今まで行ってきた研究 2003年11月 九州工業大学 工学部 物理  鎌田 裕之  .

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今まで行ってきた研究 2003年11月 九州工業大学 工学部 物理  鎌田 裕之  

原子核物理学は、何をめざすか? 

原子核物理学は、何をめざすか?  我々の答え: きちんとした核力をもとに、 核子多体系としての原子核を 第一原理的に解き上げる。

原子核物理学は、何をめざすか? 我々の答え: きちんとした核力をもとに、 核子多体系としての原子核を 第一原理的に解き上げる。 原子核物理学は、何をめざすか?  我々の答え: きちんとした核力をもとに、 核子多体系としての原子核を 第一原理的に解き上げる。 その中から原子核あるいは 他の分野で通用する 有効なモデルを探る。

DATAにχ2≒1の精度で再現する2核子間のポテンシャル きちんとした核力  DATAにχ2≒1の精度で再現する2核子間のポテンシャル 1.ボン・ポテンシャル 2.アルゴンヌ・ポテンシャル 3.ナイメーヘン・ポテンシャル 4.我々のポテンシャル

湯川理論 相互作用描像 核力の原点 g  (σ・q)(σ・q) V=              4π (m2+q2)

V 核力 ハードコア領域 (素粒子物理学) r ρ、ω、η、etc π One Pion Exchange 重中間子交換

第一原理的に解き上げる 3体、4体系の境界条件を正確に取り入れた シュレディンガー方程式を厳密に解く 我々の方法:  第一原理的に解き上げる 3体、4体系の境界条件を正確に取り入れた シュレディンガー方程式を厳密に解く 我々の方法: 3体系:Faddeev方程式 4体系:Yakubovsky方程式

厳密解を基盤に、モデルの適応範囲を考えつつ 有効なモデルを探る 厳密解を基盤に、モデルの適応範囲を考えつつ 幅広い物理空間への拡張 ○ 多体力:3体力、4体力の構築 ○ 新しいポテンシャルの構築:カイラル摂動理論 ○ ヒルベルト空間の節約:有効相互作用理論 ○ クラスター模型:12C核の3α模型など ○ 共鳴構造問題:中性子過剰核モデル ○ 方法論的開発:グラウバ-、RGM、CDCC、 Coupled-Rearrangement-Channel Gaussian-basis Variational, Stochastic variational, Green's function Monte Carlo, the no-core shell model など

少数粒子系の物理: 原子核物理学の基礎を与える研究 湯川理論の継承としての核力研究の新しい段階 → 3体力の存在、定量的な理論 Ab initioな研究の進め方  → 集積できる研究スタイル、系統的な研究 他の分野への応用: 各種ハドロンや核構造研究への貢献    → 広域な応用可能性

今までの研究成果

現実的ポテンシャルを使った、少数核子系の束縛状態の研究 今までの研究成果 現実的ポテンシャルを使った、少数核子系の束縛状態の研究 3Hの結合エネルギー         [MeV] ポテンシャル 3体力なし 3体力あり CDBONN Nijmegen I Njimegen II Nijmegen 93 AV-18  8.013  7.741  7.659  7.668    7.628   8.48 実験値

3Hの形

ポテンシャル 3体力なし 3体力あり CDBONN Nijmegen I Njimegen II Nijmegen 93 AV-18 α粒子の結合エネルギー 4Heの結合エネルギー         [MeV] ポテンシャル 3体力なし 3体力あり CDBONN Nijmegen I Njimegen II Nijmegen 93 AV-18  26.26  24.98  24.56  24.53  24.25  28.40  28.60  28.56  28.36 実験値  28.30 3体力の可能性 世界初 Phys. Rev. C 65, 054003 (2002)   

There is clear underbinding. Other Nucleus AV18 Potential            [グリーン関数モンテカルロ法による] 原子核 理論値 実験値 3H 4He 6He 6Li 8Li 8Be 7.74 24.1 23.9 26.9 31.8 45.6 8.48 28.3 29.3 32.0 41.3 56.5 There is clear underbinding.

微分断面積 Elab[MeV] Physics Reports 274 (1996) 107 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I 3 4 5 6 9 11.4 微分断面積 22.7 16 12 Elab[MeV] 28 47.5 65 Physics Reports 274 (1996) 107

テンソル偏極量 Elab[MeV] 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I T20 T21 T22 10 22.7 テンソル偏極量 Elab[MeV] 28 47.5

テンソル偏極量 Elab[MeV] 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I T20 T21 T22 53 65.5 テンソル偏極量 Elab[MeV] 93.5

3.0 10.0 5.0 ベクトル偏極量iT11 22.7 28 47.5 Elab[MeV] 53 65 93.5 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I 3.0 10.0 5.0 ベクトル偏極量iT11 22.7 28 47.5 Elab[MeV] 53 65 93.5

30. 35. 50. ベクトル偏極量Ay 65. 146. 155. Elab[MeV] 10.0 Ayパズル 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I 30. 35. 50. ベクトル偏極量Ay 65. 146. 155. Elab[MeV] 10.0 Ayパズル

現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I 偏極量Kji,Cij Elab[MeV]

現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I 偏極量Kji,Cij Elab[MeV]

現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 I 偏極量Kji,Cij Elab[MeV]

3 65 微分断面積 2NFのみ Elab[MeV] 3NFあり 190 135 3体力によって説明 世界初 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 II (高エネルギー域) 3 65 微分断面積 2NFのみ Elab[MeV] 3NFあり 極小値の部分のFaddeev計算はあまり良く実験を説明できていない。 (相良デスクレパンシー) 190 135 3体力によって説明 世界初 Phys. Rev. C 63, 024007 (2001)

3 65 ベクトル偏極量Ay Elab[MeV] 190 135 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 II (高エネルギー域) 3 65 ベクトル偏極量Ay Elab[MeV] 190 135

3 65 ベクトル偏極量iT11 Elab[MeV] 190 135 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 II (高エネルギー域) 3 65 ベクトル偏極量iT11 Elab[MeV] 190 135

3 65 テンソル偏極量T20 Elab[MeV] 190 135 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 II (高エネルギー域) 3 65 テンソル偏極量T20 Elab[MeV] 190 135

3 65 テンソル偏極量T21 Elab[MeV] 190 135 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 II (高エネルギー域) 3 65 テンソル偏極量T21 Elab[MeV] 190 135

3 65 テンソル偏極量T22 Elab[MeV] 190 135 現実的なポテンシャルを 直接用いた 陽子-重陽子弾性散乱 の研究 II (高エネルギー域) 3 65 テンソル偏極量T22 Elab[MeV] 190 135

3体力とは何か?

TM TX RP BR Urbana Fujita –Miyazawa χFT ΔFT Cladogram 3体力

2核子の相互作用では表わせられない既約表現 藤田-宮沢3体力 核子が中間状態でΔ粒子などに励起する 2核子の相互作用では表わせられない既約表現

F(q,q’)=a +b (q ・q’)+c(q2+q’2)+d σ・(q×q’) Tucson-Melbourn 3NF g  (σ・q) 4π (m2+q2) (σ・q’) m2+q’2  W= F(q,q’) F F(q,q’)=a +b (q ・q’)+c(q2+q’2)+d σ・(q×q’)

新しい段階の核力理論 湯川理論 2NF 現実的ポテンシャル理論 重中間子交換 ★QCD(素粒子論)と整合性が良いもの 1.ボン・ポテンシャル 2.アルゴンヌ・ポテンシャル 3.ナイメーヘン・ポテンシャル 3NF Fujita-Miyazawa Urbana IX Tucson-Melbourn 現実的ポテンシャル理論 重中間子交換 ★QCD(素粒子論)と整合性が良いもの ★2体力と多体力が統合できるもの ★核構造計算に使いやすいもの 新しい段階の核力理論

カイラル摂動理論

カイラル摂動理論 カイラリティ(掌性): 質量なしクォーク場のラグランジアンのもつ一つの対称性 SU(Nf)L× SU(Nf)R×U(1)V×U(1)A 南部-Goldstone-Weinberg Realization: 自発的対称性の破れとπ中間子の質量の出現 SU(2)L× SU(2)R ~  SU(2)A× SU(2)V ⇒  SU(2)V SU(2)A× SU(2)V ~SO(4)  Dim[SO(4)]=4>3πfields Nonlinear realization :π→π’=f(π;g) D π= → g → → → → ∂ π μ μ F (1+π2/F2)

カイラル摂動理論 Okubo Effective Theory: Elemination of the πon degree of freedom 質量スケールによる摂動展開 ν=-4+2N+2L+ΣViΔi Δi=di+ni/2-2 N:核子外線数 L:ループの数 d:微分の階数 n:バルブ結合核子数

カイラル摂動理論 ν=0 と ν=2 π+N Δ+heavy meson      展開 ν=3 ν=4

カイラル摂動理論 非相対論近似 0 ν=0 と ν=2 π+N Δ+heavy meson      展開 ν=3 ν=4

カイラル摂動理論 ν=0 と FM3NF ν=2 π+N Δ+heavy meson      展開 ν=3 ν=4

Cross section Ay T20 T21 T22 3MeV NLO NNLO

Cross section Ay T20 T21 T22 10 MeV NLO NNLO

Cross section Ay T20 T21 T22 65 MeV NLO NNLO

Space Star configuration 3体ブレーク・アップ反応 FSI configration QFS configuration Space Star configuration 13 MeV NLO NNLO

3体ブレーク・アップ反応 65 MeV NLO NNLO

カイラル摂動理論 QCDの持つ対称性を保持するので、最終的に残るパラメーターは、 QCDが解けた暁に比較すべき実験値になる。  (原子核物理学の金字塔) ラグランジアンから出発するから、2体力も多体力もConsistentで求まる。 高い運動量部分がない形なので、ハードコアが無く、核構造計算に適したポテンシャルを提供する。

その他の研究 ハイペロンを含む原子核 相対論的な多体問題 電子散乱(3Heを標的核) pdキャプチャー π中間子吸収反応 炭素の3αモデル

少数粒子系の物理: 原子核物理学の基礎を与える研究 ☆湯川理論の継承としての核力研究の新しい段階 カイラル摂動理論 → 3体力の存在、定量的な理論 ☆Ab initioな研究の進め方           Faddeev-Yakubovsky散乱理論  → 集積できる研究スタイル、系統的な研究 ☆他の分野への応用:             各種ハドロンや核構造研究への貢献    → 広域な応用可能性