2015年春学期 「企業のしくみ」 第7回監査役の役割(4章3節3項) 2015年春学期 「企業のしくみ」 第7回監査役の役割(4章3節3項) 樋口徹
株式会社の主な機関の関係図 株主総会(会社の所有者の集まりで、会社の所有者である株主が、会社の基本に関する重大事項(組織、運営、管理等)に関して意思決定を下す機関である。 ) 選任 ・ 解任 選任 ・ 解任 報告 報告 監査 取締役 (取締役会) 監査機関 選定・解職 代表取締役 報告 日常業務の監督と執行 従業員 (業務遂行)
4-3-3 監査役と監査役会(pp.99) 監査役とは 監査役は、 大会社 (5億円以上の資本あるいは200億円以上の負債を有して いる株式会社)および 公開会社 (譲渡制限の無い株式を発行している株式会 社)において設置が義務付けられている機関である。 監査役は、 株主総会 において選任される。監査役は、株式会社で行われてい る業務に対して、法令や 定款 などに違反していないかを監査し、会社に対して 監査した結果を報告する義務を負う。 原則として、監査役の業務の中に、取締役の 経営判断 の妥当性を調査・判定 することは含まれておらず、 著しく不当 であると思われる件については調査・ 判定することは可能である。 監査役は、株主総会の 議案 が法令や定款に違反していないかを事前に調査 し、取締役会を招集する権限を持つ。さらに、取締役に対して 訴訟 を行う場合 には、監査役が会社を代表することになる。 監査役は 取締役会 への出席が義務付けらており、必要に応じて、意見を表明 することが求められる。
監査役とは(株主総会で選任) 監査役は、株主総会で選任される機関。会社で行われている業 務が、法令や定款などに違反してないかを監査する。 ※監査役の業務に取締役の判断の妥当性を調査・判定することは含まれな いが、著しく不当な件に関しては調査・判定することができる。 ※例えば、ある不動産を法令や定款に従って購入した。しかし、不当に高額 で代表取締役の親族から購入していた場合は、監査の対象になりうる。 監査役の義務 ①会社に対して、 監査報告書 を提出する義務を負う。 ②社内における法令や定款違反行為を会社に報告。 ③ 取締役会 への出席義務(必要に応じて、意見を表明)。 ④株主総会の 議案 を調査し、法令や定款に違反等の有無 を報告。
監査役の権限 ➀取締役や会計参与およびその他の 従業員 から事業報告 を請求できる(自ら会社の業務や財産を調査できる)。 ② 子会社 に対しても➀と同様のことができる。 ③取締役会を招集できる。 ④取締役に対して 訴訟 を行う場合、監査役が会社を代表す る。 社外 監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株 式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法 人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役又 は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。(会 社法2条16項)
監査役会 監査役会は、大会社 かつ 公開会社において設置が義務付け られている機関である。 監査役会は、大会社 かつ 公開会社において設置が義務付け られている機関である。 監査役会は 3 人以上の監査役から構成される組織体であり、 その過半数は 社外監査役 でなければならないとされている。 ※社外監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株 式会社又はその子会社において取締役、会計参与(会計参与 が法人の場合は、その職務を行うべき社員)もしくは執行役又 は支配人その他の使用人となったことがないものとされている。 監査役会の職務として以下の3つが規定されている(会社法第390 条)。 (1) 監査 報告。 (2) 常勤 の監査役の選定及び解職。 (3)監査の 方針 、業務・財産の状況の 調査 およびその方 法などに関する事項の決定。
イオン、社内に監査役育成「アカデミー」 子会社統治強化日本経済新聞電子版(2014/9/13) イオン、社内に監査役育成「アカデミー」 子会社統治強化日本経済新聞電子版(2014/9/13) イオンは監査役候補者を社内で育成する機関「イオン監査役アカデ ミー」を設置する。アカデミーを修了した幹部人材を海外を含め260社 以上ある子会社の監査役に順次配置する。グループ各社の 不祥事 や不正会計の芽を摘み、企業統治の強化する。 日本監査役協会によると、企業が監査役候補の育成に取り組むの は珍しいという。対象者として財務・経理、人事、顧客サービスなど各 部署から部次長クラスの社員を毎年10人以上選抜する。外部から講 師を招き、週末を利用して1年間で100時間強の授業を受けてもらう。 修了後はグループ会社の 常勤監査役 に就任させる方針だ。 監査役は取締役の職務執行を監査するのが役割で、強い権限を持 ち、独立性が高い。大企業は社外取締役の導入などで経営をけん制 する機能を高めつつある。だが、傘下の多くの子会社は 法令順守 や 企業統治 が行き届かないリスクを抱えている。イオンはグルー プとして監査役の機能を強化し、子会社が自律的に法令順守や不祥 事防止に取り組むよう促す。
監査役会の運営 監査役会は必要に応じて開催される。 監査役会の招集権は、各監査役が持つ。 招集したい場合は、➀事前に全監査役に通知 あるいは あるいは ②監査役 全員 の同意 が必要となる。 監査役会の議決は、全監査役の過半数で承認される。 ※取締役と同様に 委任 はできない 取締役会の議事は議事録(参加した監査役は押印または署名)を 作成し、10年間本店に保管しなければならない。 ※株主(親会社株主含む)と債権者は裁判所の許可を得られれば、議 事録の閲覧・謄写を請求できる(許可をされない場合もある)。
会計参与とは(設置は任意) 取締役 と共同して、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書 類並びに連結計算書類を作成する(会計参与報告作成)。 会計参与の職務 取締役 と共同して、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書 類並びに連結計算書類を作成する(会計参与報告作成)。 ※委員会設置会社の場合は「取締役」とあるのは「 執行役 」になる。 会計参与の権限 ①閲覧及び謄写 ・ 会計帳簿 又はこれに関する書面 ・会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成され ているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令 で定める方法により表示したもの ②取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告 を求めることができる ③会計参与設置会社の 子会社 に対して会計に関する報告を 求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。 ※子会社は、正当な理由があるときは、報告又は調査を拒むことができる。
会計監査人とは ・会計監査人の設置が義務付けられているのは、 大会社 と委員 会設置会社である。 ・会計監査は専門的な知識と経験が必要となるので、公認会計士 または 監査法人 となる。 ・会計監査人の職務 ①計算書類と付属明細書などに監査する。 ②会計監査報告を作成する。 ・会計監査人の権限(会計参与とほぼ同じ)
オリンパス、監査役を提訴 「黙認」の責任問う 監査法人間の継承、手続き見直し課題(2012/1/18 日本経済新聞電子版) オリンパス、監査役を提訴 「黙認」の責任問う 監査法人間の継承、手続き見直し課題(2012/1/18 日本経済新聞電子版) オリンパスの 損失隠し 問題を巡り、外部の専門家からなる委 員会は 歴代監査役 5人について会社に損害を負わせた責任が あるとの報告書をまとめ、同社は17日、5人を提訴した。すでに提訴 した19人の歴代取締役に加えて監査役も責任追及の対象となったこ とで、監査のあり方が改めて問われる。 責任を問われたのは常勤監査役3人と 社外監査役 2人。この うち同社が 損失飛ばし を始めた1990年代に経理部長を務めた 太田稔氏は損失飛ばしを認識する立場にあった。他の4人は損失飛 ばしを認識していなかったが、異常に高額での企業買収を承認した 取締役の 善管注意義務違反行為 を見過ごしたと見なされた。 監査役は、 取締役 が正しく職務を遂行しているかどうかを監 視・監督する。取締役と同様に株主総会で選任される。違法や不当 な決議を防ぐためすべての取締役会に出席し、必要な場合には意 見を述べる義務がある。
オリンパス、監査役を提訴 「黙認」の責任問う(続き) オリンパス、監査役を提訴 「黙認」の責任問う(続き) 今回、太田氏以外で責任ありとされた4人はオリンパスによる国内 3社の買収について取締役会で 異議 を唱えたり、 再調査 を 要求しなかったことが問題とされ、「 黙認 」の責任が問われた。 一方、同社の会計を監査する監査法人については、 監査基準 などで定めた「通常必要とされる監査手続き」をしているとして提訴 対象にならなかった。昨年12月に公表された第三者委員会の報告 書は2009年3月期まで担当したあずさ監査法人、10年3月期から担 当する新日本監査法人の双方について「問題なしとしない」と指摘し ており、責任を追及するうえで限界も浮かび上がる。 あずさから新日本への 引き継ぎ では、09年3月期決算での英 ジャイラスの優先株買い取りを巡るあずさと会社との やりとり の 詳細が新日本には伝わらなかった。現在のルールでは、監査調書 の 監査意見の判断 にかかわる部分については後任監査人で も見ることができない。今後は、監査調書をすべて見られるようにす るなど手続きの見直しも必要になりそうだ。
オリンパス、監査役を提訴 「黙認」の責任問う(続き) オリンパス、監査役を提訴 「黙認」の責任問う(続き) 今回の調査では、監査法人の内部資料で ある監査調書などを閲覧できず 形式的 な判断にとどまった可能性も指摘される。 今後、金融庁や日本公認会計士協会の調 査で監査の問題が指摘されれば、株主など から別途提訴される可能性も残る。過去に はヤオハンジャパンや足利銀行の監査法 人が訴えられたケースもある。 ※飛ばしは、企業が保有する 含み損 を抱えた有価証券を 一時的 に第三 者に転売し、決算時期に含み損を隠す行 為(決算後に買い戻す)。