このスライドは下記の会合での発表に追加・修正を加えたものです (最終訂正:2010.2.18.) このスライドは下記の会合での発表に追加・修正を加えたものです (最終訂正:2010.2.18.) 「日本の医療を守る市民の会」特別企画第3弾 患者を大切にするドイツの 医療と医療事故処理 2009年8月8日 中野サンプラザ8階研修室 東京医科歯科大学名誉教授 岡嶋道夫 okajimamic@hi-ho.ne.jp http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/ 2009.8.8. 岡嶋道夫
患者を大切に扱うドイツの 医療と医療事故処理 2009年2月22日 日本医学協会 医療問題懇談会 文京シビックセンター 学習室 東京医科歯科大学名誉教授 岡嶋道夫 okajimamic@hi-ho.ne.jp http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/ 2009.8.8. 岡嶋道夫
日本と異なるドイツの医療と 医療審判制度30年の歩み 先端技術産業戦略推進機構 健康医療部会研究会 2008年6月12日 虎ノ門パストラル 東京医科歯科大学名誉教授 岡嶋道夫 okajimamic@hi-ho.ne.jp http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/ 2009.8.8. 岡嶋道夫
内容 1.24時間、365日受診と往診が受けられる救急医療 2.開業医定員制と医師偏在解消への努力 3.地域の医療需要に対応する州病院計画 4.医師の老後に不安のない年金制度 5.手続の簡単な苦情受付と裁判外紛争処理 6.このような医療を支える医師の卒前・卒後・生涯教育 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの救急業務 交通事故、意識不明、身元不明、誰がみても病院へ、という患者は救急車で病院に直接搬送されるが、それ以外の救急患者は開業医が診療し、入院の必要を認めれば病院に転送する 夜間、週末、祝日の救急患者は地域の開業医による一般救急業務が引き受ける。急性期病院は必ず内科、外科、産婦人科、放射線科が待機する 開業医の一般救急業務 休診日は土日、祝日、水曜午後(全国統一) 救急当番制: 開業医は全員一般救急当番に参加する義務 がある(65歳まで、病気・妊娠育児免除) 2009.8.8. 岡嶋道夫
休診日と夜間(例19時~7時)は救急当番医が担当 救急当番医は総ての年齢、疾患の患者を最初に診て応急処置をする。重症であれば病院に転送する 耳鼻咽喉科と眼科は別途に救急待機業務 最近は地域の救急センターで診療と連絡業務 開業医の開業時間は7時から19時まで 8時半診療開始の場合はそれまでの時間、昼休みは休憩時間であるが、急患があれば診療する 従って、患者は24時間、365日診療所での受診と往診が受けられる 2009.8.8. 岡嶋道夫
救急当番医と主治医との関係 自分の患者は診療時間外でも診療する義務がある それができないときは救急当番医に依頼する 日中は必ず連絡可能な状態: 長時間不在にするときは必ず同僚医師に連絡して承諾を得ておく(自分の患者が急患となった場合に回せるように) 救急当番の時間内は担当地域外に出てはならない 休暇や病気の時は同僚医師の助け合いが徹底 救急で診療した医師は、主治医に報告し、患者を戻さなければならない (患者は逃げないとのこと) 2009.8.8. 岡嶋道夫
救急当番義務化の歴史 1956年に医師職業規則で救急業務を義務づけた しかし、救急業務をしない医師が増えてきた 1972年に行政裁判所の判決:救急業務を州の法律で義務化せよ それにより、州医師会と州保険医協会が共同で救急業務規則を作成し実施 一般救急業務の能力がないと開業が許可されない これにより総ての開業医が救急当番に参加する義務を持つ(なるべく平等に担当) 非保険医も参加義務 2009.8.8. 岡嶋道夫
開業医定員制と医師偏在解消への努力 1970年代には、ドイツや日本も含めて、多くの国で医師の需要増加を見越して医科大学を多数増設した 間もなくして医師過剰現象が現われ、その調整が行われることになった。わが国でも1990年代には医師過剰を心配する声が強くなった しかし、2000年代に入ると、ドイツでも日本でも突如として医師不足傾向が顕在化し始めた 2009.8.8. 岡嶋道夫 2009年8月8日
開業医の地域別、専門医別の定員制 ドイツでは1993年に、開業医の過剰や集中を防ぎ、医療供給を適正にする目的で、従来の医師開業認可規則に定員制の条文を導入 中・長期計画としての開業医の定員制を実施 その場合、連邦の地域開発計画資料を参考にして行政地域に準拠して医療圏(計画区域)を設定 医療圏ごとに専門医1名あたりの住民数を定めるという形の定員制で、住民が増減すれば、それに比例して定員数も変化する 2009.8.8. 岡嶋道夫 2009年8月8日
開業医の需要計画 医療圏の分類と専門医1人あたりの住民数 算出は人口密度と都市構成を基本にしている 国会図書館レファレンス 平成20年11月号戸田典子から 2009.8.8. 岡嶋道夫
専門医1人当りの住民数(1993年) 例示 人口密度高い地域 1 中核都市 例:ベルリン デュッセルドルフ フランクフルト ミュンヘン 専門医1人当りの住民数(1993年) 例示 人口密度高い地域 1 中核都市 例:ベルリン デュッセルドルフ フランクフルト ミュンヘン 密度の低い地域 9 農村的地域 例:ガルミッシュ・パルテンキルヘン.アルプス地方 一般医学(家庭医) 2004年より 2269 1585 > 1674 1474 麻酔 25958 < 137442 眼科 13177 25196 外科 24469 48592 産婦人科 6916 13697 2009.8.8. 岡嶋道夫
2004年に制度改革で内科専門医の多数が家庭医に転向した。他の科では人数枠に変更なし。 耳鼻咽喉科 16884 < 37794 皮膚科 20812 < 60026 内科 2004年より 3679 12276 < 8912 31876 小児科 14188 26505 神経科 12864 46384 整形外科 13242 31398 精神療法 2577 23106 放射線科 25533 136058 泌尿器科 26641 55159 2004年に制度改革で内科専門医の多数が家庭医に転向した。他の科では人数枠に変更なし。 2009.8.8. 岡嶋道夫
この場合、医師過剰であった1990年の実情を算出根拠にしたが、これは現在まで続いている 定員制といっても開業医の配置換えをするといった強行手段を取るのではなく、定員を超えた供給過剰の地区での新規開業を許可しないで、供給不足の地区での開業を推進しようとするものである 定員に満たない医療圏は 1996年には 29.7% であったが 2008年には 8.4% に減少し、 その効果が現われている 2009.8.8. 岡嶋道夫 2009年8月8日
専門医の充足度 (毎年ほとんど変化しない) 人口800万のW-L地方の27医療圏(計画区域) 専門医別(2007年9月)、●は充足、左端の列が家庭医 家庭医 麻酔 眼科 外科 産婦 耳鼻 皮膚 内科 小児 神経 整形 精神 放射 泌尿 2009.8.8. 岡嶋道夫
現在、施行後15年を経過したところであるが、充足度が150%あるいは70%という地区がまだ残っているとのことである 自分の気に入った地域で開業する自由は制限されるが、医師の間では大きな反対もなく受入れられている。規制がないと、狭い地域で限られた数の患者の奪い合い、収入の減少ということになり、医師自身にとっても不都合になる 開業応募者の採用は委員会(保険医協会と疾病金庫から同数の委員)が行うが、選抜方法の詳細は開業認可規則で定められている 2009.8.8. 岡嶋道夫 2009年8月8日
州別、専門医別に見た開業可能な医療圏数 とその医師数(医療圏は総数395) 2008年 国会図書館レファレンス 平成20年11月号戸田典子から 2009.8.8. 岡嶋道夫
このように、現在多数の地域並びに大多数の専門において定員は充足されているが、 充足度のもっとも低いのは家庭医(一般医学の専門医資格がないと開業できない)。EUでは家庭医として開業を始める医師は、1995年より最低2年間の家庭医としての卒後研修が必須 医師偏在の抑止 ドイツの地形は比較的単純、専門医制度が確立していて、定員を定めやすい、といった事情が日本と異なるが、開業医の定員制という大胆な制度を作っている精神には学ぶべきものがある 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツ: 州の病院計画 病院の運営は州の病院計画による ドイツ: 州の病院計画 病院の運営は州の病院計画による 病院計画委員会に参加するのは下記4団体 病院協会 疾病金庫州連合体(各種公的医療保険団体) 民間医療保険協会 自治体州連合体 毎年州全体の医療需要の統計を作成、 地域にあわせて各病院の予算を決定 病院は任務により格付、ネットにより相互の連携 行政の支出: 病院の建物の補修費・衛生設備・特殊機器といったインフラ費用、十分ではない 2009.8.8. 岡嶋道夫
病院の収入 病院が医療保険から支払われるのは ◆診療行為に対して保険点数できめられた額 ◆入院に対する支給基準額=入院1人1日当り の額 病院が医療保険から支払われるのは ◆診療行為に対して保険点数できめられた額 ◆入院に対する支給基準額=入院1人1日当り の額 後者の額は部局の診療レベルに応じて決まる 大学病院は最高の診療をするので最高の額 高度の診療をしない病院はそれに相応の額 最近は包括払いに移行 これらを一括して、医師以下の人件費、物件費などに当てて病院を運営 2009.8.8. 岡嶋道夫
予算と将来計画 病院計画では全病院の診療や経理内容を把握 それに基づいて病院の予算や将来計画を決定 診療科の拡大、縮小、廃止、最新治療設備の設置なども州全体の総合的見地で決められる 各病院は医療の質の確保、費用対効果、節約などにより効率的な病院運営に努力 患者が予算より少ない場合:予算返却の計算式 患者が多くて予算超過: 次年度の予算で充当 2009.8.8. 岡嶋道夫
医療政策 病院計画に自治体州連合体(例えば市町村連合体)が入っているので、州の医療政策を推進する場にもなる 患者は州をこえて受診する。これに対応し州の間での調整も行われる 教育病院に認定されると、スタッフ医師の何パーセントかに当る研修医を教育する基準義務があり、研修医は通常の医師として勤務 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの病院で使われている 質保証のためのスタンダード報告用紙/ 患者事故発生の場合のリスク・マネージメント 全ての患者に対して入院時から退 院までの間に起った副作用、院内 感染、事故的なものを全部記入。 何もなければ「事故なし」をチェック。 4枚のカーボンコピーの宛先は 患者記録 質のマネージメント係 看護業務指導部 家庭医 事故が起ったときだけ報告すると いうのではない。 2009.8.8. 岡嶋道夫
医師年金保険制度 1960年ごろ各州医師会は医師年金保険を創設 医師免許取得者は全員 州医師会へ強制加入、同時に 州医師会の年金保険へも加入 が義務づけられた 公的年金と同じ賦課方式なので 4,5年後には老齢年金の給付が開始された 2009.8.8. 岡嶋道夫
保険料は高いが、受け取る年金の額も高くなるので、医師としての誇りの持てる老後の生活が保障される 勤務医も一般勤労者の年金保険(厚生年金のような)に加入しないで、医師会の年金保険に加入するように義務づけられる 65歳から支給開始 60歳から(減額支給)、65歳以後に(増額支給) 上限あるが保険料上乗すれば支給額も増える 2009.8.8. 岡嶋道夫
保険医の68歳定年 1999年より68歳を超えると保険医資格がなくなる定年制度ができた 開業できなくなるが、反対は殆どなかった 責任の重いきつい医師業務から開放されるということで、むしろ歓迎されたという その大きな理由は、このような年金制度が確立しているからであった 2009.8.8. 岡嶋道夫
保険数学によって算出される期待権が本人に毎年通知される 保険料を1ヶ月でも納めていると、病気などで働けなくなった場合、就労不能者年金が支給され、子供には育児手当が支給 65歳に達すると老齢年金に移行する 保険数学によって算出される期待権が本人に毎年通知される 年金保険は保険の専門家と医師によって運営され、監督官庁の監視を受ける 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの医師年金 ノルトライン医師会(人口970万人)における 2004年の実績 医師数(退職医師を除く) 男医 22,522 女医 15,401 合計 38,163 2009.8.8. 岡嶋道夫
年金保険 (千ユーロ) 保険料収入 392,277 給付 金額(千ユーロ) % 老齢年金 75.4 育児手当 1.5 寡婦∸寡夫年金 年金保険 (千ユーロ) 保険料収入 392,277 給付 金額(千ユーロ) % 老齢年金 237,345 75.4 育児手当 4,622 1.5 寡婦∸寡夫年金 57,108 18.1 孤児年金 2,321 0.7 就労不能者年金 12,180 3.9 リハビリ、死亡手当 1,269 0.4 年間給付総額 314,845 100.0 2009.8.8. 岡嶋道夫
受給者 人数 老齢年金 7,761 育児手当 1,295 寡婦-寡夫年金 3,165 片親孤児年金 658 両親孤児年金 17 就労不能者年金 414 241 年金基金資産総額 7,112,010 (千ユーロ) 2009.8.8. 岡嶋道夫
大学病院医師給与 月額 ユーロ (週42時間勤務) 2008年1月1日より 大学病院医師給与 月額 ユーロ (週42時間勤務) 2008年1月1日より 等級1 2 3 4 5 A1 医師 (研修医) 3705 1年目 3915 2年目 4065 3年目 4325 4年目 4635 5年目より A2 専門医 4890 1年目より 5300 4年目より 5660 7年目より A3 医長 6125 6485 7000 A4 部長医 7205 7720 8130 年収は月給の13倍 ドイツでは勤務者は1か月分のボーナスが支給される 2009.8.8. 岡嶋道夫
自治体病院医師給与 月額 ユーロ (週40時間勤務) 2006年8月より 自治体病院医師給与 月額 ユーロ (週40時間勤務) 2006年8月より 等級1 2 3 4 5 医師 (研修医) 3.420 3.640 1年経過後 3.760 2年経過後 4.000 3年経過後 4.200 5年経過後 専門医 4.450 4.800 5.110 6年経過後 5.300 10年経過後 5.600 15年経過後 医長 5.650 6.000 部長医 6.500 2009.8.8. 岡嶋道夫
www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/t601/t606.ppt 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツにおける医師の各種審判手続 *では医師の自律規範が機能している (作図責任・岡嶋道夫) 民事的 (医療過誤に対して) ドイツにおける医師の各種審判手続 *では医師の自律規範が機能している (作図責任・岡嶋道夫) 民事的 (医療過誤に対して) ●民亊裁判所: (裁判外紛争処理に不満足のときにも) ●裁判外紛争処理(Schlichtung, Arbitration)*: 州医師会の鑑定委員会/調停所が実施する調停(ADR) (1975年開始、成果を挙げている) 重大な医療事故では立証責任の転換(患者から医師へ)により患者に有利となる制度もある(医師が過失のないことを立証しなければならない) 刑事的 (刑事事件一般、医師の倫理・義務違反に対して) ●刑事裁判所 ●医師会の懲戒委員会*:軽微なケースの処罰、重いものは医師職業裁判所にまわす ●医師職業裁判所*:刑事裁判になっていれば、その判決が出るまで審理を中断し、その結果をみて判決を下す。刑事裁判の処分対象にならず、はみ出した部分(医師の信頼を傷つける行為など)があれば職業裁判所でさらに処罰する 2009.8.8. 岡嶋道夫
医療事故と裁判外紛争処理 ドイツでは1975年から1978年にかけて、各地の州医師会は鑑定委員会/調停所を設置して裁判外紛争処理(Arbitration調停)を始めた この制度は米国で考案されたものであるが、ドイツでは成功し、患者や医師の信頼を獲得する成果を挙げている その状況は配布資料に示したとおりで、医療過誤の訴えの30%が認められている 制度の詳細は畔柳達雄、我妻学が紹介している 2009.8.8. 岡嶋道夫
米国の裁判外紛争処理(Arbitration 調停) 裁判外紛争処理は1970年代に、増大する医療過誤をめぐる裁判の負担を軽減するために米国で考え出された制度。 色々な種類がある (Arbitration, Mediationなど) 現在日本ではMediationが試みられている ここで述べる Arbitration は、米国では半数の州で始められたが、数州を除いて廃止、あるいは成果をあまり挙げていない結果となった しかしドイツでは成功した 2009.8.8. 岡嶋道夫
諸外国との比較 私の知識は浅薄であるが、スウェーデンが1975年から始めた医療事故補償制度は、その基本はドイツと類似、成果をあげている フランスも同様の制度を作った 日本は医療事故調査委員会を作る計画を立てて議論をしているが、進展がない。成立したとしても、莫大な経費、解剖に限定された医学鑑定では限界がある、などの理由で大変懸念される。 ドイツやスウェーデンを眺めてほしい 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの裁判外紛争処理の実際 申請手続は簡単なので苦情を訴えやすい 手続は無料 必要資料は委員会が取寄せる(診療記録、検査記録など、必要であれば当該医師の前後に診療した医師の記録なども) 患者が集める必要はない 証拠保全は不必要 医師が資料提出に協力して成立するのが裁判外紛争処理、したがって平和的解決と言われる 医師はコピーを作ってから提出 2009.8.8. 岡嶋道夫
書面審理:口頭審理は一部を除き行われない 当事者が出頭することは通常ない 医学鑑定は数多く行われ重要な判断基準となる 当事者が出頭することは通常ない 医学鑑定は数多く行われ重要な判断基準となる 裁判外紛争処理の決定は裁判所の判決と異なり拘束力がない、不満であれば民事裁判に 弁護士費用は当事者が負担、低所得者には公費補助、弁護士を頼まなくて済む場合が多い 運営経費は医師会が負担 委員は無報酬(名誉職=ボランティア) 2009.8.8. 岡嶋道夫 2009年8月8日
委員会が医療過誤を認めると、患者は保険会社と損害賠償・慰謝料の額について折衝する 委員会は医療過誤の有無のみを判定する 委員会が医療過誤を認めると、患者は保険会社と損害賠償・慰謝料の額について折衝する 金額は事例集を参考にして決められる 保険会社のペースに巻き込まれないために、患者はこのときに初めて弁護士を依頼することが多いという 医療過誤/説明不足が認められただけで満足し、賠償や慰謝料を請求しない人がかなりいる= 23.4%(毎年このくらいいる) 2009.8.8. 岡嶋道夫
鑑定委員会・調停所 年間受理件数 ドイツ全体 (畔柳、我妻、Berner、連邦統計 から) 医療過誤の民亊裁判は11,500件(2007年)で3年前より18%増加している 2009.8.8. 岡嶋道夫
裁判外紛争処理は民事裁判になる数を著しく減少させている = 約10%に減少 裁判外紛争処理は民事裁判になる数を著しく減少させている = 約10%に減少 民事裁判に持ち込まれた場合、裁判所の判決の90%は鑑定委員会の決定に沿った結論 ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ 鑑定委員会、調停所が医師会の中に作られたとき、費用は医師会負担、オフィスは医師会内、医師会の職員を使うというので、医師に有利な判断をするのではないかと心配されたが、委員と鑑定人が中立の立場を守り、公平な判断を下してきたので、現在は患者も医師も信頼している 2009.8.8. 岡嶋道夫
追加事項 2009年8月27日のドイツ医師会雑誌ニュースレターによると 連邦法務大臣チプリースZypriesは以下のように述べている 医療過誤に対する民事裁判と裁判外紛争処理が増加している 民事裁判: 2007年は11,500件以上、3年前にくらべて1,700件多い 裁判外紛争処理: 2008年:10,967 2007年:10,432 2006年:10,280 頻度は病院:診療所=7:3 病院では外科と災害外科、診療所では家庭医と整形外科が多い 2009.8.8. 岡嶋道夫
損害賠償と慰謝料の額 2000年のケース ノルトライン医師会(人口950万地区) 178件 損害賠償と慰謝料の額 2000年のケース ノルトライン医師会(人口950万地区) 178件 ~1 (千マルク) ~7.5 万円 9 件 1~5 7.5~37.5 38 5~10 37.5~75 40 10~20 75~150 36 20~30 150~225 19 30~40 225~300 12 40~50 300~425 6 50~100 425~750 9 100~200 750~1500 200~1,000 1,500~7,500 3* *3件の額: 1,000; 320; 250 千マルク 2009.8.8. 岡嶋道夫
アメリカ人から見たドイツのADR 米国の研究者が1995年にドイツの裁判外紛争処理ADRを詳しく調査、1996年に発表した論文で: 米国では医療過誤における ADR(arbitration)は、a few statesでは positive であったが、多くの州ではそうでなかった。5つの州では違憲とされるなど、多くの州では negative な経過と結果になった ドイツの制度は米国のアイデアで作られたが、positive results を得て、多数のケースが解決している。Curiousなことだ、と述べている 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツでは敗者は勝者の費用を払うので裁判所は遠い。米国はそれにくらべると裁判所の門が開かれている さらに以下のような印象を述べている: ドイツ人は米国人より裁判が好きではない 医師への尊敬度は米国より強い ドイツでは敗者は勝者の費用を払うので裁判所は遠い。米国はそれにくらべると裁判所の門が開かれている 米国では陪審に聞いてもらえるし、自分の鑑定人を持てる (日本では法廷での鑑定人合戦) 反対にドイツでは、裁判所が証人や鑑定人を選ぶ 2009.8.8. 岡嶋道夫
米国と異なり、損害が公的医療保険の医療費で、また廃疾になっても社会保障がある。米国では医療費や生活費も含むので賠償が高額になる(日本は?) 米国では小さなケースは訴えない(日本も?) 弁護士の半数以上は、賠償額50,000ドル以下のケースを受付けたがらない 訴訟で痛めつけられている米国の医師は、ドイツ式を導入したら、さらにクレームが多くなると思って受け入れないだろう 米国は文化と法制度が違うので真似できないがドイツのモデルは刺激となり、興味深い 2009.8.8. 岡嶋道夫
医療過誤とは ドイツ医師会のパンフレットから 医療過誤とは ドイツ医師会のパンフレットから 医療過誤は次のような診断あるいは医学的侵襲の 場合に起る、 それは医学的に適応していなかった、 または、医学的知識及び医療実務の認識からみると、その時その時の状況に応じて必要とされる慎重さが事実上顧みられなかった、 あるいはこの基準に照らすと医学的に提供される べき侵襲が不履行であった。 2009.8.8. 岡嶋道夫
スウェーデンの医療事故保障制度 スウェーデン医療傷害保険公社最高責任者 Kai Essinger氏の講演(2009. 2 医師個人の責任追及はしない 医師の過失または過誤・惚怠があったかの証明は要しない。「なぜ起こったのか?」を追求し、「誰がやったのか」は追及されない 有害事象が回避可能だったかどうかを顧問医師が客観的に判断 医師は淡々と臨床経過を記録すればよい 2009.8.8. 岡嶋道夫
スウェーデン苦情申し立ての方法(3種類) 人口 900万人 スウェーデン苦情申し立ての方法(3種類) 人口 900万人 金銭的補償 約10,000件の請求 45%が補償を受けられる 医療従事者の処分 懲戒請求約4500件 300人の医療従事者(医師・看護師など)が警告・勧告(戒告?)などの処分(うち20件が免許取消) 医療事故による刑事訴訟は極めて稀、年に1件未満 苦情相談 年間受付 約25,000 2009.8.8. 岡嶋道夫
1975年以前は、裁判によつて補償を受けられる患者は年間で100件程度、 スウェーデン医療事故保障制度の沿革 本制度は1975年に始まった 1975年以前は、裁判によつて補償を受けられる患者は年間で100件程度、 現在は4,000人以上が補償を受けている 迅速な処理、訴訟に比べて低コスト、費用効果が高い 2009.8.8. 岡嶋道夫
LOF: 自治体医療事故保険会社に患者は補償請求を申請 LOFは診療録、レントゲン写真、診断書などの提出を求める スウェーデン補償申請手続 LOF: 自治体医療事故保険会社に患者は補償請求を申請 LOFは診療録、レントゲン写真、診断書などの提出を求める 医療事故が回避可能であったか否かを判断するために顧問医師らに助言・意見を求める 顧問はこれに対して助言を与える 事故が補償対象と考えられる場合、その領域の顧問医師が集まって月に1度検討会議、より広い領域を対象とした会議は2ヶ月に1回開催 2009.8.8. 岡嶋道夫
医師の卒前・卒後・生涯教育 ドイツの医師免許 6年間の卒前教育を終えて医師国家試験に合格すると医師免許が交付され、医師としての職業に従事することが認められる 連邦医師法は、自立して医師の職業に従事する能力、自己の能力の限界を知ること、などを条件として医師免許を交付する しかし、臨床に従事する医師は、卒後研修規則で定められた専門医コースの中から一つを選んで、卒後研修をすることが義務づけられている 2009.8.8. 岡嶋道夫
卒前教育から: 口答-実地試験 カリキュラムなどの詳細は省略、医師国家試験の最終段階で受ける口答・実地試験だけを紹介 卒前教育から: 口答-実地試験 カリキュラムなどの詳細は省略、医師国家試験の最終段階で受ける口答・実地試験だけを紹介 試験委員会は3~4名の試験委員で構成 委員長と委員には教授または教員、大学に属しない医師を任命することもできる 試験は2日間。一回に試験する受験生は4名まで。両日とも受験生一人に対して最低45分、最高60分かける 試験初日は患者を提供して実地試験 2009.8.8. 岡嶋道夫
委員長は試験を統率し、自らも試験を行い、受験生が適切な方法で質問されることに注意し、規則が守られることへの義務がある 上記だけでなく、受験生は試験期日の前に1名またはそれ以上の患者を割り当てられ、ヒストリー作成と検査を行い、診断、予後、治療計画ならびに症例の分析的評価を含む報告を作成し、委員の署名をもらい、試験期日に提出。これも試験の対象で、評価に加えられる 州試験監督局は監視官を派遣できる。同じ試験を受験している医学生5名、大学教員の委員1名、医師会の代理人1名が試験に同席できる 2009.8.8. 岡嶋道夫
試験への協力依頼を受けた患者はほとんど断らないので、患者の調達には支障はない 以上のように試験は公開の状況で行われる 試験への協力依頼を受けた患者はほとんど断らないので、患者の調達には支障はない 委員長は試験の報告書を作成し、委員全員が署名する。成績などは委員の多数決で決定 患者を診察させ、時間をかけた口答・実地試験なので、臨床の実力がよく分ってしまう 委員は試験のために大変な労力と時間をかける ドイツでは昔から実施されていた試験方法であるが、日本は取り入れなかった 2009.8.8. 岡嶋道夫
卒後研修と専門医制度 詳細な卒後研修規則がある。専門医の種類、研修項目、試験、解説などは http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/item/item-03.htm ノルトライン医師会(人口1千万人)の専門医認定試験 の結果 試験総数 不合格数 不合格率 2007 4329 203 4.69% 2006 4313 177 4.10 % 2005 2068 113 5.46 % 2009.8.8. 岡嶋道夫
2007年の通常の専門医資格の試験における受験者と不合格者数(1553/94)。 それ以外は、多数ある付加資格の試験で、規則変更により2006年より急増。 2007年実施の科目の受験者と不合格者数は、多い順に 鍼(783/8)、救急医学(123/11)、緩和医療(120/11)、腫瘍の薬物療法(110/0)で、100以下は男性学、カイロテラピー、糖尿病学、専門的災害外科、直腸病学、集中医療と続く。 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツにおける専門医制度発足の経緯 ゼヴエリング教授:ドイツ医師会雑誌1987年9月3日号 1924年にドイツ医師会議は、長い討議を経た上で、以下のような決定をした。 医学は前世紀【19世紀】の中頃から予想を超えた広がりと深みを増した。その結果として各種の専門領域に分かれてきた。この専門性は、病気の際に開業医を避けて、直接に専門医の助けを受けるという傾向を助長し一般化してしまった。 2009.8.8. 岡嶋道夫
その必然的結果として、自由診療だけでなく、保険診療においても開業医は押し退けられ、年配の経験ある家庭医は消滅へ追いやられることになった。 その必然的結果として、自由診療だけでなく、保険診療においても開業医は押し退けられ、年配の経験ある家庭医は消滅へ追いやられることになった。 そのように開業医に被害が生じたので、開業医も一般診療の傍ら一つの専門に転じ、 『一般医+専門医』という第三の分類に属する医師群を発生させた。これはその後、一般の人をも巻き込んだある種の混乱を引き起こし、また医師としての職業の尊厳性を傷つける結果となってしまった。 2009.8.8. 岡嶋道夫
このような弊害は、立法手段によって取り除くことは困難である。その理由は、営業規則のようなものが適用されたならば、その中で医師の身分に序列化が条件づけられてしまうという憂うべき可能性があったからである。 そこで医師たちは、一致して立法的干渉を拒絶し、営業規則の制定ではなく、その上をいくものとして、自分たちで自由に作る身分規定により明確な身分を創り出すことを決定した。 2009.8.8. 岡嶋道夫
開叢医は、家庭医として再び以前の権利に復帰されるべきであり、専門医は数年間の特別教育を受けて試験委員会によって証明されることにより、専門医として認定されるべきである。 但し、専門医はその専門領域に限定され、家庭医としての開業を行ってはならない。 2009.8.8. 岡嶋道夫
そして、専門領域の標傍は「専門科」に限定された。 そして専門医は、その専門的業務を行うのに必要な特殊設備が使用できるようになっていなければならない、専門医は、原則として本入が選択した専門並.びに診療時間、病院及びコンサルタントとしての業務に限定しなければならない、家庭医としての実務を行ってはならない、というようなことが決定された。 そして、専門領域の標傍は「専門科」に限定された。 2009.8.8. 岡嶋道夫
以後、家庭医と専門医の業務分担が確立した。 1968年には一般医学(家庭医)の専門医が発足しかし、この変化に日本は無関心であった。 ドイツでは以上のように規定して、1924年に14科からなる専門医制度を一斉に発足させた(研修期間:内科、外科、産婦人科が4年、その他は3年)。 以後、家庭医と専門医の業務分担が確立した。 1968年には一般医学(家庭医)の専門医が発足しかし、この変化に日本は無関心であった。 現在の日本は100年前のドイツを髣髴とさせるのではなかろうか。 2009.8.8. 岡嶋道夫
生涯研修の罰則付義務化 生涯研修は医師職業規則で義務化されていたが、これを徹底するために、2004年から罰則付とした 医師会認定の生涯研修を5年間に250点取得することが義務化(1点は45分の講義に相当) 少人数で自らも発言する研修に重点を置く(加算) 州医師会のホームページと医師会雑誌を開くと多数の研修プログラムが羅列 医師会が出席の点数を管理し、証明書を発行(5年間有効)、これは診察室に掲示できる 2009.8.8. 岡嶋道夫
2009.8.8. 岡嶋道夫
州医師会のホームページには 日付順、専門別に多数の 研修プログラムが掲載 2009.8.8. 岡嶋道夫
条件を満たさないと保険医協会が罰則を科す 250点取らないと6年目の診療報酬を10%削減 6年目の終りになっても取らないと削減が25% 条件を満たせば削減は止まり、次期の5年の期間に入る 7年目の終りになっても取らないと、保険医協会が開業認可の取消の手続をとる 医師の自律規範と言える 義務化と罰則は、公的医療保険法のなかに §95d として書き加えられた(法律を拠所に) 2009.8.8. 岡嶋道夫
関連資料は http//www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/d134.htm 2004年7月1日にスタートしたこの卒後研修規則は2009年6月30日に5年の満期を迎えた 審査は州医師会ごとに行われる。ヴェストファーレン・リッペ医師会(人口約800万)の医師会雑誌8月号に、その結果が出ていた 開業医(すべての診療科)の数は約11,300人 2004年7月1日に開業しており、2009年6月30日も開業している開業医数は9619人 その結果は: 2009.8.8. 岡嶋道夫
したがって、どれだけの医師が報酬カットされるかは上記のデータだけではまだ不明である 該当する開業医 9,619人 100% 2009年7月1日までに証明書を取得 7,966人 83% 250点に達しているが、証明書未発行 243人 3% 200-249点のもの 302人 3% 100-199点のもの 649人 7% 0-99点のもの 459人 5% この5年の期間内に育児、長期病気、失業で業務を行っていないときは、その分の期間が差し引かれるので250点に満たなくても直ちに報酬がカットされることはない したがって、どれだけの医師が報酬カットされるかは上記のデータだけではまだ不明である 2009.8.8. 岡嶋道夫
Beisler孝子夫人からのメール(2009年5月) Gernot(ご主人)は産婦人科の開業医ですが 医院のほうで乳がんや婦人科系のがん患者に抗がん剤治療をしております。 勿論まめに大学病院と連絡しあっておりますし、地域の腫瘍学(oncology)の専門医が集まって定期的に勉強会を開いております。その勉強会にはいろいろな科の開業医や病院の腫瘍学の専門医が参加しているそうです。 たとえば婦人科医でも 内科専門医でも「腫瘍医という付加称号」を取れるようになっております。 Beisler 孝子」 2009.8.8. 岡嶋道夫
むすびの言葉 日本の医療はこうあるべきだ、というような結論はなかなか出せません。皆さんで考えていただきたいと思います。 ただ一言申し上げるとすると、今日の医療問題の解決を右往左往しながら模索していますが、その辿り着く先があるとすれば、それはドイツなどのヨーロッパの現実ではないかと思われます。それならば、いっそのこと、ドイツなどの制度をもっと包括的に学び、それを参考にしながら日本の方向を求めていくのが効率的ではないかと私は考えます。 2009.8.8. 岡嶋道夫
ご清聴有難うございました 補足的資料を以下のページに示す 2009.8.8. 岡嶋道夫
以下は補足的資料 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの裁判外紛争処理(追加) ドイツの裁判外紛争処理ADRは以下に示すような 9つの鑑定委員会または調停所によって行われる 9つの州を一括している北ドイツ調停所からザールランド鑑定委員会まで大小があり、組織の名称、委員構成、鑑定費用負担などは統一されていないし、審理方式にも多少の差がある しかし、裁判外紛争処理という共通の任務を果たし、全国統計が作れる体制になっている。組織の構成にこだわらなくても、目的と意志が確固としていれば実行可能であることを示している 2009.8.8. 岡嶋道夫
鑑定委員会、調停所 9機関 2009.8.8. 岡嶋道夫
鑑定委員会、調停所 管轄地域の人口 鑑定委員会、調停所 管轄地域の人口 万人 バイエルン 1249 北ドイツ(9州を含む) 2585 鑑定委員会、調停所 管轄地域の人口 鑑定委員会、調停所 管轄地域の人口 万人 バイエルン 1249 北ドイツ(9州を含む) 2585 ザクセン 435 ラインラント・プファルツ 406 ノルトライン 1000 バーデン・ヴルテンベルク 1066 ザールラント 107 ヘッセン 609 ヴェストファーレン・リッペ 800 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの鑑定委員会、調停所(我妻学、2004から) 名称 委員長 委員会費用 鑑定費用 バイエルン 鑑定・調停委員会 医師 医師会 保険会社 北ドイツ 調停所 ザクセン 医師又は法律家 ラインラント・・・ 調停委員会 法律家 ノルトライン 鑑定委員会 法律家・元裁判官 バーデン・・・ ザールラント ヘッセン ヴェストファ・・・ 2009.8.8. 岡嶋道夫
鑑定委員会、調停所の委員 (我妻学、2004から) 鑑定委員会、調停所の委員 (我妻学、2004から) 委員会には必ず法律家が加わり重要な役割を果たしている 構成員 (委員長以外) バイエルン 当該専門領域の医師又は当該医師の法律家1名、法律家1名 北ドイツ 常任構成員である法律家1名、当該専門領域の医師1名、・・・ ザクセン 当該医師会に所属する医師1名 ラインラント・・・ 専門の医師2名、患者代表2名 ノルトライン 外科医1名、内科医1名、病理学1名、一般医1名 バーデン・・・ 常任委員として一般医1名、当該専門領域の医師1名 ザールラント 常任委員として一般医2名 ヘッセン ヴェストファ・・・ 当該専門領域の医師2名 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツにおける鑑定委員会と調停所の業務 医療過誤以外の苦情も含まれる 2000年12月31日 ドイツにおける鑑定委員会と調停所の業務 医療過誤以外の苦情も含まれる 2000年12月31日 Baden-Württem-berg Bayern Hessen Nord-rhein Nord-deutsch-land Saar-land Sach-sen West-falen-Lippe Rhein-land-Pfalz 人口、百万 10.0 11.6 5.9 9.5 25.0 1.1 4.6 8.5 3.9 新規受付9666 1040 485 728 1602 3744 92 345 1280 350 前年度より 8138 802 731 525 1264 3380 82 113 962 279 処理数9244 994 430 662 1400 3590 109 328 1320 411 翌年に 8560 848 786 591 1466 3534 65 130 922 218 ドイツ医師会雑誌98(51-52): A-3424, 2001. 2009.8.8. 岡嶋道夫
医療過誤に対する鑑定委員会の実績 1995年 ノルトライン医師会(人口950万) 医療過誤に対する鑑定委員会の実績 1995年 ノルトライン医師会(人口950万) Berner:ドイツ医師会誌30.8.99 773ケース(100%) 287(37%) 医療過誤を認めた 450(58%) 医療過誤が否定 483ケースのうち 54(11%)が訴訟に持ち込まれる 36(5%) 医療過誤が確定できない うち3 医療過誤ないが説明不足 290(38%) 患者に とって好ましい結果 214(84%)の損害を受けた患者に賠償 保険の賠償金・慰謝料が支払われた 上記終結後、81ケースが裁判所に訴えた。 訴訟割合は10.5%に減少 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツ: 苦情受付と処理 a)州医師会(鑑定委員会/調停所)ADR ドイツ: 苦情受付と処理 a)州医師会(鑑定委員会/調停所)ADR b)医療保険審査医事務所 (MDK) 日本にない医師の職業組織で保険医療が適正に行われているかをチェックする。介護度判定の責任者。最近は介護施設のチェックも始めた c)消費者連盟(患者連盟) d)自助グループ(各種慢性疾患にある) e)市町村の社会福祉事務所 f) 病院の苦情処理係 2009.8.8. 岡嶋道夫
スウェーデンの医療事故保障制度 スウェーデン医療傷害保険公社最高責任者 Kai Essinger氏の講演(2009. 2 医師個人の責任追及はしない 医師の過失または過誤・惚怠があったかの証明は要しない。「なぜ起こったのか?」を追求し、「誰がやったのか」は追及されない 有害事象が回避可能だったかどうかを顧問医師が客観的に判断 医師は淡々と臨床経過を記録すればよい 2009.8.8. 岡嶋道夫
苦情申し立ての方法(3種類) 金銭的補償 約10,000件の請求 45%が補償を受けられる 金銭的補償 約10,000件の請求 45%が補償を受けられる 医療従事者の処分 懲戒請求約4500件 300人の医療従事者(医師・看護師など)が警告・勧告などの処分(うち20件が免許取消) 政府機関であるThe Health and Medical Care Liability Boardが懲戒処分を下す役割を担う 医療事故による刑事訴訟は極めて稀、年に1件未満 苦情相談 年間受付 約25,000 2009.8.8. 岡嶋道夫
医療事故保障制度の沿革 本制度は、1975年に地方におけるボランタリ.な制度として始まった 1997年の患者救済法(the Patient Injury Act)によって法制化。 1975年以前は、裁判によつて補償を受けられる患者は年間で100件程度、 現在は4,000人以上の患者が補償を受けている。 2009.8.8. 岡嶋道夫
迅速な処理、訴訟に比べて低コスト、費用効果が高い。 質・安全の向上のため、クレーム情報を活用 保険料は年間でー人あたり9ユーロ 人ロに応じて自治体が支払う アメリ力合衆国の保険料コストは、弁護士費用などの裁判費用が高いため、人ロー人あたりの負担額は60ユーロ程度。 2009.8.8. 岡嶋道夫
補償申請手続 LOF: 自治体医療事故保険会社 患者はLOFに補償請求を申請 顧問はこれに対して助言を与える。 処理担当者が最終決定を行い、7割の患者が6ヶ月以内、8割が8ヶ月以内に結果の通知を受ける 2009.8.8. 岡嶋道夫
顧問医師は、病院勤務医、引退から間もない医師、独立開業の場合もあるが、各専門分野で経験が豊富で高く評価されていることが要件 弁護士や看護師、社会福祉分野での勤務経験を持つ処理担当者が提出された記録類を調べ、顧問医師や相談役(医師)に意見を求め、事故が回避可能であったかどうかの助言を受ける 事故が補償対象になると考えられる場合、その領域を専門とする全ての顧問医師が集まって月に1度検討会議、より広い専門領域を対象とした会議は2ヶ月に1回開催。 顧問医師は、病院勤務医、引退から間もない医師、独立開業の場合もあるが、各専門分野で経験が豊富で高く評価されていることが要件 2009.8.8. 岡嶋道夫
本制度の顧問医師会による倫理規定に則って制度が運用されている ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ スウェーデンでは80%が社会保障費(福祉)、.補償制度から20%が支払われる 50%以上の確率で因果関係が認められれば補償対象となる。 最終的に、彼等の助言を受け、処理担当者が補償を行うかどうかの決定を下す。 訴訟においては、70%以上の確率が求められることが多い。 2009.8.8. 岡嶋道夫
(訳文が拙劣で恐縮、今後もっと追加したい) 裁判外紛争処理の3事例 (訳文が拙劣で恐縮、今後もっと追加したい) http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/m426.htm の「5.ドイツにお ける裁判外紛争処理の事例」に紹介したので、日 本のMediationと比較すると興味深いと思う 日本への導入の隘路 信頼できるカルテ記載の徹底(改ざんの処罰も) 医師がカルテ提出に協力 信頼できる医学鑑定 訴えやすくする (受付窓口) 患者の経済的負担軽減、弁護士依存脱却 運営費用(行政に依存しない、委員は無報酬など) 制度を支えられる医学教育と医師の職業倫理感 2009.8.8. 岡嶋道夫
ドイツの裁判外紛争処理 解説パンフレット(2008) ドイツ連邦医師会 英文タイトル Google入力で検索可能 ドイツの裁判外紛争処理 解説パンフレット(2008) ドイツ連邦医師会 ドイツ語版 英語版 以下に抜粋を紹介する 2009.8.8. 岡嶋道夫
医療過誤とは Behandlungsfehler 医療過誤は次のような診断あるいは医学的侵襲の 場合に起る、 それは医学的に適応していなかった、 または、医学的知識及び医療実務の認識からみると、その時その時の状況に応じて必要とされる慎重さが事実上顧みられなかった、 あるいはこの基準に照らすと医学的に提供される べき侵襲が不履行であった。 2009.8.8. 岡嶋道夫
中立性 鑑定委員会及び調停所の医学及び法学の専門家 は、高度の専門的能力を有する、 その業務において中立であり、誰からも指示を受け ない、 医師の委員には、さらに医師職業規則が適用され、 医師の鑑定書及び証明書の発行に当たっては必然 的な慎重さをもって行い、最高の学識によって医師 の信念を表明することが義務づけられている(医師 職業規則 [雛形]25条) 2009.8.8. 岡嶋道夫
医師職業規則 第25条医師の鑑定書と証明書 (違反には制裁) (日本には存在しない規則) 医師職業規則 第25条医師の鑑定書と証明書 (違反には制裁) (日本には存在しない規則) 医師としての鑑定書及び証明書を提出する場合、医師は必要な慎重さをもって行い、また誠心誠意をもって医師として信ずるところを述べなければならない。医師が提出を義務づけられ、または提出することを承諾した鑑定書と証明書は、適切な期間内に提出されなければならない。 共働者(職業教育を受けている者を指す)及び卒後研修医師に関する証明書は、原則として申請提出後3ヵ月以内に、不合格の時は即刻、発行されなければならない。 2009.8.8. 岡嶋道夫
どの過誤も無用である ドイツでは、病院領域での処置数は毎年1,840万件を超える(2004年);さらに開業医の診療所では数億の患者医師間接触がある。このような背景にしては医療過誤の数は比較的僅少である:Robert Koch研究所は、証明された医療過誤は年に12,000件以下としている。 患者を助けるのは、戒告を行って統計にすることではなく、患者の損害賠償の権利を達成することにある。 医師職能団体は、過誤を系統的に見直して防止対策の立案に努めている。患者組織との幅広い共同作業も活動している。 2009.8.8. 岡嶋道夫
統 計 配布資料 2 1979年以来、請求と決定の数を連邦統計に。 統 計 配布資料 2 1979年以来、請求と決定の数を連邦統計に。 2006年より、データはMedical Error Reporting Systems (MERS) の電子処理によって統一的に編集され、連邦統計に組み入れられた。 その統計は、どのような診断や治療方法の場合に医療過誤が推測され、どのような専門科に起るかを教えてくれることになった。 この新しい統計の目的は、生涯研修と質保証に利用するために、過誤の頻度を識別し、過誤の原因を分析することにある。 2009.8.8. 岡嶋道夫
ま と め 最新の医療技術の比較では外国との差は認められない。 しかし、患者の利益を最優先するドイツの医療には、裁判外紛争処理も含めて、真似できない面があまりにも多い。 ドイツの医師たちは、これらを総て実行し、弛みなく前進を続けている。 この事実を重く受け止めることは意義がある。 2009.8.8. 岡嶋道夫