今年度当院で入院加療を 必要とした食物アレルギーによる アナフィラキシーの2症例 長岡中央綜合病院小児科 太田匡哉 放上萌美 堀智里 竹内一夫 松井俊晴 郡司哲己 2013/11/21 中越小児臨床研究会
患者一覧 対応 Grade 4 Grade 4 Grade 3 年齢 食品 学校給食での誤食 14歳 コロッケ(チーズ) 3歳 摂食契機 アナフィラキシーGrade 対応 14歳 コロッケ(チーズ) 学校給食での誤食 Grade 4 アドレナリン投与なし 外来でエピペン処方 3歳 ミックスナッツ (クルミ、アーモンド、カシューナッツ) 旅行中の車内のおやつ Grade 4 アドレナリン投与 かかりつけに情報提供 12歳 魚介類(エビ、イカ、ハマチ、タイなど) 旅行中の旅館の夕食 Grade 3 13歳 千草焼(卵) エピペンについて再指導 1 4月。2 5月。 3 8月。 4 10月。 H25年4月~11月現在
はじめに 牛乳、小麦、卵は小児の主要な食物アレルギー 原因食品である。経過観察中に成長と共に耐性 を獲得する症例も多い。 しかしながら年齢を重ねても耐性を獲得できな い症例は少量の原因食品の摂取でも重篤な症状 を示し厳格な除去食療法が必要になる。 今回学校給食での誤食により引き起こされた牛 乳と卵のアナフィラキシー2症例を経験したた め報告する。
症例1 14歳 男児 0歳10か月 卵、牛乳アレルギーの診断 牛乳は触るだけでも蕁麻疹と喘鳴が出現 5歳 卵黄負荷試験を行い卵黄解除 症例1 14歳 男児 0歳10か月 卵、牛乳アレルギーの診断 牛乳は触るだけでも蕁麻疹と喘鳴が出現 5歳 卵黄負荷試験を行い卵黄解除 小学校入学後、卵白と乳製品を含む牛乳を完全 除去を続けていた。 9歳 脱脂粉乳でアナフィラキシーGrade2 ステロイド(ソルメドロール40mg)投与で改善 10歳 チーズ誤食でアナフィラキシーGrade3 救急外来でアドレナリン投与 【既往歴】 気管支喘息 3歳で発症
症例1 主訴 呼吸苦、咽頭違和感、蕁麻疹 現病歴 12:40頃 学校給食で除去予定だったチーズ入り のコロッケを半分摂取。 主訴 呼吸苦、咽頭違和感、蕁麻疹 現病歴 12:40頃 学校給食で除去予定だったチーズ入り のコロッケを半分摂取。 12:50頃 顔面の痒み、呼吸苦、腹痛出現。 13:15 タクシーで当院外来受診。 BP 119/87mmHg, HR 98, SpO2 99%, BT 36.8℃ 呼吸苦、咽頭違和感を認めた。 意識清明、呼吸音に異常なし、顔面に蕁麻疹。 Grade4
症例1 経過 13:18 β2刺激薬吸入・アドレナリン吸入 ⇒呼吸苦の改善はあったが喘鳴出現 13:18 β2刺激薬吸入・アドレナリン吸入 ⇒呼吸苦の改善はあったが喘鳴出現 13:30 mPSL(ソルメドロール40mg) 、 抗アレルギー薬点滴投与 ⇒喘鳴、蕁麻疹消失 外来治療中血圧低下、SpO2低下無し。 経過観察目的に入院。 翌日遅延反応なく退院。 Grade4 MPSL40mgには乳糖を含んでいる。125mgには含まれていない。乳糖自体は抗原性はないが極めて微量の牛乳由来のたんぱく質が混入している。 MPSLでの即時型反応の報告もあるため極めて微量の摂取でも症状が出現する牛乳アレルギーでは乳糖添加の表示がある作物は控える方が安全である。 診療ガイドライン2012 P77
症例1 SpO2の低下はなかったが呼吸苦と喘鳴を認めて おりアナフィラキシーGrade4の診断。 総IgE 102IU/ml ミルク 0.94UA/ml β-ラクトグロブリン 0.10UA/ml未満 チーズ 1.74UA/ml 卵白 0.56UA/ml カゼイン 1.66UA/ml 卵黄 0.35UA/ml未満 α-ラクトグロブリン 0.13UA/ml オボムコイド SpO2の低下はなかったが呼吸苦と喘鳴を認めて おりアナフィラキシーGrade4の診断。 外来で本人、保護者、養護教諭に対してエピペ ンの指導を行い、エピペン(0.3mg)を導入。 ミルクのプロバビリティーカーブでは0.94なら10%以下の陽性率。 卵白も10%以下。
症例2 13歳 男児 2歳 どら焼きを食べて蕁麻疹と喘鳴が出現 卵完全除去開始 小学校入学後も卵の完全除去を続けていた。 13歳 症例2 13歳 男児 2歳 どら焼きを食べて蕁麻疹と喘鳴が出現 卵完全除去開始 小学校入学後も卵の完全除去を続けていた。 13歳 新潟市民病院 加熱卵黄(1個分)負荷試験陰性 ゆで卵(全卵)0.5g 負荷試験陽性 少量の誤食でもアナフィラキシーの可能性あり エピペン(0.3mg)処方。 【既往歴】 気管支喘息 4歳で発症 6歳で管理薬中止。
症例2 主訴 悪心、咽頭違和感、嘔吐 現病歴 12:30頃 学校給食で卵入りの千草焼(卵41g)を半 分摂取し悪心出現。 主訴 悪心、咽頭違和感、嘔吐 現病歴 12:30頃 学校給食で卵入りの千草焼(卵41g)を半 分摂取し悪心出現。 (豆腐のあんかけが代替食予定だった) 12:48 頓用の抗アレルギー薬内服。 12:57 保健室へ。喉頭違和感ありアナフィラキ シーを疑い救急車要請。移動中に嘔吐出現。 13:35 ストレチャーで当院受診。 BP 112/64mmHg, HR 83, SpO2 97%, BT 36.7℃。 意識清明、呼吸音に異常なし、皮膚症状なし。 Grade2
症例2 経過 13:40 PSL、抗アレルギー薬入りの点滴開始 再度嘔吐し咳嗽、鼻汁と呼吸苦の訴え出現。 再度嘔吐し咳嗽、鼻汁と呼吸苦の訴え出現。 13:44 アドレナリン0.3mg筋注 13:45 アドレナリン吸入 14:10 BP83/64mmHgと血圧低下し下肢拳上と輸液 14:18 顔面から蕁麻疹が出現し全身に広がる 15:18 mPSL投与 15:40 血圧安定し症状の進行が収まり入院。 夜には蕁麻疹も消失。 入院2日目遅延反応なく退院。 Grade4 MPSL40mgには乳糖を含んでいる。125mgには含まれていない。乳糖自体は抗原性はないが極めて微量の牛乳由来のたんぱく質が混入している。 MPSLでの即時型反応の報告もあるため極めて微量の摂取でも症状が出現する牛乳アレルギーでは乳糖添加の表示がある作物は控える方が安全である。 診療ガイドライン2012 P77 Grade4
症例2 外来で本人、保護者に対してエピペンの再指導 を行い、かかりつけに情報提供。 総IgE 584IU/ml 卵白 57.4UA/ml 卵黄 22.1UA/ml オボムコイド 7.88UA/ml 外来で本人、保護者に対してエピペンの再指導 を行い、かかりつけに情報提供。 今回はアドレナリン投与後も症状が進行したた め卵白の誤食後にエピペン投与を行った際、速 やかに救急要請を行うよう指示。 一般向けエピペンの適応表を本人に説明し、学 校側に提出を指示。 ミルクのプロバビリティーカーブでは0.94なら10%以下の陽性率。 卵白も10%以下。
症例の問題点 給食室では代替食を用意していたが配膳の段階 で本人に代替食が渡されなかった。 誤食の可能性がある食品の日に食べる直前に第 三者のチェックが無かった。 症状が出ていたが歩いてタクシー・救急車まで 移動した。 救急車ではなくタクシーで来院した。(症例1) ミルクアレルギーだったがソルメドロール40mg を使用した。(症例1) かかりつけからエピペンを処方されたことを家 族が学校側に伝えていなかった。(症例2)
一般向けエピペン®の適応(日本小児アレルギー学会) エピペン®が処方されている患者でアナフィラキシーショックを疑う場合、 下記の症状が一つでもあれば使用すべきである。 当学会としてエピペン®の適応の患者さん・保護者の方への説明、今後作成される保育所(園)・幼稚園・学校などのアレルギー・アナフィラキシー対応のガイドライン、マニュアルはすべてこれに準拠することを基本とします。
アナフィラキシーのグレード分類
学校生活管理指導票(アレルギー疾患)
まとめ 今年度の食物アレルギーの症例を検討すると学 校給食での誤食が原因でアナフィラキシーが発 症した症例があった。 アナフィラキシー既往がある児童へは個別に誤 食予防と有症時の対応を本人、家族、学校関係 者と検討し児童がより安全に学生生活をすごす ことのできる環境整備を行う必要がある。 教育現場へ誤食予防のためのガイドラインの周 知など一次予防をすすめアナフィラキシーを未 然に防ぐ努力が必要である。 日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」平成19年 札幌市教育委員会「学校給食における食物レルギー対応の手引き」 など