つちだ小児科 土田晋也 07.11.4
中耳炎を伴う突発疹は過剰診療になりやすい
2 1 3 4 5 急性中耳炎 中耳炎の診断 発熱と年齢による 抗菌薬なしで経過観察 Low Risk STEP STEP STEP 中耳炎の診断 AOM あるいはOME 中耳貯留液が前提 発熱と年齢による 重症度判定 抗菌薬なしで経過観察 AOM 鎮痛剤のみで2~3日間の経過観察 耳漏例では7日間は外耳処置のみで 経過観察 High Risk 群: ① 3-12 ヵ月児 ≧38.5℃ ②12-36 ヵ月児 ≧39.0℃ Low Risk 群: 上記以外 ≧36ヶ月は熱の程度に関わらずLow Risk群とする AOMの診断: 急性発症の症状や所見を1つ以上認める 急性症状: 耳痛,耳漏 急性鼓膜所見: 明らかな発赤 明らかな膨隆,水疱形成 症状の悪化 4 STEP 2~3日以降も症状が持続するとき 経過観察中に症状が増悪するとき High Risk AOMでない 菌血症の疑い WBC≧15,000/µl (Neut≧10,000/µl) OME 経口抗菌薬の投与 ① AMPC 60~90mg/kg/日,5日間投与 ② 効果が無ければ他の抗菌薬へ変更 抗菌薬なしで経過観察 菌血症の疑いあり 血液培養±鼓膜穿刺液培養 +抗菌薬静脈内投与 菌血症の疑いなし ⇒ STEP 3 へ 症状の消失 西村先生たちが外来小児科で発表されたガイドラインで検証してみます。 発熱と年令から必ずHigh Risk群になりますね。 さらに、あとで提示しますが突発疹に急性中耳炎を併発しているとWBC数も多くなります。 すると、、、 症状の悪化 STEP 3 STEP 4 STEP 5 5 急性期以降の管理 耳痛や発熱が抗菌薬終了後も持続, あるいは抗菌薬投与中に増悪するとき STEP 中耳貯留液の消失まで経過観察 7日,14日,1カ月,2カ月,3カ月,6カ月 乳様突起炎等の合併症の疑い 鼓膜切開+貯留液の培養 +抗菌薬(CTRX)の静脈内投与 耳痛があるとき アセトアミノフェン 10~15mg/kg/回 イブプロフェン (2歳以上) 5mg/kg/回
目的 中耳炎を伴う突発疹の臨床像を明らかにし過剰診療を回避する
方法 突発疹の診断 急性中耳炎の診断 急性中耳炎以外の中耳炎=滲出性中耳炎 臨床診断 ウイルス学的検討なし 急性中耳炎の診断 中耳貯留液を認め、かつ、急性発症の症状や鼓膜所見が1つ以上 症状: 耳漏、耳痛 鼓膜所見: 明らかな膨隆、明らかな発赤、水疱形成 発熱は診断基準に含めず 急性中耳炎以外の中耳炎=滲出性中耳炎
対象 突発疹177例 昨年9月から1年間に当院を受診した突発疹177例 急性中耳炎 滲出性中耳炎 (急+突) (滲+突) 中耳炎なし (突) 11例 21例 145例 急性中耳炎 滲出性中耳炎 (急+突) (滲+突) 中耳炎なし (突) 対象は平成18年9月からの1年間に当院を受診した突発疹177例。そのうち、「中耳炎を伴う突発疹」は32例(18%)、急性中耳炎が11例(6%)でした。 以下、中耳炎を伴わない突発疹を「突」群、急性中耳炎を伴う突発疹を「急+突」群、滲出性中耳炎を伴う突発疹を「滲+突」群と略します。 6% 18%
男女比 男 女 急+突 7 4 滲+突 12 9 突 68 77 突群 男女比はほぼ同数 それに対して、
月令(ヶ月) 突群 生後4ヶ月くらいから1歳半にかけて分布 それに対して、急+突 群はやや狭い 0 6 12 18 24 30 36
季節 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 (月) ‘07 ‘06 突群 季節を問わず発症しています 突群 季節を問わず発症しています それに対して、急+突 群は秋から冬にかけて発症しています。 これは中耳炎をおこしやすいウイルス感染症の流行時期に一致していると思います。 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 (月) ‘06 ‘07
カタル症状 あり なし 急+突 8 3 滲+突 11 10 突 35 110 突群 高熱以外に咳、鼻水などのカタル症状はほとんどみられません。 それに対して、急+突 群では大部分にカタル症状を認めています。 これは急+突 群でなんらかの他のウイルス感染症も併発していることを示唆していると思います。
「急+突」群の大部分は合併症ではなくて併発症
「急+突」の鼓膜所見(1~4) WBC12300、CRP5.8 WBC9900、CRP0.6 WBC10300、CRP0.6
「急+突」の鼓膜所見(5~8) WBC10000、CRP3.2 WBC10600、CRP2.8 WBC8500、CRP0.3
「急+突」の鼓膜所見(9~11) 入院 入院 左耳漏、右OME 左耳漏、右正常 WBC11600、CRP0.4
血液検査 n=11 n=18 n=97 n=11 n=18 n=97 WBC 突群 6860 急+突 群ではやや多い傾向 11350 CRP 突群 6860 急+突 群ではやや多い傾向 11350 CRP 突群 0.5 急+突 群では有意に多い 2.3 高熱以外に咳、鼻水などのカタル症状はほとんどみられません。 それに対して、急+突 群では大部分にカタル症状を認めています。 これは急+突 群でなんらかの他のウイルス感染症も併発していることを示唆していると思います。 n=11 n=18 n=97 n=11 n=18 n=97
「急+突」群では鼓膜所見から予想する以上に血液検査が悪くなることがある
最後に、最近経験した症例を提示します
(Case12) 7ヶ月、女児 鼻水、高熱 機嫌良好 Date 10/18 19 20 21 22 23 受診 39℃ 37℃ WBC CRP 咽頭 6507藤田 06/8/5 治療 膨隆 ー 鼓膜 発赤 ± 咽頭発赤 ー
(Case12) 7ヶ月、女児 鼻水、高熱 機嫌良好 Date 10/18 19 20 21 22 23 受診 39℃ 37℃ WBC 15800 CRP 6.3 右鼓膜 6507藤田 06/8/5 治療 AMPC-CVA 膨隆 ー ++ 鼓膜 発赤 ± ± 咽頭発赤 ー ー
(Case12) 7ヶ月、女児 鼻水、高熱 機嫌良好 Date 10/18 19 20 21 22 23 受診 39℃ 37℃ 県立病院 WBC 突発疹 15800 5400 5400 CRP 6.3 4.4 2.1 6507藤田 06/8/5 治療 AMPC-CVA 膨隆 ー ++ ++ ++ 鼓膜 発赤 ± ± ± ± 咽頭発赤 ー ー ー +
結語 「急+突」群の大部分は合併症ではなくて併発症 「急+突」群では鼓膜所見から予想する以上に血液検査が悪くなることがある 秋~冬季期間中に高熱のわりに全身状態良好の「中耳炎+高熱(>39℃)」は突発疹も考慮にいれて過剰診療にならないよう気をつける