チェルノブイリ原発事故被害者と 広島・長崎被爆者の疫学調査は 100mSv以下の被爆は 健康被害がないと証明したのか? 全国反核医師の会 核戦争防止愛媛県医師・歯科医師の会 曽根康夫
見過ごせない事態 放射線科の専門医(長瀧重信医師など)中心に ①年間100ミリシーベルト以下の被曝での健康被害は確認されていないキャンペーンを各科の学会で ②福島で適切な避難方向を示せなかったが、重大な被曝はしていないことが判った (6.18NHKクローズアップ現代 細野原発大臣) ③「原発周辺以外は安全だから帰還しよう。福島は避難が必要な汚染ではない」 キャンペーン
政府・放射線学会の言う重大な被曝とは100mSv以上をさす 5月24日の朝日、愛媛新聞の記事では 「がんのリスクが高まるとされる100mSvをこえる地域はなかった。」 日本政府は 「WHO報告は避難や食品規制の効果を考慮してないので被曝線量が高すぎる」 と論評している
福島県民・外部被曝線量推計(9747人) (川俣町.山木屋地区553人、浪江町7250人、飯館村1944人) <事故~2012年2月までの積算> 2mSv未満 7717人(79.2%) 2~10mSv 1959人(20.1%) 10mSv以上 71人 (0.7%) 最大で 23.0 mSv の被曝 100mSvで初めてリスクがあるとの立場からは、全く問題が無いレベル
「100mSv以下は安全」の根拠 根拠 ① 「より大事故のチェルノブイリでも、成人・妊婦への健康被害はなかった」 と 根拠 ① 「より大事故のチェルノブイリでも、成人・妊婦への健康被害はなかった」 と チェルノブイリ・フォーラム(国際8機関の会議) 国連科学委員会が報告 根拠 ② 広島・長崎 原爆被爆者の健康被害データ
1986年チェルノブイリ事故による 健康被害 国際機関の報告 1986年チェルノブイリ事故による 健康被害 国際機関の報告
1990年 IAEA国際調査団報告 委員長;重松逸造(放射線影響研究所理事長) 5~10才の小児を調査(325人と 255人) 5~10才の小児を調査(325人と 255人) 甲状腺肥大:汚染地域 5.5%・対象地域 7.5% 甲状腺結節:汚染地域 0.6%・対象地域 0.8% 放射能汚染の影響は認められなかったと報告 その後ベラルーシの医師が通常100万人に1人発症の小児甲状腺癌が、10~100倍も多発と報告! ⇒被曝の影響か否か、20年間の医学論争!
被曝と甲状腺癌多発の因果関係は? エビデンスをめぐる研究者の議論 日・米・露の医学者は放射線との因果関係を示すエビデンスはないと主張 米国型メガスタデイ =汚染地域の5万人の子供に検診(エコー・針生検)をしたが癌の増加を証明できず. 全国の手術数 / 子供総数が1995年にピークとなり ← その後減少してゆく 20年後に被曝によるとの見解に達したが、すでに小児甲状腺癌は終息していた 10万人中の発症率 ベラルーシ全土 ↓ 児玉龍彦「甲状腺癌エビデンス探索20年の歴史」より
2005年 チェルノブイリ.フォーラム WHO. IAEA. 国連.世界銀行・・8国際機関 による国際会議の報告 <これまでに確認された被曝による死者:56人> 急性放射線障害 134 人で死亡28人(4月以内) 急性障害回復者 106 人その後の死亡19人 小児甲状腺ガン約 4000 人のうち死亡 9人 (内訳はベラルーシ8 人、ロシア1 人)
2008年 「国連科学委員会」 チェルノブイリ原発事故 放射線被曝による健康障害 ① 2008年 「国連科学委員会」 チェルノブイリ原発事故 放射線被曝による健康障害 ① 急性放射線障害は、134名の原子炉緊 急対処従事者のみ、うち28名が死亡 これ以外に数10万人が原子炉の閉じ 込め作戦に関与したが、放射線被ばくに 起因する健康障害は見られていない。
2008年 「国連科学委員会」 放射線被曝による健康障害 ② 2008年 「国連科学委員会」 放射線被曝による健康障害 ② ミルクによるヨウ素-131の汚染・内部被曝で、子供または青年であった者に6000名を超える甲状腺がんが発生し、2005年時点で15名が死亡 大部分の労働者と公衆は、自然放射能と同様か高々その数倍の放射線に暴露されただけ 生活はチェルノブイリにより障害されたが、大部分の人口においては重篤な健康問題の恐れに生きる必要がない
ベラルーシの汚染地帯と非汚染地帯の 先天奇形. 発症頻度の比較 ベラルーシの汚染地帯と非汚染地帯の 先天奇形. 発症頻度の比較 非汚染地帯 汚染地帯 ミンスク遺伝疾患研究所 ラジュク教授データより
国際機関は 真実を報告しているのか *今中哲二(京都大学原子炉研) フォーラムは小児死者は9人(ベラルーシ8、ロシア1)と報告していたが、不思議にウクライナがない。 ウクライナ・キエフの病院を訪れると、小児甲状腺がんが400例で、15例の死亡があった。 *佐藤幸雄(元広島大学原爆放射能医学研究所長) ベラルーシの汚染地帯と非汚染地帯の先天奇形の発症頻度のデータを集めた、ミンスクのラジュク教授を訪れた。
フランスの某研究所がIAEAからの支援を受け、汚染地区の設定をラジュク教授とは異なる州単位を主として区分けした。 ベラルーシのラジュク教授は、汚染地区での先天異常の増加を確かめる目的で高濃度汚染地の地区を厳密に設定し、対照地区には非汚染地区を選んだ。 その結果、汚染地区での先天異常の増加が認められた。 フランスの某研究所がIAEAからの支援を受け、汚染地区の設定をラジュク教授とは異なる州単位を主として区分けした。 それでは汚染地区の中に非汚染地区が混在し、同様に非汚染地区にも汚染地区が混在している。ラジュク教授はこのような区分に異論を唱えたが、得られた結果はラジュク教授の結果と反対に、先天異常の頻度が汚染地区と対照地区でみごとに逆転していた。 非汚染地帯 汚染地帯
フォトジャーナリスト 広河隆一氏の報告 急性放射線障害の症状が記載されたカルテを守りとおした医師 自然感光した レントゲンフィルム 自然感光した レントゲンフィルム 急性放射線障害で死亡した死者の墓 遺体の放射線量高く、汚染地帯に埋葬
2005年 チェルノブイリ・フォーラム 事故の総死者4000人 とも報告 2005年 チェルノブイリ・フォーラム 事故の総死者4000人 とも報告 これまでに確認された被曝による死者は56人? 一方で原発周辺住民60万人を(リスク係数 0.11/Sv)で評価 今後予想されるガン死者数:3940 人 平均被爆線量 1986-87年事故処理従事者 20 万人から・・2200 人 100ms 事故直後 30km 圏避難民 11.6 万人から・・・140 人 10ms 高汚染地域居住者 27 万人から・・・・・・・・・1600 人 50ms [統計学的解説] 60万人の約1/4(15万人)は自然発症の癌で死ぬため、約4000人の過剰は約3%にすぎない。3%は自然発生癌死の毎年の統計変動より少ない。 予想過剰固形ガン死は、自然発生の固形ガン死の統計的変動を乱していない。すなわち事故の影響でガン死が増えたとは云えない。
チェルノブイリ事故による癌死数の見積もり (計算法:被爆線量ミリシーベルト/1000 ×0.11×集団の人数) チェルノブイリ事故による癌死数の見積もり (計算法:被爆線量ミリシーベルト/1000 ×0.11×集団の人数) 評価者 ガン死数 対象集団 被曝1シーベルト当りガン死確率 フォーラム(2005) 3940件 周辺60万人 0.11 WHO 報告(2006) 9000件 被災3カ国740万人 IARC 論文(2006) 1万6000件 ヨーロッパ全域5.7億人 0.1 キエフ会議報告(2006) 3万~6万件 全世界 0.05~0.1 *WHO 世界保健機関 *IARC 国際ガン研究機関
統計学・疫学のあや=事故で癌は増えてない ICRP(国際放射線防護委員会)の被曝ガン死のリスク係数にあてはめて計算 周辺3国で9000人、全ヨーロッパで16000人、 全世界で3~6万人が、チェルノブイリの放射線で癌死することになる 膨大な被害ではあるが、統計学的には自然発生の癌死の変動範囲内 すなわち 疫学では 「事故の影響はなかった」 ことになった 実際には世界で3~6万人が死ぬが、被害者自身も 「事故で殺されたのか、自然の癌死か判らない」 ことを利用した、安全宣言!
私の感想 国際機関のチェルノブイリ・被曝の健康被害報告には、信頼性がない! ICRP被爆リスクの計算でも、周辺60万人のうち約4000名(WHOでは周辺3国で9000人)が死亡。 この報告のどこから「個々人の健康問題に対する展望は明るいものである。」( 2008年 国連科学委員会報告 )の結論が導かれるのか。 避難生活や地域社会が消滅したことが影響して死亡した方も、原発事故の犠牲者である。
被爆による発癌リスクは 米国の軍事研究で算定された! <広島長崎の生存者データ> 1947年米国は原爆傷病調査委員会(ABCC)を設置。 被爆の生存者約12万人の死亡状況の調査を開始した。 1975年日米協同の放射線影響研究所(RERF)に改組。 <ネバダ核実験のデータ> 生存者の被爆量(外部被爆)を推定し、被爆していない集団と比べて、癌の発症がどれくらい多いかのデータをとりつづけている。 ⇒ リスク係数を算定!
原爆被爆者での白血病の過剰絶対リスクと、線量の関係 2.55シーベルトまでは被曝線量の増加で白血病が増加する。100mSv以下であればリスクが数%高くなるがそれはわずかであり、喫煙や化学物質の影響よりも低い。 山本尚幸 (放射線科医、愛媛県緊急被ばく医療アドバイザー)
被曝量と、固形ガン発生 相対過剰リスクの関係 ・0.1Sv(100mSv)以下では癌のリスク増加を認めなかった。(0.1以下は塗りつぶして提示) 神谷研二 (広島大原爆放射線医科学所長) ・0.1Sv(100mSv)以下でのプロットまで示して、変動が大きく直線モデルは当てはまらない。しかしリスクがゼロになったのではなく、他の因子に紛れて被爆の評価が困難になった。 今中哲二 (京都大学原子炉研)
1Sv=(1000mSv)の被爆で 癌のリスクが5%増加との評価は 広島・長崎被爆者の生存者データよりの米国軍事研究から算出された。
広島長崎被爆生存者データの問題点 ①誘導放射線・内部被曝の条件が異なる ネバダ砂漠と人工建造物が密集した広島・長崎 ネバダ砂漠と人工建造物が密集した広島・長崎 /肥田舜太郎、被爆医師、元 広島陸軍病院軍医/ ・計算では低線量被爆のはずの「入市被曝者」が 急性放射線障害で死亡 ⇒ 内部被爆 /鎌田七男、元 広島大原爆放射線医学研究所長/ ・63年のフォローで白血病の多発(3.4倍)が判明 ⇒ 誘導放射線 ・両親が被爆者の子供は、白血病の発症が高い ②比較する集団の選び方に問題。 被爆者 =2.5キロ圏内にいた 非被爆者=2.5~10キロ圏にいた広島・長崎市民
2007年ICRP(国際放射線防護委員会)勧告 <確定的影響> <確率的影響> しきい値あり 100mSvまでは臨床的に意味のある障害を示すとは判断されない。 <確率的影響> がんのリスク。 しきい値なし、直線モデルを適応。 リスク係数は個人でなく、集団に適用 がん 5.5% / 1シーベルト 致死リスク係数 約5% / 1シーベルト
「ガンになるリスクは通常33%であるが、100mSyの被爆で33.5%に増加する。タバコの害にくらべるとずっと少ない」 となる。 *発癌リスクを個人にあてはめると 「ガンになるリスクは通常33%であるが、100mSyの被爆で33.5%に増加する。タバコの害にくらべるとずっと少ない」 となる。 なんだかたいしたことがないように思う! *発癌リスクを集団にあてはめると 「10万人の地域住民が、100mSv被曝すると500人が、20mSyなら100人が、10mSvなら50人が被曝による癌で死亡する」となる。 ⇒20mSvでも10mSvの被爆でも、10万都市の市民にはたいへんな事態だと思うが、疫学では被曝の影響はなかったとの結論になる!