畜産近代化リース協会 平成25年度調査研究事業 牛群健康管理省力化モニタリング技術の開発 ルーメン内留置型・無線伝送方式pHセンサーの実証試験 事業期間:平成25年7月から平成26年7月.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
パレットレンタルデポにおけ る 生産計画に関する研究 98745 松山 健太郎. 研究目的 ①単体デポの生産計画モデルを構築 ②現状の分析及び問題点の抽出 ③改善案の提案 返却されたパレットの選別、修繕を 行い、その後虫検査を行うこと 生産の定義.
Advertisements

運動の重点推進事項(期間:10年間) (1)普及啓発 (2)資源循環システムづくり (3)土壌診断の実施 (4)環境にやさしい農業技術の実証・普及 (5)「有機の郷づくり地域」の拡大 1.
反射波が支配的な状況下でのマルチパス誤差低減
データ分析入門(12) 第12章 単回帰分析 廣野元久.
Let’s干しいもHACCP ひたちなか保健所
最新ファイルの提供を保証する代理FTPサーバの開発
点対応の外れ値除去の最適化によるカメラの動的校正手法の精度向上
現場における 熱貫流率簡易測定法の開発  五十嵐 幹郎   木村 芳也 
当院健診施設における脂肪肝と糖尿病リスクの統計学的な検討
機能実現期間の測定による プログラマ能力の実験的評価
ここに若林の絵が入る Ⅰ 従来型サービスの課題 Ⅴ Solaris基盤ヘルスチェックサービス ●従来型サービス Ⅱ 新サービスの概要
実証分析の手順 経済データ解析 2011年度.
口 蹄 疫 侵入防止にご協力をお願いします ◇ 畜産農場へは必要がない限り立ち入らない ◇ 各施設で行われている消毒に協力すること
4 繁殖生理と     交配・分べん (1 乳牛の繁殖生理)      繁殖の重要性.
障害者の職業能力調査 ~その実態と今後の方向~
神奈川大学大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻
放射性セシウムに関する牛肉の基準値と 飼料の暫定許容値が見直されます! 販売する方 購買する方 情報の 繁殖牛・廃用牛等を売買する方へ
福岡県南地域の酪農経営における各種環境(牛舎環境、衛生、飼養、設備)がバルク乳質に及ぼす影響分析
平成25年12月20日 根室牛削蹄師会講習会資料 平成25年度乳牛肢蹄に関する活動について 根室農業改良普及センター 主 査   田 口  容 士.
3群以上の場合,t-検定か多重比較検定か? 片側か両側検定かどちらを選ぶ? ◎報告書に記載してください
センサノード 時刻同期と位置測定 浅川 和久 2008/11/16 センサノード 時刻同期と位置測定.
今日の目標 ・家畜の成長について ・家畜の飼料栄養について ・家畜の消化吸収について ・家畜の飼育環境について
USB2.0対応PICを用いたデータロガーの製作
当院における透析間体重管理指導方法についての検討
□糖尿病モデル  □健康改善モデル  (あてはまるものに☑) 【事業名】 【代表団体名】 【記載上の留意点】
携帯端末による 海洋情報グラフ表示システム
需要予測システム WebForecastのご紹介
次は,話題提供 ラットの系統選択と被験物質摂取量
LHC Run-2 進展状況 [1] Run-2に向けたアトラス検出器の改良 [0] Run-2 LHC
Click 技術研究発表会 ロ ド ー テ ィ ン グ 制 御 の 調 整 ヒ 小谷受変電設備工事 あきら.
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分析検討
ZigBeeノードの受信信号強度を利用した 屋内での人の活動範囲検出法
政府情報システムのコスト削減の 取組状況について
農家等への「家畜衛生情報」の発信、広報誌「通信衛星」の発行
第8週 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
(新)ふくしまアグリイノベーション実証事業【水田メガファームモデル事業】
バイオガスプラント 新時代を切り開く・・・.
塩害促進条件の違いがRC床版の材料劣化に及ぼす影響
図1 A農場外観.
アンテナ最適化技術と電波伝搬シミュレーション技術の高速化と高精度化
シラタマホシクサの地域文化の検証とフェノロジーの年変動
九州気候区の高専における太陽光発電 ◯葉山清輝,大山英典 (熊本電波高専) 中川重康 (舞鶴高専) 仲野 巧 (豊田高専)
第6回 高精度GPSの構築 位相測位の原理 通信システムの構築.
予測に用いる数学 2004/05/07 ide.
再計算方法 管理区域境界等の基準及び考え方 管理区域境界の基準の考え方 事業所境界の基準の考え方 排気・排水設備の能力の確認
二硫化ジフェニル(Cas No ) 高用量群の雌RBC(-11%)になぜ有意差が付かないか/前回勉強会
IoT活用による糖尿病重症化予防法の開発を目指した研究
堆肥を使用する際にはご留意ください! 〇 耕種農家・育苗業者の皆様へ 〇 輸入飼料を給与した牛に由来する 被害を未然に防止するために
堆肥を使用する際にはご留意ください! 〇 耕種農家・育苗業者の皆様へ 〇 輸入飼料を給与した家畜に由来する 被害を未然に防止するために
緊急輸血・大量輸血 山形大学輸血部 田嶋克史.
適応的近傍を持つ シミュレーテッドアニーリングの性能
~ 獣医師の皆さん、抗菌剤の慎重使用等対策を進め、
データの型 量的データ 質的データ 数字で表現されるデータ 身長、年収、得点 カテゴリで表現されるデータ 性別、職種、学歴
「ICAによる顔画像特徴量抽出とSVMを用いた表情認識」
平成27年7月 キョウチクトウ中毒を疑う死亡事例発生当時
学習目標 1.栄養代謝機能に影響を及ぼす要因について説明することができる. 2.栄養代謝機能の障害による影響を,身体,精神機能,社会活動の三側面から説明することができる. 3.栄養状態をアセスメントする視点を挙げることができる. 4.栄養状態の管理方法について説明することができる. SAMPLE 板書.
事業名:スマートかき養殖IoTプラットフォーム事業 (代表者: 国立大学法人 東京大学) (1/4)
研究開発名称 (対象とする技術のイラストや図) 提案者:○○株式会社 研究開発の概要 概算経費
「非破壊試験等によるコンクリートの品質管理について」改定のポイント
23年産の稲わらをこれから集める場合は、 利用前に必ず検査をしましょう
地球観測実習  草津白根山における 比抵抗構造探査 新谷 陽一郎   森真希子     指導教員   小河 勉 飯高 隆.
高度人材・中小企業活用推進事業 【大阪府商工労働部雇用推進室人材育成課】
「泌乳持続性の活用による新しい酪農生産」 ~病気予防や繁殖性を改善する牛群改良と飼養技術をめざして~
携帯端末向けの海洋情報 モニタリングシステム
第1章 現状メソッドの標準化 対象工程を流れる代表品種に対し作業を区分し、時間・頻度を 明らかにして、オペレーションリストを作成する。
産地パワーアップ事業の取組事例 (北海道)
議論の前提 ある人獣共通感染症は、野生動物が感染源となって直接又は媒介動物を通じて人に感染を起こす。
研究開発名称 (対象とする技術のイラストや図) 提案者:○○株式会社 研究開発の概要 概算経費
GC/MSによるノニルフェノキシ酢酸類の分析
図1 斑紋異常の子牛 出生 性別 精液の銘柄 症例1 H27.3.13 雄 Ⅰ 症例2 H27.5.26 雄 Ⅱ
Presentation transcript:

畜産近代化リース協会 平成25年度調査研究事業 牛群健康管理省力化モニタリング技術の開発 ルーメン内留置型・無線伝送方式pHセンサーの実証試験 事業期間:平成25年7月から平成26年7月

1. 調査研究の目的 本調査研究は乳牛の生産阻害要因として重要であるルーメンアシドーシスの評価と制御を行い、乳牛の生産病予防と生産性向上を目的とするモニタリング技術を構築する。 1-1 生産現場における「ルーメン内留置型・無線伝送方 式pH センサー(以下pHセンサーと言う)」の実証試験 (1) pHセンサーによるモニタリング技術の検証 ルーメンアシドーシスを低減するための飼料給与方法の確立 (2) 酪農経営における実地検証 一般農場にて、飼養管理状況とルーメン液pH変動の実態を 検証 1-2 技術マニュアルの作成 ルーメンpHモニタリングによる診断方法、回収器によるセン サー取りだし方法、飼養管理の改善などの技術マニュアルを 作成する。

パーソナルコンピュータ (データのモニタリング、活用) 2. 無線伝送方式pHセンサーシステム概要 岩手大学と山形東亜DKK㈱が共同開発したセンサー&システム ※pHセンサーは岩手大学との共同研究契約締結により、  試験・研究目的において「試作機」が有償提供される パーソナルコンピュータ (データのモニタリング、活用) 送信機 (ルーメン内に留置) 受信機 (畜舎内に設置) 送信機1 通信距離 30m~40m 高度な活用:サーバーPC 開発予定 有線・無線 LAN USB RS-232C 送信機2 簡易な活用:ネットブックPC 中継器【任意】 中継距離 200m~300m データ通信回線 ・ ・ ・ 送信機8(最大台数) 遠地でのモニタリング やデータ活用 開発予定 異常値発生を携帯端末等に通報

3. 実証試験での試験牛 本調査研究事業では、各評価試験において全12頭で実証を行った。その内訳は表1の通りである。各評価試験では数頭単位の検証であり、本試験での結果だけで言及することは不可能と思われるが、今後の研究の一助として活用可能と思われる。 表1 各評価試験の試験頭数 評価試験区分 頭数 備考 第一胃と第二胃の比較試験 試験用飼料4水準に設定 1頭 フィステル牛 第一胃と第二胃にセンサー装着 慣行区用飼料(TMR、乾燥) 搾乳牛での評価試験 試験区用給与飼料(TMR) 4頭 経口投入 慣行区用給与飼料(TMR) 3頭 一般農家(PMR)   12頭

4.第一胃と第二胃の 比較試験成績

4.1.1 試験方法 試験牛  フィステルを装着した2頭を供試   ①非搾乳牛1頭(試験用に盲乳処置)   ②搾乳牛  1頭(慣行法で試験中、H26.3.25分娩)  ・第一胃:フィステル部分からビニール紐でpHセンサー   を胃底部(液層内)に位置するように吊す。  ・第二胃:底部にpHセンサーを遊離した状態で留置 試験用飼料   ①非搾乳牛:チモシー乾草と圧片トウモロコシで4水準    に設定   ②搾乳牛 :慣行法飼養(TMR、乾草) 測定間隔・データ処理  10分間隔で連続測定したpH値から30分単位の平均値を算出 し、第一胃と第二胃の相関と日内変動を比較

4.1.2 供試牛

4.1.3 pHセンサーの留置位置 第二胃 第一胃 pHセンサー

4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.1 非搾乳牛を用いた試験区分

14日間(馴致給与7日間+データ採取期間7日間)で実施 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.2 試験実施の現況 1.試験の実施 14日間(馴致給与7日間+データ採取期間7日間)で実施 2.飼料の給与方法  分離給与による1日3回給与で実施 ※各試験区において給与時間は同時刻とした。 ※チモシー乾草及び濃厚飼料(圧片トウモロコシ)の給与量は試験区によって異なる。

4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.3 第一胃と第二胃のpH連即測定例

4.2.4 試験Ⅰ(チモシー乾燥6kg)の日内変動と相関 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.4 試験Ⅰ(チモシー乾燥6kg)の日内変動と相関

4.2.5 試験Ⅱ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ3kg) 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.5 試験Ⅱ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ3kg) の日内変動と相関

4.2.6 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ6kg) 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.6 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ6kg) の日内変動と相関

4.2.7 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ9kg) 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.7 試験Ⅳ(チモシー乾燥6kg+圧片トウモロコシ9kg) の日内変動と相関

4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.8 第一胃と第二胃の温度の比較

4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.9 第一胃と第二胃の比較試験統計量

飼料成分摂取量(kg/日) 相関係数 NDF NFC Starch 試験Ⅰ 3.6 0.9 - 0.80* 試験Ⅱ 3.8 2.8 1.7 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.10 第一胃pHと第二胃pHとの相関係数 飼料成分摂取量(kg/日) 相関係数 NDF NFC Starch 試験Ⅰ 3.6 0.9 - 0.80* 試験Ⅱ 3.8 2.8 1.7 0.61* 試験Ⅲ 4.1 4.8 3.4 0.24* 試験Ⅳ 4.4 6.7 5.1 0.29* *:p<0.01

4.2.11 血清生化学検査と第一胃内溶液の有機酸分析結果 4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.11 血清生化学検査と第一胃内溶液の有機酸分析結果 試験区分 試験Ⅰ 試験Ⅱ 試験Ⅲ 試験Ⅳ (n) (2) (3) 血清生化学検査※  総蛋白 g/dl 8.9 8.6 7.7 7.3  アルブミン 2.9 3.2 3.1  総コレステロール mg/dl 51.7 49.5 45.5 56.7  尿素態 5.8 4.6 4  GOT IU/dl 50.4 42.7 48.4 68.7  GGT 16.2 13.7 15.5 23.7 有機酸分析※※  酢酸 g/L 2.3 2.2 2.4 1.7  プロピオン酸 0.6 0.8 0.5  酪酸 0.4 0.7 0.9  乳酸 -  ※  試験Ⅰ~Ⅲは岩手大学農学部、試験Ⅳは長野県松本家畜保健衛生所で実施  ※※ 長野県畜産試験場で実施

4.2 非搾乳牛での比較試験 4.2.12 ルーメンアシドーシス発生時のpHの推移 第二胃pH 第一胃pH 食滞発生 チモシー4.5kg+乳用配合9kg チモシー4.5kg+圧片トウモロコシ9kg チモシー6kg 第二胃pH 第一胃pH 食滞発生

4.2 非搾乳牛での比較試験  ■ 非搾乳牛での比較試験の結果 粗飼料主体の飼料給与では、第一胃液pHと第二胃液pH は高い相関を示したが、易発酵性飼料を増給することによ り相関性は低下した。 食滞(ルーメンアシドーシス)が一度発生したが、第二胃 液pHと第一胃液pHが低下する傾向では一致したが、連 動はしていなかった。 pHセンサー投入による牛の健康への影響はなかった。

4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.1 第一胃と第二胃のpHの推移

4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.2 乾乳期におけるpHの日内変動と相関

4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.3 泌乳期におけるpHの日内変動と相関

4.3.4 全体(乾乳期+泌乳期)におけるpHの日内変動と相関 4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.4 全体(乾乳期+泌乳期)におけるpHの日内変動と相関

4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.5 第一胃と第二胃の温度の比較

4.3.6 第一胃液pHと第二胃液pHの比較試験統計量 4.3 搾乳牛での比較試験 4.3.6 第一胃液pHと第二胃液pHの比較試験統計量 全体 乾乳期 泌乳期 第一胃 第二胃 平均 6.54 6.50 6.36 6.78 6.58 6.44 標準偏差 0.004 0.007 0.011 0.010 0.005 0.008 中央値 6.56 6.61 6.38 6.797 6.60 最頻値 6.27 7.04 6.35 6.90 6.66 7.01 0.33 0.54 0.29 0.31 0.56 範囲 2.28 2.75 1.91 1.48 2.12 最小 5.16 4.81 6.00 5.32 最大 7.44 7.56 7.07 7.49 相関係数 0.43 0.61 0.52

4.3 搾乳牛での比較試験  ■ 搾乳牛での比較試験の結果 TMR給与であるが乾乳期、泌乳期を通じて高い相関性で はなかった。 第一胃及び第二胃内の温度は高い相関があった。

4.4 比較試験の考察 試験頭数が各1頭のため、言及はできないが、同一時 間軸での比較として、第一胃液pHと第二胃液pHに 関して、今回の試験条件では相関が認められなかった。 第二胃液pHは、独立した変量としてとらえるべきか の検討も考慮に入れ、様々な飼養条件の個体データを 収集するとともに分析手法の検討も行う必要がある。

5.事前評価試験 -pHセンサーシステムの運転試験-

5.1 運転試験の実施状況 5.1.1 運転試験の供試牛 5.1.2 給与飼料(TMR)の飼料成分 試験牛の状況 pHセンサー測定状況 区分 名号 生年月日 最終分娩 分娩後 産 センサー 投入日 観測 その他 日数 次 No. 試験区 ポーラ H20.9.2 H25.11.1 277 4 364 H26.1.22 74 4/6 バッテリー終了 エミリー H20.9.16 H25.12.21 227 3 (367) H25.11.13 105 故障:1/22 pH値上昇 オータム H18.10.30 5 368 H25.11.25 132 セシリア H22.1.26 H26.1.20 197 2 370 H25.12.25 220 8/2 バッテリー終了 慣行区 マーメイド H23.6.14 H26.1.10 207 369 H25.12.16 72 故障:1/9分娩時から pH値低下 2/26 バッテリー終了 ホープ H25.5.12 H26.2.15 171 201 69 故障:2/10分娩後4日目から温度不安定 4/1 バッテリー終了 ルビー H20.4.28 H26.4.18 109 6 367 H26.3.31 87 故障:6/7からpH値低下 6/26 バッテリー終了 5.1.2 給与飼料(TMR)の飼料成分 区分 水分 (%) 乾物率 (%) 飼料成分(%/DM) TDN CP NDF ADF デンプン NFC EE 粗灰分 Ca P 試験区 51.5 48.5 71.2 14.3 37.8 21.9 20.2 39.0 5.3 7.6 0.9 0.7 慣行区 34.1 65.9 64.7 19.2 22.2 15.5 35.1 3.9 9.6 1.5 0.5

※金属探知器でpHセンサーが第二胃に留置していることを確認 5.2 運転試験 5.2.1 第二胃液pHと温度の即定例 (試験区、試験牛:オータム) ※金属探知器でpHセンサーが第二胃に留置していることを確認

5.2 運転試験 5.2.2 乾乳後期牛の第二胃液pHの基本統計量 項目 試験区 慣行区 エミリー オータム セシリア 平均 ホープ ルビー 観察期間 乾乳後期 7.14 6.85 6.84 6.94 6.98 6.54 6.76 標準誤差 0.01 0.02 中央値 6.87 6.95 6.71 最頻値 7.13 7.04 標準偏差 0.16 0.19 0.21 0.25 0.56 0.40 範囲 0.97 0.92 1.03 1.22 2.76 1.99 最小 6.55 6.33 6.30 6.39 6.35 4.65 5.50 最大 7.52 7.25 7.33 7.37 7.57 7.40 7.48

5.2 運転試験 5.2.3 泌乳期における第二胃液pHの基本統計量 項目 試験区 慣行区 ポーラ エミリー オータム セシリア 平均 ホープ ルビー 観察期間 泌乳中期 泌乳初期 (分娩後日数) (82-135) (0~30) 7.13 6.91 6.80 6.84 7.08 6.77 6.93 標準誤差 0.01 0.00 中央値 7.16 6.79 6.83 7.07 6.95 最頻値 7.12 6.88 6.81 7.01 標準偏差 0.30 0.20 0.17 0.19 0.18 0.36 0.27 範囲 1.61 1.21 0.98 1.26 1.15 1.20 2.10 1.65 最小 6.17 6.30 6.26 6.09 6.22 6.39 5.35 5.87 最大 7.78 7.51 7.24 7.35 7.37 7.59 7.45 7.52

5.2 運転試験 5.2.4 移行期における第二胃液pHの推移

5.2 運転試験 5.2.5 第二胃内の温度の基本統計量 項目 ポーラ エミリー オータム セシリア ホープ ルビー 平均 37.9 38.8 38.9 38.7 38.0 38.3 38.4 標準誤差 0.03 0.04 0.05 0.06 0.08 0.02 中央値 39.1 39.2 39.0 38.5 最頻値 標準偏差 1.35 0.84 1.07 1.08 1.36 0.89 1.10 範囲 10.6 5.8 7.1 6.8 7.9 8.9 7.8 最小 28.5 34.0 32.7 34.1 31.4 31.1 32.0 最大 39.8 40.8 39.3 40.0

5.2 運転試験 5.2.6 血清生化学検査結果(タンパク質代謝)

5.2 運転試験 5.2.7 血清生化学検査結果(エネルギー代謝)

5.2 運転試験 5.2.8 血清生化学検査結果(肝機能)

5.2.8 移行期における第二胃内温度の推移(n=5) 5.2 運転試験 5.2.8 移行期における第二胃内温度の推移(n=5)

5.3 事前運転試験の結果 乾乳後期牛にpHセンサーを経口投与したところ、全てが 第2胃内に留置された。 pHセンサー投入による牛の健康への影響はなかった。 試験区は慣行区と比較しやや第二胃液pHの平均値が低く 推移した。 第2胃内温度が分娩二日前から一定レベル低下する変化を した。

pHセンサーの大きさ、質量から必ず「第二胃」に 留意することが確認できた。(n=7) 5.4 事前運転試験の考察 pHセンサーの大きさ、質量から必ず「第二胃」に 留意することが確認できた。(n=7) 試験区と慣行区で第二胃液pHに差があるが、給 与飼料の発酵性の相違と推察される。結果、給与 飼料により当然第二胃液pHも異なることをアル ゴリズム開発時には考慮すべき点と考える。 分娩前の第2胃内温度の変化は、試験頭数を増や し検証する必要があるが、乳牛の分娩予測ができ る可能性がある。

6.一般農家での評価試験

6.1 一般農家での実証 (1) 目 的 一般搾乳牛にて、ルーメンpHセンサーによる分娩前 後の ルーメン液pHの実態把握と飼料設計・泌乳量、疾病 等との 分析評価を目的に実証を実施 (2) 実証牧場 (a) S牧場 (b) 飼養頭数 84頭 (実搾乳46頭、育成26頭) (c) 飼養形態 繋ぎ飼い 「PMR+配合」給与(自動給飼)

通信システムは中継器を設置し、データ受信エリアを牛 舎内 全域とした 6.2 pHセンサーシステムの設置 通信システムは中継器を設置し、データ受信エリアを牛 舎内 全域とした ●データ管理パソコン (収納ケース) ●ルーメンpHセンサー ●簡易受信器 ●中継器

分娩を約一か月後に予定した搾乳牛3頭にpHセンサー を 経口投入した 6.3 pHセンサーの経口投入状況 分娩を約一か月後に予定した搾乳牛3頭にpHセンサー を 経口投入した 牛番 センサーNo 投入日 分娩日 備 考 0707 428 H26.3.14 H26.4.7 4/17 pH値低下、 その後変化せず 0846 429 H26.4.8 4/28 pH値低下、 その後変化せず 0759 430 H26.3.28 H26.4.15

6.4 評価試験 6.2.1 第二胃液pHの推移(牛番0759) MIN:5.76

6.2.2 日乳量・給与量と第二胃液pHの推移(牛番0759) 6.4 評価試験 6.2.2 日乳量・給与量と第二胃液pHの推移(牛番0759) 泌乳ピーク 分娩 出荷 定率増給

6.4 評価試験 6.2.3 血清生化学検査 区分 採血年月日 個体識別 TP Alb A/G BUN T-Ch Glu GOT GGT Ca IP NEFA (g/dl) (mg/dl) (IU/l) (μEq/l) 乾乳1 H26.3.17 0846 7.6 3.3 0.77 8.0 96 67 60 37 10.5 5.2 313 0759 7.5 0.79 8.4 117 72 65 32 11.1 4.3 249 乾乳2 H26.4.7 6.9 3.2 0.86 14.1 75 69 73 26 11.0 7.1 213 3.4 0.92 59 5.5 358 分娩後 H26.4.30 3.5 0.9 8.2 130 53 80 27 9.4 5.4 96.3 1.0 6.1 111 56 94 11.2 188.9 分娩後2週間 H26.5.14 3.6 0.8 10.6 171 58 78 30 10.2 4.8 83.3 9.8 167 62 88 29 10.4 152.2 分娩後4週間 H26.5.29 0.7 11.5 222 61 82 10.9 211 8.9 0.6 14.7 292 77 87 34 10.0 9.1 561

6.5 一般農家での評価試験の結果 pHセンサーは、経口投入した3頭ともに「第二胃」に留 置された。 3頭ともに日内変動が少なく、第二胃液pHは安定してい る。 泌乳ピークに向け、乳量・給与量の増加時も第二胃液pH は安定している。 血清生化学検査結果より、畜産試験場同様、pHセンサー 投入による牛の健康への影響はなかった。 pHセンサーの回収は、長野県畜産試験場での回収評価の 結果を踏まえ、乾乳期まで留置のままとする。

泌乳ピークに向け、乳量・給与量の増加時も第二胃液 pHは安定している。 6.6 一般農家での評価試験の考察 S牧場の給飼は、PMRをベースに個体別に乳量連動 による配合飼料の給与量の制御を行っている。配合飼 料はトップドレスとなるが、自動給飼機による多回数 給飼を行っており、第二胃液pHが下がり難い、日内 変動し難い環境であると推測する。なお、日内変動幅 は、畜産試験場の試験結果と大きく異なっており、多 回数給飼以外の要因も追求する必要があるため、今後 の課題としたい。 泌乳ピークに向け、乳量・給与量の増加時も第二胃液 pHは安定している。 ・泌乳ピークまでの間は、PMR・配合飼料ともに比 例増加が基本であるが、増給率の変化により第二胃 液pHが下がっている ・牛番0759においては、MAX=6.9、MIN= 5.76  であった。

7.pHセンサーの回収試験

7.1 回収結果 実施年月日 使用牛 実施者 結果 その他 2014/2/7 非搾乳牛 1頭 長野県畜産試験場 職員 4名 回収出来ず 長野県畜産試験場 職員 4名 回収出来ず 2014/3/28 非搾乳牛 1頭 搾乳牛  1頭 長野県畜産試験場 職員 5名 経験者1名を招聘し、指導を受ける。 非搾乳牛は24時間絶食後実施

メーカーから提供された「回収装置」も試作段階 であるが、実用化に向けて、更なる改良を期待す る。 7.2 回収試験の考察 メーカーから提供された「回収装置」も試作段階 であるが、実用化に向けて、更なる改良を期待す る。 電池寿命からすると、泌乳ピーク時にpHセン サーを回収するタイミングとなり、電池寿命の長 期化またはpHセンサーの仕様面の見直しを要す る。

8.pHセンサーシステムの評価

8.1 pHセンサーの不具合状況 名号 センサー 投入日 pHセンサー症状 No. 試験区 エミリー (367) H25.11.13 1/22 pH値上昇 マーメイド 369 H25.12.16 1/9分娩時から pH値低下 慣行区 ホープ 201 H26.1.22 2/10分娩後4日目から温度不安定 ルビー 367 H26.3.31 6/7からpH値低下 S牧場 0707 428 H26.3.14 4/17 pH値低下、その後変化せず 0846 429 4/28 pH値低下、その後変化せず

原因に関するメーカー見解は、「餌などの付着による 基準液の出口の詰まり」であった。 8.2 不具合の原因と新モデル 原因に関するメーカー見解は、「餌などの付着による 基準液の出口の詰まり」であった。 今回の研究では、pHセンサーは「試作機=モデルR 5」の提供を受けた。メーカーでは、他の共同研究先 からの要望、指摘も受け、pHセンサー含めた全体シ ステムの改良・開発を行っている旨の報告を受けた。 以下にその報告のあった次期モデルの改良点は以下の 通り。 ■ 新試作機=「モデルR6」 不具合内容 症状 改良内容 基準液の出口が詰まる 正しいデータが取得できない 保護メッシュの変更 受信確認が整っていなかった 通信でデータが欠落する 通信方法の変更とメモリ増設

9. まとめ 本pHセンサーは、公設試験場などで試作機より実証を繰り返し、現状に至っており、その機能や性能については、論文などで公表されており、一定のレベルに達している。また、従来、モニタリングができなかった第一胃液pHまたは第二胃液pHの「見える化」においては、現在も多くの研究機関で実証研究されているとおり、今回の調査研究の結果からも一般農家で活用するためには、更なる試作機の改良と実証確認が必要である。 本調査研究課題である実用化を見据えた「アルゴリズムの開発着手」は、一定の成果を得ることができた。本pHセンサーの改良に期待する点は大きく、今後も実証試験などが継続され、アルゴリズムの開発・実用化に結びつける必要がある。このためには、研究機関での多くの実証と分析データの共有化などにより実用化を加速させることが求められている。