健康食品 嘱託産業医 馬場哲郎 日本人は、約3割が「健康食品」を毎日利用し、約8割が利用経験があるそうです。 嘱託産業医 馬場哲郎 日本人は、約3割が「健康食品」を毎日利用し、約8割が利用経験があるそうです。 健康食品を利用する目的は、健康の維持、疲労回復、ダイエット、病気の予防が多いようですが、約5%の人が病気の治療を目的として健康食品を利用されていました(健康食品は薬ではありません!)。 健康食品とは、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。 そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした「保健機能食品制度」があります。 栄養機能食品≒サプリメント 高齢化やライフスタイルの変化等により、通常の食生活を行うことが難しく1日に必要な栄養成分を取れない場合に、その補給・補完のために利用してもらうた食品です 栄養機能食品として表示ができる栄養成分は人間の生命活動に不可欠な栄養素で、現在は、ミネラル5種類、ビタミン12種類が定められています。 国への許可申請や届出は必要ありません。 <特定保健用食品(トクホ)≒国認定健康食品> 身体の生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含んでいて、「お腹の調子を整える」など、特定の保健の目的が期待できることを表示できる食品です。 H25年末までで、1094品目が認定 特保(トクホ)認定例 栄養機能食品として表示される栄養素 栄養機能食品の表示例 栄養機能食品(カルシウム) カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です 栄養成分(3粒あたり) カルシウム400mg ビタミンの大切さ~脚気(かっけ)と日露戦争~ 現在では、脚気の原因はビタミンB1の欠乏であることが分かっています。白米にはビタミンB1が少ないため、お米だけ(副食なし)を食べ続けると脚気が発生します。大正時代には結核とともに二大国民病と言われ、原因として感染症説(陸軍)と栄養説(海軍)がありました。日露戦争では、白米支給の陸軍では25万人が脚気を罹患し2万7千人が死亡。一方、麦飯の海軍では脚気による死者はなかったそうです(戦死者4万7千人) 。陸軍の軍医だった森鴎外が白米支給を推進したとも言われています。 ビタミンの怖さ ビタミンは健康にとって大切ですが、過剰摂取は毒性を示すこともあります。 たとえば、ビタミンD過剰症は下痢、腎不全,尿路結石.高血圧症の悪化などを引き起こします
健康食品を使用するうえでの注意 ①薬として使用しない 健康食品は薬ではありません。薬と併用することで、薬の効果が不安定になるものもあります。 また健康食品によって一部の病気が悪化することもあります。 健康食品と薬の相互作用(一部) 健康食品の4割、薬の効き目低下招く 厚労省 (日本経済新聞2013年9月) 市販されている健康食品の約4割に、体内で薬や毒物の成分を分解、排出する「薬物代謝酵素」の働きを促す作用があり、医薬品の効き目を低下させるとの結果を厚生労働省研究班が21日までにまとめた。特にハーブやウコンの成分を含んだダイエット関連の商品は薬効低下が顕著という。 病気悪化の原因となりうる健康食品(一部) ②「海外製品」「個人輸入」に注意 健康食品の中で最も注意しなければならないのが、故意に薬の成分を添加した製品です(無承認無許可医薬品)。「食品です」と宣伝しながら、その製品中には薬の成分が含まれますので、添加された薬の含有量や種類によっては、重大な健康被害を受ける可能性があります(過去の例では、中国製ダイエット食品により健康被害事例100 件以上、死亡事例4 件)。過去に健康被害を生じた製品のほとんどが、「海外からの輸入品」「錠剤・カプセル状の食品」です。 ③健康食品の飲み合わせにも注意する いろいろな成分を複数添加している製品は、成分同士がお互いにどのような影響を与えるか(特に悪い影響)についてほとんど検討していない場合もあります。多種類の成分を同時摂取することは一見体に良さそうに思いますが、「人への作用が明らかにされていない物質を、複数の種類、自己判断で使用する」ことになるので、注意が必要です。もしも体調が悪くなっても、「どの成分が有害作用の原因か」を突き止めるのは大変難しく、判断できないことがほとんどです ④問い合わせ先を確認する 製品についての質問や、摂取していて何か不都合なことがあったときなどのために、問い合わせ先を確認しましょう。健康被害が発生しても補償が受けられないことになります。 ⑤「天然」「自然」=「安全」「安心」ではありません 天然・自然由来成分を原料とする製品でもアレルギーの原因となり、因果関係が明確でない報告も含め、被害報告が多数あります(ローヤルゼリー、コリアンダー、ウコン、ザクロ、スピルリナ、ゼラチン、プロポリスなど) ⑥「冷静に判断すること」が大切です 「専門家が言っていた」ことが必ずしも有効性の証明にはなりません。その専門家1人だけが主張して いる可能性もあるからです。信頼できる有効性情報とは、通常、多くの科学者によって多角的な確認や評 価を必要とするものです。「特許の取得」「○○成分10倍」「××賞受賞」が「効くことの証拠」「有効性の保証」ではありません。 健康食品・サプリメントは、手軽に利用できる健康法として人気があります。 「科学的に証明されていない=効果がない」とは言えませんが、「科学的に効果が証明されている」健康食品は殆どないのが現状です。 「○○成分」より、「生活習慣の改善」が「健康につながり」「美容に効果があって」「安くて」「安全」である場合が多いことにも目を向けてください