非侵襲脳活動計測(fMRI)と(MEG)情報統合とその応用 佐藤雅昭1,2 吉岡琢1 梶原茂樹3 外山敬介3 郷田直一1 銅谷賢治1,2 川人光男1 1 ATR脳情報研究所 2 科学技術振興事業団 CREST 3 (株)島津製作所 基盤技術研究所
機能的MRI(fMRI) 高空間分解能(ミリメートル) 低時間分解能(数秒) 血流量に起因する信号 人脳機能地図の解明 視覚刺激の機能局在 高空間分解能(ミリメートル) 低時間分解能(数秒) 血流量に起因する信号 人脳機能地図の解明 MRI装置 視覚刺激の機能局在
脳磁図(MEG) 超伝導センサ 高時間分解能(ミリ秒) 脳活動電位に起因する磁場 MEG装置 201chセンサ配列
複数の非侵襲脳活動計測法の統合 fMRI + MEG 高い空間解像度(mm) + 高い時間解像度(msec) fMRI: 高い空間解像度 (数mm) 低い時間解像度 (数秒) (血流変化と同じオーダー) MEG: 高い時間解像度 (数ミリ秒) 低い空間解像度 (逆問題の不定性) fMRI + MEG 高い空間解像度(mm) + 高い時間解像度(msec)
(電流双極子数>>観測点数) MEG逆推定問題 MEG順モデル 脳内電流分布から誘発される 観測磁場 観測磁場B:N次元 (=SQUIDセンサ数) G:リードフィールド行列( N x I ) ε:観測ノイズ(N次元) MEG電流源逆推定問題 観測磁場Bから電流分布Jを推定 脳内電流分布J:I次元 (=電流双極子数) 不良設定問題 (電流双極子数>>観測点数) センサ数N:201 双極子数I:数百~数万
従来法 電流源が複数ある複雑な場合に 推定の信頼性が悪くなる 双極子推定 線形逆フィルタ 格子状に配置された電流双極子を仮定し、その強度を線形フィルタで逆推定 少数の電流双極子を仮定し、 その位置と強度を推定 電流源が複数ある複雑な場合に 推定の信頼性が悪くなる
ベイズ推定 観測データ尤度 P(B|J) : 電流が J の時,磁場 B を観測する確率 事前分布 P(J) : 事前知識により,電流が J である確率 事後分布 : P(J|B) ∝ (観測データ尤度) × (事前分布) 観測データと事前知識を合わせた後で,電流が J である確率 事後分布 確率 観測データ尤度 事前分布 電流 J
線形逆フィルタの例 1.最小ノルム推定 : 電流のノルムが最小になるように推定 事前分布 = 等方分散を持つ正規分布 事前分布 = 等方分散を持つ正規分布 全ての電流双極子 が共通の分散を持つと仮定 2.Wienerフィルタ : fMRI強度を電流分散情報として与える 事前分布 = 共分散行列を持つ正規分布 ・ fMRI強度が強い場所に電流があるという事前知識 電流双極子 の分散 ∝ fMRI強度 ・ 連続条件: 距離の近い電流双極子は同時に発火しやすい 電流双極子 と の相関は近いところほど大きいと仮定
MEG data MRI structural image data fMRI functional image data MEG time series data SBI-system MEG data Cortical surface Brain Voyger MRI structural image data fMRI activity SPM fMRI functional image data
電流分布の階層ベイズ推定 階層ベイズ推定 事後分布の計算 事前分布の電流分散 を 未知パラメータとして観測データから推定する 事前分布の電流分散 を 未知パラメータとして観測データから推定する fMRI情報は分散に対する事前分布 に使う データ尤度 事前分布 事後分布の計算 周辺尤度
階層ベイズ法の事前分布 事前分布 = パラメトリックな共分散行列を持つ正規分布 厳密に事後分布を計算することは困難 1.各双極子に独立な分散 を仮定 電流双極子 の分散 を未知パラメータとする 2.連続条件:双極子間の距離に依存した相関を仮定 電流双極子 と の相関は近いところほど大きいと仮定 3.fMRI情報:分散 に対する事前情報として利用 電流分散 に対する階層事前分布を用意して 電流分散もベイズ推定する 非線形推定問題になるので, 厳密に事後分布を計算することは困難
変分ベイズ推定法 事後分布計算を最適化問題に再定式化し, 変分法を用いて事後分布を近似計算する 非線形推定問題を繰り返し法で解く converge yes no MEGデータ 自由エネルギー 電流推定 分散推定 J-step a-step fMRI 非線形推定問題を繰り返し法で解く ・ 推定された電流分散を使って 電流強度を推定 ・ 推定された電流強度を使って 電流分散を推定 電流分散の大きいところ, すなわち電流強度の大きいところでのみ 電流復元利得を大きくして推定精度を上げるので 分解能を上げても推定精度は落ちない
自由エネルギー 自由エネルギー最大化 事後分布の計算 試験事後分布Q(J,a)とP(J,a|B)の近さ(KL-距離) 対数周辺尤度
自由エネルギー 自由エネルギー最大化 事後分布の計算 事前分布と試験事後分布の近さ (実効的なパラメータ自由度) ー(復元誤差) ー(自由エネルギー) = 誤差 + モデルの複雑さ (推定電流の広がり)
False-positive fMRIシミュレーション 視覚野の三ヶ所に電流源を仮定 六ヶ所に活動が見られるfMRI情報(False-positive fMRI)を用いた場合にも推定がうまく行くかどうかを調べる 視覚野周辺の脳モデル(シミュレーションで使用) 正しいfMRI False-positive fMRI
推定結果 真の電流時系列 正しいfMRI False-positive fMRI VB Wiener
正しいfMRI 左から真の電流分布、階層変分ベイズ推定による 推定結果、およびWienerフィルタによる推定結果
False-positive fMRI
Hierarchical Bayes Estimation half visual field upper-quadrant
まとめ 1.得られる観測データの違い ・MEGのみ ・MRI+MEG ・MRI+fMRI+MEG 全ての場合を統一的に扱える理論的枠組みを提供 全ての場合で従来法を超える推定精度を実現 2.不正確なfMRI信号にも適用可能 fMRI不活性信号の問題,false positiveの問題を解消できる 3. 今後の課題 実データへの適用 ヒューマンインターフェースへの応用