動物の行動 基礎生物学A-2 お知らせ 4月16日「集団遺伝学」の講義用パワーポイントは Web Siteにあります。

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手がかりと信号 動物は,自分が置かれている物理環境,生態環境,社会環境を,感覚器官を使い,感知し,それを基に行動を決定する。直接これらを感知できることもあるが,しばしばそれができず,興味対象の状態を少なくとも部分的には示唆する情報を利用することがある。この情報を手がかり(cues)という。例えば,交尾対象の雌の健康状態あるいは近くにいる捕食者の意図を直接感知することはできないため,それらが発する手がかりを基にそれを推察しなければならない。
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動物の行動 基礎生物学A-2 お知らせ 4月16日「集団遺伝学」の講義用パワーポイントは Web Siteにあります。 生態学研究センター ⇨センターの概要 ⇨ 構成員 ⇨椿 宜高  ⇨講義資料 http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~tsubaki/PPlist.html

行動学の創始者たち ニコラス・ティンバーゲン 「本能の研究」 永野 為武訳 三共出版 1981 絶版、図書館にはあるかも 三共出版 1981 絶版、図書館にはあるかも コンラート・ローレンツ カール・フォン・フリッシュ

おもなティンバーゲンの業績 行動を解発する刺激 cue 空間学習

ハイイロガンの卵転がし行動  行動が非常に定型的であることを示す例として、ハイイロガンの「卵転がし行動」がある。ハイイロガンは地上に巣を作り,その巣は草でできたお椀型をしている.しかし,卵が巣からしばしば転がり出ることがある。卵が巣から転がり出ると,卵転がし行動がみられる.ハイイロガンは卵が巣の外にあるのを見つけると,つぎのような一連の節肉運動を行う.巣の中で立ち上がり,まず頭が卵の真上にくるように頸を外へ伸ばす.それからくちばしを卵のむこう側に持っていき,卵を転がし始める.ハイイロガンは卵を転がしているあいだ,くちばしを左右に動かして,卵が横からこぼれないようにする.この行動はつねに有効とは限らず,卵がこぼれることもある.卵がこぼれても,ハイイロガンはすぐにくちばしの運動をやめて再度卵に触れようとはしない.いったん,くちばしを巣の所まで完全に戻してしまう.そしてそれから卵が巣の外にあるのに気づき,再びくちばしを卵の所へ持っていって卵を巣へ戻そうとする.また、卵を巣へ戻しつつあるハイイロガンからLorenzが卵を取りあげると,ハイイロガンは卵がないのに卵転がし行動を続けた。この2つの観察から,ハイイロガンの頸の筋肉の持続的運動のためには,くちばしに卵が接触しているという感覚性フィードバックは不要であることが分かる。ひとつの要素行動は一度始まってしまうと終るまで持続する。

トゲウオの婚姻色 非繁殖期のオス (保護色) 繁殖期のオス ペア形成前 繁殖期のオス ペア形成後 1cm

繁殖行動の推移Ⅰ ① ①非繁殖期の群れ ② ②巣作り場所の争い ③巣作り開始 ④巣材(水草や藻類)を集め、分泌物で巣材をつなぐ ⑤トンネル作り ② ③ ⑤ ④

繁殖行動の推移Ⅱ ⑥腹の大きなオスを見つけるとジグザグダンスを開始。体色が変わる。 ⑧ ⑦オスは棘を使ってメスの腹を刺激 ⑧メスが頭を上げた姿勢(受入れ姿勢)をとると、オスはメスを巣へ導く ⑧ ⑦ ⑥

繁殖行動の推移Ⅲ ⑩ ⑨ ⑨メスが巣内に産卵 ⑩オスが放精 ⑪数匹のメスが産卵するとオスはヒレで水流を起こし、卵に酸素を供給 ⑪ ⑫約1週間後、稚魚が孵るとオスは稚魚を護る。 ⑪ ⑫

各段階で見せる行動は 刺激と反応のくりかえし オス メス 出現 ジグザグダンス 求愛受入れ 誘導 追従 巣の入り口へ 巣に入る 身震い 産卵 放精

おもなローレンツの業績 動物を殺さずに行動を観察して比較することで行動の進化を探る手法の提唱 ローレンツに刷り込まれ、その後をついてまわるハイイロガン。ヒナは孵化すると、最初に見た動く物体に、その後ついて回るようになる。このような現象を「刷り込み」という。 動物を殺さずに行動を観察して比較することで行動の進化を探る手法の提唱

カール・フォン・フリッシュ ミツバチのコミュニケーション

巣板の上で行う尻振りダンスは蜜源までの方角と距離の情報を伝える 花までの距離が短い(約50m以内)ときは円形ダンス 花までの距離が長いときは8の字ダンス

中心の直線部分の傾きが方向を、尻振りの速度が距離を示す 花までの距離と尻振りの回数

初期の行動学の関心は 「本能」と「学習」にあった 本能行動:動物や人間が生まれつき持っていて変化しない内的行動 学習行動:経験によって変化する行動 ただし、 本能行動は純粋に遺伝によるのではないし、 学習行動は経験だけによるのではない。

本能と学習についてのよくある誤解 本能行動は遺伝だけで決まり、 学習行動は遺伝とは無関係で、育った環境下での経験による。 「氏か育ちか」の二分法による議論は誤り

GALAHとPINKCOCKATOO Pink cockatoo Cacatua leadbeateri Galah cockatoo Eolophus roseicapill Pink cockatoo Cacatua leadbeateri GALAHとPINKCOCKATOO

実の親と育ての親 2種のcockatooは生息地が重なる。 両種ともユーカリの大木にできる樹洞を巣に使う。 産卵開始から抱卵開始まで4-5日なので同じ巣に産卵してしまうことがある。 体の大きなpink cockatooがgalahを追い出して両方の卵を抱く。 pink cockatooに育てられたgalahの雛は、galahの餌ねだり声begging callをだす。 しかし、群れを維持するためのcontact callでは育て親pink cockatooと同じ声をだす。 (Rowley and Chapman 1986)

学習能力にも遺伝の影響 Begging callは本能行動、conact callは学習行動に分類できる。 ただし、GalahがPink cockatoo のcontact call を学習したのは、特殊な音を学習できる能力の遺伝と、cocaktooと生活した経験の相互作用による。 つまり、本能行動も学習行動も遺伝的背景をもつ

「本能行動のほうがより遺伝子支配で、学習行動のほうがより環境支配」か? この言い方も間違い このチョコケーキは材料60%、レシピ40%でできている あのチョコケーキは材料30%、レシピ70%でできている とは言わないのと同じ

動物の行動: ティンバーゲンの4つの「なぜ」 その行動が引き起こしている直接の要因は何か? 至近要因 その行動は、生存や子孫を残すために、どのような機能をもっているのか? 究極要因 その行動は、動物の一生の中で、どのような過程をたどって形作られたものなのか? 個体発生 進化の過程で、その行動は、祖先からどういった道筋で現れてきたのか? 系統発生

ホシムクドリはなぜ春になるとさえずるのだろう? 日照時間が延びると、ホシムクドリの体内のホルモンバランスが変化する。その影響によって、ムクドリの体に変化が起き、声帯が振るえるため。 ホシムクドリは、メスを引き寄せ、繁殖するために、さえずる。 ホシムクドリは、親鳥や他の仲間のムクドリたちから、さえずるという事を学習したため。 単純なさえずりをする原始的な鳥から、音に変化をもたせる鳥が出現し、さらにリズムなども複雑に変わって、現在のホシムクドリのようなさえずりをするようになったため

外敵に対する警告行動 ヤママユガの1種 Automeris zephyria

「4つのなぜ」の相互関係 系統発生 究極要因 至近要因 個体発生 種の進化 次世代への遺伝 繁殖の成功程度 行動 刺激 個体 内的メカニズムの活性化 内的メカニズム 至近要因 刺激 生理 発生 遺伝 個体発生 個体

ダーウィンの自然淘汰理論 進化がおきるための3つの条件 変異:種のメンバーは全く同じ性質を持っているわけではない。 遺伝:親の性質の一部は子に伝わる。 子孫の数:性質の違いは子孫の数に違いをもたらす場合がある。繁殖成功度 当然の結果として、繁殖に成功しやすい性質は種全体に広まり、繁殖に不利な性質は消失する。

テントウムシHarmonia axyridis 斑紋の遺伝的個体変異

自然淘汰による表現型の変化

遺伝学をとりこんだ自然淘汰理論 遺伝変異 Genetic variation: 遺伝 Heredity: 異なる遺伝子は対立遺伝子Allelesとして集団中に存在しうる。異なる対立遺伝子は少し機能が異なるタンパク質を生産する。 遺伝 Heredity: 遺伝子は親から子へと伝わる。 繁殖成功度の差 Differential reproduction: 他の対立遺伝子よりも多くの複製をつくる遺伝子が集団中に広まる。

問題の行動が、どのような究極要因によって進化したかをどうやって示すか 直接的な方法 問題の行動に遺伝変異があるのか 行動の違いが繁殖成功度の差につながるのか。 大部分の野生生物は観察が困難なので、この方法が使えるケースはきわめて稀。

間接的な方法 考えうる仮説を列挙する。 仮説から導かれる予測をたてる。 観察結果と一致しない仮説を棄却する。 残った仮説を容認する。 つまり、消去法による証明。 研究が進むと新しい仮説が次々に生まれてくるので、絶対的な結論はでないが,これは科学そのものの性質でもある。

仮説の検証は常に消去法 仮説を容認/棄却することは可能だが、 仮説の証明はふつうできない 質的な仮説:「京大のキャンパス内にライオンはいない」 絶対的な反証は可能だ(誰かが発見すればよい)が、 誰も見たことがない事を根拠に、いないと推測する。 量的な仮説:「京大生と東大生の身長には差がない」 統計的な手法によって比較する。 つまり、約束した危険率(ふつう5%)のもとで、 帰無仮説(差がない)が棄却できないことを推測する。

仮説検証の例 ハヌマンラングールに見られる子殺し 1頭の大きなオスと数頭のメスの群れ生活。 群れは外部のオスから狙われており、しばしば群れのオスとの激しい闘争がおきる。 群れは時々新しいオスに乗っ取られる。 乗っ取りがおきたあと,子サル(新生児)の死亡率が急に高まる。 子サルの死亡の大部分は新オスによる子殺しが原因。

Sala B Hrdy (仮説)子殺しをするオスは繁殖成功度が上がる 1.殺しの対象はライバルオスの子。 2.メスは子の世話をしている間、排卵しない。 3.しかし、授乳している子を失うと排卵が始まり、新しいオスの子を産める。 4.オスが群れを占拠している間につくれる子の数は,子殺しをするオスのほうが多い。 Sala B Hrdy

弱い検証 vs 強い検証 Hrdyの仮説は「性淘汰仮説」と呼ばれ、上記の4項目を調べるた結果、仮説が容認される(棄却できない)ことがわかった。 しかし、全く違う説明によって同じ現象が説明可能かも知れない。 他の考えられる仮説を列記し、他の仮説では矛盾する点がある事を指摘できれば、より強い検証になる。

代替仮説 共食い仮説 群れの乗っ取りには大きなエネルギーが必要で、それを補うために栄養価の高い子を殺して食う。 群れにいる子が他のオスの子であるのは当然で、選択的にライバルオスの子を殺しているわけではない。 社会的病理仮説 子殺しに適応的な意味はなく、闘いによって群れを乗っ取ったオスの、異常な興奮状態のためにおきる。 人に対する警戒心から子殺しが起きる

代替仮説の検証 共食い仮説 群れの乗っ取りには大きなエネルギーが必要で、それを補うために栄養価の高い子を殺して食う。 群れにいる子が他のオスの子であるのは当然で、選択的にライバルオスの子を殺しているわけではない。 社会的病理仮説 子殺しに適応的な意味はなく、闘いによって群れを乗っ取ったオスの、異常な興奮状態のためにおきる。 検証の方法:インドでは人々がハヌマンラングールに餌を与えている集団がある。給餌されている集団とされていない集団で子殺しの頻度が低れば棄却されない。 検証の方法:群れのオスを人為的に除去し、闘いなしに侵入オスが群れを乗っ取れる状況をつくる。子殺しの頻度が低くなれば棄却されない。また、給餌されている集団で子殺しの頻度が高くなれば棄却されない。

代替仮説の比較 仮説の予測 性淘汰仮説 共食い仮説 社会的病理仮説 ◎:仮説から予測され、これが支持されなければ仮説は棄却 オスはライバルオスの子を殺す ◎ ○ オスは殺した子を食う × 子殺しは異常な状況でおきる(人が近くにいる給餌集団など) 闘争なしに群れのオスが入れ替わっても子殺しが起きる ◎:仮説から予測され、これが支持されなければ仮説は棄却 ○:状況によっては、仮説から予測される ×:仮説からは予測されない

代替仮説の比較 仮説の予測 性淘汰仮説 共食い仮説 社会的病理仮説 子を食ったという観察例はない 給餌されていない集団でも観察された オスはライバルオスの子を殺す ◎ ○ オスは殺した子を食う × 子殺しは異常な状況でおきる(人が近くにいる給餌集団など) 闘争なしに群れのオスが入れ替わっても子殺しが起きる 子を食ったという観察例はない 給餌されていない集団でも観察された オスを除去した集団でも観察された ◎:仮説から予測され、これが支持されなければ仮説は棄却 ○:状況によっては、仮説から予測される ×:仮説からは予測されない

ほぼ性淘汰仮説が受入れられた時点で、新仮説登場 攻撃性仮説 L. Davies & S. Downs 1993 群れを乗っ取ろうとするオスは、新しい群れで社会的地位を獲得するために攻撃性が高まる。これ自体は適応的性質であるが、子殺しはその副次的な現象に過ぎない。 性淘汰仮説と同じ予測が成り立つ 仮説は棄却されるためにあり、 その度に新しい仮説が生まれ、検証をへて さらに新しい仮説へと伸展して行く

子殺しは他の生物でも知られている オスが卵塊を護り メスが卵塊を壊す

ライバルの精子を殺す生物も コウイカ シオカラトンボ アオマツムシ ヨーロッパカヤクグリ カジカ カワトンボ

動物行動の動画が見れるサイト ライオンの子殺し(ミネソタ大学) http://www.lionresearch.org/main.html 動物行動の映像データベース(京都大学) http://www.momo-p.com/