微粒子合成化学・講義 http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/kogi/ E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp 村松淳司.

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◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
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Presentation transcript:

微粒子合成化学・講義 http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/kogi/ E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp 村松淳司

微粒子・コロイド・ナノ粒子の応用分野 食品,化粧品,医薬品,洗剤 工業材料 触媒,吸着剤 などなど,たくさん

牛乳 東亜合成 微粒子講演会

水 乳脂肪 タンパク質 東亜合成 微粒子講演会

ビール ビールの泡 移流集積によって下から上に運ばれ、二次元の結晶構造を形成するコロイド。下の方のコロイドは動いているためブレている。 永山国昭(東京大学教養学部) 東亜合成 微粒子講演会

ビールの泡 なぜ合一しにくいのか? 分散安定化への指針 泡の表面にホップと麦芽由来のフムロンや塩基性アミノ酸が吸着し、分散剤的な働きをしている 東亜合成 微粒子講演会

別府・地獄めぐり 東亜合成 微粒子講演会

別府・海地獄 青~青白い湯 東亜合成 微粒子講演会

東亜合成 微粒子講演会

東亜合成 微粒子講演会

東亜合成 微粒子講演会

東亜合成 微粒子講演会

微粒子だからこその応用できる物性 サイズが小さいこと 表面積 バルクと表面 細密充填 シンタリングの容易さ 表面加工 など

自動車触媒 三元触媒: 一体型成形(モノリス)されたハニカム状コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)担体に多孔質アルミナを塗布し,これに白金(Pt),パラジウム(Pd),ロジウム(Rh)などの貴金属を含浸担持したもの

排ガス規制 -ガソリン車

排ガス規制 -ディーゼル大型

ガソリン車の型式と燃料蒸気圧による日間蒸発ロスの違い

燃料中の硫黄分とガソリン車のNOx排出量との関係(10・15モード) *ストイキオ=理論空燃費:ガソリン1gに対して、空気14gの割合で燃やすのがもっとも理想とされている比率。ストイキとも言う。

今後の自動車排ガス対策 中央環境審議会「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第5次答申)」/2002年4月/抜粋 I.ディーゼル自動車の排出ガス低減対策(新長期目標) (目標値) ○浮遊粒子状物質(SPM)、二酸化窒素(NO2)等の大気汚染状況が厳しい中、ディーゼル自動車から排出される粒子状物質の健康リスクが高いことが明らかになってきたことから、窒素酸化物(NOx)等を低減しつつ、粒子状物質(PM)に重点をおいた対策を行う。特に、重量車(車両総重量3.5t超)は、PMをより大幅に低減する。  なお、一酸化炭素(CO)については、環境基準を達成していること等から、新短期規制値に据え置く。 ○新長期目標以降の自動車排出ガス低減対策(新たな低減目標)を検討する。その際、軽油中の硫黄分の低減等、燃料対策も併せて検討する。 (備考)達成時期については、「平成17年末まで」と第四次答申(平成12年11月)において答申されている。 II.ガソリン自動車の排出ガス低減対策(新長期目標) (目標値) ○排出ガス低減対策と二酸化炭素低減対策の両立に配慮しつつ、NOx等を低減する。  なお、一酸化炭素(CO)については、環境基準を達成していること等から、新短期規制値に据え置く。 ○新長期目標以降の自動車排出ガス低減対策(新たな低減目標)を検討する。その際、ガソリン中の硫黄分の低減等、燃料対策も併せて検討する。 (達成時期) ○乗用車等は平成17年末までとする。但し、軽貨物車は、平成19年末までとする。 (蒸発ガス対策) ○燃料蒸発ガスはSPMや光化学オキシダント等の前駆物質であり、特にSPMの環境基準達成に向け、自動車対策と固定発生源対策をあわせた総合的な対策の検討を進めていくことが必要である。 (その他) ○低排出ガス認定制度等により、引き続き、低排出ガス自動車の普及を図ることが適当である。

自動車触媒

Rh は少量で三成分の浄化に高活性を示す  Pt, Pd を比較すると、Pd の方が浄化特性に優れている   ⇒ しかしながら、旧来、Pd より Pt の方を Rh と組合せて用いてきた N.E.ケムキャットのサイトから: http://www.ne-chemcat.co.jp/business/auto/threeway.html

NOxの還元には,当然還元領域(酸素の少ない領域)が好都合 酸化反応であるHC,COの燃焼にとっては,不都合で除去率が低くなる HC,COの酸化にとって好都合の酸素の多い領域では,NOxの除去がうまくできない 理論空燃比14.6の前後(僅かに開いた窓:ウインドウと呼ばれる)では,NOx,HC,COすべてが,約90%の除去率で浄化される 空燃比

助触媒: 触媒主成分に少量加えることで、活性、選択性あるいは 寿命を向上させる作用を持つ 助触媒: 触媒主成分に少量加えることで、活性、選択性あるいは       寿命を向上させる作用を持つ - 酸素が多いと酸素を吸蔵      ⇒ 排ガス中の酸素が減る - 酸素が少ないと酸素を放出      ⇒ 排ガス中の酸素が増える N.E.ケムキャットのサイトから: http://www.ne-chemcat.co.jp/business/auto/threeway.html

Pt粒子

三元触媒システム トヨタ自動車 1977 当時、世界一厳しい53年排出ガス規制に対応するため同時に酸化・還元処理する三元触媒装置。1977年、EFI方式のM-EU型エンジンに採用されクラウンに搭載された量産システムとしては世界初。 三元触媒式の排出ガス浄化装置は、電子燃料噴射(EFI)エンジンに装備され、CO、HC、NOxの3成分を一つの触媒で同時に酸化・還元処理する。そのためには、燃料噴射量を空気量に応じて常に理論空燃比(重量比で14.7)に制御する必要があり、三元触媒に入る排出ガス中の酸素量をO2センサーで検知し、酸素量に応じた燃料噴射量をコンピュータによって算出、制御する。 当時の三元触媒は白金ロジウム系を使用したペレット タイプで、直径2~4mmの粒状のセラミックスの表面に活性成分が担持され、1gあたりの表面積は50~150にm^2達した。多数の粒状セラミックスは金属ケース(触媒コンバーター)に収められ、エキゾーストマニホールドとマフラーの中間の排気管に装備された。

市販ガソリン車に装着されている排ガス浄化触媒の金属組成と比表面積

触媒活性試験結果

ディーゼル車排ガス触媒 ディーゼル自動車の排気ガスには、一酸化炭素 (CO)、炭化水素(HC)、窒素化合物(NOx)に加え、パティキュレートマター(PM)という人体に有害な微粒子が含まれており、規制に対応するにはエンジン性能の向上に加え触媒を使用した排気ガス浄化システムが必要

自動車触媒のリサイクル Pt

同和鉱業の取り組み  同和鉱業は、これまで廃棄物とされていたものを資源と見なし、これをリサイクル(再資源化)することにより、世界に偏在する希少金属の安定供給をはかり、循環型社会の実現をめざして金属リサイクル事業に積極的に取り組んでいます。  1991年には、自動車用廃触媒からのPt、Pd、Rhの回収を目的とする㈱日本ピージーエムを田中貴金属工業㈱との合弁で設立しました。現在、廃触媒処理での国内シェアは、ほぼ100%、世界シェアでは25%を占めています。今後海外集荷を強化、増強しリサイクルを進めていきます。 また、1995 年に、小坂製錬所における鉛バッテリー処理と、同和ハイテックにおける液晶製造工程のスクラップからのIn 回収事業を開始しました。さらに、1998 年には、Ga、Ge のリサイクルも事業化しています。

同和鉱業の取り組み 小坂製錬所で現在処理している使用済み製品等は、従来からの故銅に加え、フィルム、酸化銀電池、電子基板、GaAs半導体、携帯電話と多岐にわたり、処理原料に占める二次原料の比率は、右のグラフで示す通りPd90%、Pb20%、Ag15%、Cu12%となっています。

光触媒

光触媒を用いた水や有機化合物の分解(常温、常圧) 2 エネルギーに係る課題と対応 安定なエネルギー供給性の確保 地球温暖化の主要因である二酸化炭素の排出抑制,固定化 平成19年度 エネルギー白書(経済産業省) クリーンかつ地域的な偏りが少ないエネルギー 水素エネルギー 太陽光発電 燃料電池の燃料(副生成物は水) 二酸化炭素との反応による    炭化水素の合成 副生成物なし 光(一次エネルギー)から 電力(二次エネルギー)への    直接変換 Ex) F. Solymosi, A. Erdöhelyi, T. Bánsági, J. Catal., 68, 1981, 371. 化石燃料の水性ガス反応 (数100 ˚C以上の熱供給が必要) 水の電気分解  (電力供給が必要) 光触媒を用いた水や有機化合物の分解(常温、常圧) 水素製造方法 光エネルギーの化学エネルギーへの変換技術 水素製造と太陽電池,どちらの応用も可能な材料

TiO2光触媒による水素生成の発見 本多-藤嶋効果 : 光電気化学的な水分解による水素生成 化学的に安定・豊富な資源量 3 400 200 800 600 1000 波長 nm 1.0 2.0 相対エネルギー強度 可視領域 地球に到達する 太陽放射エネルギー 紫外領域 本多-藤嶋効果 : 光電気化学的な水分解による水素生成   A. Fujishima, K. Honda, Nature, 238, 1972, 37. H2 O2 V hu Pt TiO2 化学的に安定・豊富な資源量    TiO2単独では水素生成速度が極めて低い.    光触媒作用の発現が約410 nmよりも短い波長の紫外光を照射    した場合に限定され,太陽光の利用に制限がある.    実用化を考慮すると,固定化(薄膜化)が望ましい.

光触媒の特異性 電子と正孔の生成 電子+プロトン→水素生成 表面機能とバルク機能の両方の制御が必要 光励起はバルクの役割 水素生成は表面触媒機能 表面機能とバルク機能の両方の制御が必要

本多・藤嶋効果   水→水素発生 解説 光利用効率を上げることが必須

1.光触媒とはなにか 触媒は「それ自身は変化することなく化学反応を促進する物質」と定義 光触媒はこれに「光照射下で」という条件が付加 身近に見られる光触媒の例: 植物の光合成で重要な働きをしている葉緑素(クロロフィル)

図1 植物の光合成も一種の光触媒反応

光触媒の用途別マスコミ発表件数 空気清浄機、脱臭フィルター等 52 外壁、外装、建材、テント等の防汚 36 抗菌・脱臭用繊維および紙 15 空気清浄機、脱臭フィルター等 52 外壁、外装、建材、テント等の防汚 36 抗菌・脱臭用繊維および紙 15 蛍光ランプ、街路灯関連の防汚 14 浄水・活水器 14 防汚・抗菌タイル(内装、外装) 10 道路、コンクリート、セメント 10 キッチン関連の防汚・抗菌 10 自動車の防汚コーティング 3 防藻 3

光触媒 残念ながら光合成をできる光触媒を人類はまだ作り出していない。 光によって機能する半導体素子(デバイス) 太陽電池、光ダイオード、光トランジスターなど 光→電気変換、光→電気信号制御 光→化学反応制御 半導体光触媒の一般的機能: 脱臭、抗菌・殺菌、防汚、有害物質の除去、ガラス・鏡の曇り防止、など

図2 光触媒を応用した商品の例 (a)空気浄化用疑似観葉植物、(b)蛍光灯、(c)自動車サイドミラー用水滴防止フィルム、(d)自動車のコーティング、 (e)光触媒をコートしたテント(右側は未処理)、(f)光触媒コートしたビルの壁面、(g)街灯のカバー、(h)コップ

光触媒特許件数の推移

光触媒特許数(物質別)

2.光によって起こる反応 光化学反応 光触媒によって起こる反応(光触媒反応)も一種の光化学反応 従来の光化学反応とはメカニズムが違う

3.光のエネルギー 光化学反応でも光触媒反応でもすべての光が使えるわけではない あるエネルギー以上の光だけしか使えない 光のエネルギーは波長が短いほど高くなる 光のエネルギー(eV, 電子ボルト) =(プランクの定数)×(光の速度)÷波長(nm、ナノメートル) =1240÷波長(nm)

図4 光のエネルギーと波長

太陽光 可視光領域

4.半導体の光励起と光触媒反応 二酸化チタン(TiO2、チタニア) n型半導体に属す 電子によって電気を通すタイプの半導体 酸化チタンにあるエネルギー以上の光が当たると、酸化チタンを構成している電子(価電子帯電子)が励起して、上のレベル(伝導帯)の電子になる これが半導体の光励起状態 価電子帯(下のレベル)と伝導帯のエネルギー差をバンドギャップエネルギーという 酸化チタン(アナタース型)=3.2eV (=約390nm)

図5 光による半導体のバンドギャップ励起

5.本多―藤嶋効果と光触媒 図6 (a)光電気化学セル、(b)光化学ダイオード (c)Pt担持光触媒

光触媒酸化反応 光触媒による色素(有機物質)の分解の様子.光触媒を塗布した板の上に,濃い青色の色素を塗り重ね,その上にガラス板(マスク)を置いて光を照射した.上の写真の上の方にある青い板が,色素を塗った板で,全体に青色が薄くなり,色素が光触媒作用によって酸化分解されたことを示している.用いたマスク(写真の下の方の透明な板)には黒いインクで「光」と書かれており,文字の部分だけは光が通らない.したがって,色素を塗った板上では「光」という文字の部分だけ元の色素の濃い青色が残っている.

光誘起超親水化現象 普通のガラスに水を垂らすと,ガラス表面はそんなに親水的でないので水がはじかれ,水は滴を作って流れ落ちる(写真右).しかし,ガラス表面に光触媒を塗布し,光を照射すると表面が超親水性を持つので,水を垂らすと水は全面に膜状に広がる(写真左).

図7 酸化チタン薄膜についた水滴は光照射に   よって一様な水膜となる

図 各酸化物、硫化物のバンドギャップ

自動車由来有害大気汚染物質の光分解除去 低濃度NOxの分解除去から、アルデヒド類、BTX、多環芳香族炭化水素、粒子状物質中の有機分など各種の有害大気汚染物質の除去へ。 光触媒の固定化・性能向上が必要

人工光合成システムで可視光による水の完全分解に世界で初めて成功 (産総研・光反応制御研究センター) 人工光合成システムで可視光による水の完全分解に世界で初めて成功 (産総研・光反応制御研究センター)

光触媒の律速段階 (1) 電子による還元反応(素反応) (2) 正孔による酸化反応(素反応) (3) (1)および(2)の生成物が変化する反応(生成物がすぐに脱離する場合はこの過程はない。また、複数の素反応になる場合もあり得る。いずれも熱反応である。) 図13 TiO2(○)およびPt/TiO2(△)による硝酸銀 水溶液からの光酸素発生活性の水素還元温度依存。 RuO2/TiO2(●)は還元なし。TiO2:メルクanatase、 Pt量:1wt%。

水の光分解 素反応 (1) 光励起 チタニア > e + hole (2) H+ + e → H ads. (ヒドリド) 水の光分解 素反応 (1) 光励起 チタニア > e + hole (2) H+ + e → H ads. (ヒドリド) (3) 2 H ads. → H2 ads. (4) H 2 ads. → H2 (脱離) (5) OH- + hole → O ads. (オキシド) (6) 2 O ads. → O2 ads. (7) O2 ads. → O2 (脱離) どこが、律速段階か? PtやRuO2などを添加して水素生成速度があがるとすれば、水素生成が律速だ。つまり(2)が律速段階。

可視光化への挑戦

解決法 : 狭バンドギャップ化による可視光応答化 10 問題点 : 吸収可能な波長が紫外光領域に限定 解決法 : 狭バンドギャップ化による可視光応答化 還元処理による酸素欠損の積極的導入 Ex) M. Kitano, M. Takeuchi, M. Matsuoka, J. M. Thomas, M. Anpo, Chem. Lett., 34, 2005, 616. ドーピングによる不純物準位の形成 Ex) Nドープ:R. Asahi, T. Morikawa, T. Ohwaki, K. Aoki, Y. Taga, Science, 296, 2001, 269. Sドープ:T. Umebayashi, T. Yamaki, H. Itoh, K. Asai, Appl. Phys. Lett., 81, 2002, 454. [当研究室]J. Cuya, N. Sato, K. Yamamoto, A. Muramatsu, K. Aoki, Y. Taga, Thermochimica Acta, 410, 2004, 27. Sドープ:  格子酸素と同原子価置換 電荷バランスの維持が可能

Quantum efficiency Since band-gap of TiO2 is near 3.0eV(≒ 400nm), only ultraviolet light is absorbed to give photocatalytic activity. Red-shift by S or N doping Spectrum of Sun Light Quantum efficiency was improved by N doping into TiO2 by sputtering method. R. Asahi, T. Morikawa, T. Ohwaki, K. Aoki,Y. Taga : Science, 293 (2001) 269. M. Ziolock, J. Kujawa, O. Saur, J. C. Lavalley : J. Mol. Cat., A: Chem., 97 (1995) 49. 2. Quantum efficiency was improved by S doping into TiO2 by sputtering method. 二酸化チタンは現在幅広い分野で用いられていますが,そのバンドギャップが約3.0eV近傍のため太陽光の全エネルギーのうちわずか4%程度の紫外線領域の光の照射でしかその光触媒能が発現しないといった問題があります. これに対し近年二酸化チタンに窒素原子や硫黄原子をドープ・導入することにより光触媒能が改善するという報告がされ注目されております.しかしながら硫化物の場合光照射により光溶解するため活性が持続しないといった問題があります. H. Gerischer : J. Electroanal. Chem., 82 (1977) 133. A. J. Bard and M. S. Wrighton : J. Electrochem. Soc., 124 (1977) 1706. Photocatalytic activity of S-doped TiO2 was gradually reduced, because of oxidation of S to be lost.

ヘテロ原子の導入 豊田中央研究所のグループ 硫黄ドープによってバンドギャップの可視光化が実現できる 窒素をドープすることによる可視光化を実現 実際にTiO2のOの代わりにSを入れることは困難 R.Asahi, T.Morikawa, T.Ohwaki, K.Aoki, and Y. Taga, Science, 293, 269 (2001).

ヘテロ原子の導入 ~最近の研究 Umebayashiら ヘテロ原子の導入 ~最近の研究 Umebayashiら 二硫化チタン(TiS2)を空気中500℃あるいは600℃でアニールすることにより、硫黄ドープした酸化チタンを合成 この材料の可視光領域での吸収は必ずしも多くなく、部分硫化は失敗したかに見えた。 しかしながら実際にメチレンブルーの光酸化分解反応に極めて高い活性を示すことが、同じ著者らによって報告された。 T.Umebayashi T.Yamaki, S.Tanaka, and K.Asai, Chem. Lett., 32, 330 (2003).

ヘテロ原子の導入 ~最近の研究 Ohnoら チタンイソプロポキシドをチオ尿素とともにエタノール中で1時間混合し、その後エタノールを蒸発させる ヘテロ原子の導入 ~最近の研究 Ohnoら チタンイソプロポキシドをチオ尿素とともにエタノール中で1時間混合し、その後エタノールを蒸発させる 得られた固体を焼き固めることにより硫黄ドープ酸化チタンを得た

ヘテロ原子の導入 ~最近の研究 温度は400℃~700℃の範囲で、3~10時間行った ヘテロ原子の導入 ~最近の研究 温度は400℃~700℃の範囲で、3~10時間行った このUVスペクトルを見ると、500 ~600nmの可視光領域にも吸収をもったスペクトルが得られた X線回折結果から、格子酸素は700℃以上で完全にSに代わるとしている。 T.Ohno, F.Tanigawa, K.Fujihara, S.Izumi, and M.Matsumura, J. Photochem. Photobiol., A:127, 107 (1999). T.Ohno, Y.Masaki, S.Hirayama, and M.Matsumura, J. Catal., 204, 163 (2001). T.Ohno, T.Mitsui, and M.Matsumura, Chem. Lett., 32, 364 (2003).

硫黄ドープの問題 問題は果たして格子酸素を硫黄に替えることが光溶解安定性を含めた光触媒実用化上の問題解決につながるのか 水の光分解の場合、触媒表面ではプロトンが電子を貰って水素に、水酸化物イオンが電子を離して酸素になるが、硫化硫黄構造の格子硫黄が反応に入ってしまうと、いわゆる光溶解という現象が起こる アナタースかルチル構造を保持したまま酸素と硫黄が置換した方がいいのかもしれない 硫化チタン構造をとらない方が良いのではないか

TiO2の部分硫化 アナタース構造をとったまま、酸素と硫黄を置換させる 可視光化 最適部分硫化条件の探索

部分硫化TiO2の吸収スペクトル 500℃ 吸収スペクトル

処理 温度 外観 結晶構造 紫外線 光触媒性能 可視光 未処理 白色 TiO2(a)のみ 505 4.0 100℃ 745 8.4 150℃ 780 6.8 200℃ ベージュ 743 8.8 250℃ 薄茶色 833 9.5 300℃ 637 8.5 350℃ 黄土色 516 4.3 400℃ 焦茶色 595 0.0 450℃ 黒色 TiO2(a)+TiS2 93 500℃ 109

触媒反応化学

粒子径による粒子の分類 微粒子 コロイド分散系 超微粒子 ナノ粒子 光学顕微鏡 電子顕微鏡 1m 10cm 1cm 1mm サブミクロン粒子 100nm 10nm 1nm 1Å 光学顕微鏡 電子顕微鏡 ソフトボール 硬貨 パチンコ玉 小麦粉 花粉 タバコの煙 ウィルス セロハン孔径 微粒子 超微粒子 クラスター サブミクロン粒子 コロイド分散系 ナノ粒子

粒子径による粒子の分類 微粒子 コロイド分散系 超微粒子 ナノ粒子 光学顕微鏡 電子顕微鏡 100μm 1m 10cm 1cm 10μm ソフトボール 10cm 硬貨 微粒子 1cm パチンコ玉 10μm 光学顕微鏡 1mm 小麦粉 1μm サブミクロン粒子 コロイド分散系 100μm 10μm 花粉 1μm 100nm タバコの煙 電子顕微鏡 100nm ウィルス 超微粒子 10nm 10nm ナノ粒子 セロハン孔径 1nm 1Å 1nm クラスター

ナノ粒子 10-9 m = 1 nm 10億分の1mの世界 原子が数~十数個集まった素材 バルクとは異なる物性が期待される バルク原子数と表面原子数に差がなく、結合不飽和な原子が多く存在する

表面構造と触媒機能

表面構造と触媒機能

比表面積の計算

触媒 工業触媒 触媒設計 活性、選択性、寿命、作業性 表面制御 バルク制御 金属触媒→金属種、価数、組成、粒径など 担体効果、アンサンブル効果、リガンド効果

活性 活性点1つあたりのturnover frequency 触媒材料全体としての活性 触媒全体の活性は全表面積に依存 1サイトあたりの表面反応速度 触媒材料全体としての活性 触媒全体の活性は全表面積に依存 しかし、構造に強く依存する場合もある(後述)

寿命 触媒寿命 同じ活性選択性を持続する 工業的には数ヶ月から1年の寿命が必要 失活 主にシンタリングや触媒物質自身の変化

選択性 特定の反応速度だけを変化させる COの水素化反応 反応条件にも左右される Cu: CO + 2H2 → CH3OH Ni: CO + 3H2 → CH4 + H2O Co, Fe: 6CO + 9H2 → C6H6 + 6H2O Rh: 2CO + 2H2 → CH3COOH Rh: 2CO + 4H2 → C2H5OH + H2O 反応条件にも左右される

酸化状態の制御の例 Mo/SiO2触媒 COの水素化反応→炭化水素、アルコール合成 Mo(金属状態)→低級炭化水素を生成 Mo金属上でCOは解離し、アルコールは生成しない Mo(4+)→低活性で極僅かにメタノールを生成 Mo(4+)上ではCOは非解離吸着し、-CO部分を保持 Mo(金属)とMo(4+)→混合アルコールを生成 解離したCOから炭素鎖を伸ばす-CH2が生成 末端に-COが付加し、水素化されてアルコールに

サイズ制御 比表面積を大きくし全体の触媒活性を増大 TOF (Turnover Frequency)がサイズに依存 量子効果

半径が小さくなるほど、比表面積は大きくなる!

触媒設計 表面情報の正確な把握 精密な表面機能制御 局所構造制御と評価が重要

触媒の分類 均一系触媒 不均一系触媒 反応物、生成物と同じ相 例: 酢酸合成のロジウム触媒 相が違うもの 例: 固体触媒 例: 酢酸合成のロジウム触媒 液相均一系 触媒も液体 不均一系触媒 相が違うもの 例: 固体触媒 担持触媒、無担持触媒

担持金属触媒 担体物質上に、触媒金属が担持されている 担体は粉体か、塊状態である 触媒金属 担体

担持金属触媒 担体 触媒金属 金属酸化物が多い 細孔が発達しているものが多い 機械的強度に優れている 担体上に担持、分散 数nm程度の大きさが理想とされる 実際は5~50nm程度の場合が多い

担体: 比表面積が大きい

担体の例: 活性炭 ヤシガラ活性炭   石炭系活性炭 木炭系活性炭

活性炭

木炭の表面

担持金属触媒 担体 触媒金属 金属酸化物が多い 細孔が発達しているものが多い 機械的強度に優れている 担体上に担持、分散 数nm程度の大きさが理想とされる 実際は5~50nm程度の場合が多い

担持金属触媒調製法

表面構造と触媒機能

表面構造と触媒機能

構造敏感・構造鈍感 構造鈍感 構造敏感 表面積が大きくなる効果のみ現れる 触媒活性は粒径に依存 粒径が小さいほど大きい 粒径が大きいほど大きい ある粒径で最大となる

構造敏感・構造鈍感

構造敏感・構造鈍感

構造敏感・構造鈍感

構造敏感・構造鈍感

吸着と触媒反応

吸着が始まり 物理吸着 弱い吸着: 必ず自然界にある 化学吸着 強い吸着: 化学結合を伴う

Table 化学吸着と物理吸着 吸着特性 化学吸着 物理吸着 吸着力 化学結合 ファン・デル・ワールス力 吸着場所 選択性あり 選択性なし 吸着層の構造 単分子層 多分子層も可能 吸着熱 10~100kcal/mol 数kcal/mol 活性化エネルギー 大きい 小さい 吸着速度 遅い 速い 吸着・脱離 可逆または非可逆 可逆 代表的な吸着の型 ラングミュア型 BET型  

物理吸着

物理吸着

物理吸着

                                                                                             

物理吸着                                                                                            

化学吸着

化学吸着 解離吸着 Ex. CO + M(吸着サイト) → C-M + O-M 非解離吸着 Ex. CO + M(吸着サイト) → CO-M

吸着等温線

吸着等温式 Langmuir Henry Freundlich Frumkin-Temkin p: 吸着平衡圧 v: 吸着量 b: 飽和吸着量 θ= v / b θ << 1のときに相当

吸着等温式 Langmuir Henry Freundlich Frumkin-Temkin ほとんどの化学吸着が該当する 吸着熱は吸着量に無関係であるのが理論であるが、必ずしも理論には合わない場合がある Henry 直線的に吸着量が増加する式だが実際にはLangmuir型の一部とされている場合が多い Freundlich 吸着熱は ln v(吸着量)と直線関係にある 中間部分はLangmuir型に近いので見極めが難しい Frumkin-Temkin 金属鉄上へのアンモニアや窒素吸着で提出された特殊なケース 吸着熱は吸着量とともに直線的に減少する

化学吸着 ・Langmuir式(理論式) (1) kf,kb,吸着および脱着反応速度定数 (2) qm,飽和吸着量  平衡状態においてdq/dt = 0なので (3) KA,吸着定数

化学吸着 ・Freundlich式(実験式) (4) k,n,フロインドリッヒ定数;CA,吸着質の平衡濃度 (※吸着質(adsorbate):吸着される物質のこと)

吸着から表面反応へ

触媒反応 物理吸着 化学吸着 表面反応 脱離 ここで終わったら、単なる吸着現象

例: メタノール合成反応 合成ガスからメタノールを合成する反応 CO + 2H2 → CH3OH ポイントはC=O間の非解離。H-H間の解離

可逆 物理吸着  →化学吸着 可逆 CH3OH 不可逆 表面反応

表面反応 不可逆過程が多い 表面反応が律速段階になる場合が多い 逆反応が圧倒的に不利な場合 表面反応にも多くの段階がある どこが律速段階か、は、アレニウスプロットで知ることができる

例:メタノール合成 合成ガスからメタノールを合成する反応 CO + 2H2 → CH3OH COガス→CO(化学吸着) H2ガス→ H2 (化学吸着)→2H(解離吸着) CO(吸着)+H→CHO(吸着) <律速段階> CHO(吸着)+H→CH2O(吸着) CH2O(吸着)+H→CH3O(吸着) CH3O(吸着)+H→ CH3OH(吸着) CH3OH(吸着)→(脱離)CH3OH

活性化エネルギー アレニウスの式 反応速度定数 k ここで,A は頻度因子,E は活性化エネルギーである.この式は異なる温度での速度定数がわかれば,活性化エネルギーを求めることを示している.  アレニウスの式は,ボルツマン分布の式と同じ形をしていることが重要である.活性化エネルギーは,反応が起きる途中の,中間体になるためのエネルギーであるが,その中間体の存在する割合が,反応速度を支配していると言うことを示している.  反応速度の解析は,様々な物質が共存するような反応において,反応のメカニズムを解明する上で,重要となる

見かけの活性化エネルギー 傾きがEa ln (k) 1/T 実験データから、ln (k)=y軸、と1/T=x軸のプロットをすると、傾きがEa=活性化エネルギーとなる 傾きがEa ln (k) 1/T

触媒の働き B触媒の方が活性化エネルギー が小さいので有効と判断される B触媒 ln (k) A触媒 1/T

活性化エネルギーが変わる? ある温度領域で 反応パスが変わったと 理解すべき ln (k) 1/T

反応のパス B A D C 律速段階が変わると活性化エネルギーは変わる

自動車触媒

排ガス規制 -ガソリン車

排ガス規制 -ディーゼル大型

ガソリン車の型式と燃料蒸気圧による日間蒸発ロスの違い

燃料中の硫黄分とガソリン車のNOx排出量との関係(10・15モード) *ストイキオ=理論空燃費:ガソリン1gに対して、空気14gの割合で燃やすのがもっとも理想とされている比率。ストイキとも言う。

今後の自動車排ガス対策 中央環境審議会「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第5次答申)」/2002年4月/抜粋 I.ディーゼル自動車の排出ガス低減対策(新長期目標) (目標値) ○浮遊粒子状物質(SPM)、二酸化窒素(NO2)等の大気汚染状況が厳しい中、ディーゼル自動車から排出される粒子状物質の健康リスクが高いことが明らかになってきたことから、窒素酸化物(NOx)等を低減しつつ、粒子状物質(PM)に重点をおいた対策を行う。特に、重量車(車両総重量3.5t超)は、PMをより大幅に低減する。  なお、一酸化炭素(CO)については、環境基準を達成していること等から、新短期規制値に据え置く。 ○新長期目標以降の自動車排出ガス低減対策(新たな低減目標)を検討する。その際、軽油中の硫黄分の低減等、燃料対策も併せて検討する。 (備考)達成時期については、「平成17年末まで」と第四次答申(平成12年11月)において答申されている。 II.ガソリン自動車の排出ガス低減対策(新長期目標) (目標値) ○排出ガス低減対策と二酸化炭素低減対策の両立に配慮しつつ、NOx等を低減する。  なお、一酸化炭素(CO)については、環境基準を達成していること等から、新短期規制値に据え置く。 ○新長期目標以降の自動車排出ガス低減対策(新たな低減目標)を検討する。その際、ガソリン中の硫黄分の低減等、燃料対策も併せて検討する。 (達成時期) ○乗用車等は平成17年末までとする。但し、軽貨物車は、平成19年末までとする。 (蒸発ガス対策) ○燃料蒸発ガスはSPMや光化学オキシダント等の前駆物質であり、特にSPMの環境基準達成に向け、自動車対策と固定発生源対策をあわせた総合的な対策の検討を進めていくことが必要である。 (その他) ○低排出ガス認定制度等により、引き続き、低排出ガス自動車の普及を図ることが適当である。

自動車触媒

Rh は少量で三成分の浄化に高活性を示す  Pt, Pd を比較すると、Pd の方が浄化特性に優れている   ⇒ しかしながら、旧来、Pd より Pt の方を Rh と組合せて用いてきた N.E.ケムキャットのサイトから: http://www.ne-chemcat.co.jp/business/auto/threeway.html

NOxの還元には,当然還元領域(酸素の少ない領域)が好都合 酸化反応であるHC,COの燃焼にとっては,不都合で除去率が低くなる HC,COの酸化にとって好都合の酸素の多い領域では,NOxの除去がうまくできない 理論空燃比14.6の前後(僅かに開いた窓:ウインドウと呼ばれる)では,NOx,HC,COすべてが,約90%の除去率で浄化される 空燃比

助触媒: 触媒主成分に少量加えることで、活性、選択性あるいは 寿命を向上させる作用を持つ 助触媒: 触媒主成分に少量加えることで、活性、選択性あるいは       寿命を向上させる作用を持つ - 酸素が多いと酸素を吸蔵      ⇒ 排ガス中の酸素が減る - 酸素が少ないと酸素を放出      ⇒ 排ガス中の酸素が増える N.E.ケムキャットのサイトから: http://www.ne-chemcat.co.jp/business/auto/threeway.html

Pt粒子

三元触媒システム トヨタ自動車 1977 当時、世界一厳しい53年排出ガス規制に対応するため同時に酸化・還元処理する三元触媒装置。1977年、EFI方式のM-EU型エンジンに採用されクラウンに搭載された量産システムとしては世界初。 三元触媒式の排出ガス浄化装置は、電子燃料噴射(EFI)エンジンに装備され、CO、HC、NOxの3成分を一つの触媒で同時に酸化・還元処理する。そのためには、燃料噴射量を空気量に応じて常に理論空燃比(重量比で14.7)に制御する必要があり、三元触媒に入る排出ガス中の酸素量をO2センサーで検知し、酸素量に応じた燃料噴射量をコンピュータによって算出、制御する。 当時の三元触媒は白金ロジウム系を使用したペレット タイプで、直径2~4mmの粒状のセラミックスの表面に活性成分が担持され、1gあたりの表面積は50~150にm^2達した。多数の粒状セラミックスは金属ケース(触媒コンバーター)に収められ、エキゾーストマニホールドとマフラーの中間の排気管に装備された。

市販ガソリン車に装着されている排ガス浄化触媒の金属組成と比表面積

触媒活性試験結果

自動車触媒のリサイクル Pt

同和鉱業の取り組み  同和鉱業は、これまで廃棄物とされていたものを資源と見なし、これをリサイクル(再資源化)することにより、世界に偏在する希少金属の安定供給をはかり、循環型社会の実現をめざして金属リサイクル事業に積極的に取り組んでいます。  1991年には、自動車用廃触媒からのPt、Pd、Rhの回収を目的とする㈱日本ピージーエムを田中貴金属工業㈱との合弁で設立しました。現在、廃触媒処理での国内シェアは、ほぼ100%、世界シェアでは25%を占めています。今後海外集荷を強化、増強しリサイクルを進めていきます。 また、1995 年に、小坂製錬所における鉛バッテリー処理と、同和ハイテックにおける液晶製造工程のスクラップからのIn 回収事業を開始しました。さらに、1998 年には、Ga、Ge のリサイクルも事業化しています。

同和鉱業の取り組み 小坂製錬所で現在処理している使用済み製品等は、従来からの故銅に加え、フィルム、酸化銀電池、電子基板、GaAs半導体、携帯電話と多岐にわたり、処理原料に占める二次原料の比率は、右のグラフで示す通りPd90%、Pb20%、Ag15%、Cu12%となっています。

光触媒

光触媒を用いた水や有機化合物の分解(常温、常圧) 2 エネルギーに係る課題と対応 安定なエネルギー供給性の確保 地球温暖化の主要因である二酸化炭素の排出抑制,固定化 平成19年度 エネルギー白書(経済産業省) クリーンかつ地域的な偏りが少ないエネルギー 水素エネルギー 太陽光発電 燃料電池の燃料(副生成物は水) 二酸化炭素との反応による    炭化水素の合成 副生成物なし 光(一次エネルギー)から 電力(二次エネルギー)への    直接変換 Ex) F. Solymosi, A. Erdöhelyi, T. Bánsági, J. Catal., 68, 1981, 371. 化石燃料の水性ガス反応 (数100 ˚C以上の熱供給が必要) 水の電気分解  (電力供給が必要) 光触媒を用いた水や有機化合物の分解(常温、常圧) 水素製造方法 光エネルギーの化学エネルギーへの変換技術 水素製造と太陽電池,どちらの応用も可能な材料

TiO2光触媒による水素生成の発見 本多-藤嶋効果 : 光電気化学的な水分解による水素生成 化学的に安定・豊富な資源量 3 400 200 800 600 1000 波長 nm 1.0 2.0 相対エネルギー強度 可視領域 地球に到達する 太陽放射エネルギー 紫外領域 本多-藤嶋効果 : 光電気化学的な水分解による水素生成   A. Fujishima, K. Honda, Nature, 238, 1972, 37. H2 O2 V hu Pt TiO2 化学的に安定・豊富な資源量    TiO2単独では水素生成速度が極めて低い.    光触媒作用の発現が約410 nmよりも短い波長の紫外光を照射    した場合に限定され,太陽光の利用に制限がある.    実用化を考慮すると,固定化(薄膜化)が望ましい.

光触媒の特異性 電子と正孔の生成 電子+プロトン→水素生成 表面機能とバルク機能の両方の制御が必要 光励起はバルクの役割 水素生成は表面触媒機能 表面機能とバルク機能の両方の制御が必要

本多・藤嶋効果   水→水素発生 解説 光利用効率を上げることが必須

1.光触媒とはなにか 触媒は「それ自身は変化することなく化学反応を促進する物質」と定義 光触媒はこれに「光照射下で」という条件が付加 身近に見られる光触媒の例: 植物の光合成で重要な働きをしている葉緑素(クロロフィル)

図1 植物の光合成も一種の光触媒反応

光触媒の用途別マスコミ発表件数 空気清浄機、脱臭フィルター等 52 外壁、外装、建材、テント等の防汚 36 抗菌・脱臭用繊維および紙 15 空気清浄機、脱臭フィルター等 52 外壁、外装、建材、テント等の防汚 36 抗菌・脱臭用繊維および紙 15 蛍光ランプ、街路灯関連の防汚 14 浄水・活水器 14 防汚・抗菌タイル(内装、外装) 10 道路、コンクリート、セメント 10 キッチン関連の防汚・抗菌 10 自動車の防汚コーティング 3 防藻 3

光触媒 残念ながら光合成をできる光触媒を人類はまだ作り出していない。 光によって機能する半導体素子(デバイス) 太陽電池、光ダイオード、光トランジスターなど 光→電気変換、光→電気信号制御 光→化学反応制御 半導体光触媒の一般的機能: 脱臭、抗菌・殺菌、防汚、有害物質の除去、ガラス・鏡の曇り防止、など

図2 光触媒を応用した商品の例 (a)空気浄化用疑似観葉植物、(b)蛍光灯、(c)自動車サイドミラー用水滴防止フィルム、(d)自動車のコーティング、 (e)光触媒をコートしたテント(右側は未処理)、(f)光触媒コートしたビルの壁面、(g)街灯のカバー、(h)コップ

光触媒特許件数の推移

光触媒特許数(物質別)

2.光によって起こる反応 光化学反応 光触媒によって起こる反応(光触媒反応)も一種の光化学反応 従来の光化学反応とはメカニズムが違う

3.光のエネルギー 光化学反応でも光触媒反応でもすべての光が使えるわけではない あるエネルギー以上の光だけしか使えない 光のエネルギーは波長が短いほど高くなる 光のエネルギー(eV, 電子ボルト) =(プランクの定数)×(光の速度)÷波長(nm、ナノメートル) =1240÷波長(nm)

図4 光のエネルギーと波長

太陽光 可視光領域

4.半導体の光励起と光触媒反応 二酸化チタン(TiO2、チタニア) n型半導体に属す 電子によって電気を通すタイプの半導体 酸化チタンにあるエネルギー以上の光が当たると、酸化チタンを構成している電子(価電子帯電子)が励起して、上のレベル(伝導帯)の電子になる これが半導体の光励起状態 価電子帯(下のレベル)と伝導帯のエネルギー差をバンドギャップエネルギーという 酸化チタン(アナタース型)=3.2eV (=約390nm)

図5 光による半導体のバンドギャップ励起

5.本多―藤嶋効果と光触媒 図6 (a)光電気化学セル、(b)光化学ダイオード (c)Pt担持光触媒

光触媒酸化反応 光触媒による色素(有機物質)の分解の様子.光触媒を塗布した板の上に,濃い青色の色素を塗り重ね,その上にガラス板(マスク)を置いて光を照射した.上の写真の上の方にある青い板が,色素を塗った板で,全体に青色が薄くなり,色素が光触媒作用によって酸化分解されたことを示している.用いたマスク(写真の下の方の透明な板)には黒いインクで「光」と書かれており,文字の部分だけは光が通らない.したがって,色素を塗った板上では「光」という文字の部分だけ元の色素の濃い青色が残っている.

光誘起超親水化現象 普通のガラスに水を垂らすと,ガラス表面はそんなに親水的でないので水がはじかれ,水は滴を作って流れ落ちる(写真右).しかし,ガラス表面に光触媒を塗布し,光を照射すると表面が超親水性を持つので,水を垂らすと水は全面に膜状に広がる(写真左).

図7 酸化チタン薄膜についた水滴は光照射に   よって一様な水膜となる

図 各酸化物、硫化物のバンドギャップ

自動車由来有害大気汚染物質の光分解除去 低濃度NOxの分解除去から、アルデヒド類、BTX、多環芳香族炭化水素、粒子状物質中の有機分など各種の有害大気汚染物質の除去へ。 光触媒の固定化・性能向上が必要

人工光合成システムで可視光による水の完全分解に世界で初めて成功 (産総研・光反応制御研究センター) 人工光合成システムで可視光による水の完全分解に世界で初めて成功 (産総研・光反応制御研究センター)

光触媒の律速段階 (1) 電子による還元反応(素反応) (2) 正孔による酸化反応(素反応) (3) (1)および(2)の生成物が変化する反応(生成物がすぐに脱離する場合はこの過程はない。また、複数の素反応になる場合もあり得る。いずれも熱反応である。) 図13 TiO2(○)およびPt/TiO2(△)による硝酸銀 水溶液からの光酸素発生活性の水素還元温度依存。 RuO2/TiO2(●)は還元なし。TiO2:メルクanatase、 Pt量:1wt%。

水の光分解 素反応 (1) 光励起 チタニア > e + hole (2) H+ + e → H ads. (ヒドリド) 水の光分解 素反応 (1) 光励起 チタニア > e + hole (2) H+ + e → H ads. (ヒドリド) (3) 2 H ads. → H2 ads. (4) H 2 ads. → H2 (脱離) (5) OH- + hole → O ads. (オキシド) (6) 2 O ads. → O2 ads. (7) O2 ads. → O2 (脱離) どこが、律速段階か? PtやRuO2などを添加して水素生成速度があがるとすれば、水素生成が律速だ。つまり(2)が律速段階。

可視光化への挑戦

解決法 : 狭バンドギャップ化による可視光応答化 10 問題点 : 吸収可能な波長が紫外光領域に限定 解決法 : 狭バンドギャップ化による可視光応答化 還元処理による酸素欠損の積極的導入 Ex) M. Kitano, M. Takeuchi, M. Matsuoka, J. M. Thomas, M. Anpo, Chem. Lett., 34, 2005, 616. ドーピングによる不純物準位の形成 Ex) Nドープ:R. Asahi, T. Morikawa, T. Ohwaki, K. Aoki, Y. Taga, Science, 296, 2001, 269. Sドープ:T. Umebayashi, T. Yamaki, H. Itoh, K. Asai, Appl. Phys. Lett., 81, 2002, 454. [当研究室]J. Cuya, N. Sato, K. Yamamoto, A. Muramatsu, K. Aoki, Y. Taga, Thermochimica Acta, 410, 2004, 27. Sドープ:  格子酸素と同原子価置換 電荷バランスの維持が可能