昼ゼミ20111125 Seeing the forest for the trees: long-term exposure to elevated CO2 increases some herbivore density 著者Stiling P., Moon D., Rossi A., Hungate B.A., Drake B. 掲載Global Change Biology15;1895-1902(2009)
木を見て森を見ること: 高CO2の長期暴露が いくつかの植食者密度を上昇させる
これまでの研究 大気CO2濃度の増加 植物の窒素濃度が低下、二次代謝物質が増加 (植食者にとっての栄養が低下し、防御能力が上昇) (植食者にとっての栄養が低下し、防御能力が上昇) 植食者の生残、成長の低下
→単位体積当たりの林冠の植食者密度の増加 (単位面積当たりのリターの植食者「密度」の増加) この論文の注目点 大気CO2濃度の増加 植物の成長の増加(植食者にとっての餌の量の増加) →単位体積当たりの林冠の植食者密度の増加 (単位面積当たりのリターの植食者「密度」の増加) 葉が増える分だけ植食者の数が増えるのでは? 密度の意味合いが体積と面積当たりで異なる
この論文の注目点 長期のCO2暴露実験 野外での実験 以上の条件で 葉の生産量と植食者密度は どのように変化するか
実験地 フロリダ州メリット島国立自然保護区 の特別研究区(NASAのケネディ宇宙センター内) 矮性ナラ、パルメットヤシの生態系 材料と方法 優占種:3種のナラ類 Quercus myrtifolia 77% Quercus geminata 17% Quercus chapmanii 6% その他:27種(窒素固定を行うマメ科植物 Galactia elliottii が優占) 潜葉性昆虫(leafーminer)と 葉巻形成昆虫(leafーtier)が多い
実験地 1996年1月: 2エーカー(81a)のナラ林に火入れ 春の間にOTC(8角形、一辺1.4m、高さ2.5m) 16基設置 16基設置 高CO2区(大気+350ppm-1のCO2)8基 対照区(1996年に350ppm以下、2007年に380ppm以下)8基
測定項目 葉200枚当たりの潜葉性昆虫、葉巻昆虫密度 窒素含有率 ランダムに葉を選択し、潜葉痕、葉巻を数える Q. myrtifoliaとQ. geminataは1996~2006年測定 Q. chapmaniiは2001年から測定 葉巻昆虫の密度は全ての樹種で2001年から測定 窒素含有率 ランダムにサンプリング 測定は1996~2006年 (2005,2006年のQ. geminataとQ. chapmaniiのデータなし)
測定項目 リター中の潜葉性昆虫、葉巻形成昆虫密度 測定期間 リタートラップ: 潜葉性昆虫:1998~2006年 葉巻昆虫:2001~2006年 リタートラップ: 1基につき0.0381のトレー3つ計0.762m2 1998年1月~2003年8月:月1回回収、 2003年9月~2006年5月:3か月に1回回収 Q. geminataとQ. chapmaniiのリターの潜葉性昆虫のデータは統合 (2001年以前のサンプルを化学分析に使用済み)
統計 繰り返しのある分散分析 CO2処理:要因 年:時間間隔 リターのデータは対数変換
葉200枚当たりの潜葉性昆虫密度 結果
葉200枚当たりの葉巻形成昆虫の密度 CO2と時間の交互作用は潜葉、葉巻どちらでもみられなかった
葉の窒素含有率
0.1143m2のリター当たりの潜葉性昆虫密度 リター量 Q. myrtifoliaとQ. chapmaniiは増加 Q. geminataは減少 高CO2で成長低下? Q. myrtifoliaとQ. chapmaniiとの競争に負けた?
0.1143m2のリター当たりの潜葉性昆虫密度
0.1143m2のリター当たりの葉巻昆虫密度
考察 葉200枚当たりの植食者密度の減少について 先行研究と一致した結果 原因として考えられること 葉の窒素の希釈 二次代謝物質の増加 天敵による捕食率の上昇
植食者密度が低下しない場合 植物種の例 環境条件の例: 養分の利用可能性が高いと密度低下は起こらない 窒素固定植物:窒素の希釈が起こらない(Karowe 2007) C4植物(Sudderth et al. 2005) 環境条件の例: 養分の利用可能性が高いと密度低下は起こらない リン利用可能性(Goverde et al. 2004) 窒素利用可能性(Schädler et al. 2007) 窒素を含む防御物質を合成する植物では窒素が多くても密度低い
リター0.1143m2当たりの植食者密度について 地上部バイオマスの反応 Q. myrtifoliaとQ. chapmanii 2000年まで高CO2下で減少、2001年以降 (林冠閉鎖後は)増加 Q. geminata 高CO2区と対照区に有意差なし 地上部バイオマスの反応 (Seiler et al. 2009より)と一致 Q. myrtifoliaとQ. chapmaniiの 地上部バイオマスは高CO2により増加 Q. geminataでは有意な反応がみられず
生産量(虫にとっての餌の量)の増加により0.1143m2当たりのリターの植食者密度は増加 まとめ 高CO2下で葉200枚当たりの植食者密度は減少 しかし・・・ 生産量(虫にとっての餌の量)の増加により0.1143m2当たりのリターの植食者密度は増加 生産量の増加は他の実験系でも報告されており、 それらでも増加の可能性あり
まとめ リター当たりの植食者密度の変化は植物種に依存 高CO2環境下では 植食者とその天敵の群集は変化するだろう