東北大学院理学研究科天文学専攻修士1年 秋山研究室 大野 良人 Optical Configuration

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東北大学院理学研究科天文学専攻修士1年 秋山研究室 大野 良人 Optical Configuration 広視野補償光学のためのトモグラフィー を用いた波面再構成の基礎実験 東北大学院理学研究科天文学専攻修士1年 秋山研究室 大野 良人 Introduction Optical Configuration 従来の補償光学では、ガイドスターからの光の波面の測定より、その光の経路の大気を1枚の面として再構成し、その面を平らにするように変形された可変形鏡で天体の光を反射することにより補正を行う。一方で、広視野補償光学では複数のガイドスターの情報から、トモグラフィー技術を用いて大気を複数の高度の面として再構成し、複数の可変形鏡で補正を行う。つまり、正確な補正のためには正確な大気の再構成が必要不可欠となる。まず、再構成のアルゴリズムの検証を行うためにZernikeモードに従ったモデル波面を用いて波面再構成のシミュレーションを行い、複数の再構成の方法で正しく再構成ができているか確認した。また、実際に広視野補償光学を想定した光学系を組み、複数のガイドスターを用いた波面再構成の基礎実験を行った。 下の図は今回の光学系の実際の写真と略図である。略図は簡単のため3つの光源の場合である。また、略図のWFSの前にはコリメーターレンズ(レンズ③)も省略してある。 レーザー:波長633nm レンズ①:焦点距離750mm、直径100mm レンズ②:焦点距離1900mm、直径25mm レンズ③:焦点距離200mm、直径25mm 光源とレンズ①の距離:750mm レンズ①とレンズ②の距離:742mm レンズ②とレンズ③の距離:2100mm レンズ③とWFSの距離:221mm Stars Atmospheric path Pupil WFSs Wave-Front Reconstruction 大気揺らぎ 光源 Shack-Hartmann Wave-Front Sensor(SHWFS)では局所的な波面の傾きを測定することができる。傾きの想定値から次のように波面再構成を行う。右の図の●は波面の値の点、○は波面の傾きの点である。右の図のような位置関係にあるとき、傾きと波面の値は下の関係式で表せる。また、この関係式は行列でも表記できる。 レーザーの光を4つのシングルモードファイバーに入力し、右の写真のように出力することで4つの光源を再現した。 真ん中がTarget(1)、周りがガイドスター(上2、左下3、左上4)とする。()内は番号。 大気の揺らぎはプラスチック板で再現した。今回は大気の層は1枚とし、1枚のプラスチック板を口径(略図のレンズ②)から100mm、350mm、600mmの位置に置いた3パターンで実験を行った。 行列で表現 波面の値(●)と波面の傾き(○)の関係式 Shack-Hartmann Wave-Front Sensor CCD(1pixel=7.4μm、648×494)の前にマイクロレンズアレイ(ピッチ1mm)を置いたものを用いる。右の図は実際のReferenceの測定結果である。 Calibration :波面の傾きベクトル 上の関係をより一般的に書くと、 WFSでのスポットの動きと波面の傾き :波面の値ベクトル 略図のミラー①は電圧をかけると傾く。0.2Vずつ電圧を加えたときのWFSでのスポットの動きを測定し、スポットの動きと波面の傾きの関係を計算した。 :波面の値と傾きの関係行列 Sは測定値、Aは●と○の位置関係のみで決まるので、この式をWについて解けば波面の値が得られる。 各WFSの回転の調整 各WFSは向きがばらばらに付いてる。回転を調整するために次のようなきキャリブレーションを行った。口径に細い棒を置く。そのとき右の図のようにWFS上で棒の影ができる。それぞれのWFS上での棒の影を合わせることで各WFSの回転を合わせた。 Simulation Zernikeモードにしたがうモデル波面を用いた波面再構成のシミュレーションを行った。Zernikeモードは下の左の図に示す。今回は次数が2から30のZernikeモードに対してシミュレーションを行った。波面の値の点と測定点は下の右の図のように設定した。 各パターンでの光路の重なり具合 パターン1 (100mm) パターン2 (350mm) パターン3 (600mm) 左の図の●が波面の点24×24)、○が傾きの測定点(23×23)である。実際の望遠鏡の口径は円形なので傾きが測定されるのは円内の赤い○のみである。しかし計算上の理由から、四角系に拡張して考える。このとき円外の青い○では傾きは測定されないので、円内の傾きを内側に拡張する。拡張方法は[1]に従った。 各パターンで、4つの光路がどれだけかぶっているかを計算する。各距離(口径から100mm、350mm、600mm)に棒を置き、その棒の各WFS上での影の離れ具合を計算することで、光路のかさなり具合を計算した。右の図が各パターンでの光路の重なりを示している。 Target(1) ガイドスター(2) ガイドスター(3) ガイドスター(4) Algorithm 再構成の結果を示す。ここで波面の値の単位は(mm)である。また、ピストン成分は座標(0,0)付近での平均値が等しくなるように調節した。 Result 今回用いた波面再構成のアルゴリズムは次の3つである。 パターン1 (100mm) コレスキー分解  S=AWをコレスキー分解  を用いて次のように解く。 SVD分解  S=AWをSVD分解を用  いて次のように解く。 Minimum Variance   Wave-Front Reconstruction   [2]のMinimum Variance Wave-Front    Reconstructionの方法を用いる。   これはノイズやKolmogorovの大気   モデル、また複数のガイドスター   などを用いる場合を考慮したもの   になっている。 WFS2+3+4 各Guide Star波面の合計 重なる点は平均値 合計値内の Referenceと重なる点 Estimate Reference-Estimate 最終的なError enhance Reference WFS1 SVD分解    は直交行列    は対角成分に固有値    をもつ対角行列 コレスキー分解  は下三角行列 RMS=134nm RMS=18nm パターン2 (350mm) Reference WFS1 Estimate enhance WFS2+3+4 後退代入 wの逆行列は対角成分の逆 数である。ここで特異値 (ほぼ0の固有値)が有る場 合は、その逆数を0とする。 前進代入 Result RMS=109nm RMS=39nm 各ZernikeモードでのReference波面のRMSとEstimate波面とReference波面の差のRMSの比を右に示す。 すべてのモード、すべての方法で約1/10以下の精度で再構成できていると言える。とくにコレスキー分解とSVD分解ではあるモードを除いてほぼ完璧に再構成できている。 パターン3 (600mm) Reference WFS1 WFS2+3+4 Estimate enhance 次にSVDとコレスキーの方法で精度が悪いZernike6のモードについて波面の断面図を見てみる。 SVDとコレスキーについては強いWaffle Errorが表れている。モード13や22でも強いWaffle Errorが出ている。これは計算上のミスや誤差が原因ではなく、測定と波面の関係や拡張の方法などアルゴリズムによるものだと考えられる。 Zernike 6 x12 Zernike 6 y12 RMS=121nm RMS=26nm すべてのパターンで多少のずれはあるものの再構成が正確にできていると言える。誤差の原因はWF S2のマイクロレンズアレイのレンズが一つ壊れていることにより点のようなずれができてしまっていることが考えられる。 一方Minimum Varianceでは強いWaffle Errorは出ていない。これはKolmogorovの大気モデルを仮定しているため、波面の分離を防いでいると考えられる。しかし、y=23あたりで大きくReferenceからずれている。これは他のモードでも見られる。これによりMinimum Varianceの方法は他の方法に比べて精度が落ちている。この原因は現在調査中である。 Conclusion 今回の実験では与えた波面がわからないため、各WFSの相対的な評価しかできていない。次はわかっている波面を与えて、より正確な再構成の評価をする必要がある。 また、広視野補償光学のより現実的な評価を行うために、複数の大気の層を用いたMinimum Varianceの方法によるトモグラフィックな波面再構成の実験をしていきたい。そのためにまずMinimum Vari- anceの方法のシュミレーションでの検証を進めていきたい。 Experiment 広視野補償光学を想定した光学系をくみ、複数のガイドスターを用いたな波面再構成の基礎実験を行った。今回はガイドスターを想定した光源を3つ、Target天体を想定した光源を1つ用意し、3つのガイドスターの波面測定からTarget天体の波面を推定し、実際のTarget天体の波面の測定と比較する。波面再構成はコレスキー分解のアルゴリズムを用いた。 Reference [1] Lisa A. Poyneer(2002) [2] Brent L. Ellerbroek(2002)