マクロ経済学初級I 第6回.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第8章 貯蓄,投資と金融システ ム 1.アメリカ経済における金融機関と市場 ( ↑ 日本経済でもほぼ同じ) 金融システムは、ある人の貯蓄と別の人の投資 を結びつける。投資の例として、 起業のための設備投資 住宅を購入する 金融システムは、金融市場と金融仲介機関の2 つのカテゴリーに分けられる 1 8.
Advertisements

1 マクロ経済を観察する I GDP 第1章第1章. イントロダクション  本章の目的 : マクロ経済を観察するためのデータ を学ぶ。  データ : 一国の経済全体のパフォーマンス ( 実績 ) を測った数値。  本章では国内総生産( GDP )と GDP デフレー ターを紹介。 2.
国民所得統計 生産の境界の二重性 サービスとは 居住者概念 国民所得勘定の主な集計量. 慣行上の生産の境界 (市場生産と若干の 自己勘定生産) 帰属家賃 自給農業 NPO の有給労働 政府活動 生産の境界の二重性 主婦の家事労働 本来の生産の境界 ボランテイア活動 マイカーの 運転 睡眠 運動 自己向上.
1 II マクロ経済学のデータ. 2 第5章 国民所得の測定 マクロ経済学とは 国内総生産 = GDP ( Gross Domestic Product ) – 社会の経済的福祉を測定する尺度の1つ ミクロ経済学とマクロ経済学の違いについては、 pp. 40 – 41 も参照.
第 2 章 国民所得決定理論. 1. 有効需要の理論 Jhon Maynard Keynes: 有効需要の原理 「経済全体の活動水準は経済全体でど れだ けの需要があるかによって決まる」
三面等価の原則 生産面からみたGDP =支出面からみたGD P =分配面からみたGD P. [ 備考 ] 内閣府経済社会総合研究所「 SNA ・1統計資料・国民経済計算確報・平成14年度確報(平成16年4月19日)・計数票・第1部 フロー編 1.統合勘定( 1 )国内総生産と総支出勘定、及び、 4.
国際収支統計 専修大学 経済学部 経済統計学 (作間逸雄). 『日本経済新聞』 2014 年 9 月 8 日夕刊.
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
第 10 回講義 マクロ経済学初級 I タイプ II クラ ス. 前回の講義復習 消費と総需要 ケインズ型消費関数のもとで の 有効需要の原理.
貨幣について. 講義概要 貨幣の概念 名目と実質貨幣ストック 貨幣に対する需要 政府による金融政策.
経済の仕組みと経済学. 経済学とは 「経世済民」経済 世の中を治め、民の苦しみを救うこと 人々が幸せに暮らすためのしくみでありその活動 = 経済学とは: 「希少な資源を競合する目的のために, 選択・配分 を考える学問」 2.
マクロ経済学の基礎 1. マクロ経済の循環 1. 貯蓄の無い経済 2. 貯蓄・投資の存在する経済 3. 政府の存在・開放経済 2. 重要なマクロ変数 1.GDP ,失業率,物価 3. マクロ経済の経験的事実.
第5章 どのように 国際的に 資金が 流れるのか 加藤 栞.
2 国際収支と国際貸借 2-1 国際収支と国際収支表 2-2 国際収支と国民経済 2-3 国際収支と国際貸借.
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
経済と株価ー講義② 企業活動と付加価値①・・・GDP上の考察 ・マクロ経済学上の付加価値 ・GDP統計の相互関係 ・GDP統計とは①~③
<ポイント> まずは、マクロ経済学の統計用語に慣れること!
重不況の経済学 第3章1節 前半 09BA390L 山村美帆.
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
国際収支表をどう読むか 国際収支の均衡 国際収支とGDP
入門 計量経済学 第02回 ―本日の講義― ・マクロ経済理論(消費関数を中心として) ・経済データの取得(分析準備) ・消費関数の推定
第9週(第3章[2]) §2 資金過不足と貯蓄・投資の関係(p.49~65) Q1) 家計部門 Q2) 企業部門
第1章 国民所得勘定.
第11回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
国民経済計算 System of National Accounts
政府部門を含む閉鎖経済の乗数効果 専修大学 「経済の世界」 作間 逸雄.
(出所)小峰隆夫(2003)『最新日本経済入門[第2版]』、日本評論社、p.186。
国際収支 2007年6月1日.
ミクロ経済学II 第18回 要素価格と所得分配 2 所得分配率 現在割引価値と土地の価格決定.
国際経済の基礎10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月6日
<キーワード> 生産関数、労働、資本 限界生産物
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
第8章 国際収支と国際投資ポジション 対外経済関係の鳥瞰図.
7: 新古典派マクロ経済学 合理的期待学派とリアル・ビジネス・サイクル理論
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
豊かさとは? 経済学B 第2回 畑農鋭矢.
GDPに関連した概念.
国民経済計算(SNA)とは 国際連合が示す基準に従って、世界各国が比較可能な形で、それぞれの経済の毎年の循環の姿を、体系的に明らかにすることを目的としたもの。 日本では、内閣府経済社会総合研究所   国民経済計算部が、年1回   「国民経済計算年報」を発行.
財政赤字 マクロ経済分析 畑農鋭矢.
第4回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
政府の勘定 プライマリー・バランス ドーマー条件
経済学入門 10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年6月28日
国際経済の基礎12 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年12月20日
国際経済学11 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2010年1月25日
マクロ経済学初級I 第4回.
マクロ経済学初級I 第5回講義.
中国の資金循環モデルによる 財政・金融政策の考察
III 長期の実物経済.
国際貿易の外観.
経済入門 ⑦ 西山 茂.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月9日
V. 開放経済のマクロ経済学.
V. 開放経済のマクロ経済学.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
第8回講義 マクロ経済学初級I .
循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow 家 計 企 業 (価格メカニズム) 市場機構 が働く p p 消費財市場 y
第6章 IS-LMモデル.
第7章 単回帰で「消費関数」を計測する 1.所得の定義 1.1 国民純生産 国内総生産(GDP) ⇔ 所得
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
第6回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
第3回講義 文、法 経済学.
第6回講義 文、法 経済学 白井義昌.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
マクロ経済学初級I 第12回 今学期のまとめ.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年1月18日
第5回講義 文、法 経済学 白井義昌.
Presentation transcript:

マクロ経済学初級I 第6回

第5回講義の目標 GDP、 GNP を理解する 総貯蓄と投資の恒等関係 を理解する 閉鎖経済の場合 開放経済の場合

GDPおよびGNP

国内総生産 GDP Gross Domestic Product 国内総生産: 一定期間に一国内で生産されたすべての最終生産物の市場価値 中間生産物 付加価値

国民総生産 Gross National Product 一定期間に国民によって生み出されたすべての最終生産物の市場価値

1年間に一国内で生み出された 付加価値の流れ 政府部門、海外部門が ないモデル経済 国内 総生産  GDP 財・サービス市場 消費 家計 生産者 投資 労働   土地    資本 生産への 投入 所得 生産要素市場 賃金・地代・利潤

国内で生み出された付加価値はだれが購入しているか? GDP→消費+投資

国内で生み出された付加価値はだれの所得になっているか? 被雇用者の労働賃金 土地保有者の地代 資本の保有者の資本レンタル料(株式配当、貸し付け利子収入) 企業内留保

1年間に一国内で生み出された 付加価値の流れ 海外部門 輸入 輸出 国内 政府 政府購入 総生産  GDP 財・サービス市場 消費 家計 生産者 投資 労働   土地    資本 生産への 投入 賃金・地代・利潤 所得 生産要素市場 労働・資本

国内で生み出された付加価値はだれが購入しているか? GDP  →消費+投資+政府購入+海外への輸出 しかし、消費や投資、政府購入の中には海外で生産された財サービスが計上されている。 したがって、海外からの輸入品をそれらから さしひけば、

GDP= C +  I  +  G  + EX - IMP     消費+投資+政府購入+輸出ー輸入    =C+I + G + NX              純輸出 (貿易収支)

GDPとGNP GDPに海外からの要素所得の受け取りをくわえ、海外への要素所得の支払いをさしひけばGNPになる。          (NFP) (Net Factor Payment from abroad) =C+I+G+NX+NFP =C+I+G +CA (Current Account 経常収支)

日本の国内総生産と需要項目 2006年 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe071/jissuu.pdf  を参照

貯蓄と純資産

純資産(wealth) 家計の純資産 = 家計の資産(asset)から 負債(liability)を差し引いたもの 国民純資産‘National wealth) = 国内の家計、企業、政府の全てが持つ純資産をたしあわせたもの 貯蓄 ‘savings) が純資産を増加させる 純資産はストックの概念で貯蓄はフローの概念

総貯蓄の計測 貯蓄‘Saving) = 経常所得(current income) – 経常支出(current spending) 貯蓄率(Saving rate) =貯蓄 / 経常所得

民間貯蓄(Private Saving) 民間貯蓄 ≡ 民間可処分所得(private disposable income) – 消費支出      – 消費支出 Spvt ≡ (Y + NFP - T + TR + INT) – C Y+NFPは国民所得(GNP) Tは所得税収 TRは政府の移転支出 INTは政府の利払い支出

政府貯蓄 (Government Saving) 政府貯蓄 ≡ 政府の純所得(net government income)         – 政府の支出   Sgovt ≡(T - TR - INT) - G

政府貯蓄 = 政府の財政黒字(government budget surplus) = 政府収入 – 政府支払い 政府収入 = 税収tax revenue (T) 政府支払い = 政府の最終生産物購入(G) + 移転支払い(transfers: TR) + 政府債務の利払い (interest payment on government debt: INT ) 財政赤字   Government budget deficit = -Sgovt

国民貯蓄(National saving) 国民貯蓄 = 民間貯蓄 + 政府貯蓄 S = Spvt + Sgovt = [Y + NFP - T + TR + INT - C] + [T - TR - INT - G] = Y + NFP - C - G = GNP - C - G

国民貯蓄は何に利用されるか? S = I + (NX + NFP) = I + CA 総貯蓄=総投資 S = Y + NFP - C – G および  Y = C + I + G + NX の関係から上式が導出される CA = NX + NFP =経常収支 (current account balance)

Spvt = I + (-Sgovt) + CA { S = Spvt + Sgovt の関係から} 貯蓄の恒等式より、民間貯蓄は以下の三つの項目にあてられていることがわかる: (a) 投資 (I) (b) 財政赤字 (-Sgovt) (c) 経常収支 (CA)

Figure 2.01 The uses-of-saving identity in the United States, 1959-1998

総貯蓄と国民純資産の関係 ストックStocks とフロー flows フローの経済変数: 一定期間内に計られた経済変数 (GDP, 所得, 貯蓄, 投資,財政赤字など) ストックの経済変数: 一時点で計られた経済変数 (貨幣の数量(残高), 資本ストック,政府債務など) フローの経済変数はそれに対応するストックの経済変数の一定期間内の変化量をあらわす 国民純資産はストック、総貯蓄はフローの経済変数

国民純資産(National Wealth) 国民が持つ純資産は国内にあるものと海外にあるものにわけられる 国内純資産:国民が国内に所有する資産から負債を差し引いたもの 対外純資産 = 対外資産 (国民が所有する外国株、外国債、資本財など) から 対外負債(外国人が所有する邦資産:国内株、国債、資本財)

どのような原因で起こるか? (資産価格の変化や資本財の減耗など) (2) 国民貯蓄 (S = I + CA) のぶんだけ 国民純資産の変化は どのような原因で起こるか? (1) 既存の資産価値と債務価値の変化 (資産価格の変化や資本財の減耗など) (2) 国民貯蓄 (S = I + CA) のぶんだけ     国民純資産は当該期間内に増加する