価格戦略 規制緩和時における価格決定
特に通信・輸送・公共事業などの分野の規制緩和時に、間違った価格方針によって顧客を失ってしまう。 間違った価格戦略のゆくえ 経営者はおかしな価格戦略を立ててしまい、自らの企業にダメージを与え、顧客とコミュニティーの信頼を失ってしまいがち 特に通信・輸送・公共事業などの分野の規制緩和時に、間違った価格方針によって顧客を失ってしまう。 既存企業は早めに価格を下げ、新規参入者に攻撃をしかける。その結果価格競争を引き起こす。 長い期間の価格争いに耐え、その結果勝利を手にする事を望んでいる。 ⇒しかし現実の価格戦略はなかなか上手くいかない
価格競争の例① <チリの通信業界の例> 国内・外の長距離通信サービスのプロバイダー会社での争い 既存企業・・・Entelのみ 新規参入・・・7社 1994年に規制緩和され、Entelと新規参入者の価格競争が始まった。 チリ-アメリカ間の通話料金は95%減 Entelは長距離通信市場についての国内の70%と海外の50%を失う 1995年以降Entelは価格競争をストップした サービスと大規模な製品販売によって差別化戦略をはかる それにより競争相手に対しさらなる圧力をかけた 2000年近くには、再びEntelが国内の長距離通信市場を取り戻した
価格競争の例② <ドイツの電気業界の例> 規制緩和による新規参入者と既存企業の電気市場での競争 既存企業・・・大規模な公共企業体 新規参入・・・Yello Strom(YS) 1998年に規制緩和された 既存企業は大幅な値下げによって顧客がYSに移らないようにした 2年間で電気料金が30%下がった どの会社も低い利益しか得ることが出来なかった 2001年に電気料金を元に戻した(YSは18%値上げ)
値下げ競争とその後 このように値下げは、規制緩和時によく起こる戦略である。 しかし、もしその価格設定が間違って行われ原価を割ってしまうと、企業にとっても、消費者にとってもマイナスとなる ⇒企業は赤字になり消費者に十分な供給が出来なくなる。 <その後> 多くの場合、値下げ競争がいったん落ち着くと、どの会社も価格を元の水準にもどす ⇒価格を元に戻す際の、微妙な調整が難しい。
多くの既存企業は、価格の問題に直面した時に同じミスをおかす。 ⇒規制緩和された初期の段階で、「成長」「コスト削減」「組織改革」などの問題を考慮しなくてはならない。そのような問題が山積みになり、結局工夫をせずに単に価格を下げれば市場のシェアを失わなくてすむと考えてしまう。 以下の4点に注意し価格戦略を行うことによって、他社に対し優位となる事が出来,多くの利益をあげることが出来る 1、競合相手の価格 2、スイッチングコスト 3、顧客の価値基準・評価 4、費用
①競合相手の価格 価格を参照する競合相手を間違えた例 (大きな市場では、顧客にとって価格が何よりの差別化の判断基準となる) 価格を参照する競合相手を間違えた例 ◎オーストリアの携帯電話会社が、一般電話の会社までも競合相手と見てしまった。それにより、無駄な値下げを行ってしまった。 ◎また多くの既存企業は、最低価格にのみ焦点をあて、適正価格を考慮していない ⇒価格を参照する相手は、市場についてよく知っていて、顧客に対して大きな影響力を持っている会社にするべき。
③価格以外の顧客への影響力も考慮する必要がある ①競合相手の価格 この2つの例のように、規制緩和直後は「価格弾力性」「価格の透明性」「顧客の認識度」などがあいまい。そのため、一見関連のありそうな他社の価格や、最低価格に焦点を置くといった根拠の乏しい価格戦略を行ってしまいがちになる。 ⇒自社の顧客を引きつける能力を考慮にいれるべき 競合相手の価格を参照する際には、 ①適切な競合相手を対象にし、 ②適正価格を考慮し、 ③価格以外の顧客への影響力も考慮する必要がある
②スイッチングコスト スイッチングコストは、新たに規制緩和された市場で価格決定をする際に、考慮するべきである。大きな価格の違いといった強みは顧客に影響を与える。 しかし、多くの企業でちょっとした価格の差が、顧客の変更に影響を与えると考えてしまっている。 ⇒実際顧客は、細かい価格の違いに敏感でなく、細 かな価格の違いによっていちいち変更したりしない。
大きな価格差や変更する利点が無い限り、顧客は変更を好まない ②スイッチングコスト 例)ドイツの電気業界 新規参入者のYelloが規制緩和の翌年の1999年に史上最も大規模な宣伝を行った。しか市場全体の1%である40万人しか加入しなかった。 その原因としては ①変更の動機付けをさせるほどの価格の差があまり無かった ②毎月の電気代は小さいので差が分かりにくい ③構造の問題(キャンセルに時間がかかる) 大きな価格差や変更する利点が無い限り、顧客は変更を好まない
③顧客の価値基準 顧客は企業にとって何よりも大事である。しかし、顧客を100%獲得しなくてはといった空想に取り付かれると、顧客の価値基準を誤解してしまいかねない。 顧客はみな高い価値基準を持っているが、その中でもみなそれぞれ違った価値観を持っている。(他社の製品に変更する際にいくらのプレミアムまで喜んで払うか、など) ⇒全ての顧客に共通のプレミアムを設定する事は無理。既存企業が全くシェアを失わずにいる事は不可能。
③顧客の価値基準 顧客の価値基準を決めるときに判断する材料として、「他の競合企業への移り変わり易さ」を考える もし顧客が容易に変更してしまう人である場合、顧客獲得の努力は、他に向けられるべきである。 常に低い価格に設定しぎりぎりの利益を得ているより、 気まぐれで変更し易い顧客を失うことをよしとするべき。
④費用 (既存企業は、生産にかかる費用に適切な利益を上乗せして価格を決める。) 競合相手の正確な費用がわかるまでは、あり得そうな値を推測する。 例)電気業界では、他社の費用を計算するのに、 電気を発生させるコスト、設備購入のコスト、追加的な配電網のコスト、その他の諸経費 から考える。 他社の費用(原価)を知ることにより、他社にとって辛い価格戦略などをたてることが出来る。
適切な価格決定を行う これらの4つを考慮する事により、より適正な価格戦略を行う事が出来る。 ⇒がむしゃらに少しでも他社より安く売ろうとする競合相手より、安全に顧客を獲得でき、無謀な価格競争を避け、市場を安定させる事が出来る。