- Dark Energy in Dark Age -

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

硬 X 線で探るブラックホールと銀河の進化 深沢泰司(広大理) 最近の観測により、ブラックホールの形成と 銀河の進化(星生成)が密接に関係することが わかってきた。 ブラックホール観測の最も効率の良い硬 X 線で 銀河の進化を探ることを考える。 宇宙を構成する基本要素である銀河が、いつ どのように形成され、進化してきたか、は、宇宙の.
ガンマ線バースト (GRBs) 硬 X 線からガンマ線領域で明るい ( keV) スパイク状の光度曲線 継続時間の長い / 短い GRB Seconds since trigger Counts / s GRB GRB GRB 発見 1967年7月2日.
東京大学大学院理学系研究科 ビッグバン宇宙国際センター 川崎雅裕 インフレーション理論の 進展と観測 「大学と科学」公開シンポジウム ビッグバン 宇宙の誕生と未来.
重力波で探る暗黒物質の起源 齊藤 遼 重力波研究交流会
宇宙大規模構造の最近の話題 計60分 松原隆彦 (名古屋大学) 東北大学 21COE研究会
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
スケジュール 火曜日4限( 14:45-16:15 ),A棟1333号室
NGC 2043 銀河中 の 超光度X線源 (ULX) の スペクトル状態の遷移
DECIGOのサイエンス ~ダークエネルギー関連~ 高橋龍一 (国立天文台PD).
Hyper Luminous X-ray Source in ESO
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
Report from Tsukuba Group (From Galaxies to LSS)
GRB 観測 相対論的 Jet の内側を探る 金沢大学 米徳 大輔、村上敏夫 今日のトピックは Inverse Compton
ガンマ線バースト (GRBs) ガンマ線で明るい ( keV) スパイク状の強度変動 継続時間の長いもの短いもの click
すざく衛星によるTeV γ線天体HESS J の観測 --dark accelerator?--
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
WISHによるhigh-z QSOs 探査案 WISH Science Meeting (10 Mar. 三鷹
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
銀河物理学特論 I: 講義1-4:銀河の力学構造 銀河の速度構造、サイズ、明るさの間の関係。 Spiral – Tully-Fisher 関係 Elliptical – Fundamental Plane 2009/06/08.
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
アストロメトリデータによる力学構造の構築方法
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
銀河物理学特論 I: 講義1-3:銀河性質と環境依存性 Park et al. 2007, ApJ, 658, 898
標準模型のその先へ ゲテモノ探し セッションⅤ:ナビゲーショントーク     名古屋大学 中 竜大.
第13回 銀河の形成と進化 東京大学教養学部前期課程 2016年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
巨大電波銀河 3C 35 の「すざく」による観測 磯部直樹 (京都大学, kyoto-u. ac
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
X-ray Study of Gravitational Lensing Clusters of Galaxies
X-ray Study of Gravitational Lensing Clusters of Galaxies
アーカイブデータを用いた超新星の再調査 ―精測位置と天体の真偽― 九州大学大学院 理学府物理学専攻宇宙物理理論
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
フレアの非熱的成分とサイズ依存性    D1 政田洋平      速報@太陽雑誌会(10/24).
瀬戸直樹 (京大理) 第7回スペース重力波アンテナDECIGOワークショップ 国立天文台
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
 DPF サイエンス検討会 宇宙論的な重力波源 東大ビッグバンセンター (RESCEU) 齊藤 遼.
瀬戸直樹(京大理) DECIGO WS 名古屋大学
Welcome to the FINAL stage for SDF data handling!
バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~
LHC計画で期待される物理 ヒッグス粒子の発見 < 質量の起源を求めて > 2. TeVエネルギースケールに展開する新しい物理パラダイム
LHC計画で期待される物理 ヒッグス粒子の発見 < 質量の起源を求めて > 2. TeVエネルギースケールに展開する新しい物理パラダイム
Primordial Non-Gaussianity in Multi-Scalar Slow-Roll Inflation
宇宙の初期構造の起源と 銀河間物質の再イオン化
滝脇知也(東大理)、固武慶(国立天文台)、佐藤勝彦(東大理、RESCEU)
銀河座 12月番組 製作:高梨 ダークが支配 我が宇宙 2011年度 ノーベル物理学賞 解説.
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
The Baryonic Tully-Fisher Relation
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
3.8m新技術望遠鏡を用いた 超新星爆発の観測提案 -1-2mクラス望遠鏡による成果を受けて-
宇 宙 その進化.
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
Massive Gravityの基礎と宇宙論
大学院ガイダンス(柏キャンパス) 2011年6月11日 岸本 康宏
ALMAへの期待 -埋れたAGNの探査から-
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
村瀬孔大(オハイオ)・Bing Zhang (Nevada)
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
すばる&マグナム望遠鏡による 系外惑星トランジットの 同時分光・測光観測
COSMOS天域における 高赤方偏移低光度クェーサー探査
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
Massive Gravityの基礎と宇宙論
連星 Gold Mine を用いたDECIGO精密宇宙論
ローブからのX線 ~ジェットのエネルギーを測る~
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
Presentation transcript:

- Dark Energy in Dark Age - GRBで探る ダークエネルギー - Dark Energy in Dark Age - 高橋慶太郎 @GRBワークショップ 2010年8月27日

目次 1、暗黒エネルギー 2、距離梯子 3、GRB宇宙論

1、暗黒エネルギー

宇宙の大きさの歴史 傾き:宇宙の膨張速度    ハッブルパラメータ 宇宙の大きさ a 宇宙は加速膨張 しているようだ。 → 暗黒エネルギー 過去          現在 時間(10億年)

宇宙の構成成分 エネルギー密度 radiation matter 宇宙定数 0.7 0.3 0.0001 時間 z=3000 z~1

膨張宇宙の基本 da/dt フリードマン方程式 光度距離 光度距離 加速膨張すると同じzに 対して距離が大きくなる。 → 暗くみえる 宇宙定数なし 宇宙定数あり フリードマン方程式 光度距離 光度距離 加速膨張すると同じzに 対して距離が大きくなる。 → 暗くみえる

光度距離 遠くの天体の距離 → 昔の宇宙膨張速度 ただし光度距離は現在からzまでの宇宙膨張を 積分したようなもの 距離とredshiftの関係(Hubble diagram)を 測ると宇宙の構成物がわかる。

Hubble diagram 暗い 宇宙定数なしでは 合わない! Perlmutter et al. (1998)

パラメータ決定 z = 0.5, 1, 3, 10で距離が5%の 精度で測定できた時の制限 SNIaだけでがんばるより他の 観測を組み合わせる方が効果的 Perlmutter et al. (1998)

宇宙膨張を測る 宇宙膨張を測る方法 ・距離を測る ‐光度距離:SNIa、GRB ‐角径距離:バリオン振動、宇宙背景放射  ‐角径距離:バリオン振動、宇宙背景放射 ・構造形成を見る(後でコメント)  初期条件(CMB)から現在までに構造形成が  どのくらい進んだか。  構造形成:重力・宇宙膨張のせめぎあい  ‐物質優勢 → 構造形成が進む  ‐放射優勢・加速膨張 → 構造形成がゆっくり  *銀河の空間分布スペクトル  *銀河団数密度(SZ、X線)  *weak lensing

astro-ph/0609591

astro-ph/0609591

現在までの制限

状態方程式 宇宙定数は本当に「定数」か? w=-1でないときには エネルギー密度は 時間変化する。 matter (w=0) w=-0.9 -1.1 w<-1はphantom と言ったりする 時間

時間変化する状態方程式 wも時間変化する? どんな関数形でもよいが、 よく使われるのは次の形。 matter (w=0) WMAP 7yrs matter (w=0) w = 0 → -1 (w0 = -1, wa = 1) 時間

ダークエネルギーモデルの分類 w(z)をどういう関数形にするか? 1、データ解析的モデル ・constant w   ・w(z) = w0 + wa z/(1+z) 2、現象論的モデル(たいていスカラー場)   ダークエネルギーにまつわる謎を説明するモデル   ・山ほどモデルがある   ・fine-tuning:tracker model   ・coincidence:oscillating (undulant) model 3、物理的モデル   ダークエネルギー以外でモチベーションのあるモデル   ・ブレーンワールド   ・ゴースト凝縮   ・cyclic universe

ダークエネルギーの謎 ・fine-tuning problem ・coincidence problem radiation matter 初期宇宙で ものすごい 微調整 なぜ今物質と 暗黒エネルギーが 同程度? 宇宙定数 z=3000 z=1 z=0 時間

Quintessence ●標準理論ではヒッグス場だけ ●大統一理論、超対称性、超弦理論などで山ほど登場 ●2つのアプローチ  ・都合のいいスカラー場を用意して、素粒子理論に期待  ・素粒子理論で実際に登場するものを使う ポテンシャルで 宇宙論的性質が決まる

tracker model ある種類のポテンシャルで 面白いことが起こる ・tracker solution 優勢成分より少しゆっくり Steinhardt et al. (1999) ある種類のポテンシャルで 面白いことが起こる ・tracker solution  優勢成分より少しゆっくり  エネルギー密度が落ち、  どこかで追いつく ・アトラクタ的ふるまい  fine-tuning problemを  解決 ・coincidence problemは  解決できない

tracking oscillating model -35 17 加速膨張はこれまで2回あった:10 sec と 10 sec → その間に加速膨張はなかったのか? Dodelson et al. (2000) ・tracking potentialに  振動を加える ・スカラー場がtracker解の  まわりで振動 ・周期的に加速膨張 ・今はそのうちの1つ  → coincidence problem    の解決?? こういうモデルは GRBで制限するほかない

まとめ ●宇宙は現在加速膨張している ●宇宙定数だとするとパラメータはかなり決まっている ●宇宙定数は物理的にはとても不自然  → 何らかのダイナミクスを考えるのが自然 ●GRB宇宙論でめざすもの  ・これまでの他の観測のクロスチェック   (宇宙論には思わぬsystematic errorがつきもの)  ・現在まあまあよく決まっているパラメータを   もっと精密に決める(w = -1?)  ・GRBでしか観測できないhigh redshiftの宇宙から   ダークエネルギーのダイナミクスを探る -35 17 10 sec と 10 secの間に加速膨張はなかったのか? “Dark Energy in Dark Age”

補足 「一般相対論が間違っている」という可能性もある Modified Gravity ・ブレーンワールド ・f(R) gravity ・Lifshitz gravity ・超弦理論的重力 → “Dark Energy vs. Modified Gravity” どうやって区別するのか? 距離                膨張速度 構造形成   一般相対論 一般相対論が 間違っていると 2つの方法で 測った膨張速度 が異なる。 距離測定と構造形成を組み合わせると 一般相対論を超える重力理論を探索できる

2、距離梯子

標準光源(standard candle) 天体の距離と赤方偏移との 間の関係が知りたい 天体の明るさがあらかじめ わかっていれば、見かけの 明るさから距離がわかる。 しかし天体の絶対的な 明るさは普通わからない。

cosmic distance ladder① 三角測量で距離がわかっている セファイドで周期・光度関係式を出し、 遠くのセファイドに適用する セファイド変光星 三角測量 1pc 1kpc 1Mpc   距離 間接的に銀河までの距離を測ることができる

cosmic distance ladder② セファイドで距離が わかっている銀河 (にある超新星)で 何か関係式を作って 遠方にも適用する 超新星、銀河… セファイド変光星 三角測量 1pc 1kpc 1Mpc 1Gpc   距離 セファイドを使って銀河・超新星などを標準光源として calibrationする。

Ia型超新星 暗いものは 早く暗くなる 銀河1つ分の 明るさ! 減光時間で補正 するととてもよい 標準光源となる 白色矮星にガスが降着

2次的距離指標 セファイドから決めた2次的な距離指標からさらに遠方の天体の距離を 決定 → 400Mpcまでの Hubble diagram Freedman et al. 2001 Riess et al. (2009)

さらに遠くを見ると 宇宙の膨張速度は時間変化する。 Freedman方程式 暗黒エネルギーの密度パラメータ ハッブル定数 物質の密度パラメータ (Ωm, ΩΛ) (1, 0) (0.3, 0) (0.3, 0.7) 近傍の天体(z~0)では ハッブル定数だけが重要。 もっと遠くの天体までの 距離を測ると密度パラメータ に関する情報が得られる。 H(z)/H0 HST key project redshift

遠方SNIaの観測 ・307個のSNIaによる制限 ・暗黒エネルギーの存在を示唆 ・CMB・BAOと合わせると かなりパラメータが決まる Riess et al. 2007 ・307個のSNIaによる制限 ・暗黒エネルギーの存在を示唆 ・CMB・BAOと合わせると  かなりパラメータが決まる

さらにさらに遠くへ 暗黒エネルギーの発見はすごいこと。 しかしその正体を考えようとすると情報が少なすぎる。 今のところ定数で観測と矛盾しない。 しかしそれは比較的小さなzでの話。

cosmic distance ladderを伸ばす GRBは宇宙の果てで起こっても見える。 GRBでHubble diagramを拡張して 暗黒エネルギーの正体を探りたい。 20 GRB~10 Lsun 10 Ia型超新星~10 Lsun 3 セファイド変光星~10 Lsun 三角測量 1pc 1kpc 1Mpc 1Gpc   距離

3、GRB宇宙論 with Tsutsui, Nakamura, Yonetoku, Murakami

redshift分布 Swift衛星によって観測されたGRBの赤方偏移分布 ・現在のGRBの最高赤方偏移はz = 8.2 SNIaはこの辺まで ・現在のGRBの最高赤方偏移はz = 8.2 ・dark ageをGRBで探索する

明るさ分布 明るさにかなりの ばらつきがある。 → 標準光源には ならない? 標準光源 ・セファイド 変光周期と明るさ ・Ia型超新星   ならない? 標準光源 ・セファイド  変光周期と明るさ ・Ia型超新星  減光時間と明るさ GRBにもこのような 相関があるのか?

スペクトル Band spectrum ・2つのpower lawを 指数関数でつなぐ ・peak energy Ep   指数関数でつなぐ  ・peak energy Ep   ~ 10keV – 1MeV ∝ Eα ∝ Eβ ピークエネルギー (Ep)

GRB correlation GRBの明るさとスペクトルのピークエネルギーとの相関が いくつか提唱されている。(Amati、Ghirlanda、Yonetoku) ピークエネルギーが 大きいほど明るい ただしこれらの関係式は宇宙論モデルを決めて 得られたもの。これをそのまま使うことはできない。

近傍での関係式の確立 z < 1.5ではIa型超新星によって 距離が測られている。そこで まずz < 1.5のGRBだけを使って 相関を見てみる。 確かに相関はある。 これがもっと遠方の GRBにも成り立つと 仮定する。 → Hubble diagramを   より遠方に伸ばす

GRB Hubble diagram Yonetoku relationを用いたHubble diagram Tsutsui, KT et al., 2009 ・z < 1.5 → 33個 ・z > 1.5 → 30個 ・SNIaより数が少なく  誤差も大きいが  遙かに遠くまで  距離を測定

GRBによる制限① contourの形がGRBと SNIaで異なる。重ねると 制限が強くなる。まだ GRBの数も少なく精度も よくないのであまり強い 制限にはならない。 しかしSNIaの2003年 程度のレベルには到達 している!

GRBによる制限②

最近の発展 どうしたらもっと強い制限をつけられるか? ・もっと遠くまで見る ‐新しい衛星を作る ・統計誤差を減らす  ‐新しい衛星を作る ・統計誤差を減らす  → GRBの数を増やす(low zもmid zも)  ‐じっと待つ ・系統誤差を減らす  ‐進化効果  ‐検出器によるselection効果  ‐新たな関係式を探す  ‐よいデータだけを使う  → 筒井講演

まとめ GRB宇宙論 ・ピークエネルギーと「明るさ」の相関 → これによってGRBを標準光源として使用可能  ・ピークエネルギーと「明るさ」の相関   → これによってGRBを標準光源として使用可能  ・cosmic distance ladderをもう1つ伸ばす   三角測量 → セファイド → Ia型超新星 → GRB  ・GRBで暗黒エネルギーの時間変化を探る   → 暗黒エネルギーの正体にせまる  ・distance ladderの方法だけで宇宙論パラメータを   決める   → CMB・BAOなどのクロスチェック  ・今のところGRBの数が少ない  ・系統誤差を理解する努力をする Probing Dark Energy in Dark Age with GUNDAM!!