マクロ経済学初級I 第6回
第5回講義の目標 GDP、 GNP を理解する 総貯蓄と投資の恒等関係 を理解する 閉鎖経済の場合 開放経済の場合
GDPおよびGNP
国内総生産 GDP Gross Domestic Product 国内総生産: 一定期間に一国内で生産されたすべての最終生産物の市場価値 中間生産物 付加価値
国民総生産 Gross National Product 一定期間に国民によって生み出されたすべての最終生産物の市場価値
1年間に一国内で生み出された 付加価値の流れ 政府部門、海外部門が ないモデル経済 国内 総生産 GDP 財・サービス市場 消費 家計 生産者 投資 労働 土地 資本 生産への 投入 所得 生産要素市場 賃金・地代・利潤
国内で生み出された付加価値はだれが購入しているか? GDP→消費+投資
国内で生み出された付加価値はだれの所得になっているか? 被雇用者の労働賃金 土地保有者の地代 資本の保有者の資本レンタル料(株式配当、貸し付け利子収入) 企業内留保
1年間に一国内で生み出された 付加価値の流れ 海外部門 輸入 輸出 国内 政府 政府購入 総生産 GDP 財・サービス市場 消費 家計 生産者 投資 労働 土地 資本 生産への 投入 賃金・地代・利潤 所得 生産要素市場 労働・資本
国内で生み出された付加価値はだれが購入しているか? GDP →消費+投資+政府購入+海外への輸出 しかし、消費や投資、政府購入の中には海外で生産された財サービスが計上されている。 したがって、海外からの輸入品をそれらから さしひけば、
GDP= C + I + G + EX - IMP 消費+投資+政府購入+輸出ー輸入 =C+I + G + NX 純輸出 (貿易収支)
GDPとGNP GDPに海外からの要素所得の受け取りをくわえ、海外への要素所得の支払いをさしひけばGNPになる。 (NFP) (Net Factor Payment from abroad) =C+I+G+NX+NFP =C+I+G +CA (Current Account 経常収支)
日本の国内総生産と需要項目 2006年 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe071/jissuu.pdf を参照
貯蓄と純資産
純資産(wealth) 家計の純資産 = 家計の資産(asset)から 負債(liability)を差し引いたもの 国民純資産‘National wealth) = 国内の家計、企業、政府の全てが持つ純資産をたしあわせたもの 貯蓄 ‘savings) が純資産を増加させる 純資産はストックの概念で貯蓄はフローの概念
総貯蓄の計測 貯蓄‘Saving) = 経常所得(current income) – 経常支出(current spending) 貯蓄率(Saving rate) =貯蓄 / 経常所得
民間貯蓄(Private Saving) 民間貯蓄 ≡ 民間可処分所得(private disposable income) – 消費支出 – 消費支出 Spvt ≡ (Y + NFP - T + TR + INT) – C Y+NFPは国民所得(GNP) Tは所得税収 TRは政府の移転支出 INTは政府の利払い支出
政府貯蓄 (Government Saving) 政府貯蓄 ≡ 政府の純所得(net government income) – 政府の支出 Sgovt ≡(T - TR - INT) - G
政府貯蓄 = 政府の財政黒字(government budget surplus) = 政府収入 – 政府支払い 政府収入 = 税収tax revenue (T) 政府支払い = 政府の最終生産物購入(G) + 移転支払い(transfers: TR) + 政府債務の利払い (interest payment on government debt: INT ) 財政赤字 Government budget deficit = -Sgovt
国民貯蓄(National saving) 国民貯蓄 = 民間貯蓄 + 政府貯蓄 S = Spvt + Sgovt = [Y + NFP - T + TR + INT - C] + [T - TR - INT - G] = Y + NFP - C - G = GNP - C - G
国民貯蓄は何に利用されるか? S = I + (NX + NFP) = I + CA 総貯蓄=総投資 S = Y + NFP - C – G および Y = C + I + G + NX の関係から上式が導出される CA = NX + NFP =経常収支 (current account balance)
Spvt = I + (-Sgovt) + CA { S = Spvt + Sgovt の関係から} 貯蓄の恒等式より、民間貯蓄は以下の三つの項目にあてられていることがわかる: (a) 投資 (I) (b) 財政赤字 (-Sgovt) (c) 経常収支 (CA)
Figure 2.01 The uses-of-saving identity in the United States, 1959-1998
総貯蓄と国民純資産の関係 ストックStocks とフロー flows フローの経済変数: 一定期間内に計られた経済変数 (GDP, 所得, 貯蓄, 投資,財政赤字など) ストックの経済変数: 一時点で計られた経済変数 (貨幣の数量(残高), 資本ストック,政府債務など) フローの経済変数はそれに対応するストックの経済変数の一定期間内の変化量をあらわす 国民純資産はストック、総貯蓄はフローの経済変数
国民純資産(National Wealth) 国民が持つ純資産は国内にあるものと海外にあるものにわけられる 国内純資産:国民が国内に所有する資産から負債を差し引いたもの 対外純資産 = 対外資産 (国民が所有する外国株、外国債、資本財など) から 対外負債(外国人が所有する邦資産:国内株、国債、資本財)
どのような原因で起こるか? (資産価格の変化や資本財の減耗など) (2) 国民貯蓄 (S = I + CA) のぶんだけ 国民純資産の変化は どのような原因で起こるか? (1) 既存の資産価値と債務価値の変化 (資産価格の変化や資本財の減耗など) (2) 国民貯蓄 (S = I + CA) のぶんだけ 国民純資産は当該期間内に増加する