民族文化と開発の矛盾 ー青海省におけるチベット族の事例を中心としてー    人文社会科学研究科地域政策科学博士後期課程1年                  韓 霖.

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     民族文化と開発の矛盾 ー青海省におけるチベット族の事例を中心としてー    人文社会科学研究科地域政策科学博士後期課程1年                  韓 霖

青海湖

青海省の位置 青海省

・ ・ ・ 調査対象地の概況 対象地の位置 チベット族自治地域=約全省面積の70% チベット族人口106.4万人= 全省総人口の約21% 海南自治州 ・ ・ 黄南自治州 ゴラク自治州 ザレンコ村 ウトン村    チベット族自治地域=約全省面積の70% チベット族人口106.4万人= 全省総人口の約21%

 調査対象地の概況 遊牧生活         定住生活

調査対象地の概況 ザレンコ村(定住前) 上からの開発による定住地域 ゴラク自治州瑪多県ザレンコ郷 (定住前) 標高 4,500m 上からの開発による定住地域        ゴラク自治州瑪多県ザレンコ郷         (定住前)                    標高 4,500m                       農家427戸・1848人(郷)                遊牧生業中心地域               

調査対象地の概況 ザレンコ村(定住後) 海南自治州同徳県に定住 標高3,300m 農家189戸・731人 国家援助  調査対象地の概況  ザレンコ村(定住後)  海南自治州同徳県に定住     標高3,300m    農家189戸・731人     国家援助  ⅰインフラ整備(8万元/戸)     ⅱ補助金(8,000元/戸・年)      産業形成 ⅰ政府投資による産業 ⅱ住民が自発的にはじめた 産業

調査対象地の概況 富士山の山頂ほどの標高―ザレンコ村(定住後)  調査対象地の概況  富士山の山頂ほどの標高―ザレンコ村(定住後)

調査対象地の概況 ウトン村(農家) 歴史上、住民が自発的に定住 黄南自治州同仁県 標高 2,500m 農家444戸・2,776人  調査対象地の概況  ウトン村(農家) 歴史上、住民が自発的に定住   黄南自治州同仁県    標高 2,500m 農家444戸・2,776人    観光業先行地域                  農業中心・手工業兼業

調査対象地の概況 ウトン村(芸術文化と村の寺院)  調査対象地の概況  ウトン村(芸術文化と村の寺院) 岩壁に描かれた壁画 ウトン上寺

 調査対象地の概況  ウトン村(手工業と寺院のお坊さん)

 少数民族地域の課題 1)産業の低生産性→貧困問題 2)草原の退化と砂漠化→環境問題

1) 産業の低生産性→貧困問題 99年一部少数民族農村純収入と全国農村平均純収入(元) 1227.69 注:2004年1人当たりGDP  1) 産業の低生産性→貧困問題 99年一部少数民族農村純収入と全国農村平均純収入(元) 1227.69 注:2004年1人当たりGDP 上海56,653.97元= 青海省10,386.23元×5.5 1754.15 1534.00 1184.53 1040.33 1473.17 1309.44 1228.16 2210.34

 2)草原の退化と砂漠化 草原の砂漠化 草原の退化

「西部大開発」と少数民族地域の発展 定住化と産業構造の再形成 ⇩ 労働力の集積、地域市場の確立 産業間の分業の成立  「西部大開発」と少数民族地域の発展 最も重要な政策  定住化と産業構造の再形成        ⇩   労働力の集積、地域市場の確立   産業間の分業の成立   市場経済の発展 ⇨ 地域発展

地域による効果の違い 定住化と産業構造の再形成 ⇩ ザレンコ村:充分な成果を挙げていない ウトン村 :市場経済の発展  地域による効果の違い  定住化と産業構造の再形成        ⇩ ザレンコ村:充分な成果を挙げていない ウトン村 :市場経済の発展    「二つの村の比較分析」を       

ザレンコ村の現状 インフラの充実、都市化の進展、遊牧業の多角化 しかし 政府による産業——不充分な成果。 むしろ  ザレンコ村の現状 インフラの充実、都市化の進展、遊牧業の多角化 しかし  政府による産業——不充分な成果。  むしろ  農家の自発的産業——経済的収入の向上。

ザレンコ村の問題点 収入の減少 住民: 遊牧業への回帰を希望 農家: 現金収入がなく 補助金に依存 5,563円﹤2万5,440円(定住前)  ザレンコ村の問題点 収入の減少  一人当たり年平均 5,563円﹤2万5,440円(定住前) 住民:  遊牧業への回帰を希望 農家:  現金収入がなく  補助金に依存

生活・生産様式の変化と住民の対応 ザレンコ村の農家  生活・生産様式の変化と住民の対応  ザレンコ村の農家 農家1 :市場交換生活・市場経済産業経営への不満 ➩ 遊牧を続けることを希望。 農家2 :遊牧業以外には適応できず➩補助金に依存。家族は定住生活に適応できず、地元近くで受託放牧。 農家3 :市場経済向きの経営に不適応、定住地周りで受託放牧業。

生活・生産様式の変化と経済発展 (ウトン村)  生活・生産様式の変化と経済発展  (ウトン村)    国家援助 国家補助金の対象外 民族手工業への支持     産業形成 自発的に手工業を発展 手工業中心・農業兼業 農家

生活・生産様式の変化と経済発展 (ウトン村)  生活・生産様式の変化と経済発展  (ウトン村)  産業構造転換の背景に、住民自発により生産様式を変化させた  農業専業・手工業兼業➩手工業専業・農業兼業へ変化

生活・生産様式の変化と住民の対応 ウトン村の農家  生活・生産様式の変化と住民の対応  ウトン村の農家 農家1 :開発政策の下、芸術産業につづき、加工販売や観光事業にも取り組んでいる 農家2 :「西部大開発」の下で、「専業会社」を起こし、市場ニーズに対応して周りの農家と連携を重視

両者の比較 ザレンコ村➩近代化と伝統文化の対立 ウトン村➩近代と伝統文化の結合 政府:生産・生活条件が近代化しつつある  両者の比較 ザレンコ村➩近代化と伝統文化の対立   政府:生産・生活条件が近代化しつつある 住民:近代化に対応できず、伝統的な産業経 営様式に依存 ウトン村➩近代と伝統文化の結合  政府︰政策・経済面での支持 住民︰固有の芸術技能を活かし→自立的な産業 を育成――内発的な発展

対応が相違する背景 定住後期間の長短 遊牧と農耕の文化的差異→遊牧=閉じこもる論理ではない。 近代化を受けとめる主体性の問題 近代化と民族文化の矛盾

 近代化と民族文化1        ザレンコ村  「近代化」       「伝統文化」  政府の推進        住民は維持 対立ジレンマ

 近代化と民族文化2         ウトン村  「近代化」       「伝統文化」  住民の対応        住民自ら活用                     政府の支持 補完的関係可能

 開発と民族文化 「近代化」とそれぞれの固有の文化 と接触の仕方が「自発的」か「行政 的」かにより大きな影響を受ける。

結論 遊牧民の定住化の問題は ・ 伝統文化への理解が必要 ・ 住民の主体性が重要 地域発展計画を立てる時には ・ 住民の主体性の尊重  結論 遊牧民の定住化の問題は  ・ 伝統文化への理解が必要  ・ 住民の主体性が重要 地域発展計画を立てる時には  ・ 住民の主体性の尊重  ・ ライフスタイルや伝統文化の尊重

ご静聴ありがとうございました