東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科 清水 悦郎

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Presentation transcript:

東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科 清水 悦郎 ロボット工学Ⅱ 東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科 清水 悦郎

講義概要 本講義では,ロボット工学Ⅰの講義内容を基に,多関節マニピュレータ,移動ロボット,水中ロボット等を対象として,設計法,解析法,制御法をより具体的に学ぶ.    1) ロボットの設計    2) ロボットの運動解析    3) ロボットの制御系設計    4) 数値シミュレーション

本講義で用いる数学(1) ベクトル,行列 ベクトルの内積

本講義で用いる数学(2) ベクトルの外積

本講義で用いる数学(3) 三角関数関係

本講義で用いる数学(4) 常微分と偏微分   ここでは                   という関数を考える   偏微分:   常微分:

運動の解析(1) 並進運動と回転運動 A点とB点の速度ベクトルが同じ(図a),剛体は並進運動している. A点とB点の速度ベクトルが異なる場合(図b),剛体は回転運動している.

運動の解析(2) 並進運動と回転運動 右図に示すような円盤の回転を考える. 角速度ωは,平面と直交する方向に“右ねじ”方向を正として,定義される. 円盤の半径をrとした場合,円周の速度vは以下のように定義される. ベクトルvとvの定義される点から中心へのベクトルは直交する.

運動の解析(3) 並進運動と回転運動 回転運動する剛体の場合,剛体中の任意の点の速度ベクトルが既知ならば,回転中心はそれぞれの速度ベクトルから垂線を引き,その垂線が交差する点である. もし垂線が一致してしまう場合には,回転中心は特定できないため(速度ベクトルの大きさが分かっている場合を除く),別の速度ベクトルを用いる

運動の解析(4) 並進運動と回転運動 角速度の定義より,“外積”を用いることにより,角速度によって発生する速度ベクトルを求めることが出来る. また,二つのベクトルに直交するベクトルも,“外積”で求めることができる.

運動の解析(5) 例題) 遊星歯車機構の解析

運動方程式の導出(1) ここでは二次元平面内を運動する2LINKマニピュレータを考える 左図のような2LINKマニピュレータを考える.各リンクの重心までの距離を    ,質量を    ,重心点周りの慣性モーメントを    とした場合の運動方程式を導出せよ Joint2 Joint1

運動方程式の導出(2) Lagrangeの方程式 を用いて運動方程式を導出する.ただしLはLagrangianといい, であり,  は各リンクに加えられる力を表す

運動方程式の導出(3) はじめに各リンクの重心の座標を , とすると以下のように表すことが出来る はじめに各リンクの重心の座標を     ,     とすると以下のように表すことが出来る それぞれを時刻tで微分することによって速度を求める

運動方程式の導出(4) 各リンクの速度

運動方程式の導出(5) 運動エネルギーと位置エネルギーを求める

運動方程式の導出(6) Lagrangianは以下のようになる これをLagrangeの方程式に代入することにより2LINKマニピュレータの運動方程式を求めることが出来る

運動方程式の導出(7)

運動方程式の導出(8)

運動方程式の導出(9)

運動方程式の導出(10)

運動方程式の導出(11) 運動方程式は以下のようになる

運動方程式の導出(12) 運動方程式をシンプルに表現するために以下のようにベクトルを定義する 上記のベクトルをもちいて運動方程式を以下のように書き換える

運動方程式の導出(13) ただし各行列は以下の通りである

運動方程式の線形近似(1) Manipulatorの運動方程式 この運動方程式を原点 の近傍にて線形近似(一次近似)する

運動方程式の線形近似(2) 関数      の          近傍でのTaylor展開

運動方程式の線形近似(3)

運動方程式の線形近似(4) Manipulatorの運動方程式の線形近似 ただし     は以下の定数行列である

運動方程式の線形近似(5) Manipulatorの運動方程式の線形近似 線形運動方程式が求められれば 線形制御理論を適用することが出来る!!

運動方程式の線形近似(5) Manipulatorの運動方程式の線形近似 線形運動方程式が求められれば 線形制御理論を適用することが出来る!!

ロボットの線形制御(1) 線形近似した1 link Manipulatorの運動方程式を基に目的の動作をさせるための制御入力を求める まず,システムの安定化が必要 という入力  を加えてシステムを安定化する

ロボットの線形制御(2) 安定とは? 時間が経過するとある一定の状態内に収まること 微分方程式をラプラス変換すると

ロボットの線形制御(3) よってラプラス逆変換を行うと           であるならば安定となる となるように    を選ぶ

ロボットの線形制御(4) 安定化されたシステム 目的の動作が決まっているのであれば,目標となるロボットの動きを数式で表現できる 目標となる各関節の角度を       とすると

ロボットの線形制御(5) とすると とおくと   は安定であるから  となる

ロボットの線形制御(6) つまり以下のような入力 を加えることにより目標値追従制御できると考えられる

ロボットの線形制御(7) ゲイン   の選び方の例       となればシステムを安定化できるので,先に     を決める 後は展開して係数比較により    を決定する

ロボットの非線形制御(1) 線形近似により求めた制御入力で満足な制御性能が得られない場合には? 非線形制御を考える必要がある

ロボットの非線形制御(2) 以下の入力を加える するとシステムの運動は以下の式で表すことができる さらに以下の入力を加えることを考える

ロボットの非線形制御(3) 最後に の目標値を  として以下の入力を加える するとシステムは以下の運動方程式に従って動くことになる

ロボットの非線形制御(4) つまり線形制御の場合と同様に が安定となるように を選べば入力 によって目標値追従制御は達成できる が安定となるように   を選べば入力 によって目標値追従制御は達成できる なお,目標値は,逆運動学や教示により与えられる

スチュアート型プラットフォームの場合 プラットフォームの位置が決定した場合,リンクの長さを求めること(逆運動学)は簡単 順運動学は難しい

スチュアート型プラットフォームの動作例

運動モデルの導出(1) 上部(End plate),下部(Base plate)のプラットフォーム上における足の位置を,それぞれの座標系   ,   で定義する(   ,   ) Base plateからみたEnd plateの位置座標が   で表されるとする End plateの座標系をBase plateの座標系に回転変換する回転行列を  とする 足の長さ“  ”をベクトルとして表すと以下のようになる

運動モデルの導出(2) 回転行列

運動モデルの導出(3) 回転行列 位置ベクトル    ただし     は     軸からの角度を表す

運動モデルの導出(4) 足の位置ベクトル 足の長さ

運動モデルの導出(5) 足の長さに関する式   より,右図のようなリンク機構の場合,逆運動学は簡単に解くことが出来るが,順運動学は解くことが難しい 足が6本の場合には,以下に示すような方法がある

運動モデルの導出(6) 足ベクトル(6本足の場合)

運動モデルの導出(7) ヤコビアン

運動モデルの導出(8) ヤコビアン に逆行列が存在するならば,以下のように変形できる ヤコビアン    に逆行列が存在するならば,以下のように変形できる この式を積分することにより,順運動学問題を解くことができる

パラレルリンクの順運動学(1)

パラレルリンクの順運動学(2)

船舶の運動モデル North-East down coordinate system (NED) Usually defined as the tangent plane on the surface of the Earth. Body-fixed coordinate system (BODY) Moving coordinate frame which is fixed to the ship.

Notations of SNAME(1950) Forces and Moments Linear and Angular Velocities Positions and Euler Angles Motions in the x-direction (surge) Motions in the y-direction (sway) Motions in the z-direction (heave) Rotation about the x-axis (roll, heel) Rotation about the y-axis (pitch, trim) Rotation about the z-axis (yaw)

Relation between Notations Hydrodynamics SNAME Motions in the x-direction (surge) Motions in the y-direction (sway) Motions in the z-direction (heave) Rotation about the x-axis (roll, heel) Rotation about the y-axis (pitch, trim) Rotation about the z-axis (yaw)

運動学モデル (6DOF) 運動学は動きの幾何学的関係を扱う 運動学モデルはNEDとBODYの間の座標変換を意味する

動力学モデル (6DOF) 動力学とは動きの原因となる力の解析である モデルはニュートン力学と流体力学からなる ニュートン力学モデルは以下のようになる - Forces

動力学モデル (6DOF) ニュートン力学モデルは以下のようになる - Moments 流体力学によるforcesとmomentsは以下の変数より与えられる

Mathematical Model (6DOF) 6DOF Mathematical Model (BODY)

Mathematical Model (6DOF) 6DOF Mathematical Model (NED)

船舶用のモデルの簡略化 船舶用として以下の制御が知られている - Autopilot - Way-point Control - Dynamic Positioning Systems - Anti-rolling Control 6 DOF nonlinear modelは複雑なので,一般には,適切な近似が用いられる

Ex.) Autopilot Nomoto Model (1957) , : Nomoto time and gain constants : Rudder angle Yawの動きのみを取り出している

Ex.) Autopilot Nomoto Modelの求め方 Kinematics Dynamics

Contents 10月 2日 第 1回 ガイダンス,本講義で使う数学 10月 2日 第 1回 ガイダンス,本講義で使う数学 10月 9日 第 2回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(1) 10月16日 第 3回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(2) 10月23日 第 4回 休講 10月30日 第 5回 マニピュレータの運動制御 12月11日 第 6回 パラレルリンク機構の運動モデル 12月18日 第 7回 パラレルリンク機構の運動モデル 1月 8日 第 8回 船舶の運動モデル 1月15日 第 9回 セミアクティブサスペンションの運動モデル 1月22日 第10回  1月29日 第11回  2月 5日 第12回  2月12日 第13回 

移動ロボットの運動モデル 左図のような移動ロボットの運動モデルは以下のようになる この移動ロボットに対して,制御入力を以下のものとして制御系を設計する

移動ロボットの線形近似モデル (定数)として線形近似すると以下のようになる       (定数)として線形近似すると以下のようになる つまり,移動ロボットが一定速度で動いている場合には    に関しては制御できるが,      の場合は制御できない

移動ロボットの運動制御 制御系の設計法の一つとして,時間軸を変換する手法がある “時間”とは単調増加するものであるから,適切な“単調増加する状態量”をもちいて新たな時間軸とすることができる 移動ロボットの場合,  を時間軸としてシステムを変換すると以下のようになる

移動ロボットの運動制御 この場合, を用いて が単調増加するように制御する(速度は変化しても構わない) この場合,  を用いて  が単調増加するように制御する(速度は変化しても構わない)   が増加している限り,     は速度変化に関係なく,制御することができる 時間軸を変換した後,    を線形近似すると以下のようになる

Contents 10月 2日 第 1回 ガイダンス,本講義で使う数学 10月 2日 第 1回 ガイダンス,本講義で使う数学 10月 9日 第 2回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(1) 10月16日 第 3回 多リンクマニピュレータの運動方程式の導出(2) 10月23日 第 4回 休講 10月30日 第 5回 マニピュレータの運動制御 12月11日 第 6回 パラレルリンク機構の運動モデル 12月18日 第 7回 パラレルリンク機構の運動モデル 1月 8日 第 8回 船舶の運動モデル 1月15日 第 9回 セミアクティブサスペンションの運動モデル 1月22日 第10回 移動ロボットに対する制御系設計 1月29日 第11回 産業ロボットの現状と課題 2月 5日 第12回 ロボットと人間 

産業用ロボットとは?(1) 産業用ロボットとは,JIS(日本工業規格)には以下のように定義されている   “自動制御によるマニプレーション機能又は移動機能を持ち,各種の作業をプログラムによって実行でき,産業に使用される機械”  (参考)ロボットとは?    ・ 複雑精巧な装置による人工の自動人形.自動人間    ・ 一般に,目的とする操作・作業を自動的に行うことの出来る機械      または装置    ・ 他人に操縦されて動く人.傀儡

産業用ロボットとは?(2) 産業用ロボットは,労働者の作業を代行する機械として開発され,主な目的は単純な繰り返し作業や危険作業,劣悪環境下での苦渋作業からの開放などであったが,近年は,生産性向上,労働災害防止,労働環境改善などを目的とする傾向も強くなってきた 産業用ロボットは,数多くの技術を組合せたシステム商品であり,アクチュエータ,メカニズム,センサ,コントローラおよびソフトウエアなどに先端技術が多く使われている 腕の運動形態からみると,ある目的の場所へ腕を動かすためには3次元空間移動の制御が必要であり,少なくとも自由度は3つ必要である.さらに腕の先端にある把持部に回転,曲げ,把握の3自由度を付加し,合計6自由度があれば,産業用として通常必要な作業を行うことができる

産業用ロボットとは?(3) 動力システムは,開発当初,油圧式が多く使用されていたが,低価格や良好な制御性から,今ではほとんど電気式に置き換わっている 関節部に使用されるアクチュエータは,減速機付き電動サーボモータがほとんどであるが,腕の中に収納しきれる小型高トルクのダイレクト・ドライブ・モータへの要求が強い.電動サーボモータにはDC方式とAC方式とがあるが,最近ではメンテナンスフリーの AC方式を採用するものがほとんどである 腕では,近年,軽量化・高剛性化の要求から,材質をアルミ合金化あるいはハニカム構造化するなどの技術開発が進んでいる

産業用ロボットとは?(4) 物体をつかむために必要な把持部は,つかむ物体の形状,大きさ,硬さ,柔らかさ,表面状態などに応じ,いろいろの機構のものを用意する必要がある つかむ物の位置・姿勢などを検知するため視覚センサを備えているものや,力検出センサにより物を壊さないように柔らかくつかむものもある 産業用ロボットの腕や把持部を自由に動かすためには,これらに備えられたアクチュエータに指令信号を送ったり,センサからの位置データを受け取ったりする制御装置が必要である

産業用ロボットとは?(5) 制御装置は,人間から教示された作業指示を記録し,作業開始の指令によってそれを再生し,腕や把持部に必要な動作指令を送ることである 動作経路の教示方式として,全軌道,全経路が指定されている CP制御方式と経路上の通過点が飛び飛びに指定されているPTP制御方式とがあり,前者は塗装や溶接などの作業を連続的に行う場合に,また後者はプレスやスポット溶接作業などに用いられる ロボット本体重量は搬送すべき対象物の15~30倍必要とされているが,これは人間と比べると約10倍以上の開きがあり,今後の産業用ロボット開発の大きな課題である

参考)ロボットのカタログ

参考)産業用ロボットの稼働台数

参考)産業用ロボット生産台数 ロボット生産台数と特許出願数の推移(特許庁HPより)

産業用ロボットの歴史(1) 世界初の産業用ロボットの実用機は,共に1961年に発表された,米国ユニメーション社の「ユニメート」,AMF社の「バーサトラン」である わが国の産業用ロボットは,1969年に川崎重工業がユニメーション社との技術提携して,国産「ユニメート」の生産を開始した頃から急速に発展した.これは自動車ボディーのスポット溶接ラインに投入された

産業用ロボットの歴史(2) 1970年代に入ると,ファナック,富士電機製造,安川電機製作所が円筒座標型や多関節型ロボットの実用機を開発し,1970年後半になると神戸製鋼所と東芝との共同開発により,水平多関節型ロボット(通称スカラロボット,SCARA,Selective Compliance Assembly Robot Arm)が完成した 1980年初頭には,国内各社が産業用ロボットの開発に参画し産業用ロボット開発競争の幕開けとなった

産業用ロボットの歴史(3) 産業用ロボットは,導入の初期,主に作業者の単純な繰り返し作業や悪環境下での苦渋作業からの開放を目的に使用されていた その後,組立作業,検査・保全作業,建築・土木作業,農林・水産業,さらに原子炉の保守・点検作業,水中作業などの極限作業用へと用途が広がっている 最近は,介護・医療・福祉用,地震・風水害などの災害対策用など,非製造業分野のロボットの開発にも目が向けられている

構造別種類(1) 円筒座標系ロボット ・ ベース軸に回転関節,ほかは直動関節をもつ形状 ・ 作業範囲に比べて設置面積が少ない    ・ ベース軸に回転関節,ほかは直動関節をもつ形状    ・ 作業範囲に比べて設置面積が少ない 極座標系ロボット    ・ 回転関節が2つ,直動関節を1つ持つ形状 直交座標系ロボット    ・ すべての関節を直動関節により構成したもの.    ・ 位置決めに高い精度を出すことが出来る    ・ 動作の自由度は少ない    ・ 作業範囲に比べロボット本体の占める空間が大きい

構造別種類(2) 産業用ロボットの構造により以下の3つに分類される    -円筒・極座標系型,直交座標系型,多関節型

産業用ロボットの種類 産業用ロボットの分類(経済産業省の資料より) 製造業分野 溶接 自動車ボディスポット溶接,橋梁溶接など 塗装 自動車ボディ塗装,携帯電話塗装など 研磨/バリ取り 化粧台研磨,鋳鉄バリ取りなど 入出荷 パレタイズ,物流システム 作業支援 パワードスーツなど 組立 自動詰替,自動車組立など 非製造業分野 農林業用 6脚林業用,自動田植など 畜産 搾乳など

溶接ロボット アーク溶接やスポット溶接を行う

塗装ロボット 吹き付け塗装を行う

組立ロボット 部品の嵌め込みや,自動車工場にてガラスや扉の組立を行う

農林業用ロボット・畜産ロボット 林業用ロボットとは,木の伐採,運搬作業を行うために使用される.現在は,不整地を移動するために,車輪ではなく脚を利用して移動するロボットが利用されている 畜産ロボットとしては,牛の搾乳を自動的に行うロボットがある

産業用ロボットのシステム構成例 産業用ロボットは,アクチュエータ,メカニズム,センサ,コントローラ,プログラムによって構成される ロボット単体では,何も作業を行うことが出来ず,作業内容を指示するプログラムが必要である

産業用ロボットのプログラム 現在では産業用ロボットを取り扱う作業(ティーチング,検査等の作業)は危険・有害作業に認定されている その作業に従事する技術者は労働安全衛生法により,特別な教育を受けることを義務づけられている(ただし,駆動用原動機の容量が小さく,動作範囲の狭いロボットは除外) プログラム言語はメーカーごとに開発されており,基本的に互換性はない 一般に,PTP制御やCP制御が用いられている ステップ毎の姿勢を指示し,ロボットはその姿勢となるように動作する(すべての動作を指示することも可能) ステップ間の移動には,直線移動,円弧補間,曲線補間などがある 基本的には,各関節ごとに制御を行っているのみ

PTP制御 PTP制御のプロセスを図で表すと以下のようになる 与えられた最終手先位置を実現するための各関節の角度(目標関節角度)を求め,それより,動力システムの動作目標を設定し,その動作目標に応じて動力システムを動作させる PTP制御では現在位置から最終位置まで,どのような軌跡を描くかは考慮していない PTP制御での軌道制御のポイントは,各軸を同期させることである 逆運動学 目標 関節角度 最終 手先位置 軌道生成 動力システム の制御 動作目標 現実の動作

CP制御 CP制御は移動する際の軌跡も考慮するもので,そのため,逆運動学を時々刻々解かなければならない 目標となる各位置をつなぐ軌跡は,直線補間,曲線補間,スプライン補間により行われる CP制御では,補間の仕方により動力システムで発生できないような力を要求したり,また,移動先で作業させるためには不適切な手先姿勢となることもあるので,補間方法には注意が必要である 軌道生成 目標軌道 目標 手先経路 逆運動学 動力システム の制御 関節角度 現実の動作

プログラム言語例

産業用ロボットのコントローラ PTP制御,CP制御が可能 ベーシックのような言語でプログラムを行える ティーチペンダントによるプログラムも可能

産業用ロボットの現状 産業用ロボットの得失 人間のように休憩がほとんど必要ないため生産性の向上がはかれる 一台のロボットで動作が決まれば,複数の機種に容易に対応することが可能 人間を労働災害・単純作業から開放することが出来る 製品品質を一定に保つことが出来る 大きさにもよるが一体数百万程度のコストが必要 作業内容が変更となった場合には再度,プログラミングが必要 ティーチングを行う際には,現場のロボットを使う必要があり,工場ではラインを止めなくてはならず,手間,経済的負担は少なくない

産業用ロボットの今後(1) 産業用ロボットは,主に生産用のニーズから人間の代わりに物を生産するものとして発展してきたが,近年,これまでとは異なる社会ニーズが生じ,そのニーズに対応することが試みられるようになってきた 新たな社会ニーズとしては,まず,技能者の不足が挙げられる.これは産業の空洞化や従業員の高齢化に伴う熟練技能者の不足と,苦渋作業や単純作業を敬遠する作業者の増加によるものである.このため,技能者に代わる操作性,動作精度や異常検出に優れた産業用ロボットの技術開発が要請されている 自動車製造ラインなど製造部門においては,一通りの自動化が完了したものの,設備稼動率の向上,不良率の低減,時短や労災防止などに対応しながら,さらなる生産性の向上をめざすために,スピード,軽量化,動作精度や異常検出の向上といった技術の開発が求められている

産業用ロボットの今後(2) 原子力設備の保守・点検,解体作業や放射性廃棄物の処理作業など,過酷環境下の作業を人に代わって行わせるために,移動性,外界認識,自立性の高度化のための技術の一層の発展が望まれている 今後深刻になる高齢化社会からのニーズとして,高齢者の自立生活を手助けするロボットや,寝たきり老人の介護・医療サービス用のロボットが求められており,操作性,柔軟性や外界認識に関する新技術の開発が期待される 将来は,人間に代わって産業用ロボットが,農薬散布や農作物の収穫作業,伐採した木材の集材作業,高層建築物や水中での鉄筋組立溶接・コンクリート打設・壁面塗装,トンネル内壁面の保守点検作業,荷役,清掃や深夜警備などの作業を行うことも期待されている

産業用ロボットの今後(3) このような社会ニーズに対応するためには,マイクロコンピュータ技術が必要である 産業用ロボットにこの技術を取り込み,外界認識,学習機能などの制御機能を高度化することより,不整地走行や二本足歩行などの移動装置の多様化,手首・指の動作の柔軟性の向上などを可能にする技術の開発が進められている

安全と安心 安全(Safety): 安らかで危険のないこと.平穏無事.物事が損傷したり危害を受けたりするおそれのないこと.   安らかで危険のないこと.平穏無事.物事が損傷したり危害を受けたりするおそれのないこと.   Safety is the state of being safe from harm or danger. 安心(Security):   心配・不安がなくて心が安らぐこと.また,安らかなこと.   A feeling of security is a feeling of being safe and free from worry. 安全は買うことが出来るが安心は買うことが出来ない. ロボットにおいて“安心”をどのように実現するか,今後の課題である

人間工学 最終的に操作を行うのは人間なので,人間にとって,“使いやすさ”,“満足感”,“安全性”,“効率性”,“快適性”などが要求される 上記の問題から,“人間工学(ergonomics)”という学問が誕生した 人間工学とは,“すべての事態のもとにおける人間について,生理学的・解剖学的ならびに心理学的な諸特性・諸機能を解明し,人間に最も適合した機械装置を設計製作したり,作業場の配置を合理化し,作業環境条件を最適化するための実践科学である”と定義される 人間工学が扱われる主な対象は,機器のインタフェース部分,特にマンマシンインタフェースに適用される マンマシンインタフェースとは,人間と機械の接触空間のことで,情報入力装置,表示機器のことをいい,人間が扱いやすいものが望まれる

人間工学的に作成されたもの キーボード マウス 爪きり ボールペン ペットボトル など

緊急時における人間工学 ロボットにおいて,最も人間工学を考えなければならないときは,緊急事態時であり,多くの安全対策が必要となる.   (a)緊急時の表示・認識   (b)緊急時の警告音   (c)緊急時の行動

緊急時の表示・標識に求められる要件 誘目性のあること 見やすい絵や文字の大きさであること 表示内容が瞬時に理解できること 視力に配慮が必要な人でも見やすいこと 人々の視線がいきやすい方向に設置されていること できるだけ多くの方向から確認できること 物陰になりにくいこと 暗い環境でもみえること

緊急時の警告音に求められる要件 緊急信号,危険信号,警告音に分類される 緊急信号:直ちに危険区域から避難することを指示   緊急信号:直ちに危険区域から避難することを指示   危険信号:救出・安全確保のために緊急の行動を取ることを指示   警告音:危険を除去・制御するための行動を取ることを指示 現状では,これらの区分けに関して,統一された音のイメージが確率されていないため,利用に際しては注意が必要

緊急時の行動 予期せぬ事態が発生した場合,人間はとっさの行動をとる. とっさの行動が,適切である行動とは限らず,防災訓練・避難訓練は,適切なとっさの行動をとるための訓練である. 緊急事態が,学習行動ですべて対応できるとは限らないが,学習行動を多く身に付けることにより,危険を察知する感受性は格段に増す. 緊急事態を防ぐ方法に,“フェイルセイフ”と“フールプルーフ”がある. フェイルセーフとは,システムに故障が発生した場合に,常にシステムが安全側に切り替わり,最悪の事態とならないようにするためのシステムの設計法である. フールプルーフとは,使用者のうっかりミスを受付ないようにして,誤動作を防ぐ方法である.

インダストリアルデザイン ロボット製作における重要ポイントは“技術力”,“経済性”,“芸術性”である 3要素の一部だけが特出していても,“良い製品”とはなりえない この3要素をバランスよく設計するのがインダストリアルデザインである

ロボットのデザイン デザインも,マンマシンインタフェースの一部と考えられる 人間に親しみを感じてもらうため,不安にさせないためにはデザインは非常に重要である 誰もが良いと感じるデザインは存在しないため,個人の感性の世界ではある