昼ゼミ20111125 Seeing the forest for the trees: long-term exposure to elevated CO2 increases some herbivore density 著者Stiling P., Moon D., Rossi A., Hungate.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
地域格差と生産性 ー地域別全要素生産性の計測ー 明治学院大学経済学部 高橋ゼミ 発表者 増田 智也 2007 年度卒業論文発表会.
Advertisements

◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
土性を考慮した有効水分量の検討 生産環境整備学講座  灌漑排水学研究室      玉内 翔子.
落葉層の厚さと実生サイズの違いが 実生の発生・定着に及ぼす影響 北畠 琢郎
背景と目的 結論と展望 材料と方法 結果と考察
分散分析マスターへの道.
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
Isao Matsushima, Toshihisa Tomie
ビオトープ造成事業後の 環境評価に関する研究 〜地表性昆虫の多様性を用いて〜
アグリバイオ用照明による 葉菜類の実証栽培
外来植物の侵入・拡大モデル 都市社会工学科 保全生態学研究室  秋江 佳弘.
テーマ 自殺 ~なぜ地域差が出るのか~ 村瀬ゼミ.
ICU退室後のPTSDと家族の精神状況 おもしろいとおもいます。 しかし、統計学的手法が難しい研究ですね。
気候-陸域炭素循環結合モデルの開発 加藤 知道 地球環境フロンティア研究センター 22nd Sep 2005.
資源の空間的不均一性がプランクトン群集の共存に与える影響: 格子モデルシミュレーションによる予測
人工ゼオライトによる 作物の生育効果に関する研究
3章 Analysing averages and frequencies (前半 p )
臨床検査のための代替キャリブレーション:ノルトリプチリン治療薬モニタリングへの応用
緩衝作用.
人間活動下の 生態系ネットワークの 崩壊と再生
第8回 関連多群の差の検定 問題例1 健常人3名につき、血中物質Xの濃度を季節ごとの調べた。 個体 春 夏 秋 冬 a
地表性昆虫を用いた都市緑化地域の評価 18214020 菱田 啓.
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2013年4月 .
前期ゼミまとめ スラックス経済.
水質調査の現地観測手法について 茨城大学農学部 黒田 久雄.
繰り返しのない二元配置の例 ヤギに与えると成長がよくなる4種類の薬(A~D,対照区)とふだんの餌の組み合わせ
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
中学校理科・社会・総合的な学習の時間  環境問題について .
共生第3(生態系)研究の構造 温帯地域 寒 帯地 域 地上観測 タワー観測 リモートセンシング 生態系モデル(Sim-CYCLE) 共生第3(生態系)研究の構造  サブ課題1 温帯地域 寒 帯地 域 地上観測 タワー観測 サブ課題2 日本 東シベリア.
色彩土のうによる発芽促進の相違, 及び植生土のう,普通土のうを用いた 緑化の長期経過報告 UC  15119630  宮嶋拓哉.
葉面積密度の空間分布を考慮した 樹木の抵抗係数の算定に関する風洞実験 加藤 麻希 佐藤 宏樹
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
UMiわい小銀河の赤色巨星 すばるHDSによる観測 (2001-2004) 定金晃三(大阪教育大)
生物情報計測学 第7回 植物の生育・水分状態の計測.
シラタマホシクサの地域文化の検証とフェノロジーの年変動
財市場               マクロ班 Congratulations! 財市場.
衛星生態学創生拠点 生態プロセス研究グループ 村岡裕由 (岐阜大学・流域圏科学研究センター).
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
現在の環境問題の特色 ● 環境問題の第一の波: 1960年代の公害 (水俣病、イタイイタイ病、四日市・川崎喘息など)
窒素が増えると樹木の 葉っぱはどうなるの?
植物と大気汚染 ー研究の概略ー 1)大気汚染のバイオモニタ  リングへの利用 2)大気汚染物質の分解除去.
共生第二課題における 陸域生態系炭素循環モデルの研究計画 名古屋大学大学院 環境学研究科地球環境科学専攻 市井 和仁
No.4 三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト
<JP3-079> 光環境の違いに対するエゾマツとトドマツの生理・形態・器官量配分反応
三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト Reseaerching Salix Subfragilis in Miharu dam
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
1000年 推薦図書: Ocean circulation The Open University Pergamon press 海と環境
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 井上峻介 橋田昌樹 阪部周二 レーザー物質科学分科
液中通電法を用いたAu, Pt, Pdナノ粒子の作成
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
ダスト-気候-海洋系のフィードバック 河宮未知生.
○加藤聡史、占部城太郎、 河田雅圭 (東北大院・生命科学)
La及びY添加した層状熱電変換酸化物Ca349の結晶構造と熱電特性 H.Nakatsugawa and G.Kametani
HMM音声合成における 変分ベイズ法に基づく線形回帰
ベイズ基準による 隠れセミマルコフモデルに基づく音声合成
Daniel Roelke, Sarah Augustine, and Yesim Buyukates
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
「カテゴリ変数2つの解析」 中澤 港 統計学第7回 「カテゴリ変数2つの解析」 中澤 港
海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター 河宮未知生 吉川知里 加藤知道
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第12回 次世代シーケンシング・RNA
Food web structure and biocontrol in a four-trophic level system across a landscape complexity gradient 著者 Vesna Gagic, Teja Tscharntke, Carsten F. Dormann,
要因Aの差,要因Bの差を見たい 2つの要因なので二元配置分散分析の適用 要因B 水準A 水準B 水準C 要因A 水準a
湖岸湿地における生物多様性と人間活動 東京大学保全生態学研究室 西廣淳 2011年10月12日
CO2 enrichment increases carbon
Water Quality Problems in Reservoirs and Rivers
CMIP3マルチ気候モデルにおける 夏季東アジアのトレンド
<PC48> エゾマツ・トドマツ稚樹群の動態に 環境条件が与える影響
エゾマツの定着に適した 倒木の条件の検討 ~4年間の生残動態による評価~
沿道植物中のEROD活性による 大気汚染のバイオモニタリング ー研究の概略ー.
Presentation transcript:

昼ゼミ20111125 Seeing the forest for the trees: long-term exposure to elevated CO2 increases some herbivore density 著者Stiling P., Moon D., Rossi A., Hungate B.A., Drake B. 掲載Global Change Biology15;1895-1902(2009)

木を見て森を見ること: 高CO2の長期暴露が いくつかの植食者密度を上昇させる

これまでの研究 大気CO2濃度の増加 植物の窒素濃度が低下、二次代謝物質が増加 (植食者にとっての栄養が低下し、防御能力が上昇)  (植食者にとっての栄養が低下し、防御能力が上昇)    植食者の生残、成長の低下

→単位体積当たりの林冠の植食者密度の増加 (単位面積当たりのリターの植食者「密度」の増加) この論文の注目点 大気CO2濃度の増加 植物の成長の増加(植食者にとっての餌の量の増加)  →単位体積当たりの林冠の植食者密度の増加    (単位面積当たりのリターの植食者「密度」の増加)     葉が増える分だけ植食者の数が増えるのでは? 密度の意味合いが体積と面積当たりで異なる

この論文の注目点 長期のCO2暴露実験 野外での実験 以上の条件で 葉の生産量と植食者密度は どのように変化するか

実験地 フロリダ州メリット島国立自然保護区 の特別研究区(NASAのケネディ宇宙センター内) 矮性ナラ、パルメットヤシの生態系 材料と方法 優占種:3種のナラ類 Quercus myrtifolia  77%                 Quercus geminata  17%           Quercus chapmanii  6% その他:27種(窒素固定を行うマメ科植物        Galactia elliottii が優占) 潜葉性昆虫(leafーminer)と 葉巻形成昆虫(leafーtier)が多い

実験地 1996年1月: 2エーカー(81a)のナラ林に火入れ 春の間にOTC(8角形、一辺1.4m、高さ2.5m) 16基設置   16基設置 高CO2区(大気+350ppm-1のCO2)8基 対照区(1996年に350ppm以下、2007年に380ppm以下)8基

測定項目 葉200枚当たりの潜葉性昆虫、葉巻昆虫密度 窒素含有率 ランダムに葉を選択し、潜葉痕、葉巻を数える Q. myrtifoliaとQ. geminataは1996~2006年測定 Q. chapmaniiは2001年から測定 葉巻昆虫の密度は全ての樹種で2001年から測定 窒素含有率 ランダムにサンプリング 測定は1996~2006年 (2005,2006年のQ. geminataとQ. chapmaniiのデータなし)

測定項目 リター中の潜葉性昆虫、葉巻形成昆虫密度 測定期間 リタートラップ: 潜葉性昆虫:1998~2006年 葉巻昆虫:2001~2006年 リタートラップ: 1基につき0.0381のトレー3つ計0.762m2 1998年1月~2003年8月:月1回回収、 2003年9月~2006年5月:3か月に1回回収 Q. geminataとQ. chapmaniiのリターの潜葉性昆虫のデータは統合  (2001年以前のサンプルを化学分析に使用済み)

統計 繰り返しのある分散分析 CO2処理:要因 年:時間間隔 リターのデータは対数変換

葉200枚当たりの潜葉性昆虫密度 結果

葉200枚当たりの葉巻形成昆虫の密度 CO2と時間の交互作用は潜葉、葉巻どちらでもみられなかった

葉の窒素含有率

0.1143m2のリター当たりの潜葉性昆虫密度 リター量 Q. myrtifoliaとQ. chapmaniiは増加 Q. geminataは減少 高CO2で成長低下? Q. myrtifoliaとQ. chapmaniiとの競争に負けた?

0.1143m2のリター当たりの潜葉性昆虫密度

0.1143m2のリター当たりの葉巻昆虫密度

考察 葉200枚当たりの植食者密度の減少について 先行研究と一致した結果 原因として考えられること 葉の窒素の希釈 二次代謝物質の増加 天敵による捕食率の上昇

植食者密度が低下しない場合 植物種の例 環境条件の例: 養分の利用可能性が高いと密度低下は起こらない 窒素固定植物:窒素の希釈が起こらない(Karowe 2007) C4植物(Sudderth et al. 2005) 環境条件の例:   養分の利用可能性が高いと密度低下は起こらない リン利用可能性(Goverde et al. 2004) 窒素利用可能性(Schädler et al. 2007) 窒素を含む防御物質を合成する植物では窒素が多くても密度低い

リター0.1143m2当たりの植食者密度について 地上部バイオマスの反応 Q. myrtifoliaとQ. chapmanii 2000年まで高CO2下で減少、2001年以降  (林冠閉鎖後は)増加 Q. geminata 高CO2区と対照区に有意差なし     地上部バイオマスの反応      (Seiler et al. 2009より)と一致 Q. myrtifoliaとQ. chapmaniiの  地上部バイオマスは高CO2により増加 Q. geminataでは有意な反応がみられず

生産量(虫にとっての餌の量)の増加により0.1143m2当たりのリターの植食者密度は増加 まとめ 高CO2下で葉200枚当たりの植食者密度は減少 しかし・・・ 生産量(虫にとっての餌の量)の増加により0.1143m2当たりのリターの植食者密度は増加 生産量の増加は他の実験系でも報告されており、  それらでも増加の可能性あり

まとめ リター当たりの植食者密度の変化は植物種に依存 高CO2環境下では   植食者とその天敵の群集は変化するだろう