トレーニングの際はスライド, ノートの両方を確認してください 治験の補償に関する 基本的な考え方 2015年5月作成
目次 補償と賠償 健康被害の補償とGCP 医法研 被験者の健康被害補償に関する ガイドライン 1~4 補償対応の基本的な流れ 留意点 1~3 医法研 被験者の健康被害補償に関する ガイドライン 1~4 補償対応の基本的な流れ 留意点 1~3 健康被害が発生したら・・・
補償と賠償 ≠ 賠償責任 補償責任 発生原因 根拠法 対象 賠償 不法行為や債務不履行によって発生 民法・PL法(注) 通常発生する損害が対象 (個人差あり) 補償 不法行為や債務不履行がなくても発生 特別法に基づくことが多い 予め定められた基準に基づく(一律・定額) (注)製造物責任法(PL 法)は製造者の過失の代わりに製造物の欠陥を要件とする賠償責任を定めている。 債務不履行 (契約違反) 不法行為 (PL法含む) <例> ・区画整理により、土地が狭く なった又は移転を余儀なくされた 【補償と賠償の違いは?】 補償の理解に当たっては、補償と賠償の違いを理解する必要があります。 賠償とは不法行為(故意・過失)又は債務不履行により、他人に損害を与えた場合に、その損害を填補することを指します。例えば、医療過誤による健康被害であれば実施医療機関側が、治験薬の品質劣化による健康被害であれば治験依頼者が賠償責任を果たすことになります。つまり誰に責任があるか明確な場合、賠償の範囲となります。 一方で、補償とは故意・過失、債務不履行がなくても、法規等に基づき、他人に発生した損害を填補することを指します。誰の違法行為もなく、治験によると考えられる健康被害が発生した場合、治験依頼者が補償を行うことになります。 <参考資料> 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン(2009年11月25日) 賠償責任 ≠ 補償責任 基本
健康被害の補償とGCP GCP 第1条(趣旨) ガイダンス2 GCP 第14条(被験者に対する補償措置) 治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失を適切に補償すること。その際、因果関係の証明などについて被験者に負担を課すことがないようにすること。 GCP 第14条(被験者に対する補償措置) 治験を依頼しようとする者は、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害の補償のために、保険その他必要な措置を講じておかなければならない。 【補償に関するGCP条文とは?】 GCPでは補償の措置を講じるように上記の通りGCP第1条、第14条にて規定されています。しかし、その具体的な方法などについては明記されていません。 補償方法の具体的な内容を提示することを目的として、医薬品企業法務研究会より、被験者の健康被害に関するガイドライン(医法研ガイドライン)が策定されました。 補償に関連する、GCPの条文は以下のとおりです。 第10条(実施医療機関の長への文書の事前提出):治験の依頼をしようとするものは、あらかじめ、次に掲げる文書を実施医療機関の長に提出しなければならない。 7)被験者の健康被害の補償について説明した文書 第12条(業務の委託)ガイダンス2:開発業務受託機関は受託者たる開発業務受託機関が実施医療機関において業務を行う場合においては、治験依頼者とともに、当該受託業務により生じた健康被害の治療に要する費用その他の損失を補償するための手順を定め、当該手順書に従って健康被害の補償に関する業務を実施すること。 第13条(治験の契約)第1項:治験の依頼をしようとするもの及び実施医療機関は、次に掲げる事項について記載した文書により治験の契約を締結しなければならない。 16)被験者の健康被害の補償に関する事項 第32条(治験審査委員会の責務)第1項/第2項ガイダンス2:治験審査委員会は、その責務の遂行のために、審査対象として以下の文書の最新のものを実施医療機関の長などから入手すること。 (1)⑦被験者の健康被害の補償について説明した文書 第39条の2(業務の委託等)ガイダンス4:当該受託者は、実施医療機関とともに、当該受託業務により生じた健康被害に要する費用その他の損失を補償するための手順を定め、当該手順書に従って健康被害の補償に関する業務を実施すること。 第51条(説明文書):治験責任医師等は、前条第1項(説明文書による同意取得)の説明を行うときは、次に掲げる事項を記載した説明文書を交付しなければならない。 14) 健康被害の補償に関する事項 <参考資料> GCP 第1条、第10条、第12条、第13条、第14条、第32条、第39条の2、第51条 基本
医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 1/4 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 1/4 治験に起因して被験者に健康被害が発生し、その健康被害に対してだれにも賠償責任を問うことが出来ない場合に、治験依頼者が被験者を救済するためのガイドラインです 治験依頼者の多くは、本ガイドラインを参考として、各社の補償制度を定めています 【医法研ガイドラインとは?】 ・医法研ガイドラインは参考であり、治験依頼者が試験ごとに補償内容を決定することになります。 ・その健康被害に対してだれにも賠償責任を問うことが出来ない場合には、「賠償責任が明らかでない」場合が含まれます。 ・2015年3月現在、ガイドラインを改訂中のため内容が変更されることがあります。 <参考資料> 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン(2009年11月25日) 各試験の補償内容についてご不明な点等 があれば、治験依頼者に確認しましょう! 基本
医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 2/4 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 2/4 <補償対象外の例> 機会原因(治験中でなくても発生した偶発的事故)に起因 治験薬及び治験実施と健康被害との間に因果関係が否定される場合 治験依頼者、実施医療機関及び第三者に損害賠償責任がある場合 被験者自身の故意によって生じた健康被害 ※ 補償対象となるかについては、個別に治験依頼者へ相談する必要があります。 【重要ポイント】 ・因果関係の判断責任は、治験依頼者にあります。これは、GCPガイダンス第14条2注1)を反映したものです。 ・賠償責任がある場合は、補償の対象とはならず「賠償事案」となります。 ※GCPガイダンス第14条2注1)とは? 治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失を適切に補償すること。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること。 <参考資料> 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン(2009年11月25日) 基本
医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 3/4 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 3/4 <補償が制限される例> 被験者に重大な過失がある場合 (例:治験同意書、その他の遵守事項及び治験担当医師等 の指示に従わない場合) 薬剤の予期した効果又はその他の利益を提供できなかった場合(例:効能不発揮) プラセボを投与した被験者に治療上の利益を提供できなかった場合 その他、合理的な理由がある場合 ※ 補償対象となるかについては、個別に治験依頼者へ相談する必要があります。 【重要ポイント】 ・効能不発揮が補償の対象とならない理由は、医療行為そのものが可能な限り最善の医療行為に努めるという「手段債務」であり、治癒という結果を保証する「結果債務」でないためです。ただし、治験開始時点より症状が悪化した場合で治験の手順等により発生したと思われるものは、その蓋然性も含めて判断します。 ・プラセボを飲んだ被験者が必ずしも補償の対象外であるという意味ではありません。観察期間、ウォッシュアウト中のプラセボ投与の際に、被験者の症状が治験開始前の推移より明らかに悪化し救済措置が必要な場合など、治験の手順等との蓋然性を考慮して、例外として補償の対象とすることもあるため、治験依頼者と相談してください。 <参考資料> 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン(2009年11月25日) 基本
医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 4/4 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン 4/4 <補償内容> 医療費 健康保険等からの給付を除いた被験者の自己負担額が支払われる 高額療養費制度が適応される場合は、その上限とする 医療手当 入院を必要とするような健康被害であれば、医薬品副作用被害救済制度の給付に参考に、支払われる 補償金 健康人:労働者災害補償制度、予防接種健康被害救済制度の給付 額を参考に支払われる 患 者:医薬品副作用被害救済制度の給付額を参考に支払われる 【重要ポイント】 ・GCPガイダンス第14条2注1)記載の「治療に要する費用」が「医療費」及び「医療手当」、「その他の損失」が「補償金」に相当します。 ・医療手当は、「病院往復の交通費、入院に伴う諸雑費をみる」という趣旨で支払われます。 ・補償金は、試験の対象が健康人か患者かによって、参考にする制度が異なります。 <参考資料> 医法研 被験者の健康被害補償に関するガイドライン(2009年11月25日) 基本
補償対応の基本的な流れ 健康被害 発生 補償の対象とならない場合、補償金の支払いなし 治験依頼者 まずは、被験者の安全性を確保 モニター 必要な情報の伝達 収集した 情報の報告 治験担当医師 被験者 【補償対応の基本的な流れは?】 治験開始前に、治験依頼者から提供される「補償に関する説明資料」を確認してください。 同意説明の際には、被験者へ補償内容を説明し、説明文書とともに「補償に関する説明資料」を被験者へ提供する必要があります。 健康被害が発生し補償の必要が生じたと考えられる場合は、まず発生した健康被害に関する情報をモニターに伝えましょう。 治験依頼者は収集した内容について、社内手順に従い補償内容を協議します。 「因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること」とGCPで定められていることから、補償対象か否かの最終決定は治験依頼者が行います。 なお、治験依頼者の補償に不服があった場合、被験者側の同意を得て、中立的な第三者の判定を求めることとします。この場合の判定に要する費用は治験依頼者が負担しなければなりません。 治験依頼者により決定された補償内容が被験者(もしくは実施医療機関)へ支払われます。 このように、補償の申し出から補償の内容が確定するまでには多くの手順があるため、被験者への支払いまでに時間がかかる場合があります。 また、治験依頼者は保険会社へ請求を行うにあたり、健康被害に関する内容など必要な情報を保険会社に提出する場合があります。 補償対象か否かの決定は、治験依頼者が行います。 補償の対象となる場合、 決定した医療費等の支払い 基本
留意点 1/3 <補償対応時のトラブルの要因(調査対象:CRC)> 基本 要因(順位を付けて3つ選択) 1位 2位 3位 合計 被験者が補償に対して過度に期待している場合 22.6% 17.2% 7.8% 47.6% 被験者の想定以上の重篤な健康被害に起因するもの 8.2% 9.1% 22.4% 39.7% 医師との信頼関係が起因する場合 24.4% 4.3% 5.5% 34.2% 治験参加に家族が納得していない場合 4.4% 16.4% 12.1% 32.9% 医師・CRCが補償について正しく認識していない場合 15.6% 6.8% 7.3% 29.7% 治験参加に患者が納得しているとは言い難い場合 6.5% 9.0% 4.8% 20.3% 院内の補償時の対応体制が整っていない場合 4.0% 8.7% 5.6% 18.3% 治療方針と患者の希望に齟齬がある場合 1.6% 8.8% 7.7% 18.1% 補償内容そのものに起因するもの 2.1% 3.5% 9.6% 15.2% 補償説明に起因するもの 0.9% 1.4% 7.0% 9.3% CRCとの信頼関係が起因する場合 1.0% 1.2% その他 【重要ポイント】 補償対応時のトラブルにつながりそうな要因を事前に確認しておき、実際に、補償対応する時にあわてないように備えましょう。 ・被験者が補償に対して過度に期待している場合、補償対応の際にその内容に不満をもたれることが予想されます。事前に、補償内容を被験者に理解してもらうことが重要です。 ・被験者へ安全性情報について十分説明して、理解した上で治験へ参加してもらうことが重要です。 ・被験者と十分にコミュニケーションをとることが、円滑な治験実施につながります。 <参考資料> 楠岡英雄 他、実施医療機関の対応に関する研究:治験に係る健康被害発生時の被験者保護に関する研究 分担研究報告書、2011年4月 楠岡英雄 他、実施医療機関の対応に関する研究:治験に係る健康被害発生時の被験者保護に関する研究 分担研究報告書、2011年4月 基本
留意点 2/3 <補償対応及びトラブル経験(調査対象:CRC) > 補償対応経験あり:25.1%(回答数769件) トラブル経験あり:15.9% 医療費・医療手当の支払いまでに時間を要した 4.8% 健康被害が長期に継続したため、医療費・医療手当をどこまで継続するのかがわからなかった 4.0% 被験者が他院に入院していたため連絡がスムーズに行かなかった 3.2% 被験者への説明が不十分で、被験者と依頼者との補償の考え方に差が生じた 治験責任医師・分担医師、またはCRCの補償についての認識不足により、被験者に過度の期待を持たせてしまった(補償の対象とはならないのに、補償されると説明したなど) 1.6% 補償請求時の院内の流れが確立できずに、治験依頼者へ請求するまでに時間を要した 治療費を先に被験者が払うのか、病院が立て替えるのかでトラブルが生じた 賠償として対応すべき案件なのに、補償として対応して依頼者との間でトラブルが生じた 0.4% その他 6.4% <参考資料> 楠岡英雄 他、実施医療機関の対応に関する研究:治験に係る健康被害発生時の被験者保護に関する研究 分担研究報告書、2011年4月 楠岡英雄 他、実施医療機関の対応に関する研究:治験に係る健康被害発生時の被験者保護に関する研究 分担研究報告書、2011年4月 基本
留意点 3/3 <気をつけて欲しいこと> 被験者への対応 治験依頼者への対応 補償問題は最初の対応が肝心である 関連性について医師とよく話し合う必要がある 補償範囲を正確に説明すること (過度な期待はトラブルのもと) 治験依頼者への対応 健康被害の調査に協力し、一緒に解決する 実施医療機関内で、事前に補償の範囲などを理解しておく 【重要ポイント】 ・被験者への対応は、実施医療機関が実施します。 ・状況によっては、治験依頼者が被験者と面会することがありますが、その場合にも実施医療機関抜きに面会することはありません。 基本
健康被害が発生したら・・・ 被験者から健康被害の補償の申し出があれば、 すぐに治験責任医師及びモニターに相談しましょう! 基本
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