クラウド・クライアントとモバイル さて、やっと今日の本題です。 先週は、斎藤さんからサーバーサイドの変遷についてお話しがありました。

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クラウド・クライアントとモバイル さて、やっと今日の本題です。 先週は、斎藤さんからサーバーサイドの変遷についてお話しがありました。 サーバーがクラウドへ向けて変化している間、クライアントサイドでもいろいろな変遷がありました。 それどころか、クライアント側の技術の変化が、今日のクラウドを産み出した、と見ることもできるのです。

ITプラットフォームの歴史/サーバーの視点から ~1964 汎用機 メインフレーム IBM System/360 PC 1980~ ミニコン オフコン エンジニアリング ワークステーション 汎用機 メインフレーム 次世代型 データセンター 2010~ PC+SMD (Smart Mobile Device) クラウド コンピューティング 汎用機 メインフレーム PCサーバー 業務別専用機 UNIXサーバー PC PCサーバー Intel アーキテクチャ 汎用機 メインフレーム 業務別専用機 DEC VAX11/780 IBM System/360 アーキテクチャ ダウンサイジング 業務別専用機 先週の斎藤さんのお話を少し思い出してみましょう。 サーバーサイドから見たITプラットフォームの歴史です。当初業務別専用機だったコンピュータが汎用機として集約され、ダウンサイジングによる分散システムへと移行した後、クラウドとして再度集中システムに移行しつつある、というのが先週のお話しでした。 一方でエンドユーザーが使うクライアントシステムもまた、サーバー環境の変化に合わせて変化してきています。 というよりも、サーバーとクライアントがお互いに影響を与えあいながら、全体のトレンドを産み出してきたと言えるでしょう。 業務別専用機 自由の獲得 TCO増大への対処 分散システム 集中システム 分散システム 集中システム

クライアント技術の歩み クライアントの機能 1990年 2000年 独自技術への警戒 クライアント配布の問題 Flashなどの プラグイン ファット クライアント HTML クライアント ダム端末 クライアント技術の変化を軸に時系列に見ていきましょう。 メインフレーム時代、最初はパンチカードや紙テープでプログラムやデータを入力していましたが、その後CRT(ブラウン管)を使ったビデオ端末から利用できるようになりました。しかし、この当時の端末はCRTにキーボードが付いただけの物で、ローカルに何かを処理する機構は無く、ただ単にキーボードからの入力をサーバーに送り、返ってきた文字列を画面に表示するだけの機能しか持っていませんでした。このため、「ダム端末」(馬鹿な端末)といった呼び方をされることもあります。 その後、パーソナルコンピュータ(PC)がビジネスに使われるようになり、急速に普及します。PCの特徴は、ローカルにデータ処理を行えたり、グラフィックス表示機能を持っていることです。このため、それまでサーバー側で行っていた処理をPC側で行う事によってサーバーの負荷を軽減し、グラフィックスを使って使いやすいユーザーインターフェースを実現することができたのです。これを「クライアント・サーバー」と呼び、企業に急速に普及しました。この頃のクライアントは多機能なことから「ファット(でぶの)クライアント」と呼ぶこともあります。 しかし、PCが普及して一人一台になってくると、台数が急速に増え、管理負荷が増大します。クライアントソフトのバグフィックスや機能強化の度にソフトウェアをPCに配布・インストールする必要があり、これは大変な作業になります。この負荷を軽減するために、クライアント管理やソフトウェアの自動配信などのシステムが開発されましたが、今度は他のソフトと干渉するなどの問題もでてきます。 この様な中、1995年にWindows95がリリースされると、全てのPCに標準でWebブラウザがバンドルされるようになりました。HTMLでUIを作成すれば、Webブラウザを使ってサーバーに接続するシステムを作ることができます。ブラウザは、OSのアップデートなどの折に自動的にアップデートされますから、企業が自らバージョンを管理する必要はありません。このためクライアント側の処理があまり必要無いものについて、ブラウザをクライアントにしたシステムが作られはじめます。Web用の技術を使ってシステムを構築することから、「Webシステム」と呼ばれることもあります。 しかし、このシステムにも問題はありました。Webブラウザはもともとインターネット上の情報を効率的に検索・表示するために開発されたものであり、静的なコンテンツを表示することを前提としています。アニメーションやビデオなどの利用を想定しておらず、そういった要素を使った動的なユーザーインターフェースを作るのには向いていません。このため、ファットクライアントよりも表現力に劣るUI(使いにくい)しか作成できず、エンドユーザーにはあまり評判が高くありませんでした。さらに、ブラウザの表現力を決定するHTMLの仕様は1999年を最後に更新されなくなります。HTMLの仕様を策定するW3Cが、HTML自体を拡張するのでは無く、必要な機能はプラグインなどで追加するという方針をとったためと言われています。 そこでブラウザの機能や表現力を高めるための様々なプラグインが開発されました。その中で、表現力と機能が高く、使いやすい開発ツールも揃っていたのが、Macromediaが開発したFlashでした。Flashを使うと、HTMLではできないアニメーションや高度なデバイス制御、ビデオ視聴などができるため、マルチメディア時代には無くてはならないプラグインとなったのです。Flash自身の機能もどんどん拡張され、使いやすいUIを作ることができるようになりました。 こうして、ブラウザ+Flashの組合せはアプリケーションのクライアントとしても広く使われるようになったのです。このようなプラグインを実装したクライアントをRich Internet Client、プラグインを使ってリッチなコンテンツを取り扱えるようになったアプリケーションをRich Internet Applicationと呼びます。 しかし、Flashを始めとするブラウザプラグインにはひとつの懸念がありました。それは、特定の事業者が仕様から価格までをコントロールするプロプライエタリな技術で、ソースコードや技術仕様が公開されていないことでした。Flashが今は無料だとしても、Adobeの胸先三寸で、何時有償化されるかわからないのです。実際、昔はFlashの互換クライアントは認められておらず、ベンダーが技術をコントロールしようとしていたことが伺えます。 そうなると、他のベンダーは安心してFlashに頼ることができません。Flashに代わるオープンな技術としてSVGがありましたが、SVGをサポートしていたAdobeがMacromediaを買収してしまい、SVGは盛り上がらず、さりとてFlashは嫌だ、という状況が続いていたのです。 プラットフォームを握り、競合をつぶしてしまえば、あとは有償化や技術の囲い込みで思い通りにビジネスを進めることができます。過去の例がそれを物語っています。 表現力の問題 メインフレーム クライアント/サーバー Webシステム RIA/クラウド 1990年 2000年

Web2.0 (2005年頃) Web2.0 = 「Web新時代」 Webの操作性/ユーザーエクスペリエンスを劇的に改善

Asynchronous JavaScript + XML = Ajax 非同期の JavaScript サーバーからダウンロードされ ブラウザ上で実行される スクリプト言語 eXtensible Markup Language ユーザー独自の拡張が可能なマークアップ言語 Flashなどのプラグインを使わず、 Web ブラウザ単独で、PCにインストールされた アプリケーション並みの操作性を実現 Web2.0の原動力となった技術のひとつが、Ajaxです。 Ajaxは、Asynchronous JavaScript + XMLを縮めたものです。2004年に提供が開始されたGoogle Mapsで使われた機能に対して2005年、命名されました。 JavaScriptはサーバーからダウンロードされブラウザ上で実行されるスクリプト言語で、元々Webブラウザに内蔵されていたものです。これを非同期に使うことによって、使い勝手を向上させます。 XMLはHTMLと同様のマークアップ言語で、様々な機能を必要に応じて拡張できるという特徴を持っています。 技術的な詳細は省きますが、要するに、これらの技術の組合せによって、Flashなどのプラグインを使わずにネイティブアプリケーション並の高度なUIを実現することができるのです。 ところで、よく間違われるのですが、プログラミング言語のJavaとJavaScriptは、全く違う物です。元々はNetScapeのエンジニアが開発し、Javaの知名度にあやかるために名前だけ似せたと言われています。 現在は国際規格となり、正式にはECMAScriptと呼ばれます。 *JavaとJavaScriptは違うものです 5 5

昔の地図サイト 説明だけではわかりにくいと思いますので、具体的な例をひとつ見ていただきましょう。 Web2.0以前の地図サイトです。当時の地図サイトを覚えている方はおわかりでしょうが、通信速度が遅いこともあって、今と比べると非常に使いにくいものでした。例えば、今九段下あたりが中心に表示されていて、もう少し北東の方を見たい、と言う場合には、見たい方向の矢印を押すと・・ いったん全画面を消して、その後ゆっくりと全画面を書き換える、ということになります。今では、こんな地図サイトはありませんよね?

Ajax を使った地図サイト そこへ表われたのがGoogle Mapsでした。Google Mapsでは、見たい方向にマウスを持って行き、 もちろん、当時でもFlashを使ったり、PC用の地図アプリを使えばこういうことはできたのですが、プラグイン無しのブラウザ単体で実現したことが凄かったのです。当時のWebデザイナやエンジニアは、ブラウザだけでここまでできるのか、と驚愕したわけです。 仕組みとしては、最初の地図を表示したあと、XMLとJavaScriptの組合せで非同期通信を行い、バックグラウンドで周りの地図を読み込んでしまいます。地図を表示したユーザーは、高い確率でその周辺を見ようとするだろうというのが理由です。 ユーザーが読込の指示をしなくてもブラウザが勝手に先行して読みこむのが「非同期」通信で、これによって、周辺の地図を見たくなったときに待ち時間無しに表示できるのです。 そして、マウスのドラッグを検知した場合、DHTMLを使って画面の一部分のみを書き換えて表示します。これで、待ち時間無しに直感的な操作が可能になるわけです。

Ajax の意義 標準のWeb ブラウザで独立アプリ並みの操作性を実現できる クライアントアプリやプラグイン無しで高度な対話型のシステムを構築可能 クラウド コンピューティング Webシステム/Webアプリ/WebサービスのUIを劇的に改善 ブラウザ単体で高度なUIを実現したAjaxですが、その最大の特徴は、新しい技術をなんら必要としなかった、というところにありました。 Ajaxを構成する技術であるJavaScript、DHTML、XMLは、1990年代にすでにブラウザに組込まれていたのです。しかし、これらの機能は有効に利用されずに放置されていました。JavaScriptに至っては、セキュリティ上のリスクがあるため、機能をオフにしておくことが推奨されていたほどです。 ですから、Ajaxは新規に開発されたものではなく、もともとあった機能を組み合わせて新しい使い方を「発見」したものである、ということができます。 つまり、サーバー側でAjaxを意識した開発を行う事によって、クライアント側に何ら手を加えること無く、この新しいユーザーエクスペリエンスを実現することができたのです。世界中のPCがAjaxレディな状態になっているということで、これは非常に大きなメリットです。 Ajaxの発見は、Webの世界を一変させました。それまで静的で動きに乏しかったWebサイトが、どんどん書き換えられ、高度なUIを備えていったのです。それがWeb2.0という大きな流れになったのでした。 標準のWeb ブラウザだけで独立アプリ並みの操作性を実現できるということは、クライアント側にファットクライアントやブラウザプラグインを用意しなくとも高度な対話型のシステムを構築可能だということです。それまでFlashの採用に躊躇していたベンダーも、安心して採用することができます。追加のコストもかかりません。良いことずくめです。 この後、WebシステムやWebアプリ・サービスがAjaxベースで開発されるようになり、それまでとは比べものにならない高度なUIを備えるようになりました。 そしてこれがきっかけとなって、クライアントはもうブラウザだけで良い、インターネット上に巨大なサーバーを置いて、ブラウザからサービスを利用すれば良いではないか、という考えが生まれたと考えられます。クラウドの誕生です。 Google Mapsが発表されたのが2004年、Ajaxが命名され、Web2.0がブレイクしたのが2005年でした。そして2006年、シュミットが初めて「クラウド」に言及したのです。この瞬間に、今のクラウドへのレールが敷かれたということができます。 そして、クラウド時代にはブラウザが非常に重要になります。これについてはまた後でお話しします。 クラウドのクライアントとしての Web ブラウザーの重要性が増大

クライアント技術の歩み Ajax ブラウザーベース クライアントの機能 1990年 2000年 標準技術による操作性・表現力の向上 独自技術への警戒 標準技術による操作性・表現力の向上 クライアント配布の問題 Flashなどの プラグイン ファット クライアント Ajax HTML クライアント ダム端末 この様に、Webブラウザに新しい可能性を与え、Webの世界を一変させたAjaxですが、実際には、現在のAjaxを使っても、Flashほどの表現力はまだありません。1999年に制定された古いHTML4.01の制限が足を引っ張っているのです。 現在その制限を取り除こうという作業が進んでいます。この後でお話しするHTML5になれば、Flashと肩を並べ、さらに高度になると言われています。 ブラウザーベース 表現力の問題 メインフレーム クライアント/サーバー Webシステム RIA/クラウド 1990年 2000年

AjaxベースのWebサービスを快適に利用できる 第二次ブラウザ戦争 Internet Explorer Mozilla Firefox Apple Safari Google Chrome Opera JavaScript実行速度の向上 先ほど出てきたように、Web2.0以降、ブラウザの重要性が急激に増しました。しかし、当時のブラウザはAjaxの要求に応えられる性能を持っていませんでした。 IE対NetScapeの第一次ブラウザ戦争がIE側の勝利に終ってから、Microsoftはブラウザへの情熱を失ってしまったように見えます。Ajaxが大きな話題となった2005年当時、WindowsのブラウザはIE6。IE6は2001年にXPと共に発表されたブラウザで、長い間メジャーバージョンアップされませんでした。JavaScriptの実行速度も非常に遅いまま放置されていたのです。バグもたくさんありました。 2002年にFirefoxがリリースされましたが、IEにとって代わる選択肢にはなりませんでした。 しかし、Ajaxが状況を変えました。AjaxではJavaScriptの実行速度が重要な意味を持ちます。これが遅いと、UIが気持ち良く使えないのです。いわゆる「サクサク感」が損なわれます。これをチャンスと捉えた様々なベンダーがブラウザの開発を加速し、第二次ブラウザ戦争が始まります。開発の主眼はJavaScriptの改良。これ以降、ブラウザの新バージョンが発表されるときには、「JavaScriptの実行速度が従来比xx%アップ!」というのが主要な訴求点となります。 MicrosoftがあわててIE7をリリースしたのは2006年ですが、評判は決して良くありませんでした。(IE7+最悪で検索してみて下さい) もたつくMicrosoftを尻目に、AppleはWindows用のSafariを2007年にリリースしています。そしてGoogleはChromeを2008年に発表しました。IEのシェアはじわじわと後退していきます。 この後でお話ししますが、この時点で、ベンダー各社はクラウド時代にはOSではなくブラウザがアプリケーションプラットフォームの座に付くであろうことを見通してブラウザの強化に走ったのでしょう。 AjaxベースのWebサービスを快適に利用できる 10 10

IE9のJavaScriptはIE6と比較して70倍速い Microsoftは各社に遅れながらも、2011年のIE9でなんとか体制を立て直しますが、この間に失ったシェアは今でも戻っていません。 (IE6どれだけ遅かったんだよ、って話ですよね) http://news.mynavi.jp/articles/2010/09/21/ie9/001.html

クラウド時代の 新しいクライアントプラットフォーム

Wintelの終焉と新しいアプリケーションレイヤー Wintelがデファクトだった時代はWintel向けにのみアプリを開発すれば良かった→Wintelの終焉により環境が変わった OS毎に専用のプログラム (ネイティブアプリ) を用意する必要がある Windows Linux MacOS PC/AT Mac 携帯 どのOS/プラットフォームでも 同じプログラムを動かすことができる。 Flash/AIR Rich Internet Application Webアプリ/Webサービス Ajax HTML5/CSS/Javascript Silverlight アプリケーションソフトが動くための基盤=プラットフォームを形作っていたのは、これまではハードウェアとオペレーティングシステムの組合せでした。最も成功した組合せが、.IntelとWindows。Wintelと呼ばれるプラットフォームです。 アプリケーションソフトは、ハードウェアとOSの組合せが異なると動作しません。例えば同じPC/AT互換ハードウェアを使っていても、WindowsとLinuxではアプリケーションソフトウェアの互換性がありません。IntelのCPUを使っているMacintoshでも駄目です。 アプリケーションの制作者から見ると、プラットフォームはひとつが良いのです。ハードウェアとOSの組合せの種類が多いと、各々のプラットフォーム用にアプリケーションを用意しなければならず、テストやバグフィックスの手間も増えるからです。 Wintelが市場の90%を握っている限り、アプリケーションベンダーはWintel向けにのみソフトウェアを共有すれば、市場の90%を相手にできますから、効率が良いのです。このために、Wintelが長い間、標準プラットフォームとしての役割を担い、IntelとMicrosoftは利益を享受してきたのです。 しかし、ハードとOSの組み合わせに影響されないアプリケーションの実行環境があれば、Wintelに縛られる必要は無くなります。Wintel以外の事業者にとってみれば、Wintelに代わるオープンなプラットフォームのほうが望ましいのです。 ITベンダーの基本的な考え方は、自社技術のプラットフォーム化が一番望ましい(=利益を独占できる)というものですが、それがかなわないのであれば、他社にその地位をとられるよりは、いっそオープンな技術がプラットフォームになることが望ましいのです。 Wintelの独占が崩れ、多様なデバイスが登場する時代には、OSを抽象化する新しいレイヤーが必要になります。その新しいレイヤー上で動くアプリケーションやサービスは、ハードウェアやOSに関係なく、あらゆるデバイスで動作するのです。 その新しいレイヤーとして期待されたのが、Rich Internet Clientでした。このレイヤーには様々な技術が名乗りを上げましたが、先にもお話ししたように、Flashが先頭を走り、そのままいけばFlashで決まるだろうと考えられてきたのです。しかし、そこにAjaxという「オープンな」選択肢が生まれ、流れがそちらに変わっていきます。 このレイヤーに最後に参入したのがMicrosoftです。2008年、Flash対抗技術であるSilverLightをリリースしました。 Rich Internet Client Windows Linux Mac OS Android/iOS/WindowsPhone PC/AT Mac スマホ/タブレット TV プラットフォームに依存しないアプリケーション実行環境

「iOSはFlashをサポートしない」 新しいアプリケーションプラットフォームはFlashで決まりと誰もが思いました。オープンではないが、他に選択肢がないのです。Ajaxはまだまだ実績が不足していました。 しかし、思わぬ障害が表われたのです。Appleです。 2007年に発表されたiPhoneは、瞬く間に世界中を席巻しました。従来のスマホが「高機能な携帯電話」であったのに対して、iPhoneの発想は「掌に乗るパソコン」でした。インターネットメール、Ajaxをサポートするフル機能のブラウザなど、あらゆるものが揃っていましたが、ただひとつサポートされなかったのが、Flashだったのです。 「なぜiPhoneでFlashをサポートしないのか?」という声が大きくなる中、Appleは公式見解を発表しました。Flashはモバイルデバイスには負荷が大きすぎる、信頼性が低い、などが理由として挙げられています。 しかし、講義の冒頭でも言ったように公式見解というのは頭から信じるべき物ではありません。他にもいろいろな推測が流れています。その中には、単に「JobsはAdobeと仲が悪かった」というのもあります。そんな理由で採用が左右されるのか、とも思いますが、他ならぬJobsのこと、考えられないことでは無いかもしれません。関連する情報を補足資料に入れてありますので、興味のある方は見てみて下さい。 http://journal.mycom.co.jp/news/2010/04/30/003/index.html

Adobeの発表(2011.11) この様な状況下、俄然存在感を増したのがAjaxでした。他の選択肢がSilverlightくらいしかなかった、という事情もあります。Silverlightも悪い技術ではありませんでしたが、なによりもMicrosoftの紐付きだったと言うことが良くありませんでした。それに、なんと言っても参入が遅すぎました。 一時はApple相手に訴訟をちらつかせたAdobeですが、最終的にはあきらめました。2011年、モバイルデバイス向けのFlashの開発を停止すると発表したのです。 これにより、iOSデバイスだけでなく、Android向けにもFlashは供給されないことになりました。また、同じ時期にMicrosoftも、「Silverlightの位置づけを変える」という発表を行っています。 但し、PC向けのFlashは開発が続いており、相変わらずPCの98%にインストールされています。Macintoshでももちろん動作します。Jobs亡き後のAppleが方針を転換するなど、状況によっては息を吹き返す可能性もまだあるでしょう。 http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/20111117_adobe_flash.html

HTML5

HTMLの歴史と現状 HTML 1.0 (1993年) HTML は元々インターネット上の情報をレイアウトして見つけやすいようにするために考案されたもので、静的なコンテンツを前提にしている。 HTML 2.0 (1995年) HTML 3.2 (1997年) HTML は1999年の4.01以降アップデートされておらず、マルチメディアやWebアプリケーションへの対応が難しい状態が続いてきた。 HTML 4.0 (1997年) HTML 4.01 (1999年) このためプラグインを使ってブラウザの機能を拡張する方法がとられ、Flashなどが普及した。 MicrosoftはIE5/6でHTMLに独自の拡張を行い、ブラウザの機能を拡張したが、インターネットコミュニティからは反発を受けた。 次世代のクライアントプラットフォームの座をほぼ手中にしたAjaxですが、今のままではできないことも沢山あります。機能的には現時点ではFlashに及びません。 Ajaxを今以上に強化するためには、ベースとなるHTMLの拡張が必要なのです。 そのHTMLですが、現在の最新バージョンは4.01。1999年に勧告された物です。この変化の激しいIT業界で、なんと15年近くバージョンアップされていません。 そもそもWebブラウザは、インターネット上の情報を探しやすくするために開発された物で、HTMLは基本的には文字情報や静止画を取り扱うための言語でした。様々な拡張が行われましたが、基本的に静的なコンテンツを扱うという構造はあまり変わっていません。1999年当時は回線も遅く、動画やアニメーションなどを扱う必要もあまり無かったのです。 HTMLが進化しなかった分、Flashなどのプラグインによって機能を拡張するアプローチがとられました。 一方でMicrosoftとNetScapeは、ブラウザ戦争の過程で独自の機能拡張を繰り返し、ブラウザ間の互換性に悪い影響を与えました。 様々な機能拡張に加えて、HTMLを独自に拡張するというアプローチもとりましたが、これは本当はルール違反だったのです。 インターネットやHTMLの仕様は、インターネットコミュニティの場で議論された後にW3Cという公的な機関が勧告を行ってはじめて正式な規格になるというのが決まりであり、一企業が勝手に機能を追加してはいけないのです。両社はそれを行わず、インターネットコミュニティから批判を浴びました。 (但し、このような行動にも理由はあります。標準化の作業は時間がかかり、スピーディな機能拡張ができないのです。この後お話ししますが、HTML5は標準化作業に手間取っています。また、NetScapeも様々な機能拡張を行いましたが、それはHTMLに関わる部分では無く、UIやスクリプトなどの部分でした。) 当時はIEのシェアが高かった(というかほぼ独占状態)ため、結果としてMicrosoftの独自仕様が標準化してしまい、それに合わせて開発されたWebサイトでは、IE以外のブラウザでは表示が乱れるなどの問題が起きました。 この様な中、HTMLが拡張されない状況を不満としたApple、Mozilla、OperaがWHAT WGを立ち上げ、HTMLを独自に拡張し始めたのです。2004年のことです。2004年と言えば、先ほどのAjaxが生まれた年です。2004-5年というのは非常に重要な転換期であったことがわかります。 このWHAT WGにはその後Googleなども参加して作業を加速させます。狙いは、HTMLとJavaScriptを拡張してFlashを凌ぐ機能を実装することでした。 2007年、WHAT WGは、それまでの開発成果をW3Cに譲渡してこれをHTML5として勧告するよう交渉します。これにより、止まっていたHTMLの拡張が進み始めたのです。 民間ベンダーが共同でHTMLの拡張を行い、 W3CにHTML5として採用するよう働きかけた。 HTML 5 (2014年?) 15年ぶりの新バージョン

HTML5 (+Ajax)でできるようになること ブラウザ間の互換性・相互運用性の確保 Webアプリケーションの開発を容易にするための新機能や新しい要素を追加 (クラウド対応) フォームの拡張 ドラッグ&ドロップ クライアントサイドストレージ オフラインキャッシュ (オフラインWebアプリケーション) ベクターグラフィックス 3次元グラフィックス HTML5(WHAT WG)が目指したのは、主に2つあります。ひとつは、ブラウザ間の互換性を確保すること。当時、同じサイトでもIEとFirefoxでは表示が異なったり、レイアウトが乱れたりすることがよくありました。「このサイトはIEで見て下さい」のような注意書きがサイトに掲載されたりもしました。 これは、各ブラウザの独自仕様の問題もありますが、そもそものHTML4.01の仕様に厳密さが欠けていたためでもあります。新しいHTMLでは、ブラウザによる解釈の違いを極力減らすよう、仕様が作られています。 もう一つは、先ほどもお話ししたように、Webアプリ・Webサービスを快適に利用できるよう新しい機能や要素を追加する、ということです。これには、企業用のアプリケーションで重要になる入力フォームの利便性を上げるための拡張、ブラウザ内でのドラッグ&ドロップを可能にする拡張、ネットワークに接続されていなくてもWebアプリを使うことができるよう、データをキャッシュしたり、クライアントサイドに記憶領域を持ったりできるような拡張が含まれています。 また、Flashに代わるベクターグラフィックスの技術、3次元グラフィックス、オーディオ・ビデオの取扱いなどができるようになります。モバイルデバイスで必須の位置情報をHTML内で取り扱えるようにもなります。 全体として、クラウド環境においてWebアプリ・Webサービスをもっと快適に、もっと便利に、誰もが、どこからでも、どのようなデバイスからでも利用できるように、という狙いが貫かれています。 オーディオ・ビデオ 位置情報 これまでプラグインなどを必要としていた処理がHTML5+Ajaxで実現できる

HTML5 + AjaxでFlash並のUIを構築可能 クライアントの機能 Flashなどの プラグイン ファット クライアント Ajax HTML クライアント ダム端末 HTML5によって、Flashを越える環境をブラウザ単体で実現できます。 HTML5と言ったときに、HTMLの仕様だけを指す場合もありますが、HTML5とCSS3、新しいJavaScriptなどをひっくるめた新しい環境=HTML5という意味で使う場合も多いようです。 メインフレーム クライアント/サーバー Webシステム RIA/クラウド 1990年 2000年

HTML5の理想と現状 (2012-13年) ワンソース・ マルチデバイス 理想 標準化作業の遅れ ブラウザ間の互換性・相互運用性の確保 ワンソース・ マルチデバイス Webアプリケーションの開発を容易にするための新機能や新しい要素を追加 現状 標準化作業の遅れ 現時点ではネイティブアプリの方が操作性・パフォーマンス共に良い ↓ Appleなどはネイティブへシフト サポート企業の足並みの乱れ パフォーマンス問題 さて、次世代クライアントプラットフォームの本命になるかと思われたHTML5ですが、現実にはいろいろな問題があります。 既にお話ししたように、ひとつのWebサービスにあらゆるデバイスからアクセスできる、ワンソース・マルチデバイスがHTML5の狙いです。2007年にWHAT WGからW3Cに標準化がゆだねられた時点では、2008年に草案を発表、2010年頃に勧告とされていましたが、作業が遅れに遅れ、現在でもまだ正式勧告が出されていません。 W3Cのマイルストーンは、まず草案、次に最終草案、その次が勧告候補、そして勧告案が決定され、その後ようやくW3C勧告となるのです。2014年2月に勧告候補が2度目の更新を受け、現在勧告案へ向けて作業が進められています。現在の予定では、最終勧告は2014年9月頃になる予定ですが、予断を許しません。 勧告が遅れている原因は様々ですが、ひとつには、様々な企業の思惑が入り乱れていることが挙げられるでしょう。その意味では、標準仕様というものは時間がかかるのです。1社でとっとと決めてしまえれば、そのほうが遙かに楽です。 この様な中、ブラウザベンダーはどんどんHTML5対応を進めています。もともとベンダー側が開発していた仕様ですから、すでにコードはできているわけです。標準仕様が決まらないうちに各社がHTML5対応を謳い始めたために、様々な混乱が起こっています。互換性の向上を目指したHTML5が、逆に互換性の欠如を引き起こしているのです。さらに、標準化作業の遅れを嫌気して、WHAT WGはW3Cと距離を置き、自分たちだけでどんどん開発を進めてしまおうという動きも見せています。 他の問題点としては、HTML5がまだ成熟した技術では無い(というか、そもそも決定されていないのですが)ために、パフォーマンスが出ないケースがまだ多いと言うことがあげられます。Facebookは「これからはHTML5の時代だ」として、2012年にスマホ用クライアントソフトをHTML5化しましたが、「遅くなった」などの批判を受け、ネイティブで書き直しました。ネイティブというのは、特定のデバイスに依存した環境で作成されるソフトで、パフォーマンスを上げやすく、UIやUXの作成も柔軟に行えますが、デバイス毎にソフトを用意しなければなりません。しかし、現時点では、HTML5よりもネイティブのほうが顧客満足度は高いのです。 こういった問題から、HTML5は使い物にならない、あるいは、まだ時期尚早なのではないか、という議論が起きています。 iPhone発表当時はFlashを拒否し、HTML5を推進していたAppleですが、やはりHTML5の制限の多さから、ネイティブアプリへと舵を切り、App Storeを作りました。この戦略は大成功を収め、App Storeは大きな収益を産み出しています。また、iOSデバイスの大成功により、iOSをモバイルデバイスの標準プラットフォーム化できる可能性が生まれました。Wintelの大成功に見られるように、プラットフォームを握ることは長期間の安定的な成功の条件です。Appleはネイティブアプリにシフトすることによって、iOSのプラットフォーム化を図っている(=デバイスによる顧客の囲い込みを狙っている)と見ることができます。 このように推進する企業間でも温度差が生まれています。 また、モバイルブラウザはほぼHTML5対応ができていますが、XP問題に象徴されるように、PC側のブラウジング環境はまだまだ旧世代のものが多く、HTML5対応ができていないことも問題のひとつです。 ただし、このような問題は過渡期のものであり、長期的にみれば、やはりHTML5に移行していくだろう、という見方がまだまだ多いです。システム提案の折に、お客様の環境を勘案しながら、最適な提案を行えるようにすべきでしょう。 互換性の欠如 PCブラウザの世代交代の遅れ

Google が狙うもの 2008年、Google Chrome を発表 2009年、Chrome OSを発表 クライアントを標準化し 「新しいコンピューティング・サービスは、どこかの雲の中にあるサーバーから始まる。PC、Mac、携帯電話など、どのようなデバイスからでも適切なアクセス手段があれば利用できる。」  Google CEO エリック・シュミット 2006年8月のスピーチ 適切なアクセス手段  Web ブラウザー  2008年、Google Chrome を発表  2009年、Chrome OSを発表 無 料 マルチプラットフォーム対応 最速の JavaScript 実行速度 このような中、一貫してHTML5を推進しようとしているのが、Googleです。クラウドの名付け親であり、Webブラウザを標準のアクセス手段と位置づけたGoogleは、ぶれることなく、HTML5を推進する立場に立ち続けています。 これは、今日の最初にお話しした、ビジネスモデルに寄るところが大きいでしょう。自社技術のプラットフォーム化を目ざすMicrosoftやAppleと違い、Googleはプラットフォームなど欲しくないのです。Webにアクセスする人が増加し、広告費が入ってくれば良いのです。そのためには、つまらないごたごたでHTML5の浸透が遅れる方が困るのです。早く全てのデバイスがHTML5に移行し、Webサービスを利用するようになれば、Googleの収益に直結します。 Googleはこのためにこそ、自社ブラウザであるChromeを開発し続けているということができます。HTML5の潜在能力を引き出せるブラウザを一日も早く完成させ、ユーザーに届けることが、Googleのビジネスモデルに合致するからです。 そのGoogleが2009年に発表したChromeOSが、今注目を集めています。このOSについては、この後でご説明します。 クライアントを標準化し インターネットの利用を加速させる 広告収入 21 21

ブラウザの系譜 1990年 2000年 Tizen Blackberry Palm Adobe AIR Chrome Android Firefox Gecko Trident NetScape Internet Explorer Safari ところで、主要なブラウザーには系統があるのをご存じでしょうか?ここで、ブラウザの心臓部ともいえるエンジンについて見ていきます。 ブラウザエンジンとは、HTMLを読み込んで分法を解釈し、画面上にレイアウトするブラウザの心臓部です。実はブラウザによってこの部分が違うため、レイアウトが一部崩れたり、見た目が変わったりするのです。 現代のWebブラウザの祖先と言えるのがNCSA Mosaicです。米国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)が1993年にリリースしました。 このMosaicから派生したのが、NetScapeとInternet Explorerです。いわば兄弟のようなものです。IEは95年にリリースされたWindows95にバンドルされ、インターネット時代を牽引しました。その後IEのエンジンは、IE4で自社開発のTridentに置き換わりました。 NetScapeの開発には、Mosaicの開発者が参画しており、Mosaicの直系と言えます。1994年にNetScape Navigatorがリリースされ、Windwos95がリリースされるまでは圧倒的なシェアを誇っていました。その後、NetScapeとIEの熾烈な闘いが始まりましたが、Windows95の普及と共に有料のNetScapeは旗色が悪くなり、2000年までにはWindowsの圧倒的なシェアと共に、ブラウザ戦争もIEの圧勝で幕を閉じます。 この間に行われたIEとNetScapeの機能強化競争が、独自仕様の横行やブラウザ間の互換性を損なった原因とも言われています。 NetScapeは1998年にコースを公開しましたがシェアの低下は止まらず、2002年に開発を停止しました。一方で公開されたソースコードをベースにしてMozilla Firefoxの開発が行われており、現在に至っています。FirefoxのエンジンはNetScapeが開発したGeckoです。 このように、同じ祖先から出発した2大ブラウザは様々な経緯を経てまったく違うエンジンをベースとするものになっています。このほかにも様々なブラウザがありますが、独自のエンジンを持つもの、IEのエンジンを流用しているものなど様々です。 そこに、第3の勢力が登場します。オープンソースのブラウザエンジンおよびJavaScriptエンジンであるKHTMLとKJSをベースにAppleが開発したWebkitです。ソースも公開されています。 Webkitは、Macintoshの標準ブラウザであるSafariのエンジンとなっているほか、iPhone/iPadのSafari にも使われています。Webkitの特徴は、オープンであることに加え、JavaScriptの実行速度が速く、Ajaxを高速に実行できること、HTML5にいち早く対応していること、モバイルにも対応していることなどです。(AppleはWHAT WGの初期メンバーです) このため、様々な企業がWebkitをベースにして自社でバイス用のブラウザを開発しています。GoogleのChromeも、Webkitベースです。(Googleは2013年、Webkitをフォークして新しいエンジンを開発すると表明しました)NokiaもWebkitの開発に参画していましたが、Microsoftとの提携を機にIEのサポートに転換しました。 このWebkitをサポートすることのメリットは、簡単に高速なWebブラウザを開発できることと、他との互換性が保たれることです。ごらんのように、現在、モバイルデバイス用のブラウザは、ほぼWebkitベースとなっており、コンテンツの互換性を考えると、これからもWebkitが主流になるのではないかと考えられます。 Webkit (Apple) KHTML/KJS Mosaic 1990年 2000年

BlinkがWebkitからフォーク 1990年 2000年 Tizen Blackberry Palm Adobe AIR Chrome Android Firefox Gecko Trident NetScape Internet Explorer Safari ところがGoogleは2013年、Webkitをフォークし、Blinkという独自のエンジンに移行しました。(フォークというのは、ソースコードを分岐させて、別の開発プロジェクトを立ち上げることです) 技術的な制限事項が理由とされていますが、HTML5への熱意を失ったかに見えるAppleから離れて、Googleが独自の道を選択したということかもしれません。 Webkit (Apple) Blink (Google) KHTML/KJS Mosaic 1990年 2000年

ChromeOS

ChromeOS=立ち上げるといきなりブラウザ ログイン画面 ログイン後 ChromeOSは、ブラウザに必要最小限のOS機能を付けて一体化した「ブラウザだけが動くOS」です。 デバイスを立ち上げてログインすると、いきなりブラウザが立ち上がります。ブラウザ以外のアプリはインストールされていませんし、インストールすることもできません。全ての操作はブラウザ上で行います。 ブラウザ「しか」動かない

汎用OSとChromeOS 汎用OS (Androidなど) ChromeOS Webサービス Webサービス Intel ARM 汎用OS ウィンドウシステム OSカーネル ブラウザ 他のアプリ ブラウザ(Chrome) ウィンドウシステム Intel ARM Linuxカーネル 汎用OSは、多様なハードウェア・ソフトウェアをサポートし、動作を保証しなければならず、開発・メンテナンスに多大なコストがかかる サポートハードやソフトを制限し、管理を容易に ChromeOSのようなOSの利点は、一般的なOSに比べ、構造が簡単で開発コストが安くあげられることにあります。 AndroidやWindows、iOSのような汎用のOSは、様々なアプリケーションやデバイスをサポートする必要があり、そのためにAPIの整備や互換性のチェック、デバイスドライバの用意など、OS本体の開発以外に様々なタスクが必要になります。 しかし、ChromeOSでは、アプリケーションとしてサポートするのはブラウザのみ、他のアプリのサポートは想定していません。デバイスも、非常に限られたデバイスしか許さないため、コストを安くあげられるのです。アプリが無ければセキュリティ対策上も有利です。 そして、使うのはHTML5ベースのWebサービスです。Webブラウジング、メール、オフィス互換ソフトなど、一般的なオフィスワーカーであれば十分な機能が現在でも使えるわけです。むしろ、おかしなソフトをインストールできなかったり、管理上も好都合な点が多いのです。 さらに、データは基本的にクラウド側に置くため、シンクライアント的な使い方が可能になります。 ブラウザしか動かないため、セキュリティ上有利 アプリはWebサービスとしてブラウザ上で利用 汎用OS (Androidなど) ChromeOS

Chromebookが米法人市場で急成長 UIの改善 Webサービスの充実 (Google Apps, Office365, DaaS) ChromeOSを搭載した小型ラップトップがChromebookです。これまではUIがあまり良くなかったり、利用できるWebサービスが限られていたりしてあまり売れていませんでしたが、これらが改善された結果、昨年くらいから米国でChromebookが売れ始めました。やはりWebサービスの充実が大きいものと考えられます。MicrosoftのOffice365がサポートされているのも大きな魅力でしょう。 低価格 ($200-)

ChromeOSとFirefoxOS ChromeOS FirefoxOS Webサービス Webサービス ブラウザ(Chrome) ウィンドウシステム Intel ARM Linuxカーネル ブラウザ(Firefox) ウィンドウシステム Intel ARM Androidカーネル Firefoxを開発しているMozilla Foundationは、2014年1月、FirefoxOSを発表しました。$25の低価格スマホを実現できるとしています。 ご覧のように、構造はChromeOSとほとんど同じです。スマホ向けの機能をあらかじめ作り込んでおくことで、OS部分の改修が必要無く、低コストでスマホを開発できると言うことです。ハードウェアのリファレンスデザインと組み合わせることで、$25を実現できるとしています。 しかし、この価格では、OS部分のロイヤリティは多分ゼロだと思われます。Googleが無償でOSを提供する理由はこれまで見てきましたが、Mozillaが無償でOSを提供するのはなぜでしょうか? この答えについては、オープンソースの講義の時に考えます。皆さんも考えてみて下さい。 Netbook, ThinClient スマホ向け Mozillaの狙いは?

モバイルシフト・モバイルファースト

モバイルデバイスからの利用を前提としたサービス設計 (UI、UX、ビジネスプロセス) モバイルシフト・モバイルファースト PCでできること モバイルでできること モバイル (Tablet/スマホ) PC PCでなければできないことが縮小 モバイルでなければできないことが増加 クラウドの進展によって、様々なサービスがクラウド化され、PC以外の様々なデバイスからアクセス可能になると、PCでなければできないことが減ってきます。 逆に、可搬性にすぐれ、常時ネットに接続され、起動も瞬時に行えるモバイルデバイスのほうが圧倒的に便利になってきました。 さらに、移動中にWebを見たり、ニュースをチェックしたり、出先で写真を撮ってSNSに書き込んだりできるモバイルデバイスのほうが活用しやすくなります。位置情報などは、モバイルで無ければ役に立ちません。 モバイルで無ければできないことが急速に増えているのです。もちろん、PCでなければできないこともまだまだありますし、PCが無くなることは無いでしょう。しかし、モバイルデバイスはこれまでのPCユーザー以外のユーザーに浸透しており、PCユーザーが占める全体的な割合は減り続けています。これがモバイルシフトです。 そうなると、Web上の様々なサービスは、モバイルを前提とした開発にならざるを得ません。最初から画面の大きさや入力デバイスなど、制約条件の多いモバイルデバイス向けにUI、UX、ビジネスプロセスをデザインしておけば、PCへの展開もしやすいのです。これまではPCサイトを作ってからモバイルデバイス向けに変換していたケースも多かったのですが、順番が逆転したわけです。これがモバイルファーストです。今後もこの方向性は続くでしょう。 位置情報 いつでも どこでも モバイルデバイスからの利用を前提としたサービス設計 (UI、UX、ビジネスプロセス) モバイルファースト モバイルシフト

まとめ

クラウドの起源 2000年 2010年 2003 Android社設立 2008.10 Android端末 販売開始 2005 Googleが Android社を買収 2007.11 Android発表 2006 「クラウド」命名 2004 Google Maps サービス開始 2008.7 App Store開始 2005 iPhone開発開始 2007.1 iPhone発表 このように見てきますと、今全盛を迎えつつあるクラウドコンピューティングは、2004-5年頃を中心とした前後数年間に起きた様々な動きが合流して大きな流れを作っていったことがわかります。 AppleがiPhoneの開発を開始したのが2005年頃とされていますが、GoogleがAndroid社を買収したのも同じ頃です。この頃、シュミットはAppleの社外取締役も務めており、その事実がGoogleの戦略に影響したのかどうか、興味深いところです。Jobsはシュミットを裏切り者扱いし、Appleの社外取締役をクビにしました。 Android社が設立されたのは2003年ですが、この当時、Linuxを携帯電話に採用する動きが加速しており、docomoも2004年にLinuxベースのFOMAを出荷しています。 2004 WHATWG発足 2007 WHATWGからHTML5へ 2000年 2010年

補足資料

既存技術の「組み合わせ」によってまったく新しい 要素技術は新しいものではない JavaScript (ジャバ スクリプト) 1996年リリースのIE3ですでにサポートされている セキュリティリスクのため、機能をオフにしておくことが推奨されていた DHTML (ダイナミック HTML) 1997年リリースのIE4からサポート HTML文書内にスクリプトを埋め込み、動的なページを作成 XML (eXtensible Markup Language) 1998年W3C勧告 1999年リリースのIE5からサポートされている 既存技術の「組み合わせ」によってまったく新しい ユーザーエクスペリエンスを実現した

Adobe Flash 1996年 2000年 2005年 2007年 2008年 ベクターグラフィックスベースのブラウザプラグイン 米FutureWave SoftwareがFlash1を開発 米MacromediaがFutureWaveを買収 2000年 ActionScriptをサポート 2005年 米AdobeがMacromediaを買収 2007年 Adobe AIR(ブラウザ外でFlashアプリを実行する環境)を発表 2008年 Flash技術をオープン化(OpenScreen Project) ベクターグラフィックスベースのブラウザプラグイン アニメーションやビデオ・オーディオ等、リッチなコンテンツを取り扱い可能 独自のスクリプト言語(ActionScript)により高度なUIを構築可能 PCの98%にインストール済み 開発者の裾野が広い(主にデザイナー) Rich Internet Clientの大本命

Silverlight Microsoftが2008年に発表したブラウザプラグイン Flash対抗のベクターグラフィックス技術 携帯端末、デジタルTVなどにも対応 IEとの組合せで次世代Webプラットフォームを構成

Jobsが社内ミーティングでAdobeやGoogleをこき下ろした、という記事がこれです。Jobsの公式評伝の中にも、JobsがAdobeに対して良い感情を持っていなかったことが書いてあります。 http://jp.techcrunch.com/2010/02/01/20100131jobs-calls-adobe-lazy-calls-google-on-the-their-bullshit/

浮上した Ajax プラグイン無しで高度なUIを実現 クライアントの展開が容易 プラットフォーム非依存 プロプライエタリな技術に頼らなくて済む オープンスタンダードに準拠 ベンダーロックインからの解放 プラグインのダウンロード・インストールが不要 動作の安定性が向上 セキュリティ上も安心 クライアントの展開が容易 クライアントソフトの配布が不要 ブラウザのバージョンアップすら不要 プラットフォーム非依存 Windows PCだけではなく、様々な機器・デバイスから利用可能

Microsoftの路線転換 http://www.zdnet.com/blog/microsoft/microsoft-our-strategy-with-silverlight-has-shifted/7834 http://www.zdnet.com/blog/microsoft/will-there-be-a-silverlight-6-and-does-it-matter/11180

HTML5 2004年、HTMLが拡張されない状況を不満としたApple、Mozilla、OperaがWHAT WGを立ち上げ、HTMLを独自に拡張し始めた その後、ブラウザの互換性の欠如、HTMLの表現力の限界を感じていたGoogle等が参加 2007年、開発成果をW3CにHTML5として勧告するよう要請 HTML5にはACCESS、AOL、Apple、Google、IBM、Microsoft、Mozilla Foundation、Nokia、Operaなどが参加 2008年に公開草案、2009年に最終草案、2010年正式勧告の予定だった 実際には、2011年5月25日ラストコール(最終草案)が公開 2014年に正式勧告の予定 HTML5というとき、JavaScriptとCSSの拡張を含む場合もある

HTML5対応が遅れたMicrosoft Internet Explorer MS以外の各社 モバイル・ファースト IE6には独自仕様が多く、JavaScriptのパフォーマンスも低かった Azure発表当初はIEとSilverlightとの組み合わせでRICを構成する構想だった IE9 (2011年) でHTML5を一部サポート MS以外の各社 JavaScript処理速度を高速化 正式な仕様確定前に様々な機能をサポート 各社の実装に違いがあり、完全な互換性がとれない状況 モバイルブラウザのエンジンはWebkitに集約 モバイル・ファースト PCブラウザはまだHTML5率が低い 新しいアプリ・サービスはまずモバイルをターゲットに開発されるようになってきている HTML5対応 Webkit Chrome Safari Other Smart Phones Gecko FireFox Trident IE11 IE10 IE9

ブラウザの進化を阻んだ? IE6 http://dailynewsagency.com/2011/03/05/ie6-countdown/

2012年、ChromeのシェアがIEを逆転 (Desktop) http://gs.statcounter.com/

HTML5は時期尚早?

アプリビジネスをに舵を切り直したApple http://jp.techcrunch.com/archives/20111007mobile-app-downloads-to-reach-98-billion-by-2015/

HTML5開発体制が「分裂」? http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120807/232711/

GoogleがWebkitをフォーク

BlinkがWebkitからフォーク 1990年 2000年 Tizen Blackberry Palm Adobe AIR Chrome Android Firefox Gecko Trident NetScape Internet Explorer Safari Webkit (Apple) Blink (Google) KHTML/KJS Mosaic 1990年 2000年

Webアプリケーションを効率的かつ安価に実行するための環境 ChromeOSとは 汎用OSの上にブラウザを実装するのでは無く、 ブラウザにOS機能を内蔵させる =ブラウザしか  動かないOS 「多くの方がコンピューターを起動させブラウザを立ち上げるのを待たずに、すぐにメールを見たいと思っていて、コンピューターがいつも最初に買ったときと同じ速さで動いてくれればいいと思っています。どこにいても自分のデータを入手できて、コンピューターを失くしたりファイルのバックアップを忘れる心配から解放されたいと願っていて、ハードウェアを新しくするたびに何時間もかけてコンピューターの環境設定をしたり、ソフトウェアの更新を常に気にしたりしたくないと思っています。そして、ユーザーの満足度が高まれば今後もっと多くの時間をインターネットに割いてくれるようになると考えると、ユーザーのよりよいコンピューティング・エクスペリエンスは Google のためでもあるのです。」(Google発表資料より) スピード ユーザーが数秒でコンピューターを立ち上げてウェブにアクセスできる 使いやすさ ユーザーインターフェイスは最小限 サービスはWebアプリを利用 安全性 バージョンなどを気にしなくても、常にすべてが動作 余計な機能が無いため、セキュリティに優れる Webアプリケーションを効率的かつ安価に実行するための環境 機能を絞ったクラウド専用の端末

http://www.bloomberg.com/news/2014-02-22/microsoft-said-to-cut-windows-price-70-to-counter-rivals.html

http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1402/24/news048.html