第72号 H(アッシュ)なケーススタディ 100本ノック もうすぐ、2012年度の新人が入社して1年が経とうとしています。4月の元気そのままに、仕事に燃えてくれていればいいのですが、中には、キツイ環境や仕事での失敗に心が揺れ、退職を考える新人も出る頃です。そこで、以下の①~⑤の退職理由において、みなさんが、これくらいなら許せる、仕方がないと思うものには、回答欄に【A】を書いてください。ここれは許せない、自分はそんなことはしないと思うものには【B】を書いてください。また、これらの理由で、入社1年目の部下、後輩、同僚が退職の意向を打ち明けてきた時、みなさんはどのように対処しますか? 退職理由 回答 ① 入社前から遠距離恋愛していた恋人から「もっと一緒にいたい」「結婚したい」と言われたので退職して結婚したい。 ② 元々、小学校の先生になりたかったが学生時代の教員採用試験はおちてしまった。一度は就職してみたものの、やはり、あきらめられないので退職して教員採用試験を受けたい。 ③ 親が事業に失敗した。帰ってきて実家の事業を手伝ってほしいと言っているので退職して実家に戻りたい。 ④ これまで片道1時間だった通勤が異動により片道1時間30分になった。これだと自分のワークライフバランスが取れないので退職して、通勤時間の短い勤め先を探したい。 ⑤ 元々、喘息持ちだった。就活の時はそれほど酷くなかったので面接ではあえて伝えなかった。実際に勤務してみたら、やはり喘息が酷くなった。このままだと会社に迷惑をかけることになるので責任を取って辞めたい。
第72号 考え方のポイント&解説 これは【強い組織の考え方】について学ぶケーススタディです。同じ問題を新入社員へ出題すると、ほとんどの方は「個人の事情だから仕方がない」と考え、退職を認めてしまいます。すなわち、答えは【A】となります。(それでも4だけは、さすがに【B】となる場合が多いです) 最近、個別の事情に配慮し過ぎて、厳しいことを言いあわない人が増えているように思います。しかし、本当に相手のことを考えた時、あえて苦言を呈するのが相手のためになる場合があります。(感情の赴くままに、怒りをぶつけるのとは違います、ご注意ください) ①遠距離恋愛の相手から結婚を迫られた場合 ケーススタディ第50号の『一人前の定義』を思い出してください。恋愛は個人の自由ですが、それが仕事に影響を及ぼす場合には、職場に迷惑をかけないようその影響を最小限に喰いとどめる責任も発生していることを今一度考えてもらうように促してください。 ②昔から夢があきらめきれない場合 「今から勉強を始めないと、次の試験に間に合わない」と自分勝手に時期を決めて、申し出てくるケースが多いですが、会社に最も迷惑のかからない時期を選ぶのが常識です。最適な時期を上司と相談するように促してください。安易に「応援するよ」等というのは無責任です。 ③親の事業を手伝いたい場合 この場合も安易に認めるのはご法度。彼が戻って実家を建て直せるのかを真剣に考えます。もし、本当に実家が 経済的に苦しいなら、会社は辞めずに給料から仕送りをさせた方が賢明です。まず、手伝いは、本人の休日には行かせ、再建ができるのか手応えを掴ませます。退職の採否はそれからでも遅くはありません。 ④ワーク・ライフ・バランスを求めている場合 ハッキリ言って話になりません。同情や慰めは、本人のためになりません。あなたが同期なら「最低だ、見損なった」と厳しい言葉を伝えるのが彼の将来を考えた一番の優しい言葉だと思います。 ⑤持病が酷くなった場合 まず、重要事項を秘匿していたことへの謝罪を促します。次に今後について相談。相談内容は、どうすれば本人の立場で責任を取れるのか? 辞めることは責任を取ったことになりません。辞めた後、苦しいのは会社、楽になるのは本人、どう考えても非合理です。本当に責任を取りたいのであれば、本人にとって厳しい選択をしなければならないことを伝えてあげてください。 ということで、答えは、すべて【B】になります。こういう場面に遭遇した時、上司、先輩はもちろん同僚に至るまで、どのような対応ができるかによって、強い組織の考え方が根づいているのかがわかります。 同情して、受け入れてあげれば、あなたは“いいヤツ”と思われるかもしれませんが、育成途上の人材の離脱は組織が見えない負債を抱えることになり、辞めたいと言ってきた本人の人間的な成長には何一つ貢献していないことを理解してください。 1