不法行為 有償と無償 代理、無権代理、表見代理 時効(取得時効と消滅時効) 登記 法人(格)
会社の種類(1) 株式会社=公衆に散在する小額資本を広範に結集し、大規模経営を可能にする共同企業形態。 ⇒出資者自ら経営に参加するとは限らない(所有と経営の分離:ただし、株式譲渡制限会社は所有と経営を一致させることも可能) ⇒社員(=株主)の間接・有限責任、資本充実維持のための厳格な規制、社員の地位の株式化、社員の地位の自由譲渡性(127Ⅰ)、株式の無記名証券性⇒株券を発行しないのが原則、株券を発行する場合は定款で定める:株券発行会社と呼ばれる(214)
会社の種類(2)持分会社 合名会社=出資者自ら経営に携わり、会社の債務につき無限責任を負う資本家(無限責任社員)のみが結合した形態 合資会社=自ら経営に携わり、会社の債務につき無限責任を負う資本家(無限責任社員)と、一定額の出資を行い、その範囲内でのみ責任を負う資本家(直接・有限責任社員)が結合した形態 合同会社=社員の間接・有限責任という株式会社の特徴と、内部関係に組合的規律が適用される人的会社双方の特徴を併せ持つ会社形態
会社は商人か? 会社法上、会社を商人であると明示する規定はないが、会社法5条は、「会社がその事業としてする行為」および「その事業のためにする行為」を商行為とする→従来の商事会社・民事会社という区別がなくなった。 会社は法人である(会3)から、会社は、「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」(4Ⅰ)といえる。 会社は商人であり、504条以下の商行為には会社の事業行為も含まれ、商人には会社を含むものと解する