イントロダクション・計画課題の発見と整理 土木計画学 第1回:9月28日 イントロダクション・計画課題の発見と整理 担当:榊原 弘之
本日の内容 1.シラバスの説明 2.土木計画学の内容 3.教科書の説明 4.計画課題の発見と整理
1.土木工学における土木計画学の位置付け 土木学会の分類 第1部門 構造工学 第2部門 水理学 第3部門 土質力学 第4部門 計画学 第5部門 材料学 第6部門 施工等 第7部門 環境工学
計画分野の内容 ミクロ経済学 公共経済学 「土木計画学」の領域 計画数理 意思決定論 (代替案の設計・ 評価など) 財源・制度論 交通工学 交通計画 「都市交通工学」 都市計画・ 地域計画 「都市計画」 景観
土木計画学の特徴 1.モデル化の対象が,人間の行動や社会活動,経済活動 であるため,単純化が難しい. 2.ほとんどの場合意思決定が必要となるため, 判断にあたっての価値基準を明確にする必要がある. 3.「どのようにして問題を解くか?」よりも,「何が問題なのか?」 「問題をどのように定式化したらよいのか?」の方が重要な 場合も多い. 4.対象が公共事業のことが多いため,評価の際も,社会 全体にとっての有益性が問題になることが多い. (一般的な経営工学,ORとの違い) 5.対象を限定せず,問題の把握から解決に至る統一的な アプローチの提案を目指す. (交通計画,都市計画,河川計画等との違い)
「計画」から「マネジメント」へ 「完全な計画」はない(情報収集能力・予見能力の限界) 目指すべき目標は常に変化してゆく しかし,完全な情報が得られるまで待ち続けることはできない PLAN(立案)→DO(実行)→CHECK(検証)の繰り返し (教科書P10参照) ・最近は,PDCAサイクル(PLAN→DO→CHECK→ACTION) ともいう
土木計画における循環的なプロセス PLAN DO CHECK ACTION 問題の認識 問題の明確化 調査 NO! YES! 意思決定 Decision Making OK? 予測 解釈と評価 代替案の設計
地域マネジメントにおける循環的なプロセス DO PLAN 問題の明確化 調査 意思決定 Decision Making NO! YES! OK? 予測 実行 解釈と評価 代替案の設計 ACTION CHECK 中間評価 内容の修正 事業評価
本講義の内容 計画数理が中心 ・解法と同時に,問題設定の理解が重要 微分・積分 確率・統計理論 (特に統計理論) ・母数推定 ・母数検定 ・回帰分析 数理計画 ・定式化 ・非線形計画法 ・線形計画法
土木計画における循環的なプロセス 問題の明確化 調査 NO! YES! 意思決定 Decision Making OK? 予測 解釈と評価 代替案の設計
計画課題の発見 簡単な問題 過去に類似した事例がある問題 (いわゆる 「ルーチンワーク」) 計画課題の発見は 比較的容易 複雑な問題 (構造が複雑でよくわからない) 過去に経験したことがない問題 何が問題か はっきりしない 計画課題の発見・整理が重要! (いきなり代替案策定に向かわない)
ブレーン・ストーミング(brain storming) 多くの人々が意見を出し合って,発想を展開していくような 会議のこと 計画担当者どうしによるミーティング, 地元関係者と行政の合同のミーティングなど 集団討論によって,気づかなかったことに気づき, 問題点を明確にすることができる
ブレーン・ストーミングの手順 ① 司会者を決める. ② 司会者が問題の背景や討論の目的,結果を何に用いるか などを説明する. ③ 可能な限り発言し,意見を述べる. ④ 意見が出にくくなったら中止する. ⑤ 発言内容を確認する.
会議がブレーン・ストーミングになるために ・司会者がはじめに結論的なことを言わない. ・発言者の意見を批判しない ・自由に意見が出しやすいようにする ・できるだけ多くのアイディアを出す ・他人の意見をもとに自分の意見を展開させる
ブレーン・ストーミングによって明らかになった課題の相互関係 や構造を明らかにするための手法 KJ法,ISM法 KJ法(p33) 川喜多 二郎 (文化人類学者)が開発 ヒューリスティック(問題発見的)な課題整理法 直感が生かしやすい 少数意見が排除されない
KJ法の手順 ① 課題を一つづつラベルに書き入れる. ② 各ラベルを見て,似たものどうしを集めてグループ化する. まずラベルをまとめて小グループを作り,次に小グループを まとめて中グループ,中グループをまとめて大グループを 作ることが多い. ③ 各グループの関連を考えて机上に配置し,関連性・因果関係 ・対立関係などを図解する. ④ 得られた図解にさらにアイディアを加え,問題の明確化をはかり ながら計画課題を総括する.
ISM法 (Interpretive Structural Modeling) 構成要素(課題など)の二項(binary)関係(関係の有無)をもとに, 階層的な問題の構造を明らかにするための手法 ISM法の手順 ① 1-0型関係行列Sを作る 項目iが項目jに影響を与えていればsij=1,そうでなければsij=0 項目iと項目jの関係の例 因果関係 強弱関係(教科書)
② 1-0型関係行列と単位行列を足して,隣接行列Bを作る.
ブール演算 A,Bのブール積 から成る行列Cを求める iとkが間接的に関連しているかどうかを示す行列
③ 隣接行列に関してブール演算を繰り返し,Sk+1=Skとなる行列 (可到達行列)Dを得る. 何段階か経た上で到達可能な関係を示す
1 2 3 4 5 6 7 8 9 ④ 可達行列Rから,可達集合R(Si)及び先行集合A(Si)を求める. R(Si) A(Si) 1,2,5,6,7,8,9 2 1,2,3,4,5,7,8,9 2,5,6 2,5 3 2,3,5,6,7,8,9 4 2,4,5,6,7,8,9 5 6 1,2,3,4,5,6,7,8,9 7 1,3,4,7,8,9 2,5,6,7 8 1,3,4,8 2,5,6,7,8 9 1,3,4,9 2,5,6,7,9
⑤ R(Si) A(Si) = R(Si)となる項目を第1レベルとして抜き出す. ⑥ 行と列を削除した行列に関して④以下のプロセスを繰り返す 1 3 4 8 9 7 2 5 6