コンクリート構造物における 品質を確保した生産性向上に関する提案 生産性および品質の向上のための コンクリート構造物の設計・施工研究小委員会 2016年7月5日
設立背景と成果目標 コンクリート躯体の構築における生産性向上が進んでいない 適切な施工法が活用できないことで施工性低下や品質不良を誘因 熟練工減少→ 生産性低下・品質不良のリスク増加 コンクリート委員会は、主に技術的な側面からの改善 国土交通省や日建連は制度面で取組みを実施中 コンクリート構造物の構築にあたって、施工性(生産性向上及び品質確保を阻害している技術的な要因や示方書・発注仕様の要因を明確にし,その対応策を示す。 併せて、プレキャストコンクリートに関しても,その適用が円滑に進むような資料を作成する。 これらの成果を、コンクリートライブラリーとして発刊予定(2016年12月)。 また,2017年度制定のコンクリート標準示方書の設計編および施工編に反映すべき事項を改訂委員会に提案
小委員会 委員構成 委員長 石橋 忠良 JR東日本コンサルタンツ(株) 幹事長 中村 光 名古屋大学 小委員会 委員構成 委員長 石橋 忠良 JR東日本コンサルタンツ(株) 幹事長 中村 光 名古屋大学 委 員 綾野 克紀 岡山大学 島 弘 高知工科大学 伊達 重之 東海大学 山田 義智 琉球大学 木村 嘉富 国交省国総研 谷村 幸裕 鉄道総研 渡辺 博志 土木研究所 緒方 辰男 西日本高速道路(株) 土橋 裕 首都高速道路(株) 鈴木 威 阪神高速道路(株) 出羽 利行 西日本旅客鉄道(株) 谷口 秀明 三井住友建設(株) 徳光 卓 (株)富士ピー・エス 委員兼幹事 岸 利治 東京大学 細田 暁 横浜国立大学 蔵重 勲 電力中央研究所 玉井 真一 鉄道運輸機構 井口 重信 東日本旅客鉄道(株) 小林 幸浩 八千代エンジニアリング 長田 光司 中日本高速道路(株) 篠田 健次 JR東日本コンサルタンツ(株) 本間 淳史 東日本高速道路(株) 名倉 健二 清水建設(株) WGメンバー 福田 雅人 西日本高速道路(株) 稲葉 尚史 中日本高速道路(株) 井田 達郎 首都高速道路(株) 小坂 崇 阪神高速道路(株) 杉田 清隆 東日本旅客鉄道(株) 藤野 和雄 東日本高速道路(株) 委託側幹事長 古市 耕輔 鹿島建設(株) 委託側委員兼幹事 杉橋 直行 清水建設(株) 武田 均 大成建設(株) 平田 隆祥 (株)大林組 舟橋 政司 前田建設工業(株) 二井谷 教治 オリエンタル白石(株) 那須 將弘 道路PCa製品技術協会 星田 典行 全国コンクリート製品協会 河野 哲也 鹿島建設(株) (委員→委員兼幹事) 委託側委員 古荘 伸一郎 (株)大林組 田中 将希 (株)大林組 佐々木 一成 (株)大林組 大濱 大 鹿島建設(株) 平 陽兵 鹿島建設(株) 橋本 学 鹿島建設(株) 加藤 千賀(追加)鹿島建設(株) 土屋 雅徳 清水建設(株) 前田 利光 清水建設(株) 宮田 佳和 清水建設(株) 大野 広志 清水建設(株) 村田 裕志 大成建設(株) 臼井 達哉 大成建設(株) 有田 淳 前田建設工業(株) 中村 敏之 オリエンタル白石(株) 片山 強 道路PCa製品技術協会 白石 芳明 全国コンクリート製品協会 松岡 智 全国コンクリート製品協会 狩野 堅太郎 全国コンクリート製品協会 示方書や発注者の仕様における課題と提案を議論するため,示方書改訂委員や発注者側の委員およびワーキングメンバーを多く召集(31名) プレキャスト普及における課題と提案を議論するため,プレキャスト製造メーカーも委託側委員として参画(28名)
本小委員会の実施体制 (WG-幹事会-委員会の役割) 幹事会 委員会 現場施工WG プレキャストWG 仕様調査WG 現場施工に関する課題と対応策の整理 プレキャストWG プレキャストに関する課題と対応策の提案 仕様調査WG 仕様書や契約上の課題と対応策の整理 各課題と対応策について意見交換(大学,発注者,請負者の委員・WGメンバー) →本小委員会報告書として取りまとめ 幹事会 ・委員会活動方針の提案 ・WGでの検討および提案内容の確認 ・報告書作成方針決定と内容確認 委員会 幹事会決議事項の確認 ・委員会活動方針 ・報告書作成方針および報告書素案 ・最終報告書
報告書のタイトル,目次 「コンクリート構造物における品質を確保した生産性向上に関する提案」 Ⅰ編 総論 1章 本報告書の目的と構成 2章 国や各機関における生産性向上の取り組み 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 Ⅱ編 課題と提案 1章 設 計 2章 施 工 3章 プレキャストコンクリート 4章 発注,契約,その他 Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 1章 ボックスカルバート 2章 橋 梁 3章 河川・護岸 4章 その他 付属資料 課題と提案の参考資料
Ⅰ編 総論 1章,2章 1章 本報告書の目的と構成 1.1 目的 本報告書の発刊に至った経緯と目的. 【目的】発注機関,設計機関,施工会社および研究機関のそれぞれの立場において,「品質を確保したうえで生産性を向上するためには何をすべきか」ということを,具体的な課題と提案を通して理解していただくこと. 1.2 構成 本報告書の全体構成や各編,各章での記載内容 2章 国や各機関における生産性向上の取り組み 国,建設業界,土木学会,コンクリート委員会での生産性向上の取り組み状況 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 本小委員会で議論した中で着目すべきポイント
Ⅰ編 総論 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 Ⅰ編 総論 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 3.1 生産性向上とは コンクリート構造物における生産性向上は,①プロダクトとなるコンクリート構造物の機能,性能等を向上させる事,②労働者数,労働時間,資機材,費用,工期等を縮減する事のいずれかあるいは両方によりなされると定義した. 主に②に論点がある内容が多い. 一部分だけではなく,全体としての生産性向上を図る.例えば,提案によっては,設計者への負担が増大する場合もある.(各提案の中で負担が増大することを記載) 生産性向上とは,コスト低減,作業省力化,工期短縮等を実現することであるが,品質をおろそかにすることは許されない.「品質を確保した」を冠するタイトルとした.
Ⅰ編 総論 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 Ⅰ編 総論 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 3.2 生産性の阻害要因 ・施工者に引き渡される情報の内容に着目して議論 ・プレキャストの活用を進めるための議論 ・発注や契約は,①単年度予算制度による弊害,②技術を活用した際の適切な積算への反映,③発注ロットを大型化することのメリット,などを議論 発注者の仕様書 コンクリート標準示方書 等
Ⅰ編 総論 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 Ⅰ編 総論 3章 品質を確保した生産性向上の着目点 3.3.1 施工の自由度の確保と検査による品質の確保 標準示方書の標準に示されていない生産性向上に寄与する技術を適用するための自由度の確保や,協議に費やす労力の低減 3.3.2 高密度配筋 高密度配筋による鉄筋組立やコンクリート打込みにおける課題 配筋作業の生産性向上を図るため,機械式定着の採用やプレファブ化のための全数継手の採用等の課題 3.3.3 発注者毎に異なる仕様,技術基準 発注者の仕様書,技術基準等が異なることにより,施工者,技能労働者が混同.基準の統合が望ましい. 3.3.4 プレキャスト化 普及阻害の最大の原因は初期コスト. 工期短縮などを積算に反映する手法がないこと 形状や寸法の規格化・標準化,標準化した部材を活用した構造計画 3.3.4 新技術の活用,発注・契約 ICT技術等の新しい技術の活用. 発注・契約に関する議論.例えば,所掌と責任分担の明確化等
Ⅱ編 課題と提案 合計60件の提案 1章 設計 設計時3次元で配筋が可能なことを検証する 設計段階で施工性に配慮した配筋図とする Ⅱ編 課題と提案 1章 設計 設計時3次元で配筋が可能なことを検証する 設計段階で施工性に配慮した配筋図とする コンクリート投入孔およびバイブレーター挿入孔を図面へ明示する etc 全28件 2章 施工 発注時にコンクリートのスランプを規定しない 高流動コンクリートの選択が可能な規定を検討,整備する 全12件 3章 プレキャスト プレキャストコンクリートの形状の規格化による生産性向上を図る プレキャストコンクリートの設計法を明確にする プレキャストコンクリートの設計基準を統合する 全15件 4章 発注,契約,その他 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ 全5件 合計60件の提案
「Ⅱ編 課題と提案」の構成 (1) 課題と提案 施工現場における生産性や品質の向上を図るにあたっての課題と提案の概要 (2) 具体的提案 ①「発注者の仕様等に対する提案」 発注者ごとで整備している発注の仕様類に対する提案 ②「標準示方書類に対する提案」 コンクリート標準示方書などの土木学会の指針類に対する提案 ③「研究開発に対する提案」⇒この提案がないものは,今すぐ実施可能な提案 実適用にあたっては,研究開発の余地がある提案 実適用までに研究開発の余地ある場合,「研究開発の成果に基づき」という前提条件で,「発注者の仕様等に対する提案」,「標準示方書類に対する提案」に, 具体的な提案を示している. (3) 提案の効果 提案の効果を以下の3者に分けて明確化.設計者に負担がかかる場合は,そのことを記載. ①発注者:「コスト低減」「工期短縮」「品質向上」「業務の効率化」等 ②設計者:「設計業務の効率化」 ③施工者:「作業省力化」「工程短縮」「コスト低減」等
Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 プレキャストコンクリートの利点を活かした活用の促進に資するため,比較的大型のプレキャストコンクリートを使用して生産性が向上した例を中心に,以下の構造物で分類して紹介. 1.カルバート 2.橋梁 3.河川・護岸 4.その他 それぞれの事例を以下の構成で紹介. 概要‥ 工事の内容 採用理由‥ なぜプレキャストコンクリートが採用されたか 実施内容‥ 具体的な方法 効果‥要求に対する達成状況
Ⅱ編 課題と提案 「設計」の例 設計時3次元で鉄筋同士が干渉しないことを検証する Ⅱ編 課題と提案 「設計」の例 設計時3次元で鉄筋同士が干渉しないことを検証する (1)課題と提案 ○課題 部材接合部等の高密度配筋部において,施工段階で鉄筋が干渉して配筋できないことがある. →配筋できないことを証明するために労力が必要 →施工段階の工夫で対策ができない場合に,設計をやり直す必要 →気づかずに施工した場合,工事のやり直し,工程逼迫,品質不良を誘因 ○提案 設計時に3次元モデル等により鉄筋同士が干渉しないことを検証することが必要 3次元モデルによる鉄筋干渉の確認例
Ⅱ編 課題と提案 「設計」の例 設計時3次元で鉄筋同士が干渉しないことを検証する Ⅱ編 課題と提案 「設計」の例 設計時3次元で鉄筋同士が干渉しないことを検証する (2)具体的提案 ①発注者の仕様等に対する提案 発注者の設計指針,設計仕様書において,「部材接合部等の配筋が密な箇所では, 3次元モデル等を用いて配筋詳細図を作成し,鉄筋同士が干渉しないことを示すこと」という規定を追加する. ②標準示方書類に対する提案 コ示[設計編:本編]4.8設計図 において,「部材接合部等の配筋が密な箇所では,3次元モデル等を用いて配筋詳細図を作成し,鉄筋同士が干渉しないことを示すこと.杭頭とフーチングの交差部等の施工誤差が考えられる場合は,施工時に対応できるよう設計図に有効断面寸法や必要鋼材量等を記載すること.また,機械式継手の使用や配筋間隔の変更等の具体的な対策例を示すことが望ましい」という規定を追加する. ③研究開発に関する提案 特になし.
Ⅱ編 課題と提案 「設計」の例 設計時3次元で鉄筋同士が干渉しないことを検証する Ⅱ編 課題と提案 「設計」の例 設計時3次元で鉄筋同士が干渉しないことを検証する (3)提案の効果 ①発注者における生産性・品質の向上 ・ 配筋ができない箇所への対応による工期増大のリスクを低減できる. ・ 配筋変更等の設計変更業務が無くなり,業務の効率化が可能となる. ・ 図面と異なる配筋がなされるリスクが低減できる. ②設計者における生産性・品質の向上 ・配筋図の3次元モデル化および干渉確認の作業が生じるが,工事着工後の設計変更や配筋の見直し等の手戻り作業が少なくなる. ③施工者における生産性・品質の向上 ・ 配筋変更について発注者と協議するための検証(3次元モデル等の作成やモックアップ試験)の必要がなくなり,施工段階における協議に要する労力の省力化やコストの低減が可能となる. ・ 施工途中での鉄筋の組直し等の手戻りによる工期増大のリスクを低減できる.
Ⅱ編 課題と提案 「施工」の例: コンクリートの仕様選択の自由度を上げる ~ 発注時にコンクリートのスランプを規定しない ~ Ⅱ編 課題と提案 「施工」の例: コンクリートの仕様選択の自由度を上げる ~ 発注時にコンクリートのスランプを規定しない ~ (1)課題と提案 ○課題 発注時に規定されたスランプでは,高密度配筋など,条件によっては,十分な施工性を確保できず,確実に充塡するために多大な労力と時間を要する.施工段階のスランプの変更は,変更協議が必要であり,変更が認められないこともある. ○提案 発注時にはコンクリートの仕様を規定せず,施工者が構造物の構造条件や施工条件を考慮して,コンクリートのスランプを選択できるような仕様書を整備する.品質は水セメント比の上限,単位水量の上限等の規定および完成後の検査により確保する. 高密度配筋およびコンクリートの打込み状況
Ⅱ編 課題と提案 「施工」の例: コンクリートの仕様選択の自由度を上げる ~ 発注時にコンクリートのスランプを規定しない ~ Ⅱ編 課題と提案 「施工」の例: コンクリートの仕様選択の自由度を上げる ~ 発注時にコンクリートのスランプを規定しない ~ (2)具体的提案 ①発注者の仕様等に対する提案 発注者の工事仕様書におけるコンクリート配合の事項について,「打込み時のスランプまたはスランプフローの範囲は参考値とし,コンクリートが所要の施工性を満たすよう任意に定めて良い」といった記述に修正する。なお,コンクリートの品質については,水セメント比の上限値,単位水量試験による上限値,および空気量の範囲の規定,ならびに完成後の検査により確保するものとする.また,施工段階の品質管理は従来通りスランプ等のフレッシュ時の試験を行うものとする. ②標準示方書類に対する提案 コ示[設計編:標準]に「コンクリートの施工性の照査」を新たに追加することによって,設計段階において,施工性能を考慮したコンクリートの仕様を選択可能とする. ③研究開発に関する提案 特になし.
Ⅱ編 課題と提案 「施工」の例: コンクリートの仕様選択の自由度を上げる ~ 発注時にコンクリートのスランプを規定しない ~ Ⅱ編 課題と提案 「施工」の例: コンクリートの仕様選択の自由度を上げる ~ 発注時にコンクリートのスランプを規定しない ~ (3)提案の効果 ①発注者における生産性・品質の向上 設計変更に関わる業務の効率化が図れる. 現場の配筋状況に合わせたスランプの選択により,品質不良の発生リスクが低減する. ②設計者における生産性・品質の向上 設計段階で施工性能を考慮したコンクリートを選択する場合,設計の自由度が上がるため,検討項目が増えることになる.設計時の作業としては生産性向上とはならない場合もある. ③施工者における生産性・品質の向上 施工段階におけるスランプの変更協議に費やされる労力が低減される. 現場の配筋状況に合わせたスランプが選択可能になり,コンクリート工の生産性が向上し,初期欠陥の発生リスクが低減する.
Ⅱ編 課題と提案 「プレキャストコンクリート」の例: プレキャスト製品の強度管理方法を検討,整備する Ⅱ編 課題と提案 「プレキャストコンクリート」の例: プレキャスト製品の強度管理方法を検討,整備する (1)課題と提案 ○課題 工場製品は,プレストレス導入可能な圧縮強度が規定されており,効率的な製造をするために,一般に24時間以内の早期材齢にプレストレスを導入することが多い.強度管理用供試体は,製品と同一の蒸気養生で製作したものを標準とすることを規定しているが,製品と供試体の寸法の違いから水和発熱によるコンクリート温度の履歴は大きく異なり,特に断面の大きな製品の場合は,過度に安全側管理になっている場合がある. ○提案 製品の実強度を正しく評価できる手法を整備することを提案 温度追随養生装置の例
Ⅱ編 課題と提案 「プレキャストコンクリート」の例: プレキャスト製品の強度管理方法を検討,整備する Ⅱ編 課題と提案 「プレキャストコンクリート」の例: プレキャスト製品の強度管理方法を検討,整備する (2)具体的提案 ①発注者の仕様等に対する提案 特になし ②標準示方書類に対する提案 コ示[施工編:特殊コンクリート]11章 工場製品に「温度追随養生による供試体でプレストレスを与える圧縮強度を管理してよい」という記述を追加する. ③研究開発に関する提案 特になし.
Ⅱ編 課題と提案 「プレキャストコンクリート」の例: プレキャスト製品の強度管理方法を検討,整備する Ⅱ編 課題と提案 「プレキャストコンクリート」の例: プレキャスト製品の強度管理方法を検討,整備する (3)提案の効果 ①発注者における生産性・品質の向上 製造方法の効率化が図れ,コスト低減が可能となる. ②設計者における生産性・品質の向上 特になし. ③施工者における生産性・品質の向上 プレストレス導入時の強度を温度追随養生により作製した供試体で管理することで,製品の実強度を正しく評価でき,より早期に所定の強度を確認できる.これにより,プレストレス導入時期が早まることで工程短縮が可能となる.また,セメント量の低減など配合の最適化ができ,コスト低減が可能となる.
Ⅱ編 課題と提案 「発注,契約,その他」の例 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ Ⅱ編 課題と提案 「発注,契約,その他」の例 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ (1)課題と提案 ○課題 温度応力によるひび割れの可能性がある場合においても,設計段階で温度応力解析を実施しない場合がある.施工段階での温度ひび割れ検討では,時間や予算による制約があり,十分な対策ができないことがある. 設計段階に温度ひび割れ検討がされている場合においても,検討条件が引き継がれない場合があり,施工段階での検討や協議に労力を要することがある. ○提案 設計段階でも仮の施工条件で概略検討を行った上で,さらに設計側から施工側に解析条件,解析メッシュ等のデータを引き継ぐことが望ましい. 設計段階で温度ひび割れ検討がされていない場合の解析結果の一例 施工段階で温度ひび割れ解析を実施したところ,ひび割れ指数が小さく温度ひび割れが発生する可能性が高いが,工程や予算などの制約で対策が限定される
Ⅱ編 課題と提案 「発注,契約,その他」の例 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ Ⅱ編 課題と提案 「発注,契約,その他」の例 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ (2)具体的提案 ①発注者の仕様等に対する提案 発注者の設計指針,設計仕様書において,「温度応力によるひび割れが予想される部材については,温度ひび割れに対する検討を行い,その対策を図面に記載するとともに,検討事項を設計図書等に記載・添付すること」といった記述を追加する. ②標準示方書類に対する提案 コ示[設計編:本編]12.1一般の「設計段階で照査することを念頭に置く」という記述を,「設計段階で照査することを原則とする」のような明確な表現に改める. コ示[設計編:本編]12.1一般に,設計時に検討を行っていない場合は,品質や工期に対するリスクが発生することや,検討していない旨を施工者へ申し送りするという記述を加える.さらに,設計者から施工者へ検討条件の引渡しをすることを記述する. ③研究開発に関する提案 特になし.
Ⅱ編 課題と提案 「発注,契約,その他」の例 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ Ⅱ編 課題と提案 「発注,契約,その他」の例 設計時に必要に応じて温度応力解析を実施し,検討条件を施工側に引き継ぐ (3)提案の効果 ①発注者における生産性・品質の向上 温度ひび割れ対策を確実に実施できることにより,構造物の品質不良の発生リスクが低減する. 施工時の検討や補修実施による工期増大の発生リスクが低減する. ②設計者における生産性・品質の向上 特になし. ③施工者における生産性・品質の向上 設計段階で温度ひびわれ対策がある程度考慮されていれば,仮にそれが実際の施工条件と完全に一致していなかったとしても,施工段階での変更は軽微なものとなる. 設計段階の解析データを引き継ぐことで,施工段階の検討業務が効率化できる. 対策を適切に行うことで,過大なひび割れを低減することができ,補修の手間が軽減される. 施工時の検討や補修実施による工期増大の発生リスクが低減できる.
Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 ~大型門形カルバートへのプレキャスト部材の適用事例~ Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 ~大型門形カルバートへのプレキャスト部材の適用事例~ 採用理由 ①場所打ち函渠での工事発注だったが,地元住民の生活道路であり迂回路確保が困難な現場状況で道路を最小限の通行止めとするため. ②信頼性の高い部材接合方法. ③鋼製型枠や脱型用設備の大型化の必要性が無くなり,製造設備のコスト縮減. 効果 ①現場打ち工法の工期予定43日に対して,大型ボックスカルバートのPCa化により7日で完了し,施工工期が84%削減できた. ②頂板部材を分割式としてポストテンション方式により一体化が図られたことで内空幅15mの超大型ボックスカルバートのPCa化が図られた. ③頂板部材を分割式としたことで,鋼製型枠や脱型用設備の大型化を必要とせずコストアップ要因が解消された.
Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 高耐久性コンクリートのボックスカルバートの施工事例 Ⅲ編 プレキャストコンクリートの活用による生産性向上 高耐久性コンクリートのボックスカルバートの施工事例 採用理由 高炉スラグ細骨材と低結合材比のコンクリートを用いた内部構造の緻密化による耐久性向上効果により、鉄筋かぶりの増大による特殊型枠への変更や樹脂塗装鉄筋等のコストアップ要因をなくした。 効果 ① 耐塩害性 緻密で高強度な素材であるため塩化物イオンの侵入を抑止。 ② 耐凍害性 緻密で高強度な素材であるため凍結融解に対する高い抵抗性を発揮。 ③ 耐複合劣化 塩害と凍害が同時に発生する環境でも、構造物としての強度を維持。 ④ 耐硫酸性 硫酸と反応し、高い浸食抵抗性を有した強固な表面被膜を形成。 ⑤ 低炭素 高炉スラグを多く使用しているため約40%のCO2排出削減。 ⑥ 資源循環 原材料として約50%の高炉スラグを使用。
付属資料「Ⅱ編 課題と提案の参考資料」 ・提案に関連する仕様,示方書・指針などの条文の抜粋の一覧表 ・提案に関連する事例 等を記載 等を記載 付属資料の例(「2.1.1 発注時にコンクリートのスランプを規定しない」) 表 各仕様書におけるスランプに関する記載内容 発注者・ 仕様書名 章節 記載内容 備考 NEXCO 東中西日本 コンクリート 施工 管理要領 H23.7 2 建設工事の施工管理 2-3 試験 2-3-1 コンクリートの種類 コンクリートの種別は表2-2を標準とするが、現場の施工性や耐久性等から表2-2以外の品質基準を定めてもよい。例えば、寒冷地での空気量の見直し、配筋の複雑な構造物でのスランプの見直し、硬化熱抑制のためのセメントの種類の変更が上げられる。特にスランプは、構造物の形状、配筋状態、ポンプの圧送性などの施工条件を十分考慮して定めるものとする。 ただし、大幅な基準の変更は、コンクリートの全体の品質に影響する可能性があるため、十分注意しなければならない。 注7)スランプは、コンクリートの打込み箇所における値である。打ち込み箇所とはコンクリートを打ち込んだ直後締固め前の箇所をいう。 表2-2におけるスランプは8,15,18cm. 配筋の複雑な構造物でのスランプの見直しは可能 首都高速 ・・・ ・
今後のスケジュール 2016年7月 5日 常任委員会 報告書の趣旨説明と提示 7月26日 意見回答書の提出期限 7月27日~8月末 2016年7月 5日 常任委員会 報告書の趣旨説明と提示 7月26日 意見回答書の提出期限 7月27日~8月末 意見回答書に対する対応・審議 9月 6日 常任委員会 意見回答書に対する対応説明 10月中旬 報告書最終版完成・印刷作業開始 12月上旬 発刊 12月~ 講習会開催 本部主催:東京 支部主催:大阪,他2~3会場 お願いしたい事項 報告書の内容を示方書改訂の議論に早めに加えてもらうために、報告書完成後ではなく、現段階で示方書改訂委員会に検討依頼を行いたい