保育園での 天文分野の アウトリーチ 富田晃彦*(天文学) 嶋田由美(音楽科教育) (和歌山大学教育学部)

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保育園での 天文分野の アウトリーチ 富田晃彦*(天文学) 嶋田由美(音楽科教育) (和歌山大学教育学部) 21世紀型科学教育の創造IV 2006年12月10日 国立科学博物館 GD1 幼児教育とサイエンスリテラシー 保育園での 天文分野の アウトリーチ 富田晃彦*(天文学) 嶋田由美(音楽科教育) (和歌山大学教育学部) * E-mail: atomita@center.wakayama-u.ac.jp

「科学に関する国民意識の醸成」および「科学離れ対策」としての 「保育園での天文アウトリーチ」 なぜ保育園? → 園児、保育者、保護者の、いずれもアウトリーチを行いたい    対象三者に継続的に働きかけることができる。科学好きか    どうかの偏りの少ない対象でもある(科学好きに加え、科学    好きでない層にも積極的に働きかけたい)。 なぜ天文分野? → 天文分野を、大人からの話、本などで知る、子どもにとって    「日常的な自然」のひとつと考える。園内での安全な活動や    都心部での活動も容易な分野。 どうやって評価? → ビデオを用いた人物観察で活動を評価(これから実施)。 何につながる? → 表現あそびとの融合を模索する。    多様な保育園環境下での科学教育支援に発展させ、    多くの国民に科学を伝える新方法につなげる。    まず試験的に2保育園(認可、認可外)で実践を始める。

園児、保育者、保護者の三者を対象とする背景 科学技術政策研究所の調査資料107「学校教育と連携した科学館等での理科学習が児童生徒へ及ぼす影響について」では「科学について、子どもの頃の親しみが後々大きい」という結果が示された。この結果もふまえ、園児に対していきたい。 同研究所の調査資料100「科学技術理解増進と科学コミュニケーションの活性化について」では「科学に関心があるが、分かりやすく説明を受ける機会が少ない」と国民の多くが不満をもっていることが示された。保育者、保護者の層に対して、この不満に応えたい。多くの時間、園児に接する層としても重視。

天文分野を扱う背景 保育所保育指針の「保育の目標」には「自然や社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の基礎を培うこと。」、「様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。」という項目がある(幼稚園教育要領でもほぼ同様)。 それらに対し、保育園・幼稚園では飼育栽培、天気観察、土遊び、さらには森林観察などのキャンプがよく取り入れられている。一方、絵本やテレビ、大人からの話で聞く科学の世界も子どもにとって「日常的な自然」であるが、保育園・幼稚園での活動報告は、まだ少ない。 ビデオは、繰り返し観察できる点、多くの研究者と共同で観察できる点で、実践評価のための資料として優れている。(嶋田由美氏がビデオによる人物評価で多くの実績を持っている。) 保育者に対して大規模な意識調査を予定している。  1. 保育者は、園内の活動として科学のどの分野に    興味を持っているのか、また苦手としているか。  2. 子どもは、どのような話に興味を持っているのか。  3. 園外の専門家との共同活動、園外の施設の活用は    どの程度あるのか。  4. 大学等で受けた教育が、どのように生かされるか。

実践場所:  N保育園   (大阪市中央区、認可外、園児数50)  H保育園   (大阪府藤井寺市、認可、園児数130) 対象年齢:  N保育園: 4,5歳児の場合と1歳以上の場合  H保育園: 3,4,5歳児 これまでの実践:   プレプレ実践:    2006年7月7日、N保育園、4,5歳児   プレ実践:    2006年12月8日、N保育園、1歳児以上   本格実践開始:    2006年12月20日(来々週)、H保育園    3,4,5歳児、ビデオ撮影による評価開始

プレプレ実践(ことの起こり) ● N保育園での4,5歳児(15人)の「お泊まり保育」で 「ほしのはなし」。 保育士数人も参加。室内にて     「ほしのはなし」。 保育士数人も参加。室内にて ● 肝試しが終わって寝るまでの30分間(20:00-30)、     20分トーク、10分質問受付。 ● 公開天文台ネットワーク(PAONET)画像を活用した    「あまのかわ」 というスライドを作成、    PC→プロジェクター投影で説明した。 ● 富田自身は17歳になるまで天の川を見たことが    なかった(最近の子どもは直接の自然体験が少なくて    何ともかわいそうだ、という意見を他の人より強く    持っていない)。 ● 保育士が「星の話→理科の授業」で構えたとのこと。     星の話(といえども)必ずしも事前には歓迎されて     いない(貴重な体験)。 ● 2カ月後、園は初めて地域のプラネタリウムに     出かけた(4,5歳児)。 ● 園児は「ほし」「プラネタリウム」ということばをよく     話すようになった。 ● 園の制作展でも、プラネタリウムを意識した展示を     初めて作成した。

スライドは表紙を含めて30枚 *スライド枚数が多すぎる。 *話しすぎる。早口。 *研究者の悪い癖(反省)。

園児が翌日描いてくれたお泊まり保育の絵 制作展での(11/30-12/1)「プラネタリウム」

プレ実践 本格実践(12月20日、H保育園より) 今後の報告に 乞うご期待 ● 題目「つき」:満月写真をのりパネ(一辺75cm正方形)    に貼り、「うさぎ」「かに」「女性の横顔」などの    だまし絵を見つけてもらう。 ● 風船の地球儀とソフトボールの月球儀を用い、    月がどのくらい離れたところにあるのか、    感じ取ってもらう(園児には難解すぎ、大反省)。 ● 園児からの質問:月はいつ寝ている?月は暑い?    月は何歳?月はおいしい?月で何が飲める?    園児からは「またやってほしい」とリクエスト多数。 ● 多くの保護者の参加があった。保護者からの質問:    満月はいつも同じ模様だが…? 月はいつからある? 本格実践(12月20日、H保育園より) ● 天文研究者って、どんなひと?    想像で絵を描いてもらう予定。 ● 科学の絵本の読み聞かせをする予定。 ● ビデオを2方向(講師方向、園児方向)から    撮影、園児の体の動きを記録する予定。 ● 表現あそびとの融合を模索。    学生も参加し、教員養成へ貢献。 今後の報告に 乞うご期待

高校生だって素朴な疑問(ある進学校の理数科2年生より) 月はいつ寝ている? →月は出たらきれいだから、ちゃんと寝ていて寝不足ではないよ。 月は暑い? →暑いと思う人! 寒いと思う人! で手を挙げてもらい、だいたい半々。   昼間はものすごーっく暑く、夜はものすごーっく寒い。みんな正解! 月は何歳? →何歳だと思う? 保育園か小学生かと言われれば、小学生かな。   だってしっかりしてるもん。そうか(^^)。 月はおいしい? →そうやな、弁当持っていかないと、むこうでごはんは出ないよ。   # 月は食べられるか、という質問だったかも。 月で何が飲める? →そうやな、月に行った人に聞いてみるか。 高校生だって素朴な疑問(ある進学校の理数科2年生より) ◆新しい星座はつくれないのですか。 ◆宇宙に人型の生命体はあるのでしょうか。 ◆星の数は、増えているのでしょうか。 ◆ブラックホールはどのようにしてできるのですか。 ◆土星ができたときから土星のリングはあったのですか。 ◆月の大きさ、見える位置、色が違ったりするのは、なぜでしょうか。 ◆惑星はどうしてすべて丸いのでしょうか。