音の物理的性質(その2) 距離減衰(幾何減衰)(attenuation by wave divergence)

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音の物理的性質(その2) 距離減衰(幾何減衰)(attenuation by wave divergence) 音の反射(reflection)・透過(transmission)・屈折(refraction) 音の回折(diffraction) 遮音壁・防音壁(Barriers)の効果 伝播予測モデル

距離減衰(幾何減衰)(attenuation by wave divergence) 音源は、受音点までの距離によって、 面音源 ⇒ 線音源 ⇒ 点音源 と見なせる。

音波の反射・透過・屈折 ①入射波・屈折波・反射波の進む方向と境界面の法線はすべて同一面内にある。 ②入射角と反射角は等しい。 ③光の屈折に関する〝スネル(Snell)の法則〟が成り立つ。

反射(reflection)については、 すなわち直角入射では、反射率 は、 空気から水や固体に入射する場合を考えると、  空気          水            鉄 エネルギーとしては99.9%以上が反射されることがわかる。

屈折(refraction)または透過(transmission)については、 透過率(transmission coefficient):tは、であるから、 すなわち直角入射では、透過率 は、 空気中からコンクリート壁面に透過する透過率を求めてみる。 空気の       程度に対し、コンクリートの比重を2.5,音速を4500 m/sとおくと、                          である。 したがって、                であり、40 dB程度エネルギーは減少する。 このように、壁による音の透過のうち、波の形で透過していくものは一般に無視できることがわかる。

異常伝播

音の回折(diffraction) 〝ホイヘンス(Huygens)の原理〟 『ある瞬間の波面上のすべての点はあらたに1つの波源となって球面波を送り出す。これを要素波(elementary wave)と名付ける。短い時間がたった後の波面は、これらの要素波の波面に共通に接する曲面(包絡面)である。』

回折減衰量:遮音壁・防音壁の効果 フレネル数(Fresnel number):Nを用いて、半無限障壁の減衰曲線から求める。 経路差:δ 波長 :λ フレネル数 N の〝正負〟 幾何学的に受音点 R が障害物の影に入る場合を〝正〟 逆に音源 S から受音点 R が見通せる場合を〝負〟 回折減衰量は、 同じ経路差の場合は、波長が短い(周波数が高い)ほど大きい 同じ波長(周波数)の場合は、経路差が大きいほど大きい

半無限障壁の回折減衰

半無限障壁の回折減衰曲線の近似式

PWL と SPL の関係 点音源 自由空間 半自由空間 線音源 自由空間 半自由空間

フレネル数 N<0の領域 騒音コンター 89 86 83 80 77 74 71 フレネル数 N>0の領域

車両が位置によって大きさの変わる固定の騒音源 伝播予測モデル 1 2 9 4 3 8 5 7 6 車両が位置によって大きさの変わる固定の騒音源 伝播予測モデルの開発により、車両の種類や速度に関係なく、時間的にのみ蠕動する点音源として考えることが出来、簡単に欲しい場所の音圧レベルを求めることができます。● 全て違う音

簡易的伝播予測モデル <車両走行音の騒音源> 車両の中心に 移動する点音源 車両の中心とタイヤ位置に 同じパワーレベルの線音源  具体的に言うと、従来のモデルで、車両の中心に移動する点音源があったものを、本モデルでは車両の中心とタイヤの位置に同じパワーレベルの線音源があるとした。

簡易的伝播予測モデル <車両走行音のパワーレベル推定方法> 車両の種類や速度に関係なく 時間的に蠕動する騒音源の設置が可能 測点① 測点② 伝播予測を行いやすくするため 測点① 測点② 測点① 測点②  そのパワーレベルの推定方法は、先ほどの線音源を、測点を中心に有限長に分割し、その測点①はこの6本の線音源・測点②はこの6本の線音源から発生している音のみ測定しているものとし、測定データと一致するようにこれらのパワーレベルを求めた。  そして、伝播予測の計算をしやすくするため、その線音源のパワーレベルに長さを乗じ、測点と同じ断面内にある点音源とした。  これによって、車両の速度や位置に関係なく時間的に蠕動する騒音源の設置が可能になった。 車両の種類や速度に関係なく 時間的に蠕動する騒音源の設置が可能

簡易的伝播予測モデル <橋梁固体音の騒音源と推定方法> 全て違う音が発生する騒音源 主桁 垂直補剛材 A4 A3 A2 A1 測点② 測点① 内挿法によって求める  また、橋梁固体音については、上下フランジと垂直補剛材で区切られた面A1~A4から音が発生しているとし、測点①は面A1・測点②は面A4から発生している音のみ測定しているとした。そして、これらの測定データと一致するような点音源のパワーレベルを求め、測点が無い面A2A3においては内挿法によって求めることとした。  これにより、全て違う音が発生する騒音源を設置が可能となった。 また、伝播経路においては、従来のモデルと同様にした。 全て違う音が発生する騒音源

伝播予測モデル <伝播経路と減衰量のモデル化> 減衰量=距離(幾何)減衰 +回折減衰(前川の実験式) 音源 受音点 ① 回折点 D 反射点 1 音源 反射点 減衰量=距離(幾何)減衰       +回折減衰(前川の実験式)

西倉橋への適用 交通量が少なく、間欠騒音が生じている 西倉橋 測定区間 310000 2×61600=123200 3×61600=184800 8546 772 411 3085 2500  このような考えで開発した伝播予測モデルを西倉橋へ適用した。  この橋は、交通量が少なく、間欠騒音が生じていると捉えることにした。 西倉橋 交通量が少なく、間欠騒音が生じている

西倉橋-測定概要図 近い位置 遠い位置 支間中央 支間1/4点 高い 低い 測 点 :普通騒音計 測 点 :普通騒音計+低周波音レベル計 10000 15400×4 =61600 8300 1200 測 点 :普通騒音計 測 点 :普通騒音計+低周波音レベル計 予測点:普通騒音計+低周波音レベル計 近い位置 低い 遠い位置 支間中央 支間1/4点 高い  その方法として、橋近傍の黄色い測点のデータを用い、橋周辺の水色の予測点での音圧レベルの時間変動を予測し、そこの実測データと比較を行った。  ここで、緑色の予測点について、実測値と予測値の時間変動を見てみるとします。 西倉橋-測定概要図

西倉橋への適用 大型車が2台連続して測定区間に進入した時 実測値と予測値のA.P.値の時間変動 大型車 大型車  このような結果になり、実測値と多少の差があるものの、変動の様子を予測できたということが言える。  このグラフは、A.P.値のみの結果であるが、周波数スペクトルにおいても同様な結果となった。 実測値と予測値のA.P.値の時間変動

西倉橋への適用 大型車が2台連続して測定区間に進入した時 データ数 : 102 相関係数 : 0.96 実測値と予測値の関係図 データ数 : 102 相関係数 : 0.96  また、これを相関図で示すと、実測値と予測値が良くあったことと、相関係数が0.96となったことより、橋周辺の音圧レベルの時間変動を充分に予測できたといえる。

和南津橋への適用 交通量が多く、変動騒音が生じている 和南津橋 測定区間 次に、伝播予測モデルを和南津橋へ適用してみた。  次に、伝播予測モデルを和南津橋へ適用してみた。  この橋は、交通量が多く、変動騒音が生じていると捉えることができる。 和南津橋 交通量が多く、変動騒音が生じている

和南津橋-測定概要図 遠い位置 近い位置 支間中央 支点位置 高い 低い 測 点 :普通騒音計 測 点 :普通騒音計+低周波音レベル計 測 点 :普通騒音計 測 点 :普通騒音計+低周波音レベル計 予測点:普通騒音計+低周波音レベル計 9000 12250×2 =24500 8300 1200 6000 遠い位置 近い位置 支間中央 支点位置 高い 低い  その方法は、西倉橋の場合と同様に、橋近傍の黄色い測点のデータを用いて、橋周辺の水色の位置での音圧レベルの時間変動を予測し、実測データと比較を行った。  ここでは、緑色の予測点の実測値と予測値の音圧レベルの時間変動を見るととする。 和南津橋-測定概要図

和南津橋への適用 5分間の測定データ 実測値と予測値のA.P.値の時間変動 5  すると、このように、音圧レベルに多少の差はあるものの、変動の様子を充分予測できたと言える。また、周波数スペクトルにおいても同様な結果が得られた。 5 実測値と予測値のA.P.値の時間変動

和南津橋への適用 5分間の測定データ データ数 : 3000 相関係数 : 0.97 実測値と予測値のA.P.値の関係図 データ数 : 3000 相関係数 : 0.97  また、これを相関図で示すと、このようになり、実測値と予測値がほぼ同様であることがわかる。また、相関係数が0.97となったことより、橋周辺の音圧レベルの時間変動を充分予測することができたと言える。

路面より低い地点で騒音を低減できることが予測できる 伝播予測モデルの応用 現橋の等価騒音レベルの分布図 伝播予測モデルの開発により、今後、騒音対策を行う道路橋において、その効果を事前に知ることが可能となりました。 そこで、ここでは伝播予測モデルの応用として、坂田橋について2つの騒音対策の例をあげ、その効果を予測してみることとしました。 まず最初に橋梁固体音を3dB下げるような改修工事を行った場合について、その効果を予測してみました。 2つの等価騒音レベルの分布図を比べてみると、改修工事を行うと橋の路面より低い地点で騒音を低減でき、路面より高い地点では、効果が現れないことがわかります。 橋梁固体音を3dB下げるような改修工事を行った場合の          等価騒音レベルの分布図 路面より低い地点で騒音を低減できることが予測できる

遮音壁を設置することは非常に効果的であると予測できる 伝播予測モデルの応用 現橋の等価騒音レベルの分布図 次に1.5mの遮音壁を設置した場合についてその効果について検討してみます。 2つのグラフを比較してみると全地点において騒音が低減できることがわかります。 このことから、遮音壁を設置することは非常に効果的であるといえます。 この理由としては、コンクリート道路橋においては、橋梁固体音よりも、走行音が支配的であるためと考えられます。 1.5mの遮音壁を設置した場合の等価騒音レベルの分布図 遮音壁を設置することは非常に効果的であると予測できる

伝播モデル(左、後) 建物が左にある場合(騒音計2) 建物が後にある場合(騒音計3 ) 伝播予測モデルについて説明します。 建物が左にある場合は区間1では回折と反射を考慮する。区間2では回折のみを考慮する。 建物が後にある場合は区間1,3は直接伝わる騒音を考慮。区間2では反射も考慮しなければならない。

LAeqコンター図 建物 建物 建物 このような配置について予測することができます。 建物