畜産近代化リース協会 平成25年度調査研究事業 牛群健康管理省力化モニタリング技術の開発 ルーメン内留置型・無線伝送方式pHセンサーの実証試験 事業期間:平成25年7月から平成26年7月
1. 調査研究の目的 本調査研究は乳牛の生産阻害要因として重要であるルーメンアシドーシスの評価と制御を行い、乳牛の生産病予防と生産性向上を目的とするモニタリング技術を構築する。 1-1 生産現場における「ルーメン内留置型・無線伝送方 式pH センサー(以下pHセンサーと言う)」の実証試験 (1) pHセンサーによるモニタリング技術の検証 ルーメンアシドーシスを低減するための飼料給与方法の確立 (2) 酪農経営における実地検証 一般農場にて、飼養管理状況とルーメン液pH変動の実態を 検証 1-2 技術マニュアルの作成 ルーメンpHモニタリングによる診断方法、回収器によるセン サー取りだし方法、飼養管理の改善などの技術マニュアルを 作成する。
パーソナルコンピュータ (データのモニタリング、活用) 2. 無線伝送方式pHセンサーシステム概要 岩手大学と山形東亜DKK㈱が共同開発したセンサー&システム ※pHセンサーは岩手大学との共同研究契約締結により、 試験・研究目的において「試作機」が有償提供される パーソナルコンピュータ (データのモニタリング、活用) 送信機 (ルーメン内に留置) 受信機 (畜舎内に設置) 送信機1 通信距離 30m~40m 高度な活用:サーバーPC 開発予定 有線・無線 LAN USB RS-232C 送信機2 簡易な活用:ネットブックPC 中継器【任意】 中継距離 200m~300m データ通信回線 ・ ・ ・ 送信機8(最大台数) 遠地でのモニタリング やデータ活用 開発予定 異常値発生を携帯端末等に通報
3. 実証試験での試験牛 本調査研究事業では、各評価試験において全12頭で実証を行った。その内訳は表1の通りである。各評価試験では数頭単位の検証であり、本試験での結果だけで言及することは不可能と思われるが、今後の研究の一助として活用可能と思われる。 表1 各評価試験の試験頭数 評価試験区分 頭数 備考 第一胃と第二胃の比較試験 試験用飼料4水準に設定 1頭 フィステル牛 第一胃と第二胃にセンサー装着 慣行区用飼料(TMR、乾燥) 搾乳牛での評価試験 試験区用給与飼料(TMR) 4頭 経口投入 慣行区用給与飼料(TMR) 3頭 一般農家(PMR) 12頭
4.第一胃と第二胃の 比較試験成績
4.1.1 試験方法 試験牛 フィステルを装着した2頭を供試 ①非搾乳牛1頭(試験用に盲乳処置) ②搾乳牛 1頭(慣行法で試験中、H26.3.25分娩) ・第一胃:フィステル部分からビニール紐でpHセンサー を胃底部(液層内)に位置するように吊す。 ・第二胃:底部にpHセンサーを遊離した状態で留置 試験用飼料 ①非搾乳牛:チモシー乾草と圧片トウモロコシで4水準 に設定 ②搾乳牛 :慣行法飼養(TMR、乾草) 測定間隔・データ処理 10分間隔で連続測定したpH値から30分単位の平均値を算出 し、第一胃と第二胃の相関と日内変動を比較
4.1.2 供試牛
4.1.3 pHセンサーの留置位置 第二胃 第一胃 pHセンサー
4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.1 非搾乳牛を用いた試験区分
14日間(馴致給与7日間+データ採取期間7日間)で実施 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.2 試験実施の現況 1.試験の実施 14日間(馴致給与7日間+データ採取期間7日間)で実施 2.飼料の給与方法 分離給与による1日3回給与で実施 ※各試験区において給与時間は同時刻とした。 ※チモシー乾草及び濃厚飼料(圧片トウモロコシ)の給与量は試験区によって異なる。
4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.3 第一胃と第二胃のpH連即測定例
4.2.4 試験Ⅰ(チモシー乾燥6kg)の日内変動と相関 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.4 試験Ⅰ(チモシー乾燥6kg)の日内変動と相関
4.2.5 試験Ⅱ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ3kg) 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.5 試験Ⅱ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ3kg) の日内変動と相関
4.2.6 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ6kg) 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.6 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ6kg) の日内変動と相関
4.2.7 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ9kg) 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.7 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ9kg) の日内変動と相関
4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.8 第一胃と第二胃の温度の比較
4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.9 第一胃と第二胃の比較試験統計量
飼料成分摂取量(kg/日) 相関係数 NDF NFC Starch 試験Ⅰ 3.6 0.9 - 0.80* 試験Ⅱ 3.8 2.8 1.7 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.10 第一胃pHと第二胃pHとの相関係数 飼料成分摂取量(kg/日) 相関係数 NDF NFC Starch 試験Ⅰ 3.6 0.9 - 0.80* 試験Ⅱ 3.8 2.8 1.7 0.61* 試験Ⅲ 4.1 4.8 3.4 0.24* 試験Ⅳ 4.4 6.7 5.1 0.29* *:p<0.01
4.2.11 血清生化学検査と第一胃内溶液の有機酸分析結果 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.11 血清生化学検査と第一胃内溶液の有機酸分析結果 試験区分 試験Ⅰ 試験Ⅱ 試験Ⅲ 試験Ⅳ (n) (2) (3) 血清生化学検査※ 総蛋白 g/dl 8.9 8.6 7.7 7.3 アルブミン 2.9 3.2 3.1 総コレステロール mg/dl 51.7 49.5 45.5 56.7 尿素態 5.8 4.6 4 GOT IU/dl 50.4 42.7 48.4 68.7 GGT 16.2 13.7 15.5 23.7 有機酸分析※※ 酢酸 g/L 2.3 2.2 2.4 1.7 プロピオン酸 0.6 0.8 0.5 酪酸 0.4 0.7 0.9 乳酸 - ※ 試験Ⅰ~Ⅲは岩手大学農学部、試験Ⅳは長野県松本家畜保健衛生所で実施 ※※ 長野県畜産試験場で実施
4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.12 ルーメンアシドーシス発生時のpHの推移 第二胃pH 第一胃pH 食滞発生 チモシー4.5kg+乳用配合9kg チモシー4.5kg+圧片トウモロコシ9kg チモシー6kg 第二胃pH 第一胃pH 食滞発生
4.2 非搾乳牛での比較試験 ■ 非搾乳牛での比較試験の結果 粗飼料主体の飼料給与では、第一胃液pHと第二胃液pH は高い相関を示したが、易発酵性飼料を増給することによ り相関性は低下した。 食滞(ルーメンアシドーシス)が一度発生したが、第二胃 液pHと第一胃液pHが低下する傾向では一致したが、連 動はしていなかった。 pHセンサー投入による牛の健康への影響はなかった。
4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.1 第一胃と第二胃のpHの推移
4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.2 乾乳期におけるpHの日内変動と相関
4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.3 泌乳期におけるpHの日内変動と相関
4.3.4 全体(乾乳期+泌乳期)におけるpHの日内変動と相関 4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.4 全体(乾乳期+泌乳期)におけるpHの日内変動と相関
4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.5 第一胃と第二胃の温度の比較
4.3.6 第一胃液pHと第二胃液pHの比較試験統計量 4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.6 第一胃液pHと第二胃液pHの比較試験統計量 全体 乾乳期 泌乳期 第一胃 第二胃 平均 6.54 6.50 6.36 6.78 6.58 6.44 標準偏差 0.004 0.007 0.011 0.010 0.005 0.008 中央値 6.56 6.61 6.38 6.797 6.60 最頻値 6.27 7.04 6.35 6.90 6.66 7.01 0.33 0.54 0.29 0.31 0.56 範囲 2.28 2.75 1.91 1.48 2.12 最小 5.16 4.81 6.00 5.32 最大 7.44 7.56 7.07 7.49 相関係数 0.43 0.61 0.52
4.3 搾乳牛での比較試験 ■ 搾乳牛での比較試験の結果 TMR給与であるが乾乳期、泌乳期を通じて高い相関性で はなかった。 第一胃及び第二胃内の温度は高い相関があった。
4.4 比較試験の考察 試験頭数が各1頭のため、言及はできないが、同一時 間軸での比較として、第一胃液pHと第二胃液pHに 関して、今回の試験条件では相関が認められなかった。 第二胃液pHは、独立した変量としてとらえるべきか の検討も考慮に入れ、様々な飼養条件の個体データを 収集するとともに分析手法の検討も行う必要がある。
5.事前評価試験 -pHセンサーシステムの運転試験-
5.1 運転試験の実施状況 5.1.1 運転試験の供試牛 5.1.2 給与飼料(TMR)の飼料成分 試験牛の状況 pHセンサー測定状況 区分 名号 生年月日 最終分娩 分娩後 産 センサー 投入日 観測 その他 日数 次 No. 試験区 ポーラ H20.9.2 H25.11.1 277 4 364 H26.1.22 74 4/6 バッテリー終了 エミリー H20.9.16 H25.12.21 227 3 (367) H25.11.13 105 故障:1/22 pH値上昇 オータム H18.10.30 5 368 H25.11.25 132 セシリア H22.1.26 H26.1.20 197 2 370 H25.12.25 220 8/2 バッテリー終了 慣行区 マーメイド H23.6.14 H26.1.10 207 369 H25.12.16 72 故障:1/9分娩時から pH値低下 2/26 バッテリー終了 ホープ H25.5.12 H26.2.15 171 201 69 故障:2/10分娩後4日目から温度不安定 4/1 バッテリー終了 ルビー H20.4.28 H26.4.18 109 6 367 H26.3.31 87 故障:6/7からpH値低下 6/26 バッテリー終了 5.1.2 給与飼料(TMR)の飼料成分 区分 水分 (%) 乾物率 (%) 飼料成分(%/DM) TDN CP NDF ADF デンプン NFC EE 粗灰分 Ca P 試験区 51.5 48.5 71.2 14.3 37.8 21.9 20.2 39.0 5.3 7.6 0.9 0.7 慣行区 34.1 65.9 64.7 19.2 22.2 15.5 35.1 3.9 9.6 1.5 0.5
※金属探知器でpHセンサーが第二胃に留置していることを確認 5.2 運転試験 5.2.1 第二胃液pHと温度の即定例 (試験区、試験牛:オータム) ※金属探知器でpHセンサーが第二胃に留置していることを確認
5.2 運転試験 5.2.2 乾乳後期牛の第二胃液pHの基本統計量 項目 試験区 慣行区 エミリー オータム セシリア 平均 ホープ ルビー 観察期間 乾乳後期 7.14 6.85 6.84 6.94 6.98 6.54 6.76 標準誤差 0.01 0.02 中央値 6.87 6.95 6.71 最頻値 7.13 7.04 標準偏差 0.16 0.19 0.21 0.25 0.56 0.40 範囲 0.97 0.92 1.03 1.22 2.76 1.99 最小 6.55 6.33 6.30 6.39 6.35 4.65 5.50 最大 7.52 7.25 7.33 7.37 7.57 7.40 7.48
5.2 運転試験 5.2.3 泌乳期における第二胃液pHの基本統計量 項目 試験区 慣行区 ポーラ エミリー オータム セシリア 平均 ホープ ルビー 観察期間 泌乳中期 泌乳初期 (分娩後日数) (82-135) (0~30) 7.13 6.91 6.80 6.84 7.08 6.77 6.93 標準誤差 0.01 0.00 中央値 7.16 6.79 6.83 7.07 6.95 最頻値 7.12 6.88 6.81 7.01 標準偏差 0.30 0.20 0.17 0.19 0.18 0.36 0.27 範囲 1.61 1.21 0.98 1.26 1.15 1.20 2.10 1.65 最小 6.17 6.30 6.26 6.09 6.22 6.39 5.35 5.87 最大 7.78 7.51 7.24 7.35 7.37 7.59 7.45 7.52
5.2 運転試験 5.2.4 移行期における第二胃液pHの推移
5.2 運転試験 5.2.5 第二胃内の温度の基本統計量 項目 ポーラ エミリー オータム セシリア ホープ ルビー 平均 37.9 38.8 38.9 38.7 38.0 38.3 38.4 標準誤差 0.03 0.04 0.05 0.06 0.08 0.02 中央値 39.1 39.2 39.0 38.5 最頻値 標準偏差 1.35 0.84 1.07 1.08 1.36 0.89 1.10 範囲 10.6 5.8 7.1 6.8 7.9 8.9 7.8 最小 28.5 34.0 32.7 34.1 31.4 31.1 32.0 最大 39.8 40.8 39.3 40.0
5.2 運転試験 5.2.6 血清生化学検査結果(タンパク質代謝)
5.2 運転試験 5.2.7 血清生化学検査結果(エネルギー代謝)
5.2 運転試験 5.2.8 血清生化学検査結果(肝機能)
5.2.8 移行期における第二胃内温度の推移(n=5) 5.2 運転試験 5.2.8 移行期における第二胃内温度の推移(n=5)
5.3 事前運転試験の結果 乾乳後期牛にpHセンサーを経口投与したところ、全てが 第2胃内に留置された。 pHセンサー投入による牛の健康への影響はなかった。 試験区は慣行区と比較しやや第二胃液pHの平均値が低く 推移した。 第2胃内温度が分娩二日前から一定レベル低下する変化を した。
pHセンサーの大きさ、質量から必ず「第二胃」に 留意することが確認できた。(n=7) 5.4 事前運転試験の考察 pHセンサーの大きさ、質量から必ず「第二胃」に 留意することが確認できた。(n=7) 試験区と慣行区で第二胃液pHに差があるが、給 与飼料の発酵性の相違と推察される。結果、給与 飼料により当然第二胃液pHも異なることをアル ゴリズム開発時には考慮すべき点と考える。 分娩前の第2胃内温度の変化は、試験頭数を増や し検証する必要があるが、乳牛の分娩予測ができ る可能性がある。
6.一般農家での評価試験
6.1 一般農家での実証 (1) 目 的 一般搾乳牛にて、ルーメンpHセンサーによる分娩前 後の ルーメン液pHの実態把握と飼料設計・泌乳量、疾病 等との 分析評価を目的に実証を実施 (2) 実証牧場 (a) S牧場 (b) 飼養頭数 84頭 (実搾乳46頭、育成26頭) (c) 飼養形態 繋ぎ飼い 「PMR+配合」給与(自動給飼)
通信システムは中継器を設置し、データ受信エリアを牛 舎内 全域とした 6.2 pHセンサーシステムの設置 通信システムは中継器を設置し、データ受信エリアを牛 舎内 全域とした ●データ管理パソコン (収納ケース) ●ルーメンpHセンサー ●簡易受信器 ●中継器
分娩を約一か月後に予定した搾乳牛3頭にpHセンサー を 経口投入した 6.3 pHセンサーの経口投入状況 分娩を約一か月後に予定した搾乳牛3頭にpHセンサー を 経口投入した 牛番 センサーNo 投入日 分娩日 備 考 0707 428 H26.3.14 H26.4.7 4/17 pH値低下、 その後変化せず 0846 429 H26.4.8 4/28 pH値低下、 その後変化せず 0759 430 H26.3.28 H26.4.15
6.4 評価試験 6.2.1 第二胃液pHの推移(牛番0759) MIN:5.76
6.2.2 日乳量・給与量と第二胃液pHの推移(牛番0759) 6.4 評価試験 6.2.2 日乳量・給与量と第二胃液pHの推移(牛番0759) 泌乳ピーク 分娩 出荷 定率増給
6.4 評価試験 6.2.3 血清生化学検査 区分 採血年月日 個体識別 TP Alb A/G BUN T-Ch Glu GOT GGT Ca IP NEFA (g/dl) (mg/dl) (IU/l) (μEq/l) 乾乳1 H26.3.17 0846 7.6 3.3 0.77 8.0 96 67 60 37 10.5 5.2 313 0759 7.5 0.79 8.4 117 72 65 32 11.1 4.3 249 乾乳2 H26.4.7 6.9 3.2 0.86 14.1 75 69 73 26 11.0 7.1 213 3.4 0.92 59 5.5 358 分娩後 H26.4.30 3.5 0.9 8.2 130 53 80 27 9.4 5.4 96.3 1.0 6.1 111 56 94 11.2 188.9 分娩後2週間 H26.5.14 3.6 0.8 10.6 171 58 78 30 10.2 4.8 83.3 9.8 167 62 88 29 10.4 152.2 分娩後4週間 H26.5.29 0.7 11.5 222 61 82 10.9 211 8.9 0.6 14.7 292 77 87 34 10.0 9.1 561
6.5 一般農家での評価試験の結果 pHセンサーは、経口投入した3頭ともに「第二胃」に留 置された。 3頭ともに日内変動が少なく、第二胃液pHは安定してい る。 泌乳ピークに向け、乳量・給与量の増加時も第二胃液pH は安定している。 血清生化学検査結果より、畜産試験場同様、pHセンサー 投入による牛の健康への影響はなかった。 pHセンサーの回収は、長野県畜産試験場での回収評価の 結果を踏まえ、乾乳期まで留置のままとする。
泌乳ピークに向け、乳量・給与量の増加時も第二胃液 pHは安定している。 6.6 一般農家での評価試験の考察 S牧場の給飼は、PMRをベースに個体別に乳量連動 による配合飼料の給与量の制御を行っている。配合飼 料はトップドレスとなるが、自動給飼機による多回数 給飼を行っており、第二胃液pHが下がり難い、日内 変動し難い環境であると推測する。なお、日内変動幅 は、畜産試験場の試験結果と大きく異なっており、多 回数給飼以外の要因も追求する必要があるため、今後 の課題としたい。 泌乳ピークに向け、乳量・給与量の増加時も第二胃液 pHは安定している。 ・泌乳ピークまでの間は、PMR・配合飼料ともに比 例増加が基本であるが、増給率の変化により第二胃 液pHが下がっている ・牛番0759においては、MAX=6.9、MIN= 5.76 であった。
7.pHセンサーの回収試験
7.1 回収結果 実施年月日 使用牛 実施者 結果 その他 2014/2/7 非搾乳牛 1頭 長野県畜産試験場 職員 4名 回収出来ず 長野県畜産試験場 職員 4名 回収出来ず 2014/3/28 非搾乳牛 1頭 搾乳牛 1頭 長野県畜産試験場 職員 5名 経験者1名を招聘し、指導を受ける。 非搾乳牛は24時間絶食後実施
メーカーから提供された「回収装置」も試作段階 であるが、実用化に向けて、更なる改良を期待す る。 7.2 回収試験の考察 メーカーから提供された「回収装置」も試作段階 であるが、実用化に向けて、更なる改良を期待す る。 電池寿命からすると、泌乳ピーク時にpHセン サーを回収するタイミングとなり、電池寿命の長 期化またはpHセンサーの仕様面の見直しを要す る。
8.pHセンサーシステムの評価
8.1 pHセンサーの不具合状況 名号 センサー 投入日 pHセンサー症状 No. 試験区 エミリー (367) H25.11.13 1/22 pH値上昇 マーメイド 369 H25.12.16 1/9分娩時から pH値低下 慣行区 ホープ 201 H26.1.22 2/10分娩後4日目から温度不安定 ルビー 367 H26.3.31 6/7からpH値低下 S牧場 0707 428 H26.3.14 4/17 pH値低下、その後変化せず 0846 429 4/28 pH値低下、その後変化せず
原因に関するメーカー見解は、「餌などの付着による 基準液の出口の詰まり」であった。 8.2 不具合の原因と新モデル 原因に関するメーカー見解は、「餌などの付着による 基準液の出口の詰まり」であった。 今回の研究では、pHセンサーは「試作機=モデルR 5」の提供を受けた。メーカーでは、他の共同研究先 からの要望、指摘も受け、pHセンサー含めた全体シ ステムの改良・開発を行っている旨の報告を受けた。 以下にその報告のあった次期モデルの改良点は以下の 通り。 ■ 新試作機=「モデルR6」 不具合内容 症状 改良内容 基準液の出口が詰まる 正しいデータが取得できない 保護メッシュの変更 受信確認が整っていなかった 通信でデータが欠落する 通信方法の変更とメモリ増設
9. まとめ 本pHセンサーは、公設試験場などで試作機より実証を繰り返し、現状に至っており、その機能や性能については、論文などで公表されており、一定のレベルに達している。また、従来、モニタリングができなかった第一胃液pHまたは第二胃液pHの「見える化」においては、現在も多くの研究機関で実証研究されているとおり、今回の調査研究の結果からも一般農家で活用するためには、更なる試作機の改良と実証確認が必要である。 本調査研究課題である実用化を見据えた「アルゴリズムの開発着手」は、一定の成果を得ることができた。本pHセンサーの改良に期待する点は大きく、今後も実証試験などが継続され、アルゴリズムの開発・実用化に結びつける必要がある。このためには、研究機関での多くの実証と分析データの共有化などにより実用化を加速させることが求められている。