新しい「雇用」を創出する前に 実施していただきたい4つの施策 2010/03/25 NPO法人NEWVERY 理事長 山本繁
NPO法人NEWVERY団体概要 組織名称:NPO法人NEWVERY(ニューベリー) 設立:2002年3月25日 理事長:山本繁 所在地:東京都豊島区雑司が谷1-31-2 ビジョン:若者たちが未来に希望を持てる社会を創る ミッション:若者たちの成長と職業的自立 主な事業: 日本中退予防研究所 オールニートニッポン トキワ荘プロジェクト 区民プロデューサー養成講座 年間活動予算:約1億円(2010年度見込み)
フリーター・ニート問題は、半分は雇用問題、半分は教育問題である。フリーター・ニートに至るプロセスは下記の3つである。 フリーター・ニート化に至る3プロセス 学校を卒業して、そのままフリーター・ニート(09年度大卒就職率44%) 学校を中退して、そのままフリーター・ニート(高校中退7万人+大学・短大・専門学校中退13万人=年間20万人) 仕事を辞めて、そのままフリーター・ニート(大卒就職者の15%が1年以内で離職、37%が3年以内に離職) (大学)全国平均で100人入学したら卒業までに15人が中退・除籍。就職率は07年3月卒で67.6%。10年3月卒は厳しい経済状況の影響を受け44%前後の見込み。 (専門学校)全国平均で100人入学したら卒業までに15.5人が中退・除籍。就職率は07年3月卒で80.3%。10年3月卒で6割前後の見込み。 ※入学100人当たりのその後の推移
離学直後にフリーターだった者がその後正社員になれる確率は26%。約6割は一貫してフリーター・ニート。 フリーター・ニートになってからでは遅すぎるのが現実。 卒業者と中退者のその後の推移(男性) 卒業者と中退者のその後の推移(女性) (小杉礼子他『大都市の若者の就業行動と移行過程―包括的な移行支援に向けて―』よりグラフを作成) 学校を中退した人の多くは、ニートにはならないまでも、フリーター(非正規雇用)として働かざるを得ない状況が浮き彫りに。図が示すように、中退者のその後の就業状態は卒業者と大きく異なる。高等教育中退者の半数以上がずっとフリーターか無職で、一貫して正社員だった者は男女共に10%未満。 離学(卒業ないし中退)直後に非正規雇用または無職だった場合、その後正社員へ移行する確率は「26%」 ※小杉礼子他『大都市の若者の就業行動と移行過程―包括的な移行支援に向けて―』 学校を中退した若者の多くが、フリーターや無職に。しかも、そこから這い上がることは難しく、不安定な状態が固定化(=長期化)している。したがって、若者が社会的弱者へ転落するのを予防するには、中退予防および中退者への早期支援が必要不可欠だと言える。
ニート・フリーター化に至る3つのプロセスを踏まえると、若年者雇用問題への短・中期的な対策には、下記の5つの取り組みが必要。 就職率UP 1-1. 大学・専門学校が就職支援に本気で取り組む 中退率DOWN 2-1. 大学・専門学校が中退予防に本気で取り組む 中退者への早期支援 3-1. 各地域に中退者向けの転学・就職支援センターを作る 離職率DOWN 4-1. メンタルヘルスケアなどの離職予防を行う 4-2. 企業が首切りをしなくていいように助成金を出す 再就職率UP 5-1. 職業訓練の質を高める 5-2. 再就職支援の窓口を設置する 5-3. コーディネーターの養成を実施するなどを通じてマッチングの精度を高める 5-4. 若者を採用しやすいように企業に助成金をつける 5-5. 福祉的就労の場を増やす ※中・長期的な対策としては、1.学校(後期中等教育以前)・家庭・地域による教育の立て直し 2.雇用に関するルール改訂が求められる
【政策提言】若者のフリーター・ニート化を予防するために実施していただきたい4つの施策。 大学・専門学校の「中退率」「就職率(就職者数/卒業者数)」「1年以内の離職率」の調査と公表の義務付け(フリーアクセスのデータベースを構築。学校案内パンフレットやホームページにも記載を義務付け) →大学・専門学校の真なる成果とは、学生が入学し卒業するまでのBefore & Afterでの成長度である。成長度の視覚化は難しいが、実現へ向けた第1歩として「中退率」「就職率(就職者数/卒業者数)」「1年以内の離職率」等の調査と公表を義務付けることによって、良い学校により優秀な学生が集まる仕掛けになる。現在は、いかに学校案内やホームページを魅力的に作るか、オープンキャンパスで受験生をどう引き付けるかに各学校は注力しているが、広告にお金をかけるのではなく、教育(学生)にお金をかけることで、受験生が集まる環境に変えるべきである。切磋琢磨によって、質の高い教育が実現する 中退予防支援の実施(モデル校を数校決め、R&D後にマニュアル化と水平展開を実施) →中途退学の予防は各学校の努力に任せているだけでは成果が出るまでに時間がかかり過ぎる。その間にも毎年大量のニート予備軍が社会に放出されることになる。中退予防のためのプロジェクトチームを作って、複数のモデル校で実験的・重点的に取り組み、そのノウハウをマニュアル化し、全国に水平展開していく方が遥かに効率的かつスピーディーに中途退学者を減らすことができる 中退者への早期支援の実施(転学・就職支援センターを各地域に設置) →各都道府県に支援センターを設置。大学・専門学校は中途退学者が出てしまった場合に、学生や保護者にパンフレットを渡すなどして支援センターへの誘導を図る。そうすることで早期支援(場合によっては障害・疾患の早期発見)が可能になり、フリーター・ニート状態の長期化を防ぐことができる 復学支援の実施(訪問支援やカウンセリング・指導ができるように大学・専門学校を資金的・技術的に援助) →休学は中途退学へと発展するケースが非常に多いが、休学者に対しては有効な対策を行えていないのが現状である。各校が休学者 を手厚く支援できるように、カウンセラーや訪問支援者の雇用や訓練にかかる費用等を補助するなど援助が必要である(国でトレーニ ングした人材を各校に派遣する形も可)
【参考資料】東京都内の大学の中退率 学校名 定員 学生数 卒業までの中退率 東京大学 12520 14057 2% 慶応義塾大学 25759 28479 4% 明星大学 7720 7180 13% 高千穂大学 2135 2379 工学院大学 5440 6061 国士舘大学 11310 13772 14% デジタルハリウッド大学 940 993 東洋学園大学 2770 2598 15.8% 目白大学 4910 5496 16% 和光大学 2907 3373 17% 杉野服飾大学 1020 1212 東京純心大学 680 433 22% 嘉悦大学 1280 1261 31.3% 2009読売新聞全国調査「09 大学の実力調査~教育向上力への取り組み」より